3 / 5
七海の商店街観察日誌 2
しおりを挟む
今回のゲストは、たかはし葵さんの作品【Blue Mallowへようこそ~希望が丘駅前商店街】の璃青さん、そして『青いヤツと特別国家公務員』の安住君?です。
++++++++++
うちの松平市は人口そこそこの都に即する小さな市。最初は都心のベッドタウン構想で生まれた住宅地を中心した街だったらしいんだけど最近は本当に流入が多いらしい。そのおかげで市民課のパパちゃんは毎日が地獄のように忙しい。そして私達が住んでいる商店街にも新しいお店がオープンした。
雑貨屋さんのブルーマロウ。ちゃんと正しい発音が出来ないからカタカナで。マンションの裏道を抜けて直ぐのところなので開店した次の日に寄ってみた。色んな雑貨が並んでいて可愛いんだけど、その中で目を引いたのが【石】。こっちはメインじゃなくて店主の璃青さんの趣味で集めたものらしい。
「これでアクセサリーとか作ってもらえるんですか?」
学校の帰りに立ち寄った時、ちょうど誰もいなかったので尋ねてみた。
「少しお時間は頂きますけどお作りしますよ。誰かにプレゼント?」
「最近、残業続きのお父さんの誕生日が近いんでネクタイピンをって思ってるんですけど、石をね、健康運にしたらよいのか魔除けにしたら良いのか迷っちゃって……」
健康と魔除けと聞いてお姉さんは凄く困った顔をした。確かに二つともって難しいよね。残業続きのパパちゃんには健康に気をつけて欲しいし、うちの街って結構不思議体験した人が多いから、そっちの方の対策もちゃんとしてほしいなって思うわけ。
「二つって無理ですか? あ、バイトとお年玉をためているので少しぐらい高くなっても大丈夫です」
手作りだからきっと高いかなって思って少し予算は大目に考えてるんだけどどうかな。
「そうですねえ。たぶん3千円ぐらいからで作れると思いますよ? ただ、健康と魔除けの両方となると石が二つになってしまってバランスが悪いかなって」
「うーんと、魔除けは次の誕生日ってことにして健康重視でっ」
「んー……そうですね、だったらガーネットとかどうでしょう。そんなに色も派手派手しくないし、タイピンのワンポイントとして使えると思いますよ。あと、できたらお父さんの顔を拝見したいです。どんな感じのデザインが似合うかとかあるので」
「ちょっと待ってくださいね、多分、携帯に一枚ぐらい入ってる筈なんだ」
そっか。人によって似合う似合わない洋服とかあるもんね。前に家族旅行した時のが入ってた筈なんだよね。えっと……あった。
「お父さん、こんな感じなんですけど」
そう言って璃青さんに写真を見せた。皆で写しているから小さいけど大丈夫かな。
「優しそうなお父さんですね」
「いつもお母さんのお尻に敷かれて喜んでるちょっと変なお父さんなんです」
「そうなんですか?」
「ラブラブなのは良いことなんだけど、お母さんはいわゆるツンデレ嫁みたいな感じでそんなお母さんのお尻の下でニヨニヨしてるんです」
もちろん仕事はちゃんと出来るお父さんなんですよ?と付け加えることも忘れない。
「よく女の人が元気な家は栄えるって言いますから。良いことなんだと思いますよ?」
「鏡野家が栄えてもあまり大したことなさそうですけどね~」
うちは何処にでもいるような普通の公務員家庭だし、栄えてもせいぜいチャーサンが食べている餌がグレードアップするぐらいなんじゃないかな?
「ちょっと石を探してきますね。家の在庫に手ごろなガーネットが残っていたと思うので」
「お願いします!」
璃青さんはお店の中のものでも見ながら待ってて下さいねと言い残して奥へと引っ込んでしまった。お店の中はいろんな雑貨があって見ていて飽きないし、カウンターの横にはイヤリングやピアスなどが飾られている。これも璃青さんの手作りなのかな。こういう細かい作業って私には無理だな、どっちかと言うと弟の智之の方が向いてそう。
しばらくして璃青さんが小さな箱を持って戻ってきた。
「実はこれ、他のアクセサリーを作っていて残った石なんですけど、どちらかと言うと渋い感じの赤だからネクタイピンにしてもそんなに変じゃないと思うんですよ、どうでしょう? 余り物で申し訳ないんですけど」
「綺麗な石ですねー、これでお願いしても良いですか?」
「分かりました。じゃあデザイン、ちょっと一緒に考えてみましょうか」
「え? 一緒に?」
「私が幾つか候補を出すのでそこから選んでもらうような感じで。そうすればぐっと手作り感が増すでしょう?」
「なるほどー」
ちょうどお客さんが来ていないこともあって、私と璃青さんはあれこれ話し合いながらパパちゃんにプレゼントするネクタイピンのデザインを決めた。璃青さんが描いてくれたデザインのラフはそれだけでも素敵なもので、出来上がるのがすごく楽しみ。
「お父さんの誕生日はいつ?」
「えっと来週の日曜日。それまでに間に合いそう?」
「うん、大丈夫。金曜日には完成させておくから取りに来てくれる? お支払いはその時で」
デザインをあれこれと話し合っているうちにすっかり打ち解けちゃって、いつの間にか二人とも口調も砕けたものになっていた。
「じゃあよろしくお願いします!」
「はい。頑張って作るから楽しみにしててね」
璃青さんにお礼を言って店を出ると、そこを悲鳴と奇声をあげながら智之達とそれを追いかけるキーボ君二号が横切っていった。まったく……本当に飽きないんだから。確か二号君の中の人って昌胤寺の二番目のお兄さんだったはず。前に自衛隊の特集していてそこで映っていたのを見たんだけど、あんな風に着ぐるみの中に入って奇声をあげながら走り回る人には見えなかったんだけどなあ……。ほんと、人は見かけによらないよね。
