10 / 23
魔女の誤算
しおりを挟む
王子は生きていた。
いつもの部屋でベッドではなく床に倒れていたが、意識はあった。
私はなんとか王子を抱きあげ、近くにある来客用のソファに運び、寝かせた。
「あぁ、アリア。来てくれたんだね」
笑おうとしているが、その声は弱々しく、身体は小刻みに揺れていた。
「しゃべるな。黙っていろ」
そう言って額に手を当て、王子の頭をソファに押しつけた。
前回ほどではないが、状態は悪そうだ。そんな中でも話しかけてこようとする王子の精神力に驚く。
そうして、王子の身体に私の力がいきわたるよう力を込めた。ゆっくり力が王子の身体を巡っていく。全身にいきわたり、呪いと力を同化させるところで、私はおや。と思った。
(なかなか同化が進まない。呪いの抵抗が強いということか?)
あまり長く力を使い続けるのは私にとっても負担だが、ゆっくりとはいえ同化は進んでいる。力を込めすぎて王子の身体が壊れても呪いは回収できない。
(厄介だが仕方ない)
否応なしに呪いへの期待は増した。
そうして、4-5時間たった頃だろうか。なんとか呪いと力が同化した。その間、誰も王子のもとを訪ねて来ないのは幸いだった。見つかり、捕まればほぼ死罪だろう。こちらの説明など聞かず、嬉々として魔女を始末する姿が目に浮かぶ。
「よし」
そう言って一気に王子の呪いを引きはがし、私の身体に移した。王子の身体はビクビクっと波打ち、私はそこで意識を失った。
いつもの部屋でベッドではなく床に倒れていたが、意識はあった。
私はなんとか王子を抱きあげ、近くにある来客用のソファに運び、寝かせた。
「あぁ、アリア。来てくれたんだね」
笑おうとしているが、その声は弱々しく、身体は小刻みに揺れていた。
「しゃべるな。黙っていろ」
そう言って額に手を当て、王子の頭をソファに押しつけた。
前回ほどではないが、状態は悪そうだ。そんな中でも話しかけてこようとする王子の精神力に驚く。
そうして、王子の身体に私の力がいきわたるよう力を込めた。ゆっくり力が王子の身体を巡っていく。全身にいきわたり、呪いと力を同化させるところで、私はおや。と思った。
(なかなか同化が進まない。呪いの抵抗が強いということか?)
あまり長く力を使い続けるのは私にとっても負担だが、ゆっくりとはいえ同化は進んでいる。力を込めすぎて王子の身体が壊れても呪いは回収できない。
(厄介だが仕方ない)
否応なしに呪いへの期待は増した。
そうして、4-5時間たった頃だろうか。なんとか呪いと力が同化した。その間、誰も王子のもとを訪ねて来ないのは幸いだった。見つかり、捕まればほぼ死罪だろう。こちらの説明など聞かず、嬉々として魔女を始末する姿が目に浮かぶ。
「よし」
そう言って一気に王子の呪いを引きはがし、私の身体に移した。王子の身体はビクビクっと波打ち、私はそこで意識を失った。
0
あなたにおすすめの小説
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
番など、今さら不要である
池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。
任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。
その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。
「そういえば、私の番に会ったぞ」
※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。
※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
わんこ系婚約者の大誤算
甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。
そんなある日…
「婚約破棄して他の男と婚約!?」
そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。
その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。
小型犬から猛犬へ矯正完了!?
恋心を封印したら、なぜか幼馴染みがヤンデレになりました?
夕立悠理
恋愛
ずっと、幼馴染みのマカリのことが好きだったヴィオラ。
けれど、マカリはちっとも振り向いてくれない。
このまま勝手に好きで居続けるのも迷惑だろうと、ヴィオラは育った町をでる。
なんとか、王都での仕事も見つけ、新しい生活は順風満帆──かと思いきや。
なんと、王都だけは死んでもいかないといっていたマカリが、ヴィオラを追ってきて……。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる