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本編 2
第二十五話 那覇 お土産騒動
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「ほんま、沖縄ってあったかくてええわー……」
支援機のハークが到着するのを、滑走路わきで待ちながら空を見上げた。那覇基地は、一年のほとんどを夏の制服ですごせる場所だ。到着してキャノピーを開けた時から、松島とはまったく違う体感温度だった。風が強くなり、気温がどんどん下がってきている松島基地とは大違いだな。
「この時期でも、普段は晴れていたら汗ばむぐらいですけどね。今日は雲が多いせいで、ちょうどいい気温ですよ」
ブルーに来るまでこの基地の飛行隊にいた葛城が、空を見上げながら言った。
「明日と明後日の天候はどうなんや?」
「それを俺に聞くんですか? この基地にも影坊主が送り込まれているんですよ? 晴れに決まってるじゃないですか」
「……班長ときたらまったく、用意周到なこっちゃ」
「班長が送る前に、こっちから要請があったようですよ。天気か怪しいから、影坊主を送ってくれって」
「さよかー……なんとまあ、やな」
影坊主は快晴祈願アイテムとして、すっかり定着してしまったようだ。そうこうしているうちに、キーパー達や機材を載せたハークが見えてきた。滑走路に着陸すると、ゆっくりとタキシングをしながらこっちへと向かってくる。
「そう言えば今回、班長は支援機に乗ってるんですよね。いつもなら班長は俺達と一緒なのに、珍しいこともあるものだと思ってるんですが」
「ん? ああ、今回はおにぎりが大量やろ? いつもの場所にしまわれへんから、途中で俺が食べる分以外は、班長が持って支援機に乗るってことになったんや」
俺の返事に、葛城は微妙な顔をする。
「保冷用のボックスもありますよね? おにぎりだけハークに乗せるという選択肢は……」
「ないねん」
「ないんですか」
葛城が俺の答えに笑った。
「あんな、わろてるけど大事なおにぎりやで。他人任せになんてできへんやろ?」
「まあ、三佐的にはそうなんでしょうけどね」
「隊長かておにぎり持参組はひとまとめって言うてるやん? 俺は五番機を飛ばしてこなあかんから、おにぎりを班長に任せたっちゅうわけや」
「なるほど」
なるほどと言いながら、葛城は理解できないという顔をしている。
「それと、今回は三佐の奥さんのおにぎりじゃなくて、班長の奥さんのおにぎりなんですよね。そこは大丈夫なんですか?」
「大丈夫やで。ちゃんと話し合って決めたことやからな」
「なんとも複雑なおにぎり観なんですね、三佐のおにぎり観は」
そうだろうか。自分で言うのもなんだが、俺のおにぎり観は実にシンプルだと思うんだがな。
「そうか?」
「ええ、かなり複雑だと思います。まあ……それだけ、三佐と班長の絆が強いってことなんでしょうけど」
「絆て……なんやムズムズするで」
「じゃあ、おにぎり仲間の団結心ってやつで」
「そっちのほうがええわ」
ハークが指定された場所で停止すると、待機していた隊員達が向かい、積み込まれた荷物を運び出す作業にとりかかった。キーパー達が降りてくる中に青井の姿もある。那覇基地の隊員になにか指示を出してから、俺達のほうへと足早に歩いてきた。
「影山、これ。お前の分のおにぎり」
差し出されたのは、いつもの保冷用のランチボックスだ。
「おおきに、班長。奥さんにもお礼を言わなな」
「影山の奥さんから何度もお礼を言われてるから、気にするなよ。うちちの嫁も楽しんで作ったみたいだし」
青井の嫁さんは、うちの嫁ちゃんと連絡を取り合いおにぎりの具を決めたらしい。「なんでもええで」とは言っておいたんだが、できるだけ気持ち良く飛んでほしいからと、青井の嫁さんが気を遣ってくれたんだとか。ほんま、ありがたいことやで。さすが総括班長の嫁さんや。
