44 / 69
Bルート:金髪の少年の伝説
第44話 次代へと受け継がれしもの
しおりを挟む
かつてミストリアスは様々な異世界から、幅広く旅人を受け入れていた。
〝剣も魔法も自由自在! この世界では何にでもなれる〟
それが異世界体験プログラム〝ミストリアンクエスト〟のキャッチコピーだった。
多くの旅人らは自身の知識を生かし、画期的な技術や新たな魔法を生み出した。言語・料理・学問や思想。旅人らが自由を謳歌するなかで、ミストリアスの住民らにも良い影響や文化の革新を齎したのだ。
ミストリアスは旅人と手を取り合うことで、大いなる発展を続けていた。
『もちろん、時には〝招かれざる客〟も訪れます。時には〝自由〟の意味を履き違え、ミストリアスを己が欲望のままに荒らす者も居られました』
僕が持っていた〝薄い本〟に目を通しながら、アレフは悲しげな顔をみせる。
誰もが他人様の世界に対し、敬意を払うわけではない。一部の旅人のなかにはミストリアスの許容量を越える超常的な魔法や、自然法則を乱すほどの奇跡論的な技能を操り、この世界を思うがままに蹂躙する者も少なからず居たという。
しかしそんな旅人とて、規定された日数を経過すれば〝霧〟となって消え去ってしまう。たとえ悪意ある旅人が紛れ込んだとしても、数十日の間だけ我慢すれば良い。――いや、ミストリアスの住民には、そうする以外の選択肢は無い。
旅人を受け入れ、旅人と共に進化を続けること。それが偉大なる古き神々からミストリアスに課せられた、〝植民世界〟としての役割なのだ。
『しかし、悪い転機が訪れました。いくら年月を経過しても消滅することのない旅人、すなわち〝転世者〟たちが現れたのです』
ちょうど〝薄い本〟の、主な舞台となっていた時代。
奇しくも僕の現実世界では、〝異世界転生ブーム〟が起きていた。
世界情勢が分断と淘汰を繰り返すなか、生きづらい現実に嫌気がさし、または退屈しのぎに刺激を求めて、あるいは特に意味もなく命を絶ち――異世界へと旅立つ者が続出したのだ。
もちろん、品行方正に努める者も居たが、大多数は欲望の赴くままに、数多の異世界を喰いものにした。
なかでも無条件で旅人を受け入れていたミストリアスは、特に大きな被害を被ることになった。侵略者と化した転世者らによって絶望の世界へと変貌させられてしまうまでに、そう多くの時間は掛からなかった。
『多くの血が流れ、多くの国が消え、転世者たちによる独裁国家が乱立しました。そして、それらは互いに戦争を始め、さらに多くの血と涙が流されたのです』
このような地獄は千年以上に渡って続き、もはや混乱が収まらぬと判断した〝偉大なる古き神々〟は、ついにミストリアスの〝終了〟を決定した――。
しかし、そこで〝待った〟を掛けたのが、後の〝新たなる神〟と成る人物だった。かつて自身が転世者であり、世界を見守る存在となっていたかれは、神々に終了の猶予を直訴したのだ。
かれは〝自身がミストリアスの混乱を鎮め、神々からの命令を遵守し、正しく世界を管理し――必ずや神々からの期待に応えること〟を約束した。その契約は成り、今からおよそ千年前、かれは新たなる神・ミストリアとして顕現したのだ。
『ミストリアさまは新たな神の器を大教主とし、ミルセリア大神殿と神殿騎士たちを創造しました』
ミストリアは、かつて自身が使っていた武具の複製を創り、それらを神殿騎士らに持たせ、徹底的に転世者らを駆逐することにした。
ところが〝虹の鎧レストメイル〟だけは複製に失敗し、〝虹色の精霊石〟となって世界各地へ散ってしまったのだという。
『それでも無敵の神殿騎士団と聖なる武具の活躍により、転世者らは瞬く間に討伐されてゆきました。異世界の法によって器を保護された者たちも、罪を犯せば永遠に〝闇の迷宮監獄〟へと収容されることとなったのです』
