Ancient Artifact(エンシェント アーティファクト)

黒之輪

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最終章 闇を照らす彩色を

136.【前編】悪夢晴らす小さき夢

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 ゲヘナ本体の穢れた大地に飲み込まれたライン達は、濃厚な穢れの影響で気を失っていた。何本ものケーブルでがんじがらめに捕らえられ、永劫に続く悪夢を見せられていた。
 苦悶の声がどんよりした穢れの大地に響く。光の粒すら寄せつけぬ大地は彼らを穢れで蝕んでいく。

 その中で、煌々と光を放つ場所があった。
 翡翠色の星剣が少年を光で守る。ケーブルが光を貫こうとつつくがびくともしない。そこだけが神聖な場所として残されていた。

「……おに、い、ちゃん」

 アルカが意識を取り戻す。抱き締めたあたたかな光を感じながら。大好きな兄の星剣ユーリエルが腕の中にあった。ゆるりと立ち上がり、剣を抱きながら辺りを見回す。

「ラインお兄ちゃん!」

 意識を失う前、この剣を渡したのはきっと大好きな兄だ。どこにいるのだろう。アルカは不安げに黒く長い尻尾を揺らしていた。
 アルカは星剣を見つめた。主である大好きな兄の場所を教えてくれると思って。しかし剣は光で自分を守るだけで、特に何も示さない。

 ……あぁあああ!!

 どこかから悲鳴が聞こえてきた。絶望を含んだ叫び声。驚いてアルカの尻尾と頭の双葉がぴんと伸びた。

「フェイ先生の声だ」

 ふと、星剣が翡翠色の光をひとすじ伸ばす。先生のいる場所を示しているのだろうか。アルカは意を決して、てこてこと駆けていった。



 翡翠色の道しるべの先、ケーブルに絡め取られたフェイラストが苦しんでいた。暴れるたびにがしゃりとケーブルがしなる。

「フェイ先生!」

 アルカが呼びかける。しかし全く聞こえていなかった。目を閉じたまま苦しみ悶えている。ぜえぜえと息を荒くして、何かに攻撃されているように体を弓なりにしならせた。

「この線、じゃま!」

 星剣を構えようとしたが、重くて剣先が上がらなかった。主の手の延長線上のように扱えるはずの星剣は、悪魔の少年には重すぎたようだ。

「あぁっ、ぐ、ひぅッ……!!」
「フェイ先生……!」

 いてもたってもいられないアルカは、星剣を近くに置いてフェイラストに近づいた。ケーブルの網を手で払い、彼に触れる。はっとしたアルカが手を離した。

「悪夢、見てるの」

 夢を司る力がそれを察知した。すぐに状況を理解して、夢を変える力「レーヴ」を発動する。フェイラストの悪夢の中に潜り込んだ。

*******

「やめろ。違う、こんなの……!!」

 目の前で患者が次々と死んでいく。命が消えていく。誰も助からない。最善を尽くしても皆が息絶えていく。

「誰も、助けられない……っ!」

 フェイラストの悪夢。
 己の無力を突きつけられる永劫の悲嘆。

「ここが、フェイ先生の悪夢……」

 アルカは、目の前で涙を流し嘆きの叫びを上げるフェイラストを見つめていた。冷たい手術台を叩く拳に血が染み出ている。周りには誰もいない。闇の中、この場所だけが照らされていた。

「フェイ先生」
「……オレは、何もできないクソ野郎だ。誰も助けられねぇ。魔眼で患部を視たところで、手術は失敗する。何をしても、無駄なんだ」

 彼はアルカのことが見えていないようだ。虚ろな目が揺れている。だいぶ憔悴しているようだった。アルカはフェイラストに近づいた。袖に隠れた手で触れようとすると、ばちりと静電気のように障壁が弾けた。

「ひゃっ!」

 慌てて手を引っ込める。彼は悪夢に包まれているのだと分かった。

「……なんだ?」

 フェイラストが顔を上げた。辺りを見回して違和感を探っている。何もないと思ったか、再び顔が下がった。

「ねぇ、フェイ先生」

 反応はない。ぶつぶつと嘆きの言葉を吐き出していた。悲哀と嘆息に包まれたフェイラストからは、いつもの自信に満ち溢れた姿を見ることはできない。
 アルカは尻尾を揺らしながら再びフェイラストに触れた。ばちりと弾ける音がする。びりびりする感覚に耐えながら、アルカは夢を変える力「レーヴ」を強める。

「フェイ先生から、はがれて!」

 金と水の双眸が明るく光る。彼を包み込む悪夢に干渉し、皮が剥がれるように膜がめくれ、床にこぼれ落ちた。

「……っ!?」

 初めてフェイラストがこちらを認識した。悪夢の膜が剥がれたフェイラストは、ようやく自分に触れる存在を見つめる。

「アルカ少年……どうして、手術室にいるんだよ」
「ちがうよ。ここは、フェイ先生の夢のなか。悪夢の中に、いるの」
「悪夢? ……いや、これは現実だ」
「どうして?」

 フェイラストが手術台に手をついてうつむく。眼鏡の内側に涙がこぼれていた。

「オレはどう頑張ったって患者を助けられねぇ。魔眼がなければただの平々凡々な医者だ。それでも助けられねぇんだ。……オレはもう、駄目だ」
「フェイ先生」
「アルカ少年、お前もオレを哀れむだろ。 オレは、無力だ」
「ううん、ちがうよ」

 アルカはきっぱりと否定した。まっすぐな目でフェイラストを見上げる。

「フェイ先生はすごいひとだよ。魔眼がなくたって、さわっただけで悪いとこを当てるもん。見ただけで、風邪を引いてることがわかるもん」
「そりゃ、医者の基本だからよ……」
「ボクは、すごいと思う。フェイ先生は、いっぱいお勉強して、たくさん経験をつんで、お医者さんになったんだ」

 アルカはたどたどしい言葉でフェイラストに伝える。色の違う明るい眼差しで、にっこりと笑って。

「いつも、自信いっぱいで、きらきらなフェイ先生が、ボクは好き。悪夢なんか吹き飛ばしちゃうくらい、元気なフェイ先生が、好き」
「アルカ少年……」
「フェイ先生の弱いところをボクは見たんだ。でも、フェイ先生ならのりこえられると思う。自信いっぱいで、がははーって、笑って。だから目を覚まして、いっしょにラインお兄ちゃんをさがそ!」

 アルカが小さな手を差し出す。ためらいながらも少年の手を握ると、フェイラストを包んでいた悪夢がガラスを砕くように崩れ落ちた。

 悪夢が晴れる。
 フェイラストの体が軽くなった。次に聞こえたのは、感謝を綴る言葉。自分を見て歓喜の声を上げる患者の姿。

「おはよう、フェイ先生!」

 夢の中でアルカがにっこりと笑う。フェイラストの意識が、覚醒していく。

*******

 剣先を下に浮遊する星剣。翡翠色に光りながら二人を包み込む。フェイラストを捕らえていたケーブルが強い光に当てられて、穢れの中に引いていった。ふわりと光の中に紫色が着地した。閉じた目を開く。目の前に、笑顔で手を握るアルカがいた。

「おはよ!」
「おう、寝坊しちまったみてぇだ。悪い、恥ずかしいとこ見せたな」
「いいのいいの。みんな、弱いところが「あるか」だから~」
「はは、確かに「あるか」だな」

 悲鳴が聞こえくる。女の子の声だ。

「聖南姫の声だぜ」
「うん、いこっ!」

 星剣がひとすじの光を伸ばす。フェイラストはアルカを抱き上げ、星剣を手に持って駆け出した。



 ケーブルの網の中で暴れる聖南を見つけた。フェイラストがアルカを下ろし、力任せに振るった星剣でケーブルを斬り払う。しかし次々に伸びてきては聖南を隠していく。

「フェイ先生、きっと聖姉ちゃんも悪夢を見てるんだ」
「じゃあ、悪夢の中に飛び込んで起こすしかねぇな!」
「うん、まかせて!」

 星剣が三人を光で包む。アルカはレーヴを発動してフェイラストと共に聖南の悪夢へ潜り込んだ。

*******

 「いや、いやだよっ!!」

 大好きな真国の民が次々と倒れていく。疫病によって、みかどの父も倒れ、妹の玲奈も床に伏した。

 聖南の悪夢。
 愛する国が滅び続ける永劫の消失。

「聖姉ちゃんの、悪夢」
「こりゃあ、病が広がって真国が崩壊してるじゃねぇか」

 真国の象徴である朱色と白漆喰の宮廷は色褪せていた。そこら中に力尽きた患者が倒れている。しかも肌に黒点が無数に浮かんでいる。フェイラストは頭の中で病名を検索していたが、これは聖南の悪夢ということを思い出して検索をやめた。彼女が作り出した架空の病気かもしれないから。

「聖南は、あっちか!?」
「きゅーてーの中だよ!」
「おう、行くぜ!」

 アルカを抱き上げて駆け出す。少年の案内ですばやく聖南のもとへ駆けつけた。そこはみかどである奏輝そうきの居室だ。

「聖南!」
「聖姉ちゃん!」

 しかし返事はない。聖南はベッドで眠る奏輝の体にすがるように伏せていた。奏輝の顔には無数の黒点が浮かぶ。

「あたしが、あたしが真国に帰らなかったから……!」
「聖南! おい聖南!」
「だめだよフェイ先生。聖姉ちゃんは、悪夢につかまってるの。こっちの言葉、とどいてない」
「じゃあ、どうするんだよ?」

 アルカがレーヴを強め、聖南に触れた。ばちりと弾けるびりびりとした感覚に耐え、聖南を包む悪夢の膜を剥がしていく。めくれた膜が床にこぼれる。

「あ、れ……?」

 聖南が違和感を覚えて顔を上げた。彼女の顔にも黒点がいくつか浮かんでいる。虚ろな目が、フェイラストとアルカを捉えた。

「フェイラスト、アルカくん」
「聖南、迎えにきたぜ」
「だめ……だめ!」

 聖南が椅子から立ち上がると、フェイラストとアルカを部屋から追い出そうとしてきた。フェイラストは踏ん張り聖南を押し返す。

「だめだって! こんなときに来ないでよ! 馬鹿!」
「なぁに言ってやがる。オレが誰か忘れたのか?」
「馬鹿なこと言ってないで、早くこの国から出ていって! 二人まで死んじゃう!!」
「死なないよ」

 アルカが静かに否定する。聖南は理解できないという顔で少年を見つめた。

「ここは、聖姉ちゃんの悪夢。でも、ボクは夢を変えられるんだ。だから、こういうこともできるの!」

 アルカが両手をばっと突き上げると、聖南と奏輝の顔に浮かんでいた黒点がみるみる消えていった。

「うそ……父上の病気、治った」
「そうか! ここは夢だからアルカ少年のホームグラウンドだ。オレがいちから治療しなくても、全部治療できちまうんだな! はっは、愉快じゃねぇか!」
「えへへー!」

 フェイラストの笑い声に反応してアルカも笑う。聖南が自分の顔に触れた。鏡を見れば、黒点が消えている。死の病が消え去っていた。

「聖姉ちゃん。聖姉ちゃんの元気な声で、みんなを元気にしてあげて」
「あたしの、声」
「聖姉ちゃんはね、とっても明るいの。明るくて、みんなを元気にしてくれるの。ボクも、元気になるんだ」
「お前が思ってる以上に、聖南姫はオレ達を元気づけてくれるんだぜ。しゃきっとしろよ。お前は、十二聖獣を従える巫女姫だろ。母親の跡を継いで、父親みてぇなみかどになるんだったろ」
「あ、たし……っ」

 聖南の栗色の瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。聖南はこらえきれずに泣き出し、フェイラストに抱きついた。

「ひっ、ぐ、……っ」
「よーしよし、いい子だ」
「いいこ、いいこ」

 フェイラストがぽんぽんと聖南の背中を叩く。アルカも聖南の頭を撫でて慰めた。
 しばらくして、気が済むまで涙を流した聖南が満面の笑みを浮かべる。

「ごめん。……取り乱しちゃった」
「仕方ねぇって。じゃ、アルカ少年、頼むぜ」
「はい!」

 悪夢が晴れる。聖南の体が軽くなった。
 ベッドで眠る奏輝は笑っていた。まるで起きていたように。耐えられなくなったのか、かははと笑い声を上げた。

「あー! 父上起きてたな!」

 聖南に突っ込まれて、奏輝は寝返りを打って顔を隠した。

*******

 翡翠色の光が三人を包む。聖南を捕らえていたケーブルが穢れに引っ込んだ。星剣が彼らを出迎える。

「これ、ラインさんの剣じゃん」
「ラインお兄ちゃんが、みんなが悪夢につかまる前に、ボクにわたしてくれたの」
「おかげて助かるぜ。次は」

 フェイラストの言葉を遮る、断末魔のような悲鳴。青年の声だ。星剣がひとすじの光を伸ばし、道を示す。

「今のって、キャスライかな?」
「間違いねぇ、向かうぞ!」 
「はい!」

 フェイラストがアルカを抱き上げ、星剣を持って駆ける。聖南も急いで駆け出した。



 ケーブルに捕らわれたキャスライはぐったりしていた。支えられなければ今にも落ちてしまいそうなほどに。

「悪夢を見せられてるのは変わらねぇな」
「なんの悪夢見せられてんの……?」
「いってみよ。キャス兄ちゃんを助けるんだ!」

 アルカがレーヴを発動し、二人と共にキャスライの悪夢へと潜り込んだ。

*******

「もう、いやだ……」

 絶望に浸るキャスライは、目の前で燃え盛る一件のバーを見つめていた。ごう、と音を立てて燃えるそのバーは、かつてベトリューガと共に過ごした場所。

「リューガ……っ!」

 キャスライの悪夢。
 愛する者を失う永劫の死別。

「おわ、な、なんだ!」
「なんか景色が急に変わった!」
「キャス兄ちゃんの悪夢が、一周したんだ」

 夢がループする。
 キャスライは再びベトリューガとの生活に戻っていた。キャスライは何度も何度も彼の結末を変えようと努力している。三人のことなど見向きもせず、ベトリューガだけを一点に捉えて。悪夢を繰り返すたび、ベトリューガの死は加速する。

「あ、あぁ……ッ」

 またベトリューガが死んだ。
 死ぬたびにループが始まり、また最初に戻ってきた。

「助けなきゃ。リューガを、助け、なきゃ……」

 とりつかれたようにキャスライが行動を起こす。それを止めたのはアルカだった。レーヴを使って、キャスライを包む悪夢の膜を剥がす。

「キャス兄ちゃん」
「……え?」
「ボクのこと、見える?」
「アルカ、くん? それに、フェイラスト、聖南……」

 震える新緑の眼差しが、怯えたように三人を見つめる。フェイラストが近づくと、キャスライは後退り壁に背をつけた。

「キャスライ、もう終わってんだ。ベトリューガって男は、死んでる」
「……分かってる」
「分かってんなら!」
「嫌なんだ!」

 荒く息をして、キャスライは震える唇を開いた。

「嫌、なんだ。もう、彼を……死なせたくない」
「でもでも、これは悪夢なんだよ!」
「悪夢だって分かってる。リューガは死んで、もうこの世にはいない。試練のときに、ちゃんと彼とお別れできたんだ。でも……っ」

 ぽたり、ぽたり。キャスライの瞳から涙がこぼれていく。

「目の前で死んでいくリューガを、もう見たくないから……だから、助けたいんだ」

 何度繰り返しても、愛した彼を助けたかった。キャスライは小さく言葉をこぼした。アルカが双葉をぴこぴこ動かして彼を見上げた。

「キャス兄ちゃんは、やさしいね」
「……エゴイストなだけだよ、きっと」
「えご? うーん、ボクにはわかんないけど。でもね、キャス兄ちゃんは、とってもやさしいひとだよ。いつも、みんなのことを気にかけてくれるよね」
「……そうかな」
「そうだよ。やさしいから、大好きなひとを助けたいって思ったんだ。悪夢だってわかっても、キャス兄ちゃんは大好きなひとを助けようとした。でも、これは悪夢だから、助からない」
「……じゃあ、僕のすることは無駄なのかい?」
「ううん、そんなことないよ」

 アルカが両手をばっと突き上げる。レーヴによって悪夢のガラスが砕け散った。景色が変わる。ベトリューガの墓前に移動していた。

「リューガのお墓」
「はい、お花!」

 いつの間にかアルカが白いユリの花を持っていた。キャスライが受け取ると、ベトリューガの墓前に供えた。

「リューガ……」
「おっさんがどうあがいても、お前さんの愛した人にはなれねぇ。お前さんがベトリューガのこと考えてる姿、どうしても見ちまってよ」
「あたしも、キャスライの大好きな人の代わりとかできないし、隙間を埋めるくらいの人にはなれない。フェイラストが無理ならあたしも無理だよ。でもさ、だったらさ、前向いて歩こうよ! その方がベトリューガさんもキャスライのこと好きって言ってくれるよ!」

 キャスライは聖南を見た。にぱっと気持ちのいい笑顔を浮かべていた。フェイラストもアルカも笑っている。

「前を向いて、歩く」

 前を向いて歩いていたつもりだった。けれど、後ろを振り返っては彼のことを追いかけていたのかもしれない。

「リューガ、僕、君に冒険の話をしに戻ってくるよ」

 ―― キャシー、ここで待ってるぜ ――

 嗚呼、彼の声が聞こえる。背中をとん、と押してくれる彼の声が。キャスライはようやく笑うことができた。

「行くぜキャスライ」
「ね、一緒に行こ!」
「うん、行かなくちゃ!」
「むふふ! それじゃ、おはようの時間だよ!」

 アルカが悪夢を晴らす。
 キャスライの体が軽くなる。意識が、覚醒していく。

*******

 星剣が彼らを光で包んでいた。
 キャスライの体からケーブルが離れて体がずり落ちる。それをフェイラストが受け止めた。

「……う、んぅ」
「目ぇ覚めたか?」
「うん、ありがとう」

 自分の足で立ち、キャスライは三人に頭を下げる。突然のことに聖南が声を上げて驚いた。アルカも尻尾をぴんと立てる。

「ごめん、何度もリューガのことで迷惑かけちゃって」
「ははっ、そんなこと気にすんなよ」
「そうだよ気にしないの! それぐらい、キャスライにとって大切な人ってことだもん。とーっても大事にされてたんでしょ、キャスライは」
「だいじだいじに、されてたんだねー」

 頭を上げたキャスライは、三人の笑顔に元気づけられた。つられて微笑み、肩の力を抜いた。
 彼らを見守るように、星剣ユーリエルは剣先を下にして浮遊する。次なる光をひとすじ伸ばし、道を示した。

「次は、ラインかルフィアだな」
「ラインお兄ちゃん、ルフィアお姉ちゃん」
「二人の悪夢って、いったいなんだろう」
「行くしかないでしょ。ね!」
「うん!」

 フェイラストがアルカを抱き上げ、キャスライが星剣を持った。駆け出した二人を聖南は追いかけた。

 二人を探し、悪夢から覚まそう。
 穢れに汚染される前に、早く。
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