死神先生の異世界課外授業

天之川 夜空

文字の大きさ
6 / 6
序章:死神先生と死学の時間

さあ、授業を始めようか 5

しおりを挟む
死学が学校教育に取り入れられ、まともに授業として扱えるまで施行から数年ほどかかった。

死生観学習授業は言うなれば、個人の意見に過ぎない。

それを誰かに教え、それが正しいか否かを判断しなければならない。

ディスカッション。
死について考え、どう向き合うか、それが死学の目的でもある。


「死神先生、その青年は今は何をしてるんですか?」

1人の女子生徒が薫に聞いた。
国会前の大規模な抗議デモとは言え、テレビではあまり扱われなかった。

情報としては国会前で政策に反対する国民による抗議デモが行われて、1人の青年により事態は収束した、その程度に過ぎなかった。


「ん、まあ、俺自身あの時は忙しかったしなぁ。抗議デモにも参加はしなかったし。案外、意外なことをしてるかもしれねえな」


クッククとニヒルに笑う薫は自分が当事者であることを明かしたりしない。
まあ、大々的に名前を名乗りはしたが、あの話の直後、あの青年の名を覚えている者は誰1人として居なかった。


死を語る者、死学の時間を行う者、それを聴く者。
そこには目に見えないナニカの力が働いているのかもしれない。

死に愛された青年、神代 薫。
大々的に名乗った彼の名は見えないナニカによって人々の記憶から消されたのかもしれない。

死神先生。
それがこの世における彼の名だ。


「そーいやーその抗議デモってたった6年前なんだよなぁ。それにしちゃ、あんま話題にならなかったよな?」

とある男子生徒が隣の生徒に話しかける。

「抗議デモ自体、政策緩和を促すパフォーマンスだったって噂だったよな。反対政治家によるさ」

「じゃあ、その青年って若手政治家?まあ、死神先生の死学はおもしれえし、先生以外には教わりたくねえかも、俺」

だよなぁーと話す生徒たちを注意したりしない。
それが薫のやり方。

死に向き合って、死を恐れない、死を受け入れる。
それが、死学のあり方。

そう、ほんの数分前までは思っていた。
薫が死を察知するほんの数分前まで。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

姉から全て奪う妹

明日井 真
ファンタジー
「お姉様!!酷いのよ!!マリーが私の物を奪っていくの!!」 可愛い顔をした悪魔みたいな妹が私に泣きすがってくる。 だから私はこう言うのよ。 「あら、それって貴女が私にしたのと同じじゃない?」 *カテゴリー不明のためファンタジーにお邪魔いたします。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...