++++++++++
うちの松平市は人口そこそこの都に即する小さな市。最初は都心のベッドタウン構想で生まれた住宅地を中心した街だったらしいんだけど最近は本当に流入が多いらしい。そのおかげで市民課のパパちゃんは毎日が地獄のように忙しい。そして私達が住んでいる商店街にも新しいお店がオープンした。
雑貨屋さんのブルーマロウ。ちゃんと正しい発音が出来ないからカタカナで。マンションの裏道を抜けて直ぐのところなので開店した次の日に寄ってみた。色んな雑貨が並んでいて可愛いんだけど、その中で目を引いたのが【石】。こっちはメインじゃなくて店主の璃青さんの趣味で集めたものらしい。
「これでアクセサリーとか作ってもらえるんですか?」
学校の帰りに立ち寄った時、ちょうど誰もいなかったので尋ねてみた。
「少しお時間は頂きますけどお作りしますよ。誰かにプレゼント?」
「最近、残業続きのお父さんの誕生日が近いんでネクタイピンをって思ってるんですけど、石をね、健康運にしたらよいのか魔除けにしたら良いのか迷っちゃって……」
健康と魔除けと聞いてお姉さんは凄く困った顔をした。確かに二つともって難しいよね。残業続きのパパちゃんには健康に気をつけて欲しいし、うちの街って結構不思議体験した人が多いから、そっちの方の対策もちゃんとしてほしいなって思うわけ。
「二つって無理ですか? あ、バイトとお年玉をためているので少しぐらい高くなっても大丈夫です」
手作りだからきっと高いかなって思って少し予算は大目に考えてるんだけどどうかな。
「そうですねえ。たぶん3千円ぐらいからで作れると思いますよ? ただ、健康と魔除けの両方となると石が二つになってしまってバランスが悪いかなって」
「うーんと、魔除けは次の誕生日ってことにして健康重視でっ」
「んー……そうですね、だったらガーネットとかどうでしょう。そんなに色も派手派手しくないし、タイピンのワンポイントとして使えると思いますよ。あと、できたらお父さんの顔を拝見したいです。どんな感じのデザインが似合うかとかあるので」
「ちょっと待ってくださいね、多分、携帯に一枚ぐらい入ってる筈なんだ」
そっか。人によって似合う似合わない洋服とかあるもんね。前に家族旅行した時のが入ってた筈なんだよね。えっと……あった。
「お父さん、こんな感じなんですけど」
そう言って璃青さんに写真を見せた。皆で写しているから小さいけど大丈夫かな。
「優しそうなお父さんですね」
「いつもお母さんのお尻に敷かれて喜んでるちょっと変なお父さんなんです」
「そうなんですか?」
「ラブラブなのは良いことなんだけど、お母さんはいわゆるツンデレ嫁みたいな感じでそんなお母さんのお尻の下でニヨニヨしてるんです」
もちろん仕事はちゃんと出来るお父さんなんですよ?と付け加えることも忘れない。
「よく女の人が元気な家は栄えるって言いますから。良いことなんだと思いますよ?」
「鏡野家が栄えてもあまり大したことなさそうですけどね~」
うちは何処にでもいるような普通の公務員家庭だし、栄えてもせいぜいチャーサンが食べている餌がグレードアップするぐらいなんじゃないかな?
「ちょっと石を探してきますね。家の在庫に手ごろなガーネットが残っていたと思うので」
「お願いします!」
璃青さんはお店の中のものでも見ながら待ってて下さいねと言い残して奥へと引っ込んでしまった。お店の中はいろんな雑貨があって見ていて飽きないし、カウンターの横にはイヤリングやピアスなどが飾られている。これも璃青さんの手作りなのかな。こういう細かい作業って私には無理だな、どっちかと言うと弟の智之の方が向いてそう。
しばらくして璃青さんが小さな箱を持って戻ってきた。
「実はこれ、他のアクセサリーを作っていて残った石なんですけど、どちらかと言うと渋い感じの赤だからネクタイピンにしてもそんなに変じゃないと思うんですよ、どうでしょう? 余り物で申し訳ないんですけど」
「綺麗な石ですねー、これでお願いしても良いですか?」
「分かりました。じゃあデザイン、ちょっと一緒に考えてみましょうか」
「え? 一緒に?」
「私が幾つか候補を出すのでそこから選んでもらうような感じで。そうすればぐっと手作り感が増すでしょう?」
「なるほどー」
ちょうどお客さんが来ていないこともあって、私と璃青さんはあれこれ話し合いながらパパちゃんにプレゼントするネクタイピンのデザインを決めた。璃青さんが描いてくれたデザインのラフはそれだけでも素敵なもので、出来上がるのがすごく楽しみ。
「お父さんの誕生日はいつ?」
「えっと来週の日曜日。それまでに間に合いそう?」
「うん、大丈夫。金曜日には完成させておくから取りに来てくれる? お支払いはその時で」
デザインをあれこれと話し合っているうちにすっかり打ち解けちゃって、いつの間にか二人とも口調も砕けたものになっていた。
「じゃあよろしくお願いします!」
「はい。頑張って作るから楽しみにしててね」
璃青さんにお礼を言って店を出ると、そこを悲鳴と奇声をあげながら智之達とそれを追いかけるキーボ君二号が横切っていった。まったく……本当に飽きないんだから。確か二号君の中の人って昌胤寺の二番目のお兄さんだったはず。前に自衛隊の特集していてそこで映っていたのを見たんだけど、あんな風に着ぐるみの中に入って奇声をあげながら走り回る人には見えなかったんだけどなあ……。ほんと、人は見かけによらないよね。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
119
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる