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5話

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夏休みが終わってから私の生活は今まで以上に多忙をきわめた。
学園にはほぼ行けず、気づけばミステリアス魔術師エヴァンさんに、あちこちに派遣されまくっていた。

そして、なんと私に後輩ができた。
ウィル君。
ちょっと偉そうな14歳の男の子だ。
銀色の髪に紫色の瞳の美少年で、初めて紹介された時はそれはもう驚いた。
天使かと思った。
そんな美貌を見せたくないのか、普段はローブのフードを深く、深く被っている。

「へぇ~、ルル先輩って無詠唱で転移もできるんだ」

「そういうウィル君もできるでしょ」

「まぁ、僕はね、、ふ~ん、その若さでの無詠唱の遠距離転移って、見たことないなぁ」

「いやいや、ウィル君の方が若いから」

独特のテンポで、少し偉そうで、でもそれはとても自然で。
きっと、お貴族様に違いない。

「あ~、君はいらないですって。ウィルで。あと、敬語もやめてね」

何だか、今軽く質問をスルーされた様な。

「はい、はい、わかったよ。
ウィル、じゃあ行こうか。
ここが魔獣の森と言われてるデルの森ね。
転移はここまでしか出来ないから、2キロ先の宿営地までは歩きますよ。
魔物はいないと思うけど、警戒は怠らないでね」

ウィルとはチーム?を組んで派遣先で仕事をしている。
「色々と教えてあげて下さい」とエヴァンさんに言われたけれど、物知りだし、魔力も魔法も素晴らしく、足りないのは経験値くらい?だろうか。

でも、もうすぐ16歳になる小娘と14歳の少年にこんな重要な仕事させて大丈夫なのか、いつも気になる。


ハリーとは手紙のやり取りを続けている。
転移魔法で私が急に消えたのには驚いたみたいだった。
手紙には、(夏休み最後の日、ワンピース姿のルルはとても綺麗だった。本当は綺麗だ。と言いたかったのに、恥ずかしくて素直になれなかった。でも、自分の気持ちを頑張ってルルに伝えられて本当に良かった。ルルの気持ちも知ることができたし。夏休みが待ち遠しいよ。早く、ルルに会いたい。ハリー)
と、書かれていた。

こんなの、こんなの!
シンデシマウ~!!!
ニヤけながら、私は幾分マシになってきた字で返事を書いた。


毎日を忙しく過ごし、あっという間に夏休みになった。
ハリーは一段と大人っぽく、素敵になり、そして私への距離が近いので、ドキドキドキドキが止まらなかった。

私はスーパー執事ボブさん指導のもと魔法を最大限に駆使して、スモークチキンサンドイッチを作ったり、(貴婦人の嗜み
~優雅なティータイム)の挿絵を再現たパンを作り、ピクニックへ持参た。

この1年、身だしなみにも気をつけて過ごしていたし、ワンピースも流行というのを意識して選んだ。
時間のある時は、恋愛小説も読んでみた。

ハリーは、「ルル、可愛いよ」「ワンピース似合ってる」と、会う度に褒めてくれる。
私は生まれて初めて恋人という存在に、完全に浮かれていた。

そんなある日、ハリーに誘われて人気と言われているカフェへ行った。
窓側の景色の良い席に案内され、まだ慣れないシチュエーションに緊張していた。

「あら?ハリーじゃない?」

ウェーブのかかったプラチナブロンドに水色の大きな瞳、そして驚くほどにスタイルの良い美人がハリーに気づいてこちらに歩いてきた。

「クリスティ」

「私達の誘いを断って、お茶してるなんて。酷い人ね」

「はーっ、別にいいだろ。なんで君達といつも一緒にいなきゃいけないんだ」

「まぁ、君達だなんて!随分と他人行儀ね。あら?そちらは?」

クリスティさんは、ようやく私の方に目を向けた。

「クリスティ、こちらは恋人のルル。ルル、こちらは学園のクラスメイトのクリスティ」

「初めまして、ルルさん、クリスティ・シモンズよ。ハリーとは幼馴染なの。よちよち歩きの頃から」

「初めまして、クリスティさん、ルルです」

「クリスティ、紹介したからもういいだろ」

「わかったわよ。そんなに怖い顔しないでちょうだい。ああ、そう。明日はブライアンとエレナが遊びに来るからハリーも来てね」

「善処するよ」

「2人もあなたに会いたがってたわ。必ずよ!」

と言って、嵐の様に去って行った。

「ルル、、その、すまない。せっかくのおすすめのお店っだって楽しみにしてたのに、嫌な思いしたよな」

「ううん。それより今日は友達から誘われてたんでしょ」

「俺がルルに会いたかったんだ」

そう言って、テーブルの上にある私の手をそっと包んでくる。

「でも、五月蝿いから明日は顔だして来るよ」

いつもなら、いつもなら、ハリーが私の手を触れてくるとドキドキして嬉しいのに、何だか今は、何も感じない。

あの綺麗なクリスティさんと、すごく親しげだった。
幼馴染か・・・
私は自分が他に友達がいないから、勝手にハリーを1番の友達だったと思ってて。
でもハリーには小さい頃からの、私に会うよりももっと幼い頃からの友達が居て。
学園では、いつも一緒なのかな。明日
、会いに行くんだ・・・・・・

今日はお洒落してきて、自分でも悪くないって思ってたけど、クリスティさんを見てからこの服装も髪も全部が霞んでいるのがわかる。

私は生まれて初めて感じる、このわからない気持ちでいっぱいだった。

この後食べたケーキも味が分からなかった。








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