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本編
第三話 清く正しく美しく、さり気無くお商売
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「あ、おはようございます、芽衣さん」
家に持ち帰っていたキャンバスと画材を手に家を出たところで、派出所前に立っている真田さんが声をかけてきた。真田さんとお話するようになって知ったんだけど、朝、小学校の子達が登校する時間は通学路にあたるここに立っていて子供達を見守るのが日々の日課なんだとか。私だって同じように家を出てきている筈なのに、真田さんが立っていることに全然気がつかなかった。まあそれはお互い様なんだろうけど。
「それ、学校まで持っていくんですか?」
大きなキャンバスを見た真田さんが心配そうに首を傾げる。
「はい。これを持って坂道を登らなくてすんでるからラッキーですよね」
山手にある光陵学園には芸術系の学部はなくて、私は駅を挟んで反対側にある芸大に通っている。親戚の中には将来のことを考えると芸大なんてどうなの?みたいなことを言う人もいたんだけど、うちの両親は人生何が役立つか分からないし、若いうちはやりたいことをすれば良いじゃない?って人達なので、今のところ私の好きにさせてくれている。小さい頃から私が、お婆ちゃんちの庭で花や野菜ばかり眺めて写生していたのを見ていたからなのかもしれないけど。
「これだけ大きいと自転車にも乗れないし市バスに乗るのも迷惑だし、必要なものとは言えちょっと考えものですよね、この大きさ。もう持ち帰らないようにしますよ、今回はちょっと後悔したので」
自分の部屋に行くための階段でさえ途中で壁につっかえるんだもの。この課題は二度と持ち帰ってこないで頑張って学校で制作を終えるつもり。
「今日は風も強いから煽られて転ばないように」
「はーい。じゃあ行ってきまーす」
「気をつけて」
しばらく歩いて振り返ると真田さんがまだこっちを見ていたので手を振ったら振り返してくれた。その場に通りかかった小学校の子達に何やらはやし立てられて慌てて手を下ろしているのが何だかおかしい。まだ赴任して一年足らずだと言うのにすっかり地域に溶け込んじゃっていて、子供達の中では駅前派出所のいつものお巡りさんという地位を確立している感じだ。
+++++
学校から帰ってきてお店の前にあるお花を片付けていた時に、真田さんが派出所から出てきてこちらにやってきた。なんだかちょっと深刻そうな顔をしている。どうしたんだろう、もしかして誰か病気か怪我でお見舞いの花を買いにくるつもりかな。
「芽衣さん。この前のカケツギのこととなんですが」
何だ、お花じゃなくてカケツギのことなのね。だけどそれにしてはちょっと困った顔をしている。もしかしてほつれてきちゃったとか? 自分では今までで一番うまく出来たと思っていたんだけどな、やっぱり素人ではダメだったかあ。
「すみません、もしかして引きつれやほつれがありました? やっぱりプロに頼んだ方が良かったでしょうか。あ、ちゃんとこちらでお代金を出すので業者さんに……」
「いやいや、そういうことじゃなくて」
真田さんは慌てて私の言葉を遮ってきた。
「実はあれから制服をクリーニングに出したんですよ。そうしたらそこの店員さんがカケツギに気がついて、凄く褒めていたんですよ。それで実際にプロに出したらどれぐらい代金がかかるのか教えてもらって……」
あまりの高さにビックリして私のところにやってきたらしい。
「なんだか逆に申し訳なくて、きちんとお礼をしておかないと駄目だと思ったんですが」
そう言いながら頭を掻いている。
「気にしないで下さい。だって真田さんは私の命の恩人ですから。あそこで助けてもらわなかったら私、今頃きっと病院にいたと思いますし」
実際あの自転車の惨状を思えば病院ですめば良いけれどって感じだったし本当に命の恩人だ。
「それは職務ですから。だけどお礼すると言っても金銭的なものは渡せないし何かを渡すのもダメだし……とにかくお礼をどうしたものかと」
迷っていますと呟いてますます困った顔をした。公務員っていうのもなかなか大変なお仕事だよね、ちょっとしたお礼もおちおちできないなんて。その点では一般市民の私達って自由で素晴らしい。あ、いいこと思いついた♪
「だったらお礼としてお花を買って下さい」
「え?」
「金品のやり取りが駄目だって言うなら、真田さんが“非番”の時にでもお花を買ってうちの売り上げに貢献してくれれば。別に高価なお花じゃなくても良いんです、ここにある小さな花束を買って派出所にでも飾ってくれれば嬉しいかな」
“非番”というところを強調する。
「そんなので良いんですか?」
お店の前に並べたバケツに差してあるお花は、仕入れた後に半端な感じで残った花を一束400円ぐらいの小さな花束にしたものでそこそこお値打ちなものばかり。お巡りさんのお給料がどれぐらいか分からないけどそれならお財布にも優しいし、派出所の机に飾っておいても邪魔にならないんじゃないかな。
「だったらここにあるの全部買います!」
ええ?! ここのを全部? そりゃ買ってくれるのは嬉しいけれどさすがに全部になったらお高いですし、そうなるとカケツギの方が安いんじゃないかな?と思ったり。それにここのお花をわざわざ来て買っていく人もいるから買い占められちゃうのもそれはそれで困るのよね。それにこれだけのお花を買って何処に飾るつもりなんだろう。もしかして本部の松柴署にでも持っていくつもりなのかな?
「そんなことしたら飾る場所が無いじゃないですか」
「でも金額的にはそのぐらい買わないと釣り合わないでしょう? カケツギの料金があんなに高いなんて知りませんでしたよ」
いやいや、絶対に足が出ると思う。
「だったらお花が枯れたらまた買ってくれたらいいですよ。せっかくのお花だからちゃんと飾って愛でてあげないといくらなんでも可哀想ですから」
「そうですか? だったら一年ぐらい買い続けなきゃいけないかな……」
「えっと、お買い上げ一年契約をありがとうございます?」
何気に疑問形になってしまった。良いのかな、そんなに買ってもらって。だってカケツギは助けてもらったことに対しての私のお礼の気持ちなんだし、それに対して更にお礼って何だか変じゃない? そりゃそれで真田さんの気持ちがおさまるなら私は何も言わないけどさ。
「あ、ところで派出所に花瓶はあるんですか?」
お花は良いとして肝心の花瓶はあるんだろうかと気になって尋ねてみる。だいたい派出所でお花なんて飾ってあるところを見たことないし下手したらコップに一輪なんてことになったりして、とちょっと心配になった。
「うーん……もしかしたら探せば派出所の備品であるかもしれない」
その言い方は限りなく見つからないって感じだね、真田さん。
「ならそれが見つかるまでうちのを貸しますよ」
「いや、それはさすがに」
「大丈夫です、売り物じゃなくて私が作ったガラス細工だし、ちゃんとしたのが見つかるまでの繋ぎで貸すだけですから」
「何でも作っているんですね、芽衣さん」
私が作ったと聞いて真田さんは感心したように笑った。
もともと私の専攻は絵画で陶芸とか彫刻とかに関しては専攻外。だけど仲良くなった友達がガラス工芸を勉強していて去年の冬休みに誘われて体験工房に行ってきたんだよね。とにかく見た目は優雅で繊細なガラス細工も、製作現場は何て言うか体力と肺活量が必要な色々な意味で熱い場所だった。私は一回作ってこりゃ無理だって思った口なんだけど、友達はますますのめり込んでいて今でも週末になるとその工房に足しげく通っている。作った作品を見ているとなかなか素敵で、将来は名の知れたガラス工芸の職人になるんじゃないかなって密かに思っている次第。
