18 / 24
第18話 アルフォンス
しおりを挟む
「アルフォンス、久しいな。
息災であったか」
「はい、ご無沙汰しております」
「エリザベートも元気にしておるか?」
「はい、相変わらず父上と恋人同士のようで見ていられません」
「そうか、モンテ王国の王族は愛が重いと聞くが、いまだにとは驚きであるな。
アルフォンスは21歳か?
まだ婚約者はおらぬのか?」
「ええ、おりません」
「モンテ王国は美女が多いはずだが、満足いく者はおらぬか」
現在このサヴォイ王国の大学に留学中である薬師の令嬢が、とある貴族から狙われているとの話を聞いて、3年振りに王妃である母上の母国サヴォイ王国へ来た。
急を要する事態でもあったので、転移魔法で移動し、伯父である国王様に直接話すことで速やかにその貴族は捕らえられた。
思ったよりも短時間で解決したので時間が余り、何となく大学に足を運んだ。
優秀な薬師である令嬢を一目見てみたい。
僅かにそんな気持ちがあったのかも知れない。
その薬師、グレイ男爵令嬢の作る薬はどれも素晴らしく、なかでも回復薬は回復魔法よりも効果があると、以前より聞いていた。
そんな逸材は知られてしまえば狙われる恐れもあるので、保護も兼ねて王宮へ呼び寄せる話があがったが、次期辺境伯である令息と婚約を結び、その話は立ち消えた。
それから4、5年経つかーー
フンフン、フ~ン、
フフフ~、フンフフ~ン
楽しそうな鼻歌が聞こえてくる扉から中を覗くと、銀髪を揺らして大きなジョウロを持つ女性を見た瞬間に、雷にでも打たれたような衝撃を受けた。
ーー彼女だ。彼女が俺の・・・・・・
そんな気持ちがどこからともなく湧き上がって、知らず知らずのうちに一目見るだけだったはずの相手の前に向かっていた。
「あれ?君がモンテ王国からの留学生?」
モンテ王国の王都で薬師の卵として勉強中のアル。
変身魔法も使わずに、名前も本名のアルを名乗っていた。
それから時間を作っては転移魔法でアリソンの留学先である大学を訪れた。
アリソンの近くにいるだけで、今まで感じたことのない幸福感に包まれた。
そして、アリソンと親しくなるうちに、彼女をもっと知りたい。自分のことも知ってほしい。
そんな気持ちが生まれいった。
だが、アリソンには婚約者がいることも理解していた。
あまり本人からは口にしないものの、聞かれれば笑顔で婚約者の話をする姿を何度か目にして胸を痛めた。
女神様の祈りが込められている、危険から身を守ってくれるネックレスをお土産に買ったと、女神のような微笑みを浮かべて話すアリソンを見た時には、諦めなくてはいけないと自覚した。
ならばアリソンを、優秀な薬師である彼女を、王族として見守ろうと誓った。
辺境伯令息は文武両道の美丈夫で、次期辺境伯として申し分ないと悪い噂は聞かない。
それでも、本当にアリソンが幸せになれる相手であるか、王家の影を使って調査した。
[毒矢で負った怪我を治療した平民の女性治療師であるマリア嬢と数日前から親しくしている模様。
その後、辺境伯ご夫妻の指示のもとマリア嬢は辺境伯の城に滞在。
回復魔法に体質が合わなかったスペンサー伯爵令息に回復魔法が効くか、再度確認も兼ねてというのが表向きの理由である。
マリア嬢は勤務先の治療院では“聖女様”と呼ばれ、今回の令息の一件で領民からの人気が高まり、令息との結婚を望む声も多数聞かれる]
女性治療師を城に住まわせる?
何を考えたらそんなことが出来る!
アリソンに、今まで何度も回復薬で助けられておきながら!
彼女は今も留学先でお前の為に、お前達の領地の為に勉強しているというのに!
あまりの苛立ちに魔力が溢れて窓ガラスが割れそうになって、側近は焦り、筆頭魔術師が飛んでくるという、ちょっとした騒ぎになってしまった。
そんな時、夜会で辺境伯次男のジョー・スペンサーに出会い、彼に協力を求めることになる。
「まさか、兄上にかぎって」
そう話していたジョーから連絡が来た。
[両親と兄上は、グレイ男爵令嬢と婚約解消し、新たに治療師であるマリア嬢との婚約を考えています。
グレイ男爵令嬢は兄上とマリア嬢の不貞現場を目撃して・・・・・・]
そこまで読むと、窓ガラスが割れて筆頭魔術師が部屋へ飛んできた。
息災であったか」
「はい、ご無沙汰しております」
「エリザベートも元気にしておるか?」
「はい、相変わらず父上と恋人同士のようで見ていられません」
「そうか、モンテ王国の王族は愛が重いと聞くが、いまだにとは驚きであるな。
アルフォンスは21歳か?
まだ婚約者はおらぬのか?」
「ええ、おりません」
「モンテ王国は美女が多いはずだが、満足いく者はおらぬか」
現在このサヴォイ王国の大学に留学中である薬師の令嬢が、とある貴族から狙われているとの話を聞いて、3年振りに王妃である母上の母国サヴォイ王国へ来た。
急を要する事態でもあったので、転移魔法で移動し、伯父である国王様に直接話すことで速やかにその貴族は捕らえられた。
思ったよりも短時間で解決したので時間が余り、何となく大学に足を運んだ。
優秀な薬師である令嬢を一目見てみたい。
僅かにそんな気持ちがあったのかも知れない。
その薬師、グレイ男爵令嬢の作る薬はどれも素晴らしく、なかでも回復薬は回復魔法よりも効果があると、以前より聞いていた。
そんな逸材は知られてしまえば狙われる恐れもあるので、保護も兼ねて王宮へ呼び寄せる話があがったが、次期辺境伯である令息と婚約を結び、その話は立ち消えた。
それから4、5年経つかーー
フンフン、フ~ン、
フフフ~、フンフフ~ン
楽しそうな鼻歌が聞こえてくる扉から中を覗くと、銀髪を揺らして大きなジョウロを持つ女性を見た瞬間に、雷にでも打たれたような衝撃を受けた。
ーー彼女だ。彼女が俺の・・・・・・
そんな気持ちがどこからともなく湧き上がって、知らず知らずのうちに一目見るだけだったはずの相手の前に向かっていた。
「あれ?君がモンテ王国からの留学生?」
モンテ王国の王都で薬師の卵として勉強中のアル。
変身魔法も使わずに、名前も本名のアルを名乗っていた。
それから時間を作っては転移魔法でアリソンの留学先である大学を訪れた。
アリソンの近くにいるだけで、今まで感じたことのない幸福感に包まれた。
そして、アリソンと親しくなるうちに、彼女をもっと知りたい。自分のことも知ってほしい。
そんな気持ちが生まれいった。
だが、アリソンには婚約者がいることも理解していた。
あまり本人からは口にしないものの、聞かれれば笑顔で婚約者の話をする姿を何度か目にして胸を痛めた。
女神様の祈りが込められている、危険から身を守ってくれるネックレスをお土産に買ったと、女神のような微笑みを浮かべて話すアリソンを見た時には、諦めなくてはいけないと自覚した。
ならばアリソンを、優秀な薬師である彼女を、王族として見守ろうと誓った。
辺境伯令息は文武両道の美丈夫で、次期辺境伯として申し分ないと悪い噂は聞かない。
それでも、本当にアリソンが幸せになれる相手であるか、王家の影を使って調査した。
[毒矢で負った怪我を治療した平民の女性治療師であるマリア嬢と数日前から親しくしている模様。
その後、辺境伯ご夫妻の指示のもとマリア嬢は辺境伯の城に滞在。
回復魔法に体質が合わなかったスペンサー伯爵令息に回復魔法が効くか、再度確認も兼ねてというのが表向きの理由である。
マリア嬢は勤務先の治療院では“聖女様”と呼ばれ、今回の令息の一件で領民からの人気が高まり、令息との結婚を望む声も多数聞かれる]
女性治療師を城に住まわせる?
何を考えたらそんなことが出来る!
アリソンに、今まで何度も回復薬で助けられておきながら!
彼女は今も留学先でお前の為に、お前達の領地の為に勉強しているというのに!
あまりの苛立ちに魔力が溢れて窓ガラスが割れそうになって、側近は焦り、筆頭魔術師が飛んでくるという、ちょっとした騒ぎになってしまった。
そんな時、夜会で辺境伯次男のジョー・スペンサーに出会い、彼に協力を求めることになる。
「まさか、兄上にかぎって」
そう話していたジョーから連絡が来た。
[両親と兄上は、グレイ男爵令嬢と婚約解消し、新たに治療師であるマリア嬢との婚約を考えています。
グレイ男爵令嬢は兄上とマリア嬢の不貞現場を目撃して・・・・・・]
そこまで読むと、窓ガラスが割れて筆頭魔術師が部屋へ飛んできた。
363
あなたにおすすめの小説
【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?
よどら文鳥
恋愛
デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。
予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。
「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」
「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」
シェリルは何も事情を聞かされていなかった。
「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」
どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。
「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」
「はーい」
同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。
シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。
だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。
今日は私の結婚式
豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。
彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。
邪魔者はどちらでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
レモンズ侯爵家の長女である私は、幼い頃に母が私を捨てて駆け落ちしたということで、父や継母、連れ子の弟と腹違いの妹に使用人扱いされていた。
私の境遇に同情してくれる使用人が多く、メゲずに私なりに楽しい日々を過ごしていた。
ある日、そんな私に婚約者ができる。
相手は遊び人で有名な侯爵家の次男だった。
初顔合わせの日、婚約者になったボルバー・ズラン侯爵令息は、彼の恋人だという隣国の公爵夫人を連れてきた。
そこで、私は第二王子のセナ殿下と出会う。
その日から、私の生活は一変して――
※過去作の改稿版になります。
※ラブコメパートとシリアスパートが混在します。
※独特の異世界の世界観で、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
二人ともに愛している? ふざけているのですか?
ふまさ
恋愛
「きみに、是非とも紹介したい人がいるんだ」
婚約者のデレクにそう言われ、エセルが連れてこられたのは、王都にある街外れ。
馬車の中。エセルの向かい側に座るデレクと、身なりからして平民であろう女性が、そのデレクの横に座る。
「はじめまして。あたしは、ルイザと申します」
「彼女は、小さいころに父親を亡くしていてね。母親も、つい最近亡くなられたそうなんだ。むろん、暮らしに余裕なんかなくて、カフェだけでなく、夜は酒屋でも働いていて」
「それは……大変ですね」
気の毒だとは思う。だが、エセルはまるで話に入り込めずにいた。デレクはこの女性を自分に紹介して、どうしたいのだろう。そこが解決しなければ、いつまで経っても気持ちが追い付けない。
エセルは意を決し、話を断ち切るように口火を切った。
「あの、デレク。わたしに紹介したい人とは、この方なのですよね?」
「そうだよ」
「どうしてわたしに会わせようと思ったのですか?」
うん。
デレクは、姿勢をぴんと正した。
「ぼくときみは、半年後には王立学園を卒業する。それと同時に、結婚することになっているよね?」
「はい」
「結婚すれば、ぼくときみは一緒に暮らすことになる。そこに、彼女を迎えいれたいと思っているんだ」
エセルは「……え?」と、目をまん丸にした。
「迎えいれる、とは……使用人として雇うということですか?」
違うよ。
デレクは笑った。
「いわゆる、愛人として迎えいれたいと思っているんだ」
【完結】不倫をしていると勘違いして離婚を要求されたので従いました〜慰謝料をアテにして生活しようとしているようですが、慰謝料請求しますよ〜
よどら文鳥
恋愛
※当作品は全話執筆済み&予約投稿完了しています。
夫婦円満でもない生活が続いていた中、旦那のレントがいきなり離婚しろと告げてきた。
不倫行為が原因だと言ってくるが、私(シャーリー)には覚えもない。
どうやら騎士団長との会話で勘違いをしているようだ。
だが、不倫を理由に多額の金が目当てなようだし、私のことは全く愛してくれていないようなので、離婚はしてもいいと思っていた。
離婚だけして慰謝料はなしという方向に持って行こうかと思ったが、レントは金にうるさく慰謝料を請求しようとしてきている。
当然、慰謝料を払うつもりはない。
あまりにもうるさいので、むしろ、今までの暴言に関して慰謝料請求してしまいますよ?
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません
天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。
ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。
屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。
家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる