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フェリックス・マルタン
集結
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翌日。
俺達は学校に案内された。
「こちらがエリス様から援助していただき創った学校で、7歳から20歳くらいの生徒達、80名ほどが学んでおります。以前は読み書きと計算等、基本教育が主で、12、3歳くらいで卒業でしたが、現在は専門的な分野の授業も行っており、基本教育を終えた後の希望者が授業を受けています」
「専門的、と言いますと?」
「農業、医学、そして剣術です」
「まあ、それは素晴らしいわ! 指導はどなたが?」
「エリス様、驚かれると思いますよ」
領主の妻は意味深な笑顔を浮かべると『まずは基本クラスからご案内します』と言った。
「基本クラスは、初等、中等、高等の3クラスに分かれております。2、3年かけて試験に合格した者が上のクラスに上がるようにしておりますが中には1年で上のクラスに上がる者もおります」
「へーえ、決まった年数で上がるというわけではないのだな」
「はい。学校に来た生徒に、昼食とパンを提供するようになってからは、多くの親が子供を通わせてくれるようになったのですが、それでも、家の手伝いや幼い弟妹の世話などで毎日は来られない子供も多く、知識の習得にはばらつきがあります。そこで、エリス様がそれぞれの家庭、子供に合った進め方ができるようにとお考えになった事です」
「えっ? 凄いなエリス! そんな事まで考えて?」
俺は本当に感心して言ったが、エリスは『ちょっと思いついて言ってみただけです』と笑った。
「この学校は、貴族の子供が通うような所ではないので、家庭の事情で休まなければならなくなった子供が通うのを辞めてしまわないようにと思ったまでです」
「確かにそうだな。うん、今後、マルタンでの学校の参考にしたい」
「ただ、ここは子供の人数がそれほど多くないのでうまくいっているのかもしれません。色々と試して、調整していくのがいいでしょうね」
そんな事を話しながら先に進んでいくと、調理室があった。
「ここで昼食と、帰りに渡すパンを作っています。また、学校が休みの時には開放し、保存食などを作るのに使ってもらっています」
「それは良い事だわ。せっかく作った施設は有効に使わなくては」
一つ目の建物はそこで終わり、一度外に出て次の建物に向かう。
「こちらが最近増築した新校舎です。専門クラスの授業をしておりますが、人数が少ないので小さな建物で充分間に合っております。ここが農業クラスです」
中では、十数人ほどの生徒が授業を受けていた。年齢は、様々なようだ。
「余裕のある農家の跡取りがほとんどです。やはり労働力は、簡単には減らせないですからね。でも、学ぶ事によって収穫量や品質も変わってきますので、できるだけ多くの者に学んでほしいのですが……」
「そうね……農作業が落ち着いた時期に短期間だけ、要点を教えるのはどうかしら。それから、作物別に数日とか。麦について数日、葉野菜について数日、とか……。それで、自分が作っている、もしくは今後作ろうと思っている作物の授業を好きに受けられるようにするの。もちろんそれは年齢に関係なくね。字が書けなくとも、話を聞くだけでも参考になるのでは?」
「それは素晴らしい考えです! 早速先生方と相談してみなくては!」
「ええ、検討してもらえれば……あら?」
エリスが目を細め、教壇に立っている男を見つめた。
「あの教壇に立っているのは……ターリアさんじゃない?」
「ええ! そうなんです! 驚かれましたか?」
クスクスと笑う領主妻。
「ええもう、本当に……どうしてここに?」
嬉しそうな笑顔のエリス。
その教師は20代後半から30代前半くらいに見える。金色の髪を後ろで一つに括った細身の優男で、あまり農業をするような感じには見えない。なかなか整った容姿をしているのが気に食わない。
「エリス……知っている男なのか?」
俺は少し憮然としながら尋ねたのだが、
「ええ! わたくしが援助していた農作物の改良や研究を行う施設の長をしていた者です」
