悪の魔女は王子の溺愛から逃れられない

ナカナカ田

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居候は立場が弱い

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その日の夕方。

王子が私の依頼した薬草や道具などを持ってやって来た。

「……これは、なんだ?」

その中に変なものが混じっている。

「何って、メイド服だよ。明日から必要でしょ?」

当然のように王子は言う。

「なぜこれが必要なんだ?」

「だって、アリアがボクにお茶を入れてくれるんでしょ。どこで誰が見ているか分からないし、メイド服なら安心でしょう?」

…安心ではない。安心ではないし、

「私は茶葉を作るだけだぞ!給仕は他に専門の者がいるだろう⁉︎」

ここは王宮で、コイツは仮にも王子だ。専属の使用人が何人かいるだろう。だったら茶葉を渡せば十分のはずだ。

「でも、ボクは休憩がしたいんだ」

「なに?」

時々王子は言葉が通じなくなる時がある。

今もそうだ。

「休憩ってボクが安らぐためにあるものでしょ?だったらお茶はアリアが入れてくれないと。それに、休憩中はアリアがボクと一緒にいてくれること。そうじゃないと、ボクの休憩にはならないよ」

「そんな休憩があるか!」

「ボクは王子だからね。特別仕様だよ」

「私は納得していない」

「そうなの?でも、アリア、ここですることないでしょ?昨日も今日も退屈そうに部屋でウロウロしてたじゃない。なにかやる事があった方が気が紛れない?」

「うっ、」

痛いところを突いてくる。私が言い返しにくい、とても痛いところを。

「それに、そろそろアリアの存在をごまかすのが難しくなってきたんだ。ボクの部屋で寝ていて、ボクと一緒に食事をとっているからね。ボクは全然かまわないんだけど、ちょっとボクの周りがうるさくてね。魔女だってバラすわけにもいかないでしょう?だったら、ボクの身の回りの世話をする者が増えたってことにしておいた方がいいかと思うんだよね」

王子の部屋で寝ているのは、アリアが魔女であることを知られないための防犯上、必要なことだと王子に言われて仕方なくそうしているだけだし(もちろん別々のベッドで寝ている)、食事だって王子が絶対一緒にとるんだと譲らないから一緒にとっているだけだ。

納得いかない主張も多いが、今の私は宿もしょくも王子の世話になっている。しぶしぶではあるが、居候いそうろうの身分である。

罪悪感はないが、肩身がせまいのは事実である。宿代飯代くらいは働けと言われれば、働かざるをえまい。

「つまり、これは王宮滞在費ということだな?」

腹立たしいことこの上ないが、そういうことなら…そういうことなら、なんとか耐えよう。


恩には誠意をーー


魔女の世界には意外と律儀なルールが残っている。

「うーん…まぁ、そういうことになるのかなぁ。本音を言うと、ボク的には滞在費なんていらないから、アリアがボクの恋人か奥さんになってくれると嬉しいんだけどね。そうすれば、アリアがこそこそする必要もないし、滞在費なんて気にしなくてすむよ」

どうかな?

なんて、まんざらでもなさそうに聞いてくる。

「やっぱり私が作った茶葉は、私みずから入れるべきだと思う!そして、まわりにまぎれるためには、用意された服を着ることにする!」

こうして私はまた、王子にまんまとしてやられたのである。
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