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スピンオフ 初代アポリオン編
反逆の悪魔は昔日を想う
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アルカ・A・バリエンテ。真の名をアルカ・アポリオン。
本来ならば少年はアポリオン家の子孫として魔劫界を支配する存在だった。しかし、悲しいかな魔力は乏しく弱々しかった。
「アルカ、今日は何をする?」
彼――リベリオ・アポリオンがアルカに力を継承するまでは。
ラインの家のリビングでアルカはカーペットに寝転びながら猫と戯れている。ソファーに足を揃えて座るリベリオは、己の血を引く大切な継承者に慈愛の眼差しを向けていた。アルカが手をついて起き上がる。隣に座って体を預けてきた。
「初代さまの、むかしむかしのおはなし聞きたいな」
「むかしむかしの話? どのくらい昔だ?」
「んーと、えーと。初代さまが生まれた時代のはなし!」
となればアンディブ戦争の時代。それも初期の頃だ。当時は悪魔の祖と呼ばれたリリスから造られ、ダインスレイブと共に悪魔を生めよ増やせよとした時だ。リベリオは目を閉じ、アルカの言うむかしむかしの光景を思い出していた。
「……この話をするならば、熾天の継承者とその仲間がいた方がいい。破壊を司る者も呼ぼう。創造源神がいても悪くない」
「みんなみんな、大集合した方がいい?」
「そうだ。この話は、おまえ一人では難しい」
「むずかしーの?」
「当時を知るものがいた方が話しやすいだろう。原初の創造と破壊がいれば特に話がよく分かる。熾天の継承者に頼んで集めてもらうとしよう」
「はーい!」
元気に手を上げ、アルカはにっこり笑う。リベリオは無垢なる継承者の頭を撫でた。すると嬉しそうに抱きついてきた。
母と娘の猫は二人の話を聞いていたかいないか。耳をぴくりと跳ねさせて目を細めていた。
*******
後日。雨降る空。秘密の大屋敷。
リベリオに頼まれたラインは関係者を集めておいた。ルフィア、キャスライ、フェイラスト、聖南のいつものメンバーと、破壊を司る者である黒いの、創造の源である創造源神も呼ばれた。
皆が好きなようにソファーや椅子に座り、ルフィアが作った焼き菓子を手元に置いている。アルカはリベリオの近くの椅子に座っていた。
「集まってくれて感謝している。大した話ではないのだが、アルカが俺の存在していた時代に興味を持ってしまってなぁ。どうせ聞かせるなら、おまえ達がいた方が理解が早いと思ったんだ」
「ボクだけだとむずかしーおはなしなんだって」
気になる、というのはアルカだけではなく。アルカが来たばかりの頃に診察したフェイラストも興味があった。己の中に潜む魔眼の主が起きているのもその一因か。黒いのと創造源神は昔馴染みで当時を知るものだからかどっしり構えていた。
「そういえばあたし達って、アルカくんのご先祖様がどうして反逆の悪魔なんて言われてるのか知らないよね。天使や神様の味方をしたってことしか教えてもらってないもん」
「聖南の言うとおりだね。僕達はそれ以上のことを知らないや。ルフィアは?」
「私はお父さんにそういう悪魔がいたって話は聞いてたけど……詳しいことは知らないの」
「俺はアルカと暮らしていてたまにリベリオも出てくるが、昔話は特に聞いたことなかったな」
「まぁまぁ、本人が語ってくれるんだってなら聞いてみようぜ」
フェイラストがなだめる。リベリオが咳払いした。何本も束ねた白髪を揺らし、リベリオは席に座る。
「これは、俺が造られた当時からの記憶。悪魔の祖リリス、悪魔の父ダインスレイブ。……そして、悪魔の母アポリオンの話だ」
雨音が屋敷に響き渡る。
音色に乗せるように、リベリオの唇が言葉を紡いだ。
本来ならば少年はアポリオン家の子孫として魔劫界を支配する存在だった。しかし、悲しいかな魔力は乏しく弱々しかった。
「アルカ、今日は何をする?」
彼――リベリオ・アポリオンがアルカに力を継承するまでは。
ラインの家のリビングでアルカはカーペットに寝転びながら猫と戯れている。ソファーに足を揃えて座るリベリオは、己の血を引く大切な継承者に慈愛の眼差しを向けていた。アルカが手をついて起き上がる。隣に座って体を預けてきた。
「初代さまの、むかしむかしのおはなし聞きたいな」
「むかしむかしの話? どのくらい昔だ?」
「んーと、えーと。初代さまが生まれた時代のはなし!」
となればアンディブ戦争の時代。それも初期の頃だ。当時は悪魔の祖と呼ばれたリリスから造られ、ダインスレイブと共に悪魔を生めよ増やせよとした時だ。リベリオは目を閉じ、アルカの言うむかしむかしの光景を思い出していた。
「……この話をするならば、熾天の継承者とその仲間がいた方がいい。破壊を司る者も呼ぼう。創造源神がいても悪くない」
「みんなみんな、大集合した方がいい?」
「そうだ。この話は、おまえ一人では難しい」
「むずかしーの?」
「当時を知るものがいた方が話しやすいだろう。原初の創造と破壊がいれば特に話がよく分かる。熾天の継承者に頼んで集めてもらうとしよう」
「はーい!」
元気に手を上げ、アルカはにっこり笑う。リベリオは無垢なる継承者の頭を撫でた。すると嬉しそうに抱きついてきた。
母と娘の猫は二人の話を聞いていたかいないか。耳をぴくりと跳ねさせて目を細めていた。
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後日。雨降る空。秘密の大屋敷。
リベリオに頼まれたラインは関係者を集めておいた。ルフィア、キャスライ、フェイラスト、聖南のいつものメンバーと、破壊を司る者である黒いの、創造の源である創造源神も呼ばれた。
皆が好きなようにソファーや椅子に座り、ルフィアが作った焼き菓子を手元に置いている。アルカはリベリオの近くの椅子に座っていた。
「集まってくれて感謝している。大した話ではないのだが、アルカが俺の存在していた時代に興味を持ってしまってなぁ。どうせ聞かせるなら、おまえ達がいた方が理解が早いと思ったんだ」
「ボクだけだとむずかしーおはなしなんだって」
気になる、というのはアルカだけではなく。アルカが来たばかりの頃に診察したフェイラストも興味があった。己の中に潜む魔眼の主が起きているのもその一因か。黒いのと創造源神は昔馴染みで当時を知るものだからかどっしり構えていた。
「そういえばあたし達って、アルカくんのご先祖様がどうして反逆の悪魔なんて言われてるのか知らないよね。天使や神様の味方をしたってことしか教えてもらってないもん」
「聖南の言うとおりだね。僕達はそれ以上のことを知らないや。ルフィアは?」
「私はお父さんにそういう悪魔がいたって話は聞いてたけど……詳しいことは知らないの」
「俺はアルカと暮らしていてたまにリベリオも出てくるが、昔話は特に聞いたことなかったな」
「まぁまぁ、本人が語ってくれるんだってなら聞いてみようぜ」
フェイラストがなだめる。リベリオが咳払いした。何本も束ねた白髪を揺らし、リベリオは席に座る。
「これは、俺が造られた当時からの記憶。悪魔の祖リリス、悪魔の父ダインスレイブ。……そして、悪魔の母アポリオンの話だ」
雨音が屋敷に響き渡る。
音色に乗せるように、リベリオの唇が言葉を紡いだ。
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