エリスが嬉しそうにそう言った時、その教師がこちらに気づき、生徒たちに自習を指示してやって来た。
俺達は学校に案内された。
「こちらがエリス様から援助していただき創った学校で、7歳から20歳くらいの生徒達、80名ほどが学んでおります。以前は読み書きと計算等、基本教育が主で、12、3歳くらいで卒業でしたが、現在は専門的な分野の授業も行っており、基本教育を終えた後の希望者が授業を受けています」
「専門的、と言いますと?」
「農業、医学、そして剣術です」
「まあ、それは素晴らしいわ! 指導はどなたが?」
「エリス様、驚かれると思いますよ」
領主の妻は意味深な笑顔を浮かべると『まずは基本クラスからご案内します』と言った。
「基本クラスは、初等、中等、高等の3クラスに分かれております。2、3年かけて試験に合格した者が上のクラスに上がるようにしておりますが中には1年で上のクラスに上がる者もおります」
「へーえ、決まった年数で上がるというわけではないのだな」
「はい。学校に来た生徒に、昼食とパンを提供するようになってからは、多くの親が子供を通わせてくれるようになったのですが、それでも、家の手伝いや幼い弟妹の世話などで毎日は来られない子供も多く、知識の習得にはばらつきがあります。そこで、エリス様がそれぞれの家庭、子供に合った進め方ができるようにとお考えになった事です」
「えっ? 凄いなエリス! そんな事まで考えて?」
俺は本当に感心して言ったが、エリスは『ちょっと思いついて言ってみただけです』と笑った。
「この学校は、貴族の子供が通うような所ではないので、家庭の事情で休まなければならなくなった子供が通うのを辞めてしまわないようにと思ったまでです」
「確かにそうだな。うん、今後、マルタンでの学校の参考にしたい」
「ただ、ここは子供の人数がそれほど多くないのでうまくいっているのかもしれません。色々と試して、調整していくのがいいでしょうね」
そんな事を話しながら先に進んでいくと、調理室があった。
「ここで昼食と、帰りに渡すパンを作っています。また、学校が休みの時には開放し、保存食などを作るのに使ってもらっています」
「それは良い事だわ。せっかく作った施設は有効に使わなくては」
一つ目の建物はそこで終わり、一度外に出て次の建物に向かう。
「こちらが最近増築した新校舎です。専門クラスの授業をしておりますが、人数が少ないので小さな建物で充分間に合っております。ここが農業クラスです」
中では、十数人ほどの生徒が授業を受けていた。年齢は、様々なようだ。
「余裕のある農家の跡取りがほとんどです。やはり労働力は、簡単には減らせないですからね。でも、学ぶ事によって収穫量や品質も変わってきますので、できるだけ多くの者に学んでほしいのですが……」
「そうね……農作業が落ち着いた時期に短期間だけ、要点を教えるのはどうかしら。それから、作物別に数日とか。麦について数日、葉野菜について数日、とか……。それで、自分が作っている、もしくは今後作ろうと思っている作物の授業を好きに受けられるようにするの。もちろんそれは年齢に関係なくね。字が書けなくとも、話を聞くだけでも参考になるのでは?」
「それは素晴らしい考えです! 早速先生方と相談してみなくては!」
「ええ、検討してもらえれば……あら?」
エリスが目を細め、教壇に立っている男を見つめた。
「あの教壇に立っているのは……ターリアさんじゃない?」
「ええ! そうなんです! 驚かれましたか?」
クスクスと笑う領主妻。
「ええもう、本当に……どうしてここに?」
嬉しそうな笑顔のエリス。
その教師は20代後半から30代前半くらいに見える。金色の髪を後ろで一つに括った細身の優男で、あまり農業をするような感じには見えない。なかなか整った容姿をしているのが気に食わない。
「エリス……知っている男なのか?」
俺は少し憮然としながら尋ねたのだが、
「ええ! わたくしが援助していた農作物の改良や研究を行う施設の長をしていた者です」
エリスが嬉しそうにそう言った時、その教師がこちらに気づき、生徒たちに自習を指示してやって来た。
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