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マルタン王国
そして、時は経ち
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静かな執務室で、フェリックスは必死に仕事をしていた。
王になって三年、王妃を迎えて二年。
マルタン王国は農業、福祉、教育などにおいて目を見張るほどの発展を遂げた。
商業が盛んになり、多くの国と交易をし、フェリックスの仕事は増える一方だ。
コンコンコン
「入れ」
書類から目を離さず返事をすると、控えていた侍従がサッと扉を開け……入ってきたのはサミュエルだった。
「今、ガルシア帝国から使者が来ましたよ。正式に謁見の申し込みがあるはずですが、先にお耳に入れておいた方が良いかと思いまして」
「そうか。じゃあ、ちょっと休憩するか。お茶を用意してくれ」
「かしこまりました」
侍従が執務室を出て行き、フェリックスはサミュエルと一緒にソファーに移動した。
「で、使者はなんで来たんだ?」
「アレクシ皇太子殿下が結婚するそうです。それで、結婚式への参加を願いに来たようです」
「婚約破棄から二年……まあ、いい頃合いか。相手は?」
「ガルシアの公爵令嬢だそうです。えーと、確か、アビシニ公爵令嬢、だったかと」
「ふうん……それによって、ガルシアがどう変わるか、だが……」
「最近は帝国から独立する国が出てきたりして、力を弱めていますからね。公爵家との結びつきで、盛り返しを図ろうとしているのかもしれませんね」
「その公爵について何か知っているか、後でエリスに聞いてみよう」
「そうですね……ところで、結婚式には?」
「俺は行かない。もちろんエリスもな。一応使節団は送った方がいいだろうから、後で宰相達と相談だな」
「そうですね。ああ、あと、これは個人的に仕入れた情報なのですが」
「うん?」
「エリス様の妹君が、亡くなったそうです」
「えっ? 本当に?」
驚き、思わずフェリックスは聞き返した。
「婚約破棄後、それまでの問題行動を理由に、どっかに幽閉されてたんだよな?」
「幽閉とまではいきませんが、修道院に入れられていたそうで、そこで自殺したそうです」
「自殺……」
自殺するようには見えなかったが、というフェリックスの考えを察したように、サミュエルは続けた。
「時間が経てば、皇太子殿下が許してくれるものと思っていたのが、そうはならなかった事に絶望し、と言われているそうですが……なんせ、外部から遮断された中での事なので、真実はどうか……色々と都合の悪い事を暴露されないように消されたのでは、と囁かれているらしいですよ」
「そうか……まあ、俺達には関係の無い事だな」
「エリス様には、お伝えになるのですか?」
「皇太子の結婚だけはな。妹の事はいいだろう。既に縁は切れているのだし、とはいえ、その事を聞けばエリスは動揺するかもしれない。今は大事な時期だ。そんな事をわざわざ知らせなくてもいいだろう」
「そうですね。正式に報告されたわけでもありませんし」
「ああ」
そう返事をし、フェリックスは机の上をチラリと見た。
朝から頑張っているが、仕事はまだまだ終わりそうにない。
「……仕事を片付けてから行こうと思っていたが……エリスの所にちょっと行ってみようかな」
「さっきお茶を頼んだでしょう」
「いや、そうだけどさ、まだまだまだまだ! 終わりそうにないんだ」
「あー……これまで、エリス様がされていた仕事も、フェリックス様にまわってきていますからねぇ……気分転換も必要でしょう、どうぞ行ってきてください。お茶は私と侍従でいただきますから」
「ん、そうしてくれ。あ、あと、机の右側の箱に入っている書類は、お前でも処理できるやつだから。よろしくっ!」
「えっ? 陛下っ? 私だってやる事が……こらっ! 逃げるなっ!」
サミュエルの声を無視し、フェリックスは走って執務室を飛び出した。
王になって三年、王妃を迎えて二年。
マルタン王国は農業、福祉、教育などにおいて目を見張るほどの発展を遂げた。
商業が盛んになり、多くの国と交易をし、フェリックスの仕事は増える一方だ。
コンコンコン
「入れ」
書類から目を離さず返事をすると、控えていた侍従がサッと扉を開け……入ってきたのはサミュエルだった。
「今、ガルシア帝国から使者が来ましたよ。正式に謁見の申し込みがあるはずですが、先にお耳に入れておいた方が良いかと思いまして」
「そうか。じゃあ、ちょっと休憩するか。お茶を用意してくれ」
「かしこまりました」
侍従が執務室を出て行き、フェリックスはサミュエルと一緒にソファーに移動した。
「で、使者はなんで来たんだ?」
「アレクシ皇太子殿下が結婚するそうです。それで、結婚式への参加を願いに来たようです」
「婚約破棄から二年……まあ、いい頃合いか。相手は?」
「ガルシアの公爵令嬢だそうです。えーと、確か、アビシニ公爵令嬢、だったかと」
「ふうん……それによって、ガルシアがどう変わるか、だが……」
「最近は帝国から独立する国が出てきたりして、力を弱めていますからね。公爵家との結びつきで、盛り返しを図ろうとしているのかもしれませんね」
「その公爵について何か知っているか、後でエリスに聞いてみよう」
「そうですね……ところで、結婚式には?」
「俺は行かない。もちろんエリスもな。一応使節団は送った方がいいだろうから、後で宰相達と相談だな」
「そうですね。ああ、あと、これは個人的に仕入れた情報なのですが」
「うん?」
「エリス様の妹君が、亡くなったそうです」
「えっ? 本当に?」
驚き、思わずフェリックスは聞き返した。
「婚約破棄後、それまでの問題行動を理由に、どっかに幽閉されてたんだよな?」
「幽閉とまではいきませんが、修道院に入れられていたそうで、そこで自殺したそうです」
「自殺……」
自殺するようには見えなかったが、というフェリックスの考えを察したように、サミュエルは続けた。
「時間が経てば、皇太子殿下が許してくれるものと思っていたのが、そうはならなかった事に絶望し、と言われているそうですが……なんせ、外部から遮断された中での事なので、真実はどうか……色々と都合の悪い事を暴露されないように消されたのでは、と囁かれているらしいですよ」
「そうか……まあ、俺達には関係の無い事だな」
「エリス様には、お伝えになるのですか?」
「皇太子の結婚だけはな。妹の事はいいだろう。既に縁は切れているのだし、とはいえ、その事を聞けばエリスは動揺するかもしれない。今は大事な時期だ。そんな事をわざわざ知らせなくてもいいだろう」
「そうですね。正式に報告されたわけでもありませんし」
「ああ」
そう返事をし、フェリックスは机の上をチラリと見た。
朝から頑張っているが、仕事はまだまだ終わりそうにない。
「……仕事を片付けてから行こうと思っていたが……エリスの所にちょっと行ってみようかな」
「さっきお茶を頼んだでしょう」
「いや、そうだけどさ、まだまだまだまだ! 終わりそうにないんだ」
「あー……これまで、エリス様がされていた仕事も、フェリックス様にまわってきていますからねぇ……気分転換も必要でしょう、どうぞ行ってきてください。お茶は私と侍従でいただきますから」
「ん、そうしてくれ。あ、あと、机の右側の箱に入っている書類は、お前でも処理できるやつだから。よろしくっ!」
「えっ? 陛下っ? 私だってやる事が……こらっ! 逃げるなっ!」
サミュエルの声を無視し、フェリックスは走って執務室を飛び出した。
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