神様と友達な彼と最強くん

深園 彩月

文字の大きさ
20 / 46
第一部・第二章:出会いと再会は突然に

20

しおりを挟む
「ちょっと待って下さい!罰則が探検ってなんすか!?」

 罰則って、もっと厳しいもんじゃなかったっけ!?何さ探検って!マンガにもなかった展開だぞ!!

「いやぁ、だって爽くん編入してきたばっかだしぃ?そんな厳しい罰則にしても……ねぇ?」

「だからって探検はないでしょう!!」

 さっきのブラックオーラはなんだったんだよ!!

「いーじゃんいーじゃん☆校内探検で今後迷ったりする確率減らしたほうが爽くん的にはグッドじゃない!罰則なんてものは初めからなかったと思ってさ!」

「確かにそうですが……って、あなたがソレ言っちゃっていいんですか」

 仮にも学園長だろあんた。

「まあいいのよぅ!授業中は基本人いないから、ゆっくり見てまわれるよっ!隣の校舎は霊能科だから近づかないようにね!じゃあ行った行った!」

 さらっと受け流されたうえに半ば無理矢理食堂から追い出されるかたちになった。うどん食べ終わったとたんにこの状況かよ!

 言うことがメチャクチャだよ、本当……

 ちなみにチラッと見たらイオリちゃんは親子丼をがっつり食べていて、食欲の塊みたいだなぁって思った。

 そんで、最後まで助け船はなかった。

 ………世の中って、甘くないんだなぁ。

 ほんの少しだけそう思った。

 多分、嵐武様と白狐が甘すぎるんだと思うけど。

 食堂の入口を出て言われた通り校舎を見てまわろうとしたのだが、不意に学園長が呼び止めた。

「あ、待って爽くん!」

 自分が追い出したくせに何故呼び止めたのか、と思い振り返り「なんですか?」と問う。

「霊能科には近づかないように、って言ったそばから悪いけど、授業放棄する子が霊能科にいるの。霊能科の近く通ったときに見かけたら授業に出るように言ってくれる?」

 なんでそんなこと俺に押し付けるんですか!と口にしそうになったがあいにくそれはできなかった。

 何故なら、学園長の顔がひきつった笑みを浮かべていたから。

 何故だろう。口調はさっきとそう大差ないのに真剣にお願いされた気分になっていた。

 その授業に出ない人は何かあって授業放棄してるのか?

 いや、そんな深く考えなくてもいいんじゃん。絶対そうしないといけない訳じゃないし。

 「見かけたら言っときます」と一言残し校舎の出入口を探しに廊下に出た…が、なんか知らないけど、俺を見た女子がほぼ全員赤面して道を譲ってくれた。

 なんで皆して道譲ってくれたんだろ?中には学園内のこと粗方教えてくれた女の子もいたし。あと別れ際に名前教えてって言われたのも疑問だし。

 主に女の子達が俺に視線を向けたままひそひそ話してたのがすんごい気になったんだけど。俺の身体に何かついてる?まさか、制服の着方が違うとか?

 うわーどうしよう大丈夫かな。もう授業中なのか、誰も廊下歩いてないみたいだし誰かに聞くこともできねぇし!ましてや校舎の外には野良猫ぐらいしかいないし!

 野良猫に「ねえねえ制服の着方違うかな?」なんて馬鹿な質問できないし。

 あー、1人だと不安になるなぁ。

 なんて考えながら普通科の校舎のまわりをぐるぐる闊歩してる俺。

 もう何周目だよって自分でも思っちゃうよ。

 だってまだ勇気が貯まってないもん!
 霊能科の近く行く勇気ないんだもん!!

 罰則受ける覚悟はあるのにたかが違う校舎に行くぐらいのことで勇気がないっておかしいわ!!笑っちゃうわ!!

 覚悟と勇気は別もんなんだよ……!!

「てか、なんで俺が霊能科に行かなきゃいけないんだ?」

 そんな必要ないよな?学園長が勝手にお願いしてきただけだし、無視してもいいんじゃん?

 そうだよ無視しよう。そうしてしまおう!

 さーてまずは男子寮に行くかぁ!男子寮男子寮……

『お願いね』

 その言葉が頭を過る。

 深くため息をもらしたあと、女子生徒が教えてくれた霊能科に続く道を歩き出した。

 お願いされたんだから、無視することはできない。

 探検……というよりは人探しだけど、罰則ついでに霊能科に行くか。

「さぁて、どこにいるかなー」

 両手を挙げて伸びをしながら歩を進める俺だが、学園長の言ってた授業に出ない人との出会いが俺の今後を左右するなんて微塵も思わなかったんだ。

 俺とその人との運命が交錯するとき、すでにいろんな事が手遅れになっていただなんて

 少しも心になかったんだ………


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...