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【後日談2】トロワ・メートル
13.そこに、ふたりのメートル
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甲斐師匠、『フレンチ十和田』でギャルソンとして復帰しても、そつなく勤めていく。
始業前には葉子とアルコール類の支度をして、ホールでは控えめにしつつ、部下でもあったメートル・ドテルの蒼を支え、若いシェフ・ド・ランの神楽君のことも、そっとさりげなくサポート。
神楽君と共に今後シェフ・ド・ランのふたりは『チーフ』と呼ばれることになった。
でも、甲斐チーフの愛称は、いつのまにか『お師匠さん』になりつつもある。
ホールスタッフからも、厨房の料理人たちからも、あっという間に信頼を得ていた。
葉子もだった。毎日、甲斐チーフから繰り出されるワインの話に徐々に夢中になっていく。
本日もワインカーブにて、あの立ち飲み用丸テーブルを挟んで、ワインを選んでいく。
今日も北海道産のワインのボトルを手に、甲斐チーフがラベルを眺めつつ、なにやら思い馳せているようだった。
「北海道のワイン用葡萄ですが、以前は耐寒性があるドイツ種が多かったですね。温暖化のせいでしょう、フランス種も増えてきました。そのうちにシチリア種も入ってくるかもしれませんね……。今後が楽しみな反面、これまで世界のワインを支えてきたフランスの畑が心配になります」
「そういえば、北海道も私が子供のころより、雪が少なくなったなと感じることがあります。それでもまだ多いですけれど……。夏の気温もあがったように思えます」
その温暖化による変化は、まだ雪が多い北国にいる葉子でも、最近はよく感じるようになったのは確かだった。函館で揚がる漁獲の種類にも変化が出ている。それはワインもおなじということらしい。
「近年、ついに伝統あるブルゴーニュのワイナリーが、畑を確保するために、函館に進出してきています。世界の適する候補地から、畑の移住地に函館を選んだのです。温暖化により『神に愛された土地』とまで言われたブルゴーニュの畑でさえ、いままでの品質を保つ収穫がままならなくなり、もう判断を迫られている状態です。品種を変えるか、品種を開発するか、土地を移すかなど。ですから、もしかすると、いずれ、この函館近郊の畑が世界のワインを生み出していくかもしれません。お父様がこだわっていることが活かされる時がくるかもしれない」
もういままで語られてきたワインでは通用しなくなるかもしれないと、甲斐チーフが眉間にしわを寄せ、険しくなっていく。
「そんな意味でも、ソムリエも気候の変動と畑の情報を知ることも大事になってきます。心の隅に常に留めておいてください」
つまりは常に情報に敏感になって、常に勉強だと葉子にいいたいのだろう。肝に銘じて強く頷く。
「それでは、本日も準備をいたしましょう」
甲斐チーフと共に、本日のアペリティフメニューと、ワインリストの最終決定をして、また二人一緒に銘柄を探す。
立ち飲みのテーブルにそのボトルを置いて、さらに確認。その後は、どのワインをどのように冷やすか、どの温度でお出しするかという確認もしておく。
その時に、また『甲斐レクチャー』が始まった。
「桐生、あるいは、篠田から、ワインの適温というのを教わりましたか」
「はい。赤ワインは常温でとよく耳にすることがあるけれど、いまそこにいる場所の常温がよいとは限らず、季節や地方によって差がある。本来は14度~18度」
「そう。ただし、赤ワインも様々、風味によって使い分けると良いでしょう。軽い飲み口の赤ワインなら一時間ほど冷やすのも良いです。白ワインは二、三時間冷やしますが、繊細な風味のものは逆に一時間のみで、美味しく飲める銘柄もあります。ワインクーラーにて氷で冷やす場合と、冷蔵庫に寝かせて冷やすのとはまた時間が異なります。そこはそれぞれの方法の時間と、温度で覚えておくと良いでしょう。では、四時間以上、しっかり冷やしておきたいものはなんですか」
もう残っているものと言えばひとつだけ。
「シャンパンやスパークリングワインです」