「だけど初めて作ったものだからガラス細工って言っても何だか物凄くたくましい花瓶なんですけど……」
「たくましいガラス細工……ちょっと想像がつかないな、それ」
だよね。私もよく膨らませることが出来たなって自分で感心しちゃうぐらい肉厚でたくましいんだよ、あれ。ただ友達は気泡が入っていて海の中にいるみたいで凄く綺麗だとは言ってくれているので、初心者の第一号作品としてはなかなかなんだと思う。……たくましい以外は。
「次の真田さんの非番の時までに用意しておきますよ」
「明日が非番なんですよ、明日、花を買いに来ます!」
そんなに意気込まなくてもお花は逃げませんよ真田さん……。
「そんなに慌てなくても大丈夫ですからね。うちは花屋でお花はたくさんありますし」
「分かってます。芽衣さんは明日は?」
「えっと……普通に講義があるから普通に学校です。この時間には店番する為に戻ってますけど」
「じゃあ今頃の時間に来ます!」
「あ、はい。もし私が不在になることがあっても母か祖母がいますし、ちゃんと花瓶のことは言づけておきますから」
「分かりました。では明日また伺います」
何だか物凄く気合が入った口調でそう宣言(?)すると真田さんは派出所へとノシノシと戻っていった。その背中を見送りながらちょっと戸惑いを隠せない私。
「芽衣ちゃん、誰かお客様が来てたの?」
夕飯の準備をしていたお母さんが台所から顔を出す。
「うん、真田さんがね、明日お花を買いにくるって」
「そうなの? お見舞いか何か?」
「お礼なんだって」
話を聞いていなかったお母さんは真田さんが恩師か誰かに贈る花束を買いに来ると勘違いしたようで、それじゃあちゃんと選んであげないとねと言った。
「芽衣ちゃん、明日はちゃんと選んであげなさいね、真田さんが恥ずかしい思いをしないように」
「私が?」
「だって芽衣ちゃんがお話を聞いたんだから芽衣ちゃんが応対しないとダメでしょ?」
そういうお商売的な話になると意外とお母さんは厳しいのだ。
「うん、この時間に来るって言ってたから頑張って帰ってくるよ」
「任せたから」
「はいはい」
なんだか妙な話になってきた?
家に持ち帰っていたキャンバスと画材を手に家を出たところで、派出所前に立っている真田さんが声をかけてきた。真田さんとお話するようになって知ったんだけど、朝、小学校の子達が登校する時間は通学路にあたるここに立っていて子供達を見守るのが日々の日課なんだとか。私だって同じように家を出てきている筈なのに、真田さんが立っていることに全然気がつかなかった。まあそれはお互い様なんだろうけど。
「それ、学校まで持っていくんですか?」
大きなキャンバスを見た真田さんが心配そうに首を傾げる。
「はい。これを持って坂道を登らなくてすんでるからラッキーですよね」
山手にある光陵学園には芸術系の学部はなくて、私は駅を挟んで反対側にある芸大に通っている。親戚の中には将来のことを考えると芸大なんてどうなの?みたいなことを言う人もいたんだけど、うちの両親は人生何が役立つか分からないし、若いうちはやりたいことをすれば良いじゃない?って人達なので、今のところ私の好きにさせてくれている。小さい頃から私が、お婆ちゃんちの庭で花や野菜ばかり眺めて写生していたのを見ていたからなのかもしれないけど。
「これだけ大きいと自転車にも乗れないし市バスに乗るのも迷惑だし、必要なものとは言えちょっと考えものですよね、この大きさ。もう持ち帰らないようにしますよ、今回はちょっと後悔したので」
自分の部屋に行くための階段でさえ途中で壁につっかえるんだもの。この課題は二度と持ち帰ってこないで頑張って学校で制作を終えるつもり。
「今日は風も強いから煽られて転ばないように」
「はーい。じゃあ行ってきまーす」
「気をつけて」
しばらく歩いて振り返ると真田さんがまだこっちを見ていたので手を振ったら振り返してくれた。その場に通りかかった小学校の子達に何やらはやし立てられて慌てて手を下ろしているのが何だかおかしい。まだ赴任して一年足らずだと言うのにすっかり地域に溶け込んじゃっていて、子供達の中では駅前派出所のいつものお巡りさんという地位を確立している感じだ。
+++++
学校から帰ってきてお店の前にあるお花を片付けていた時に、真田さんが派出所から出てきてこちらにやってきた。なんだかちょっと深刻そうな顔をしている。どうしたんだろう、もしかして誰か病気か怪我でお見舞いの花を買いにくるつもりかな。
「芽衣さん。この前のカケツギのこととなんですが」
何だ、お花じゃなくてカケツギのことなのね。だけどそれにしてはちょっと困った顔をしている。もしかしてほつれてきちゃったとか? 自分では今までで一番うまく出来たと思っていたんだけどな、やっぱり素人ではダメだったかあ。
「すみません、もしかして引きつれやほつれがありました? やっぱりプロに頼んだ方が良かったでしょうか。あ、ちゃんとこちらでお代金を出すので業者さんに……」
「いやいや、そういうことじゃなくて」
真田さんは慌てて私の言葉を遮ってきた。
「実はあれから制服をクリーニングに出したんですよ。そうしたらそこの店員さんがカケツギに気がついて、凄く褒めていたんですよ。それで実際にプロに出したらどれぐらい代金がかかるのか教えてもらって……」
あまりの高さにビックリして私のところにやってきたらしい。
「なんだか逆に申し訳なくて、きちんとお礼をしておかないと駄目だと思ったんですが」
そう言いながら頭を掻いている。
「気にしないで下さい。だって真田さんは私の命の恩人ですから。あそこで助けてもらわなかったら私、今頃きっと病院にいたと思いますし」
実際あの自転車の惨状を思えば病院ですめば良いけれどって感じだったし本当に命の恩人だ。
「それは職務ですから。だけどお礼すると言っても金銭的なものは渡せないし何かを渡すのもダメだし……とにかくお礼をどうしたものかと」
迷っていますと呟いてますます困った顔をした。公務員っていうのもなかなか大変なお仕事だよね、ちょっとしたお礼もおちおちできないなんて。その点では一般市民の私達って自由で素晴らしい。あ、いいこと思いついた♪
「だったらお礼としてお花を買って下さい」
「え?」
「金品のやり取りが駄目だって言うなら、真田さんが“非番”の時にでもお花を買ってうちの売り上げに貢献してくれれば。別に高価なお花じゃなくても良いんです、ここにある小さな花束を買って派出所にでも飾ってくれれば嬉しいかな」
“非番”というところを強調する。
「そんなので良いんですか?」
お店の前に並べたバケツに差してあるお花は、仕入れた後に半端な感じで残った花を一束400円ぐらいの小さな花束にしたものでそこそこお値打ちなものばかり。お巡りさんのお給料がどれぐらいか分からないけどそれならお財布にも優しいし、派出所の机に飾っておいても邪魔にならないんじゃないかな。
「だったらここにあるの全部買います!」
ええ?! ここのを全部? そりゃ買ってくれるのは嬉しいけれどさすがに全部になったらお高いですし、そうなるとカケツギの方が安いんじゃないかな?と思ったり。それにここのお花をわざわざ来て買っていく人もいるから買い占められちゃうのもそれはそれで困るのよね。それにこれだけのお花を買って何処に飾るつもりなんだろう。もしかして本部の松柴署にでも持っていくつもりなのかな?