*
それからのミストリアスは安定を取り戻し――アルティリア、ネーデルタール、リーゼルタといった、現在まで続く国家も多く誕生することとなった。
『その後、これらの国家には〝はじまりの遺跡〟が設置され、聖職者どもが配置されました。旅人さまを正しくお導きするために』
はじまりの遺跡は、いわば転世者らの出現座標を固定化するための装置。ここでアレフらが旅人に試練を与え、従わぬ者には相応の罰を下すのだという。
思えばアレフは神殿騎士と同じ〝神の眼〟を持っている。それならばかれらに匹敵するほどの、戦闘力を有していても不思議ではない。
『アレフさんの前で罪を犯さなくてよかったです』
『ふふ、ご安心を。我ら〝特殊上級聖職者〟は他の如何なるものよりも、ミストリアさまの御心に従いますので』
しかしミストリアスの治安と運営が安定化する一方で、旅人や転世者らの来訪は減少の一途を辿ることとなった。
これは僕の現実世界における、世界統一政府の対策による影響も大きいだろう。これまで最も多くの転世者を生み出してきたのは、他ならぬあの世界なのだから。
『転世者が居なくなったから、財団――いえ、神々はミストリアスの終了を?』
『理由の一つではあるのでしょう。しかし神々とミストリアさまとの間で、どのような契約が交わされたのかは定かではありません』
『なにか、こう……。終了を回避する、抜け道みたいなものは無いんでしょうか?』
僕の言葉に、アレフは静かに頭を振った。
方法は無い。もしくは知っていたとしても話すことができないのだろう。
――神の眼を欺くんだ。
迷宮監獄の男は、そう言っていた。
それならば神の眼を持つアレフもまた、その弱点を知っているのではないか?
『アレフさんにも、見えないものはあるんですか?』
『たくさんあると思いますよ。しかし見えるものが多すぎて、具体的に何が見えていないのかまでは。――さきほどの〝汚れた本〟を見た瞬間などは、記された文章以上の情報が流れ込んでまいりましたから』
アレフの雄弁さの裏には、神の眼による情報が関係していたのか。
見えるものが多すぎる。これが切り札となるのだろうか。
『そうですね……。たとえば〝音〟などは、さすがに見ることは適いませんね。あとは個人の思考や、記憶といったものも不可能です』
『えっ。それじゃあ、会話を見られることはないのでは?』
『はい。――しかし私には、極めて標準的な〝耳〟もございます。それは神々とて同じでしょう』
考えてみれば当然か。しかし、それならば――。
いったい〝なにを〟欺けというのだろう。
これが僕が資料と歴史書と取扱説明書を読み耽り、アレフとの会話によって整理できた情報だ。やはりミストリアスを真に救うためには、未だ〝鍵〟が足りていない。
しかし、今は先ず、今回の世界を魔王の手から救わなければ。
*
僕は〝はじまりの遺跡〟から帰還し、エレナの家へと辿り着いた。
出発したのは朝だというのに、すでに陽は傾きかけていた。
「ただいま。遅くなってごめん」
僕はリビングのソファに座り、縫い物をしていたエレナに声を掛ける。
明日、僕は旅に出る。
それを彼女に伝えなくてはいけない。
「おかえりっ! どうだった? なにか良い情報はあった?」
「あっ。やっぱりそのために、僕を遺跡に向かわせたのか」
「うん……。だってこのままだとアインスが――ううん、わたしが別れるのが辛くなっちゃうから……」
そう小声で言いながら、エレナは僕から顔を伏せる。
彼女の手元の縫い針が、小刻みな振動を続けている。
彼女はとっくに気づいていたのだ。僕が農園での生活に慣れるにつれ、幸せを感じはじめてしまっていることに。