「でも形は保証しないぞ。今回はいつも以上に張り切って、試行錯誤していたのは知ってるけど」
そう言って青井が笑う。
「見てへんのかいな」
「いつも食べるまでは秘密なんだ。だから今回のおにぎりも、例外じゃないんだよ」
「ほー……それは楽しみや」
ランチボックスにおさまっているということは、前に見たピトー管型おにぎりはないということだ。あの愉快なおにぎりを知っているこっちとしては、ちょっと残念な気持ちがしないでもない。
「なんや今日の訓練が楽しみになってきたわ」
「ああ、それで思い出した。今日の訓練前のおにぎりはこれ。さっさと食べて予行開始だぞ」
そう言って渡されたのは、アルミホイルで包まれたおにぎりだ。受け取ってから〝ん?〟となる。
「なあ、これもしかして嫁ちゃんのおにぎりか?」
「よくわかったな、中身が見えてないのに。出発前に届けてくれたんだよ、そのおにぎり」
「嫁ちゃん、無茶しよってから……」
基地に来る途中で、こけでもしたらどないするんや……。
「ああ、基地にそれを届けてくれたのはお義母さんだったから、その点は心配しなくても大丈夫」
俺のぼやきに気がついたのか、青井がそう付け加えた。
「そっか。それならええんやけどな。それでもお義母さん、朝もはよから……ほんまにおおきにやで、嫁ちゃんとお義母さん。ほんま、わいは果報もんや」
松島基地の方向を向くと、両手を合わせてから頭を下げる。ほんま、ありがたいことやで。
「それと葛城。管制隊のほうから、追加のおみやげリストをあずかったんだけど」
「ありがとうございます、班長。リスト化が遅れているので、支援機に乗せるって聞いていたんです」
葛城が青井からリストを受け取る。
「なあ、これ、かなりの量だけどこれで全部なのか?」
青井が不安げに言った。
「いえ。他の部署の分は前日に受け取ったので、先にファクスで送っておきました」
「……ちょっと多すぎる気がするんだけどな。かなりの重量にもなりそうだし」
リストをのぞくと、有名なお菓子の他にタンカンやドラゴンフルーツ、さらには泡盛のシークワーサージュースと、管制隊だけでもかなりの重量になりそうだ。
「少なくともこの三倍はありますね、全体のおみやげリストの総数は」
「それと、わいらが家族向けに買うおみやげもあるしな」
それを聞いた青井が目をむく。
「そんなに?! いくらハークでもそこまで積めないだろ!」
「でももう基地の知り合いに頼んじゃいましたよ。明後日の昼すぎには、基地に届いてハークに搬入予定です」
「こんなに乗せたら、人が乗る余裕がなくなるじゃないか!」
「問題なく乗るゆーてたで」
俺が口をはさむと青井がにらんできた。
「誰が!」
「ハークのロードマスターが。なあ?」
「はい。泡盛のこともあるので、先持って言っておいたんです。そうしたら問題ないと言われました」
青井はイヤイヤと首を横にふる。
「それは、このリスト分がまだ含まれてないからだろ? しかもお前達は、まだおみやげは買ってないんだよな? ってことはまだ増えるってことじゃないか。しかも少なくともライダー全員分が!」
「せやな」
「まあそうですね」
俺と葛城の返事に、青井は頭をかかえこんだ。そしてなにやら難しい顔をして考え始める。
「……決めた。いいか、お前達ライダーのおみやげは一万円以内だから。それと荷物はT-4の荷物入れに乗る範囲で」
「は?! なんでやねん、タンカンたくさん買うて帰るって、約束したんやで」
あそこに入る量なんてたかが知れている。とんでもないぞと抗議するが、青井は首を縦にふろうとはしなかった。
「誰がなんと言おうとそれ以上はダメだ。人が乗れなくなる。別便で帰るとなったら、また俺の仕事が増えるだろ、沖田も司令に報告しなくちゃいけなくなるし。だから一万円以内、あのスペースに入るだけ、これが絶対条件だから」