「そんなことしたら飾る場所が無いじゃないですか」
「でも金額的にはそのぐらい買わないと釣り合わないでしょう? カケツギの料金があんなに高いなんて知りませんでしたよ」
いやいや、絶対に足が出ると思う。
「だったらお花が枯れたらまた買ってくれたらいいですよ。せっかくのお花だからちゃんと飾って愛でてあげないといくらなんでも可哀想ですから」
「そうですか? だったら一年ぐらい買い続けなきゃいけないかな……」
「えっと、お買い上げ一年契約をありがとうございます?」
何気に疑問形になってしまった。良いのかな、そんなに買ってもらって。だってカケツギは助けてもらったことに対しての私のお礼の気持ちなんだし、それに対して更にお礼って何だか変じゃない? そりゃそれで真田さんの気持ちがおさまるなら私は何も言わないけどさ。
「あ、ところで派出所に花瓶はあるんですか?」
お花は良いとして肝心の花瓶はあるんだろうかと気になって尋ねてみる。だいたい派出所でお花なんて飾ってあるところを見たことないし下手したらコップに一輪なんてことになったりして、とちょっと心配になった。
「うーん……もしかしたら探せば派出所の備品であるかもしれない」
その言い方は限りなく見つからないって感じだね、真田さん。
「ならそれが見つかるまでうちのを貸しますよ」
「いや、それはさすがに」
「大丈夫です、売り物じゃなくて私が作ったガラス細工だし、ちゃんとしたのが見つかるまでの繋ぎで貸すだけですから」
「何でも作っているんですね、芽衣さん」
私が作ったと聞いて真田さんは感心したように笑った。
もともと私の専攻は絵画で陶芸とか彫刻とかに関しては専攻外。だけど仲良くなった友達がガラス工芸を勉強していて去年の冬休みに誘われて体験工房に行ってきたんだよね。とにかく見た目は優雅で繊細なガラス細工も、製作現場は何て言うか体力と肺活量が必要な色々な意味で熱い場所だった。私は一回作ってこりゃ無理だって思った口なんだけど、友達はますますのめり込んでいて今でも週末になるとその工房に足しげく通っている。作った作品を見ているとなかなか素敵で、将来は名の知れたガラス工芸の職人になるんじゃないかなって密かに思っている次第。
「だけど初めて作ったものだからガラス細工って言っても何だか物凄くたくましい花瓶なんですけど……」
「たくましいガラス細工……ちょっと想像がつかないな、それ」
だよね。私もよく膨らませることが出来たなって自分で感心しちゃうぐらい肉厚でたくましいんだよ、あれ。ただ友達は気泡が入っていて海の中にいるみたいで凄く綺麗だとは言ってくれているので、初心者の第一号作品としてはなかなかなんだと思う。……たくましい以外は。
「次の真田さんの非番の時までに用意しておきますよ」
「明日が非番なんですよ、明日、花を買いに来ます!」
そんなに意気込まなくてもお花は逃げませんよ真田さん……。
「そんなに慌てなくても大丈夫ですからね。うちは花屋でお花はたくさんありますし」
「分かってます。芽衣さんは明日は?」
「えっと……普通に講義があるから普通に学校です。この時間には店番する為に戻ってますけど」
「じゃあ今頃の時間に来ます!」
「あ、はい。もし私が不在になることがあっても母か祖母がいますし、ちゃんと花瓶のことは言づけておきますから」
「分かりました。では明日また伺います」
何だか物凄く気合が入った口調でそう宣言(?)すると真田さんは派出所へとノシノシと戻っていった。その背中を見送りながらちょっと戸惑いを隠せない私。
「芽衣ちゃん、誰かお客様が来てたの?」
夕飯の準備をしていたお母さんが台所から顔を出す。
「うん、真田さんがね、明日お花を買いにくるって」
「そうなの? お見舞いか何か?」
「お礼なんだって」
話を聞いていなかったお母さんは真田さんが恩師か誰かに贈る花束を買いに来ると勘違いしたようで、それじゃあちゃんと選んであげないとねと言った。
「芽衣ちゃん、明日はちゃんと選んであげなさいね、真田さんが恥ずかしい思いをしないように」
「私が?」
「だって芽衣ちゃんがお話を聞いたんだから芽衣ちゃんが応対しないとダメでしょ?」
そういうお商売的な話になると意外とお母さんは厳しいのだ。
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