「あとひとつ」
赤ワイン、白ワイン、シャンパンとスパークリングワイン。他に? 葉子は首を傾げたが、聞かれたのなら答えがあるのだろうと、一生懸命に考えた。
そこでハッと、在りし日の秀星との試飲を思い出す。
「デザートワインです」
「そのとおりです。誰に教わりましたか」
「桐生給仕長です」
「きちんと教えていたんだね。……そうか……」
葉子よりも先に、甲斐チーフのほうが哀しげに眼差しを翳らせた。
秀星が、葉子に託したものを感じ取っているようだった。
「そのデザートワインは、貴腐ブドウでしたか」
「はい。小樽産 2004年でした」
「数年ぶりに小樽で貴腐ブドウが採れた年だね」
「なのに。辛口だったんです。それが印象的でした。さらに桐生給仕長は、甘いだけではない風味を感じるようにと二度テイスティングの指示がありました」
「なるほど。その時に、桐生はデザートワインとして他になにか伝えていましたか」
「いいえ。まだ私が給仕を始めて2年目だったと思います。ワインに慣れることを始めたばかりだったかと」
「その銘柄はいまここにありますか」
「ありません。数本しかなく、桐生給仕長が勤めている間に、すべてお客様に提供いたしました」
何故かそこで、甲斐チーフが黙り込んだ。そして考え込んでいる。目線が優しいおじいちゃんから、元メートル・ドテルだった時にそうだったと思えるような、鋭い視線をカーブへと馳せている。
「その時……。十和田さんは、その貴腐ワインをどう感じましたか」
「最初の一口は、飲む前に教えてもらっていたように、とても甘いものでした。ですが辛口だと桐生に示されてから、もう一度意識して口に含むと、甘さのあとにくどさがなくスッキリとした切れ味と後味がありました。フロマージュでチーズをお召し上がりになるオーダーをされたお客様以外に向けて、これならデザートワインとしてではなく、ポワソンや貝類をつかったアミューズ、オードブルにも出せる。実際に桐生給仕長はそうして提供していました」
「何故、食前のアペリティフやデザート前にチーズを食するフロマージュ、それらに適したデザートワインになりうるはずなのに、料理にも合わせられる切れ味があったかわかりますか」
わからなかった。印象に残っていて、秀星と試飲した思い出深い一品というだけで、ソムリエになろうなんて露ほども思っていなかった葉子には、ただただ不勉強なものにしかならない。
だが知らないことに対しても、興味を持たなかったことに対しても、甲斐チーフはなんの言及もしなかった。
「では。世界三大貴腐ワインはなにかわかりますか」
「ひとつは、シャトー・ディケム……。申し訳ありません、これしかわかりません」
言及はしなかったが、甲斐チーフは小さくため息をひとつ、落とした。
「ですよね。シャトー・ディケムがいちばん有名だと思います。しかし、シャトー・ディケムがどのようにして『シャトー・ディケム』か答えられますか」
「いいえ……。銘柄として知っているだけです」
そこでも甲斐チーフは、しばし黙って、葉子を見ているだけだった。
それしかわからないのか、それとも、どれだけ知らないかを判断しているのかわからない目だった。それはやはり、仕事人の目つきで、葉子はこの沈黙の間、非常に緊張することに。
「仕方ありません。このレストランには国産のワイン、特に道内産のものを主としていること、元は個人経営でもあって、お料理の予算からも限られたものしか置かれておりませんからね。触れる機会も少ないことでしょう」
このような田舎のオヤジがやっているレストランだから、知らなくて仕方がないと言われているのかと思い、葉子の心が沈んでいく……。
だがそうではなかった。甲斐チーフが続ける。
「ですが。このワインカーブですら、十和田シェフの信念が窺えます。北海道の食材には、北の大地で育った葡萄で作られた『ワイン』を、同じ土、風、太陽、水、すべての調和を同じ土地のものでマリアージュをしたいという理想を掲げているからです。ひいては、ご自分が生まれた土地に誇りを持っているからなのでしょう。すでに評価を得ている世界のブランドも若干数取り入れていますが、本心は、この北海道という土地のものを知ってほしいという願い。それが伝わってきます。このワインカーブからも。そして、ワイナリーの作り手と手を取り合って、生産を素材を支えていく。そんな絆も見えます。その意思を、サービスを担当する桐生も篠田も引き継いでいる。私もそう感じていますし、ここにお勤めの間は私もその想いに応えたいと思っています。素晴らしい信念をお持ちのシェフです」
沈んだ気持ちが、ぱあっと一気に晴れやかになり、葉子は笑顔で、自分より背が高い甲斐チーフを見上げる。
「それは私も同じです。娘だからというのもありますが、十和田シェフのこだわりは、私も一緒にこだわっていきたいです」
「親孝行ですね」
険しい目をしていたのに、途端に、いつもの甲斐おじいちゃまの優しい笑みに崩れた。
現役時代は蒼が恐れるほど厳しいお人だっただろうに。いまは肩の力を抜いた働き方を心得ているようだった。でも時に見せる厳しい目つきが、まだまだ葉子には畏れ多いものだ。
「北海道のワインも徐々に歴史が積み重なってきました。また温暖化により、世界のワインのための葡萄畑は、北限がさらに北へと移動しはじめ、以前は寒冷地ということで栽培を避けられてきた北海道ですが、気温上昇により今後の北海道の葡萄畑の性質が注目されています。作り手も増えてきました。様々なワインを知ることがソムリエの勉強です。ですが、お父様のように頑固とも言える『プライド』を、ソムリエとして自分だけの『こだわり』を持ち、フレンチ十和田の持ち味を、葉子さんには作ってもらいたいと、年寄りは思っています」
もう葉子はドキドキしていた。頬は熱く高揚しているのが自分でもわかる!
そう、こうして教わってきたんだもの。
甲斐師匠と秀星がすごく重なる。一辺倒の知識だけを伝えるような教え方ではなく、『お父様が』と、このお店だからこその『指針』を忘れずに、そこを軸に教育してくれる『情』を感じずにはいられない。
そんな教え方。秀星さんと一緒だ。もうそれだけで……。
宿題を出された。『世界三大貴腐ワインについて調べてくること』。
甲斐チーフも葉子の『メートル』だ。メートルは『師匠』の意味もある。
秀星、蒼、甲斐チーフ。三人目の師匠。葉子の三人の師匠。
始業前には葉子とアルコール類の支度をして、ホールでは控えめにしつつ、部下でもあったメートル・ドテルの蒼を支え、若いシェフ・ド・ランの神楽君のことも、そっとさりげなくサポート。
神楽君と共に今後シェフ・ド・ランのふたりは『チーフ』と呼ばれることになった。
でも、甲斐チーフの愛称は、いつのまにか『お師匠さん』になりつつもある。
ホールスタッフからも、厨房の料理人たちからも、あっという間に信頼を得ていた。
葉子もだった。毎日、甲斐チーフから繰り出されるワインの話に徐々に夢中になっていく。
本日もワインカーブにて、あの立ち飲み用丸テーブルを挟んで、ワインを選んでいく。
今日も北海道産のワインのボトルを手に、甲斐チーフがラベルを眺めつつ、なにやら思い馳せているようだった。
「北海道のワイン用葡萄ですが、以前は耐寒性があるドイツ種が多かったですね。温暖化のせいでしょう、フランス種も増えてきました。そのうちにシチリア種も入ってくるかもしれませんね……。今後が楽しみな反面、これまで世界のワインを支えてきたフランスの畑が心配になります」
「そういえば、北海道も私が子供のころより、雪が少なくなったなと感じることがあります。それでもまだ多いですけれど……。夏の気温もあがったように思えます」
その温暖化による変化は、まだ雪が多い北国にいる葉子でも、最近はよく感じるようになったのは確かだった。函館で揚がる漁獲の種類にも変化が出ている。それはワインもおなじということらしい。
「近年、ついに伝統あるブルゴーニュのワイナリーが、畑を確保するために、函館に進出してきています。世界の適する候補地から、畑の移住地に函館を選んだのです。温暖化により『神に愛された土地』とまで言われたブルゴーニュの畑でさえ、いままでの品質を保つ収穫がままならなくなり、もう判断を迫られている状態です。品種を変えるか、品種を開発するか、土地を移すかなど。ですから、もしかすると、いずれ、この函館近郊の畑が世界のワインを生み出していくかもしれません。お父様がこだわっていることが活かされる時がくるかもしれない」
もういままで語られてきたワインでは通用しなくなるかもしれないと、甲斐チーフが眉間にしわを寄せ、険しくなっていく。
「そんな意味でも、ソムリエも気候の変動と畑の情報を知ることも大事になってきます。心の隅に常に留めておいてください」
つまりは常に情報に敏感になって、常に勉強だと葉子にいいたいのだろう。肝に銘じて強く頷く。
「それでは、本日も準備をいたしましょう」
甲斐チーフと共に、本日のアペリティフメニューと、ワインリストの最終決定をして、また二人一緒に銘柄を探す。
立ち飲みのテーブルにそのボトルを置いて、さらに確認。その後は、どのワインをどのように冷やすか、どの温度でお出しするかという確認もしておく。
その時に、また『甲斐レクチャー』が始まった。
「桐生、あるいは、篠田から、ワインの適温というのを教わりましたか」
「はい。赤ワインは常温でとよく耳にすることがあるけれど、いまそこにいる場所の常温がよいとは限らず、季節や地方によって差がある。本来は14度~18度」
「そう。ただし、赤ワインも様々、風味によって使い分けると良いでしょう。軽い飲み口の赤ワインなら一時間ほど冷やすのも良いです。白ワインは二、三時間冷やしますが、繊細な風味のものは逆に一時間のみで、美味しく飲める銘柄もあります。ワインクーラーにて氷で冷やす場合と、冷蔵庫に寝かせて冷やすのとはまた時間が異なります。そこはそれぞれの方法の時間と、温度で覚えておくと良いでしょう。では、四時間以上、しっかり冷やしておきたいものはなんですか」
もう残っているものと言えばひとつだけ。
「シャンパンやスパークリングワインです」
「あとひとつ」
赤ワイン、白ワイン、シャンパンとスパークリングワイン。他に? 葉子は首を傾げたが、聞かれたのなら答えがあるのだろうと、一生懸命に考えた。
そこでハッと、在りし日の秀星との試飲を思い出す。
「デザートワインです」
「そのとおりです。誰に教わりましたか」
「桐生給仕長です」
「きちんと教えていたんだね。……そうか……」
葉子よりも先に、甲斐チーフのほうが哀しげに眼差しを翳らせた。
秀星が、葉子に託したものを感じ取っているようだった。
「そのデザートワインは、貴腐ブドウでしたか」
「はい。小樽産 2004年でした」
「数年ぶりに小樽で貴腐ブドウが採れた年だね」
「なのに。辛口だったんです。それが印象的でした。さらに桐生給仕長は、甘いだけではない風味を感じるようにと二度テイスティングの指示がありました」
「なるほど。その時に、桐生はデザートワインとして他になにか伝えていましたか」
「いいえ。まだ私が給仕を始めて2年目だったと思います。ワインに慣れることを始めたばかりだったかと」
「その銘柄はいまここにありますか」
「ありません。数本しかなく、桐生給仕長が勤めている間に、すべてお客様に提供いたしました」
何故かそこで、甲斐チーフが黙り込んだ。そして考え込んでいる。目線が優しいおじいちゃんから、元メートル・ドテルだった時にそうだったと思えるような、鋭い視線をカーブへと馳せている。
「その時……。十和田さんは、その貴腐ワインをどう感じましたか」
「最初の一口は、飲む前に教えてもらっていたように、とても甘いものでした。ですが辛口だと桐生に示されてから、もう一度意識して口に含むと、甘さのあとにくどさがなくスッキリとした切れ味と後味がありました。フロマージュでチーズをお召し上がりになるオーダーをされたお客様以外に向けて、これならデザートワインとしてではなく、ポワソンや貝類をつかったアミューズ、オードブルにも出せる。実際に桐生給仕長はそうして提供していました」
「何故、食前のアペリティフやデザート前にチーズを食するフロマージュ、それらに適したデザートワインになりうるはずなのに、料理にも合わせられる切れ味があったかわかりますか」
わからなかった。印象に残っていて、秀星と試飲した思い出深い一品というだけで、ソムリエになろうなんて露ほども思っていなかった葉子には、ただただ不勉強なものにしかならない。
だが知らないことに対しても、興味を持たなかったことに対しても、甲斐チーフはなんの言及もしなかった。
「では。世界三大貴腐ワインはなにかわかりますか」
「ひとつは、シャトー・ディケム……。申し訳ありません、これしかわかりません」
言及はしなかったが、甲斐チーフは小さくため息をひとつ、落とした。
「ですよね。シャトー・ディケムがいちばん有名だと思います。しかし、シャトー・ディケムがどのようにして『シャトー・ディケム』か答えられますか」
「いいえ……。銘柄として知っているだけです」
そこでも甲斐チーフは、しばし黙って、葉子を見ているだけだった。
それしかわからないのか、それとも、どれだけ知らないかを判断しているのかわからない目だった。それはやはり、仕事人の目つきで、葉子はこの沈黙の間、非常に緊張することに。
「仕方ありません。このレストランには国産のワイン、特に道内産のものを主としていること、元は個人経営でもあって、お料理の予算からも限られたものしか置かれておりませんからね。触れる機会も少ないことでしょう」
このような田舎のオヤジがやっているレストランだから、知らなくて仕方がないと言われているのかと思い、葉子の心が沈んでいく……。
だがそうではなかった。甲斐チーフが続ける。
「ですが。このワインカーブですら、十和田シェフの信念が窺えます。北海道の食材には、北の大地で育った葡萄で作られた『ワイン』を、同じ土、風、太陽、水、すべての調和を同じ土地のものでマリアージュをしたいという理想を掲げているからです。ひいては、ご自分が生まれた土地に誇りを持っているからなのでしょう。すでに評価を得ている世界のブランドも若干数取り入れていますが、本心は、この北海道という土地のものを知ってほしいという願い。それが伝わってきます。このワインカーブからも。そして、ワイナリーの作り手と手を取り合って、生産を素材を支えていく。そんな絆も見えます。その意思を、サービスを担当する桐生も篠田も引き継いでいる。私もそう感じていますし、ここにお勤めの間は私もその想いに応えたいと思っています。素晴らしい信念をお持ちのシェフです」
沈んだ気持ちが、ぱあっと一気に晴れやかになり、葉子は笑顔で、自分より背が高い甲斐チーフを見上げる。
「それは私も同じです。娘だからというのもありますが、十和田シェフのこだわりは、私も一緒にこだわっていきたいです」
「親孝行ですね」
険しい目をしていたのに、途端に、いつもの甲斐おじいちゃまの優しい笑みに崩れた。
現役時代は蒼が恐れるほど厳しいお人だっただろうに。いまは肩の力を抜いた働き方を心得ているようだった。でも時に見せる厳しい目つきが、まだまだ葉子には畏れ多いものだ。
「北海道のワインも徐々に歴史が積み重なってきました。また温暖化により、世界のワインのための葡萄畑は、北限がさらに北へと移動しはじめ、以前は寒冷地ということで栽培を避けられてきた北海道ですが、気温上昇により今後の北海道の葡萄畑の性質が注目されています。作り手も増えてきました。様々なワインを知ることがソムリエの勉強です。ですが、お父様のように頑固とも言える『プライド』を、ソムリエとして自分だけの『こだわり』を持ち、フレンチ十和田の持ち味を、葉子さんには作ってもらいたいと、年寄りは思っています」
もう葉子はドキドキしていた。頬は熱く高揚しているのが自分でもわかる!
そう、こうして教わってきたんだもの。
甲斐師匠と秀星がすごく重なる。一辺倒の知識だけを伝えるような教え方ではなく、『お父様が』と、このお店だからこその『指針』を忘れずに、そこを軸に教育してくれる『情』を感じずにはいられない。
そんな教え方。秀星さんと一緒だ。もうそれだけで……。
宿題を出された。『世界三大貴腐ワインについて調べてくること』。
甲斐チーフも葉子の『メートル』だ。メートルは『師匠』の意味もある。
秀星、蒼、甲斐チーフ。三人目の師匠。葉子の三人の師匠。
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