「そんなんせっしょうや……小学生の遠足やないんやで」
「そんなこと言うなら、遠足並みの300円以内にするぞ」
「嫁ちゃんがタンカン食べるの楽しみにしてるのに」
青井は一瞬折れかけたが、なんとかもちこたえよった。チッ、情にうったえてみたがあかんかったか。
「だったら自腹で送れ。とにかく支援機とブルーに乗せるんだったら、それ以内で用意するように。これは班長命令だから」
「えー……」
「そんなんあかんわー、めっちゃがっかりやん、うわー、ショックやわー、もうショックすぎて飛びたないわー……」
「飛びたくないのはいつものことだろ!」
こういうことになると青井は容赦ない。
「いいか、一万円以内だから! それ以上のものは、ここに持ち込んでも積まずに置いていくからな。ああ、沖田にも言っておかないとな。あいつ、意外とお前達には甘いから……」
ブツブツとつぶやきながら、青井は隊長がいるであろう建物のほうへと立ち去った。
「なんや今日の班長、えらい強権発動してへんかったか?」
「いやまあ……たしかに、ちょっと多すぎかなとは思ってましたし……」
「せやなあ、今回のリストは液体モンが多かったからなあ……」
遠ざかっていく青井の背中を見送りながら、二人で話し合う。
「せやけど、せっしょうやで。俺らのおみやげが一番少のうなるんちゃう? 完全なとばっちりやんか」
「自腹で送るしかないですね」
「後ろに目一杯、タンカンを乗せて帰ろう思ってたのになあ……」
その点だけが無念だ。
「はー、無念やで、無念すぎて、ほんま、飛びたないわー」
「奥さんのおにぎりが届けられたんですから、それを食べて機嫌をなおしてくださいよ」
「そのセリフ、班長に言ったほうがええんちゃう? そしたらタンカン、たくさん積んでもええようになるかも」
「さあ、どうでしょうね、その点では班長はきっちりしてますから」
そしてその日の夕方、ライダーのおみやげは、総括班長のいう条件で用意しろとのお達しが隊長から伝えられた。
ほんま、せっしょうやで……。
支援機のハークが到着するのを、滑走路わきで待ちながら空を見上げた。那覇基地は、一年のほとんどを夏の制服ですごせる場所だ。到着してキャノピーを開けた時から、松島とはまったく違う体感温度だった。風が強くなり、気温がどんどん下がってきている松島基地とは大違いだな。
「この時期でも、普段は晴れていたら汗ばむぐらいですけどね。今日は雲が多いせいで、ちょうどいい気温ですよ」
ブルーに来るまでこの基地の飛行隊にいた葛城が、空を見上げながら言った。
「明日と明後日の天候はどうなんや?」
「それを俺に聞くんですか? この基地にも影坊主が送り込まれているんですよ? 晴れに決まってるじゃないですか」
「……班長ときたらまったく、用意周到なこっちゃ」
「班長が送る前に、こっちから要請があったようですよ。天気か怪しいから、影坊主を送ってくれって」
「さよかー……なんとまあ、やな」
影坊主は快晴祈願アイテムとして、すっかり定着してしまったようだ。そうこうしているうちに、キーパー達や機材を載せたハークが見えてきた。滑走路に着陸すると、ゆっくりとタキシングをしながらこっちへと向かってくる。
「そう言えば今回、班長は支援機に乗ってるんですよね。いつもなら班長は俺達と一緒なのに、珍しいこともあるものだと思ってるんですが」
「ん? ああ、今回はおにぎりが大量やろ? いつもの場所にしまわれへんから、途中で俺が食べる分以外は、班長が持って支援機に乗るってことになったんや」
俺の返事に、葛城は微妙な顔をする。
「保冷用のボックスもありますよね? おにぎりだけハークに乗せるという選択肢は……」
「ないねん」
「ないんですか」
葛城が俺の答えに笑った。
「あんな、わろてるけど大事なおにぎりやで。他人任せになんてできへんやろ?」
「まあ、三佐的にはそうなんでしょうけどね」
「隊長かておにぎり持参組はひとまとめって言うてるやん? 俺は五番機を飛ばしてこなあかんから、おにぎりを班長に任せたっちゅうわけや」
「なるほど」
なるほどと言いながら、葛城は理解できないという顔をしている。
「それと、今回は三佐の奥さんのおにぎりじゃなくて、班長の奥さんのおにぎりなんですよね。そこは大丈夫なんですか?」
「大丈夫やで。ちゃんと話し合って決めたことやからな」
「なんとも複雑なおにぎり観なんですね、三佐のおにぎり観は」
そうだろうか。自分で言うのもなんだが、俺のおにぎり観は実にシンプルだと思うんだがな。
「そうか?」
「ええ、かなり複雑だと思います。まあ……それだけ、三佐と班長の絆が強いってことなんでしょうけど」
「絆て……なんやムズムズするで」
「じゃあ、おにぎり仲間の団結心ってやつで」
「そっちのほうがええわ」
ハークが指定された場所で停止すると、待機していた隊員達が向かい、積み込まれた荷物を運び出す作業にとりかかった。キーパー達が降りてくる中に青井の姿もある。那覇基地の隊員になにか指示を出してから、俺達のほうへと足早に歩いてきた。
「影山、これ。お前の分のおにぎり」
差し出されたのは、いつもの保冷用のランチボックスだ。
「おおきに、班長。奥さんにもお礼を言わなな」
「影山の奥さんから何度もお礼を言われてるから、気にするなよ。うちちの嫁も楽しんで作ったみたいだし」
青井の嫁さんは、うちの嫁ちゃんと連絡を取り合いおにぎりの具を決めたらしい。「なんでもええで」とは言っておいたんだが、できるだけ気持ち良く飛んでほしいからと、青井の嫁さんが気を遣ってくれたんだとか。ほんま、ありがたいことやで。さすが総括班長の嫁さんや。
「でも形は保証しないぞ。今回はいつも以上に張り切って、試行錯誤していたのは知ってるけど」
そう言って青井が笑う。
「見てへんのかいな」
「いつも食べるまでは秘密なんだ。だから今回のおにぎりも、例外じゃないんだよ」
「ほー……それは楽しみや」
ランチボックスにおさまっているということは、前に見たピトー管型おにぎりはないということだ。あの愉快なおにぎりを知っているこっちとしては、ちょっと残念な気持ちがしないでもない。
「なんや今日の訓練が楽しみになってきたわ」
「ああ、それで思い出した。今日の訓練前のおにぎりはこれ。さっさと食べて予行開始だぞ」
そう言って渡されたのは、アルミホイルで包まれたおにぎりだ。受け取ってから〝ん?〟となる。
「なあ、これもしかして嫁ちゃんのおにぎりか?」
「よくわかったな、中身が見えてないのに。出発前に届けてくれたんだよ、そのおにぎり」
「嫁ちゃん、無茶しよってから……」
基地に来る途中で、こけでもしたらどないするんや……。
「ああ、基地にそれを届けてくれたのはお義母さんだったから、その点は心配しなくても大丈夫」
俺のぼやきに気がついたのか、青井がそう付け加えた。
「そっか。それならええんやけどな。それでもお義母さん、朝もはよから……ほんまにおおきにやで、嫁ちゃんとお義母さん。ほんま、わいは果報もんや」
松島基地の方向を向くと、両手を合わせてから頭を下げる。ほんま、ありがたいことやで。
「それと葛城。管制隊のほうから、追加のおみやげリストをあずかったんだけど」
「ありがとうございます、班長。リスト化が遅れているので、支援機に乗せるって聞いていたんです」
葛城が青井からリストを受け取る。
「なあ、これ、かなりの量だけどこれで全部なのか?」
青井が不安げに言った。
「いえ。他の部署の分は前日に受け取ったので、先にファクスで送っておきました」
「……ちょっと多すぎる気がするんだけどな。かなりの重量にもなりそうだし」
リストをのぞくと、有名なお菓子の他にタンカンやドラゴンフルーツ、さらには泡盛のシークワーサージュースと、管制隊だけでもかなりの重量になりそうだ。