「ごめん、気を遣わせてしまったね。……実は明日、旅に出ようと思う」
僕が口にした瞬間、エレナがビクリと躰を震わせる。しかし彼女は顔を上げるや、僕に明るい笑顔を見せた。
「ほんとにっ? よかったぁ! 実はアインスのために、これを直してて……」
エレナは嬉しそうに言い、手にしていた〝服〟を僕に見せる。
それは一見して上等な品質だと判別できる、青色の戦闘服だった。
「これ、お父さんの形見でねっ。アインスと体型が似てたみたいだから、ちょっと直せば使えるかなって。ほらっ、わたしには〝槍〟があるし、使ってほしいなって!」
いま僕が着ている服は初日にワーウルフに切り裂かれため、エレナに縫い直してもらったものだ。穴が穿いた肩口には軟革のパッドが取り付けられ、使い心地も悪くなかったのだが――。
僕が返答しかねていると、奥の部屋からゼニスさんが、杖をつきながら現れた。
「ほっほっ! ついに旅立ちか! ほれ、弟子の門出に際し、わしの〝お古〟も譲ろうぞ。――見よ、名付けて〝天頂刀・銭形丸〟じゃ!」
ゼニスさんは得意げに言い、無骨な片刃剣を掲げてみせる。彼の痩せた左腕には重すぎる剣を、僕は慌てて受け取った。
「あっ……、ありがとうございます。ゼニスさん」
「はいっ、アインス! わたしのもっ! 頑張って魔紋様の刺繍だって付けたんだから。わたしの代わりにアインスを護ってくれますようにって」
僕はエレナから青い戦闘服を受け取り、さらに赤いマントも渡される。両手を餞別でいっぱいにして立ち尽くしていると、エレナが僕の背中を軽く叩いてきた。
「今夜は御馳走にするからっ! お夕飯、期待しておいてねっ」
「うん、ありがとう。……本当にありがとう、エレナ。ゼニスさん……」
「アインスさんよ、まだ一日残っておるぞ? ほれ、勇者になる前に、農夫としての有終の美を飾ってくるがよい!」
二人に深々と頭を下げ、僕はポーチにプレゼントを仕舞う。
これは明日の旅立ちの前に、しっかりと身に着けるとしよう。
そして、僕は最後の野良仕事に向かうべく、滲む夕陽の元へと飛び出した。
〝剣も魔法も自由自在! この世界では何にでもなれる〟
それが異世界体験プログラム〝ミストリアンクエスト〟のキャッチコピーだった。
多くの旅人らは自身の知識を生かし、画期的な技術や新たな魔法を生み出した。言語・料理・学問や思想。旅人らが自由を謳歌するなかで、ミストリアスの住民らにも良い影響や文化の革新を齎したのだ。
ミストリアスは旅人と手を取り合うことで、大いなる発展を続けていた。
『もちろん、時には〝招かれざる客〟も訪れます。時には〝自由〟の意味を履き違え、ミストリアスを己が欲望のままに荒らす者も居られました』
僕が持っていた〝薄い本〟に目を通しながら、アレフは悲しげな顔をみせる。
誰もが他人様の世界に対し、敬意を払うわけではない。一部の旅人のなかにはミストリアスの許容量を越える超常的な魔法や、自然法則を乱すほどの奇跡論的な技能を操り、この世界を思うがままに蹂躙する者も少なからず居たという。
しかしそんな旅人とて、規定された日数を経過すれば〝霧〟となって消え去ってしまう。たとえ悪意ある旅人が紛れ込んだとしても、数十日の間だけ我慢すれば良い。――いや、ミストリアスの住民には、そうする以外の選択肢は無い。
旅人を受け入れ、旅人と共に進化を続けること。それが偉大なる古き神々からミストリアスに課せられた、〝植民世界〟としての役割なのだ。
『しかし、悪い転機が訪れました。いくら年月を経過しても消滅することのない旅人、すなわち〝転世者〟たちが現れたのです』
ちょうど〝薄い本〟の、主な舞台となっていた時代。
奇しくも僕の現実世界では、〝異世界転生ブーム〟が起きていた。
