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第1章 ファスティアの冒険者
第14話 エンカウンター
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魔物の群れを斬り伏せながら、ほどなくして目的の地点へと辿り着いたエルス。
「さっきは確かに、なんか違和感があったんだけどなぁ」
薄闇の大広間の中、エルスは目の前の祭壇を見上げる。
朽ち果てた台座には何かが祀られていた形跡こそあるが、それはとっくに失われ、もう正体を知る術はない。
それに、ゆっくりと観察する時間など与えないかの如く。
エルスの背後に現れた魔物が、手にした武器を振り下ろした!
「――おおッと! こいつは、オークかッ!?」
なんとか不意打ちを躱し、エルスは素早く剣を構える!
目の前では、だらしなく膨らんだ腹と〝豚〟の頭が特徴的な人型の魔物――オークが棍棒を握り、エルスを見下ろしていた!
この辺りの魔物では強い部類で、その巨体から繰り出される怪力は、駆け出しの冒険者にとって脅威だ。さきほどまでエルスが立っていた石の床は粉々に砕け散り、下地が表れている。
強敵との遭遇に、エルスは元来た方角へ目を遣るが――残念ながら、ここからでは仲間たちの姿は見えない。
「ブオォォ――ッ!」
オークはエルスの視線が動いた隙を見逃すことなく、再び棍棒を振り下ろす!
当然ながら、魔物がこちらの応援など待ってくれるはずもない。
「独りになった途端、こいつに出くわすなんてなッ!――もうやるしかねェ!」
繰り出される重い一撃をステップで避け、エルスはオークの腹を斜めに斬り上げる!――が、弾力のある皮膚によって威力は軽減され、浅い傷がついたのみだ。
エルスは続けて剣を振り下ろすも――オークの手にした棍棒によって、斬撃は軽く受け止められてしまった。
木製の棍棒は粗雑な造りながら、武器としての強度も威力も、充分に兼ね備えているようだ。
オークの腹からは薄らと黒い霧が漏れていたが、大したダメージが無いことを示すかのように、すぐにピタリと止まってしまった。
「チッ……! いつも通りアリサが居りゃ余裕なんだが……」
普段はアリサと二人で魔物狩りをしているエルス。
暗闇の中に相棒の姿を探すも、目に入るのは魔物の群ればかり。
さらに、それらの数体はエルスに気づき、こちらへの接近を開始している。
「出し惜しみしてると囲まれちまう……。こうなったらッ!」
進路を塞ぐ魔物を斬り払って走り、エルスはオークと距離を取る。
続いてエルスは剣に手をかざしながら、小さく呪文を唱える。
それに呼応するかのように、彼の銀髪と瞳が赤い光を放つ――!
「魔法剣ッ! レイフォルス――ッ!」
炎の精霊魔法・レイフォルスが発動し、エルスの剣が魔力の炎を帯びた〝魔法剣〟と化した!
「ブッ?……ブォォ――ッ!?」
剣が放つ炎によって、オークの驚愕の表情と、エルスの不敵な笑みが照らし出される。
「へへッ! 豚の串焼きにしてやるぜッ! 全力必中――ッ!」
エルスは床を蹴り、オークの元へと疾る!
彼の気迫に圧されたのか、魔物は棍棒で防御の構えをとった!
「――無駄だッ! そんな棒きれ、燃やしてやるぜッ!」
エルスは力任せに、炎の剣を振り下ろす! 一撃を受け止めた棍棒からは、堅い木を打ちつけたような重い音が響き――次の瞬間、炎に包まれた!
「ブヒィィン!」
オークは炎の熱に耐えきれず、慌てて武器を手放す。
そしてエルスの剣が、無防備となったオークの腹を深々と斬り裂いた!
大きく裂けた傷口からは、大量の黒い霧が止め処なく溢れ出る――。
「これでッ! 戦闘終了だッ――!」
エルスは剣を持つ手をクルリと反し、オークの腹を刺し貫いた!
魔物の背中からは燃え上がる剣先が生え、同時に全身が炎に包まれる。
巨体は炎と黒煙に包まれながら崩れ落ち、すべてが虚空へと還っていった。
「へッ! 独りでも、なんとかなるモンだッ!」
見事、単独で強敵を撃破したエルス。
彼は炎の剣を手にしたまま、左手で顔の汗を拭う。
だが、エルスが息つく間すらもなく。
炎に呼び寄せられるかのように、新たな魔物の群れが、こちらへと集まりはじめていた――!
「さっきは確かに、なんか違和感があったんだけどなぁ」
薄闇の大広間の中、エルスは目の前の祭壇を見上げる。
朽ち果てた台座には何かが祀られていた形跡こそあるが、それはとっくに失われ、もう正体を知る術はない。
それに、ゆっくりと観察する時間など与えないかの如く。
エルスの背後に現れた魔物が、手にした武器を振り下ろした!
「――おおッと! こいつは、オークかッ!?」
なんとか不意打ちを躱し、エルスは素早く剣を構える!
目の前では、だらしなく膨らんだ腹と〝豚〟の頭が特徴的な人型の魔物――オークが棍棒を握り、エルスを見下ろしていた!
この辺りの魔物では強い部類で、その巨体から繰り出される怪力は、駆け出しの冒険者にとって脅威だ。さきほどまでエルスが立っていた石の床は粉々に砕け散り、下地が表れている。
強敵との遭遇に、エルスは元来た方角へ目を遣るが――残念ながら、ここからでは仲間たちの姿は見えない。
「ブオォォ――ッ!」
オークはエルスの視線が動いた隙を見逃すことなく、再び棍棒を振り下ろす!
当然ながら、魔物がこちらの応援など待ってくれるはずもない。
「独りになった途端、こいつに出くわすなんてなッ!――もうやるしかねェ!」
繰り出される重い一撃をステップで避け、エルスはオークの腹を斜めに斬り上げる!――が、弾力のある皮膚によって威力は軽減され、浅い傷がついたのみだ。
エルスは続けて剣を振り下ろすも――オークの手にした棍棒によって、斬撃は軽く受け止められてしまった。
木製の棍棒は粗雑な造りながら、武器としての強度も威力も、充分に兼ね備えているようだ。
オークの腹からは薄らと黒い霧が漏れていたが、大したダメージが無いことを示すかのように、すぐにピタリと止まってしまった。
「チッ……! いつも通りアリサが居りゃ余裕なんだが……」
普段はアリサと二人で魔物狩りをしているエルス。
暗闇の中に相棒の姿を探すも、目に入るのは魔物の群ればかり。
さらに、それらの数体はエルスに気づき、こちらへの接近を開始している。
「出し惜しみしてると囲まれちまう……。こうなったらッ!」
進路を塞ぐ魔物を斬り払って走り、エルスはオークと距離を取る。
続いてエルスは剣に手をかざしながら、小さく呪文を唱える。
それに呼応するかのように、彼の銀髪と瞳が赤い光を放つ――!
「魔法剣ッ! レイフォルス――ッ!」
炎の精霊魔法・レイフォルスが発動し、エルスの剣が魔力の炎を帯びた〝魔法剣〟と化した!
「ブッ?……ブォォ――ッ!?」
剣が放つ炎によって、オークの驚愕の表情と、エルスの不敵な笑みが照らし出される。
「へへッ! 豚の串焼きにしてやるぜッ! 全力必中――ッ!」
エルスは床を蹴り、オークの元へと疾る!
彼の気迫に圧されたのか、魔物は棍棒で防御の構えをとった!
「――無駄だッ! そんな棒きれ、燃やしてやるぜッ!」
エルスは力任せに、炎の剣を振り下ろす! 一撃を受け止めた棍棒からは、堅い木を打ちつけたような重い音が響き――次の瞬間、炎に包まれた!
「ブヒィィン!」
オークは炎の熱に耐えきれず、慌てて武器を手放す。
そしてエルスの剣が、無防備となったオークの腹を深々と斬り裂いた!
大きく裂けた傷口からは、大量の黒い霧が止め処なく溢れ出る――。
「これでッ! 戦闘終了だッ――!」
エルスは剣を持つ手をクルリと反し、オークの腹を刺し貫いた!
魔物の背中からは燃え上がる剣先が生え、同時に全身が炎に包まれる。
巨体は炎と黒煙に包まれながら崩れ落ち、すべてが虚空へと還っていった。
「へッ! 独りでも、なんとかなるモンだッ!」
見事、単独で強敵を撃破したエルス。
彼は炎の剣を手にしたまま、左手で顔の汗を拭う。
だが、エルスが息つく間すらもなく。
炎に呼び寄せられるかのように、新たな魔物の群れが、こちらへと集まりはじめていた――!
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