悪の魔女は王子の溺愛から逃れられない

ナカナカ田

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魔女は王宮に滞在する

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「そろそろ休憩にしようかな」

その言葉に私はビクリと肩をゆらす。

王子が執務机から、休憩用のソファに移動してくる。

王子がソファに座ったのを見計みはからい、王子にしずしずと近づき、入れたてのお茶を王子のソファの前の机にそっとおく。ついでにお茶菓子も。今日はオレンジのゼリー寄せである。それらを手際よく給仕し、さっと部屋のすみに引っ込もうとする。

「待ってアリア。約束は?」

王子の座るソファは2人掛け。王子の隣のスペースをポンポンと示してニコニコ王子が笑っている。

その顔を見て私は諦める。しぶしぶ自分のお茶とゼリーを用意し、王子の隣に座る。この顔の王子には、逆らわない方がいいーー。数日間の滞在で身をもって知っていた。

すかさず王子の頭が私の太ももに降りてくる。

「あぁ、疲れた」

そう言って王子は私の脚を枕にして仰向けに寝転び、くつろいでいる。

その様子に、げんなりしながらも私は自分のお茶を飲むためにティーカップに手を伸ばす。

自分の入れたリラックス効果のあるハーブティーをゆっくりと味わう。

(我ながらいい出来だーー)

とても満足して飲んでいたのに、下から伸びた手が私のお茶を奪っていった。

「おい…」

「カップがあるとアリアの顔が見えないからね」

悪びれもせず、相変わらず寝転びながら器用に机にカップを置きながら、下から私を見つめて王子が言う。

それから、王子の顔の近くある私の髪を一房ひとふさつかみ、クルクルまわしたり、ツンツン引っ張ったりして遊んでいる。

「おい…遊ぶな…」

そう言って髪を引き抜く。

「えー、いいじゃん、これくらい。ボク、勉強も執務も頑張ってるよね?ちょっとくらいご褒美がなくちゃ、王子なんてやってやれないよ」

唇を尖らせて、あざといくらい可愛い顔をして、恐ろしいことを王子が言う。

「お前のちょっとは、すぐにちょっとじゃなくなるじゃないか」

たしかに王子は頑張っている。王子として必要な勉強も執務も、私にはよく分からないところではあるが、それらに多くの時間を割いていた。

私からすると、やり過ぎではないかと思うくらいには、王子は勤勉であった。

実際、その勤勉ぶりが気になってお節介をしてしまったのだから。

今となっては後悔しかないが、ちっとも子どもらしくなく、ひたすら機械のように黙々と自分の責務を全うする王子に、ちょっぴり同情した自分がいるのも事実だった。
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