世界情勢が分断と淘汰を繰り返すなか、生きづらい現実に嫌気がさし、または退屈しのぎに刺激を求めて、あるいは特に意味もなく命を絶ち――異世界へと旅立つ者が続出したのだ。
もちろん、品行方正に努める者も居たが、大多数は欲望の赴くままに、数多の異世界を喰いものにした。
なかでも無条件で旅人を受け入れていたミストリアスは、特に大きな被害を被ることになった。侵略者と化した転世者らによって絶望の世界へと変貌させられてしまうまでに、そう多くの時間は掛からなかった。
『多くの血が流れ、多くの国が消え、転世者たちによる独裁国家が乱立しました。そして、それらは互いに戦争を始め、さらに多くの血と涙が流されたのです』
このような地獄は千年以上に渡って続き、もはや混乱が収まらぬと判断した〝偉大なる古き神々〟は、ついにミストリアスの〝終了〟を決定した――。
しかし、そこで〝待った〟を掛けたのが、後の〝新たなる神〟と成る人物だった。かつて自身が転世者であり、世界を見守る存在となっていたかれは、神々に終了の猶予を直訴したのだ。
かれは〝自身がミストリアスの混乱を鎮め、神々からの命令を遵守し、正しく世界を管理し――必ずや神々からの期待に応えること〟を約束した。その契約は成り、今からおよそ千年前、かれは新たなる神・ミストリアとして顕現したのだ。
『ミストリアさまは新たな神の器を大教主とし、ミルセリア大神殿と神殿騎士たちを創造しました』
ミストリアは、かつて自身が使っていた武具の複製を創り、それらを神殿騎士らに持たせ、徹底的に転世者らを駆逐することにした。
ところが〝虹の鎧レストメイル〟だけは複製に失敗し、〝虹色の精霊石〟となって世界各地へ散ってしまったのだという。
『それでも無敵の神殿騎士団と聖なる武具の活躍により、転世者らは瞬く間に討伐されてゆきました。異世界の法によって器を保護された者たちも、罪を犯せば永遠に〝闇の迷宮監獄〟へと収容されることとなったのです』
*
それからのミストリアスは安定を取り戻し――アルティリア、ネーデルタール、リーゼルタといった、現在まで続く国家も多く誕生することとなった。
『その後、これらの国家には〝はじまりの遺跡〟が設置され、聖職者どもが配置されました。旅人さまを正しくお導きするために』
はじまりの遺跡は、いわば転世者らの出現座標を固定化するための装置。ここでアレフらが旅人に試練を与え、従わぬ者には相応の罰を下すのだという。
思えばアレフは神殿騎士と同じ〝神の眼〟を持っている。それならばかれらに匹敵するほどの、戦闘力を有していても不思議ではない。
『アレフさんの前で罪を犯さなくてよかったです』
『ふふ、ご安心を。我ら〝特殊上級聖職者〟は他の如何なるものよりも、ミストリアさまの御心に従いますので』
しかしミストリアスの治安と運営が安定化する一方で、旅人や転世者らの来訪は減少の一途を辿ることとなった。
これは僕の現実世界における、世界統一政府の対策による影響も大きいだろう。これまで最も多くの転世者を生み出してきたのは、他ならぬあの世界なのだから。
『転世者が居なくなったから、財団――いえ、神々はミストリアスの終了を?』
『理由の一つではあるのでしょう。しかし神々とミストリアさまとの間で、どのような契約が交わされたのかは定かではありません』
『なにか、こう……。終了を回避する、抜け道みたいなものは無いんでしょうか?』
僕の言葉に、アレフは静かに頭を振った。
方法は無い。もしくは知っていたとしても話すことができないのだろう。
――神の眼を欺くんだ。
迷宮監獄の男は、そう言っていた。
それならば神の眼を持つアレフもまた、その弱点を知っているのではないか?