「少なくともこの三倍はありますね、全体のおみやげリストの総数は」
「それと、わいらが家族向けに買うおみやげもあるしな」
それを聞いた青井が目をむく。
「そんなに?! いくらハークでもそこまで積めないだろ!」
「でももう基地の知り合いに頼んじゃいましたよ。明後日の昼すぎには、基地に届いてハークに搬入予定です」
「こんなに乗せたら、人が乗る余裕がなくなるじゃないか!」
「問題なく乗るゆーてたで」
俺が口をはさむと青井がにらんできた。
「誰が!」
「ハークのロードマスターが。なあ?」
「はい。泡盛のこともあるので、先持って言っておいたんです。そうしたら問題ないと言われました」
青井はイヤイヤと首を横にふる。
「それは、このリスト分がまだ含まれてないからだろ? しかもお前達は、まだおみやげは買ってないんだよな? ってことはまだ増えるってことじゃないか。しかも少なくともライダー全員分が!」
「せやな」
「まあそうですね」
俺と葛城の返事に、青井は頭をかかえこんだ。そしてなにやら難しい顔をして考え始める。
「……決めた。いいか、お前達ライダーのおみやげは一万円以内だから。それと荷物はT-4の荷物入れに乗る範囲で」
「は?! なんでやねん、タンカンたくさん買うて帰るって、約束したんやで」
あそこに入る量なんてたかが知れている。とんでもないぞと抗議するが、青井は首を縦にふろうとはしなかった。
「誰がなんと言おうとそれ以上はダメだ。人が乗れなくなる。別便で帰るとなったら、また俺の仕事が増えるだろ、沖田も司令に報告しなくちゃいけなくなるし。だから一万円以内、あのスペースに入るだけ、これが絶対条件だから」
「そんなんせっしょうや……小学生の遠足やないんやで」
「そんなこと言うなら、遠足並みの300円以内にするぞ」
「嫁ちゃんがタンカン食べるの楽しみにしてるのに」
青井は一瞬折れかけたが、なんとかもちこたえよった。チッ、情にうったえてみたがあかんかったか。
「だったら自腹で送れ。とにかく支援機とブルーに乗せるんだったら、それ以内で用意するように。これは班長命令だから」
「えー……」
「そんなんあかんわー、めっちゃがっかりやん、うわー、ショックやわー、もうショックすぎて飛びたないわー……」
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こういうことになると青井は容赦ない。
「いいか、一万円以内だから! それ以上のものは、ここに持ち込んでも積まずに置いていくからな。ああ、沖田にも言っておかないとな。あいつ、意外とお前達には甘いから……」
ブツブツとつぶやきながら、青井は隊長がいるであろう建物のほうへと立ち去った。
「なんや今日の班長、えらい強権発動してへんかったか?」
「いやまあ……たしかに、ちょっと多すぎかなとは思ってましたし……」
「せやなあ、今回のリストは液体モンが多かったからなあ……」
遠ざかっていく青井の背中を見送りながら、二人で話し合う。
「せやけど、せっしょうやで。俺らのおみやげが一番少のうなるんちゃう? 完全なとばっちりやんか」
「自腹で送るしかないですね」
「後ろに目一杯、タンカンを乗せて帰ろう思ってたのになあ……」
その点だけが無念だ。
「はー、無念やで、無念すぎて、ほんま、飛びたないわー」
「奥さんのおにぎりが届けられたんですから、それを食べて機嫌をなおしてくださいよ」
「そのセリフ、班長に言ったほうがええんちゃう? そしたらタンカン、たくさん積んでもええようになるかも」
「さあ、どうでしょうね、その点では班長はきっちりしてますから」
そしてその日の夕方、ライダーのおみやげは、総括班長のいう条件で用意しろとのお達しが隊長から伝えられた。
ほんま、せっしょうやで……。
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