『アレフさんにも、見えないものはあるんですか?』
『たくさんあると思いますよ。しかし見えるものが多すぎて、具体的に何が見えていないのかまでは。――さきほどの〝汚れた本〟を見た瞬間などは、記された文章以上の情報が流れ込んでまいりましたから』
アレフの雄弁さの裏には、神の眼による情報が関係していたのか。
見えるものが多すぎる。これが切り札となるのだろうか。
『そうですね……。たとえば〝音〟などは、さすがに見ることは適いませんね。あとは個人の思考や、記憶といったものも不可能です』
『えっ。それじゃあ、会話を見られることはないのでは?』
『はい。――しかし私には、極めて標準的な〝耳〟もございます。それは神々とて同じでしょう』
考えてみれば当然か。しかし、それならば――。
いったい〝なにを〟欺けというのだろう。
これが僕が資料と歴史書と取扱説明書を読み耽り、アレフとの会話によって整理できた情報だ。やはりミストリアスを真に救うためには、未だ〝鍵〟が足りていない。
しかし、今は先ず、今回の世界を魔王の手から救わなければ。
*
僕は〝はじまりの遺跡〟から帰還し、エレナの家へと辿り着いた。
出発したのは朝だというのに、すでに陽は傾きかけていた。
「ただいま。遅くなってごめん」
僕はリビングのソファに座り、縫い物をしていたエレナに声を掛ける。
明日、僕は旅に出る。
それを彼女に伝えなくてはいけない。
「おかえりっ! どうだった? なにか良い情報はあった?」
「あっ。やっぱりそのために、僕を遺跡に向かわせたのか」
「うん……。だってこのままだとアインスが――ううん、わたしが別れるのが辛くなっちゃうから……」
そう小声で言いながら、エレナは僕から顔を伏せる。
彼女の手元の縫い針が、小刻みな振動を続けている。
彼女はとっくに気づいていたのだ。僕が農園での生活に慣れるにつれ、幸せを感じはじめてしまっていることに。
「ごめん、気を遣わせてしまったね。……実は明日、旅に出ようと思う」
僕が口にした瞬間、エレナがビクリと躰を震わせる。しかし彼女は顔を上げるや、僕に明るい笑顔を見せた。
「ほんとにっ? よかったぁ! 実はアインスのために、これを直してて……」
エレナは嬉しそうに言い、手にしていた〝服〟を僕に見せる。
それは一見して上等な品質だと判別できる、青色の戦闘服だった。
「これ、お父さんの形見でねっ。アインスと体型が似てたみたいだから、ちょっと直せば使えるかなって。ほらっ、わたしには〝槍〟があるし、使ってほしいなって!」
いま僕が着ている服は初日にワーウルフに切り裂かれため、エレナに縫い直してもらったものだ。穴が穿いた肩口には軟革のパッドが取り付けられ、使い心地も悪くなかったのだが――。
僕が返答しかねていると、奥の部屋からゼニスさんが、杖をつきながら現れた。
「ほっほっ! ついに旅立ちか! ほれ、弟子の門出に際し、わしの〝お古〟も譲ろうぞ。――見よ、名付けて〝天頂刀・銭形丸〟じゃ!」
ゼニスさんは得意げに言い、無骨な片刃剣を掲げてみせる。彼の痩せた左腕には重すぎる剣を、僕は慌てて受け取った。
「あっ……、ありがとうございます。ゼニスさん」
「はいっ、アインス! わたしのもっ! 頑張って魔紋様の刺繍だって付けたんだから。わたしの代わりにアインスを護ってくれますようにって」
僕はエレナから青い戦闘服を受け取り、さらに赤いマントも渡される。両手を餞別でいっぱいにして立ち尽くしていると、エレナが僕の背中を軽く叩いてきた。
「今夜は御馳走にするからっ! お夕飯、期待しておいてねっ」
「うん、ありがとう。……本当にありがとう、エレナ。ゼニスさん……」
「アインスさんよ、まだ一日残っておるぞ? ほれ、勇者になる前に、農夫としての有終の美を飾ってくるがよい!」
二人に深々と頭を下げ、僕はポーチにプレゼントを仕舞う。
これは明日の旅立ちの前に、しっかりと身に着けるとしよう。
そして、僕は最後の野良仕事に向かうべく、滲む夕陽の元へと飛び出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる