メイドは眠りから目が覚めた公爵様を、誤って魅了する

MOMO-tank

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第11話

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公爵家執事のヘンリーさんからは、次の勤め先は“伯爵家”としか聞いていなかったから、ここが魔術師団長アンジー様のご実家になるクリケット伯爵領と知った時は驚いた。

緑溢れる広大な敷地内に建つお屋敷は意外にも小さなもので、使用人はかなりご年配の執事のダニエルさん、侍女のグレースさんご夫妻のみだった。
クリケット伯爵様ご夫妻は王都のお屋敷で生活されて、ここには滅多に来られないらしく、代わりに伯爵家次男であるアンドリュー様がここに住んでいるらしい。
でも、ここへ来て10日になろうとしているが、まだ一度もお会いしていない。

「坊ちゃんは忙しい人だからねぇ」

どうやら王都で忙しくされているみたいだ。

私はというと、ほぼ主人の居ないこのお屋敷の掃除が主な仕事。
ご年配のダニエルさん、グレースさんは腰痛に悩まされているらしく、私が来たことを喜んでくれている。

敷地内の私達姉弟の家は聞いていた話とは違い、立派な煉瓦造りで中も広々として清潔感もある。
ここを寮として使っていいなんて、寛大な配慮には感謝しかない。

そして、クリケット伯爵領は、たとえ平民でも優秀な者は無償で学園に通うことが可能で、将来的には仕事の斡旋までしてくれるらしい。

半年に一度、8歳以上であれば誰でも学園の試験を受験するのが可能らしく、ジョンとジャックは次の1ヶ月後の試験に向けて、日々図書館へ通い勉強している。
その間ジャンは、領が運営する託児施設が預かってくれる。
何もかもが至れり尽くせりで、本当に素晴らしい所だ。



「姉ちゃん、カボチャと玉ねぎが安かったから買ってきたよ」  

「かったよー」

農業も盛んなクリケット領は、野菜も安く買える。
ジャックはジャンと手を繋いで、ジョンは紙袋にいっぱいのカボチャと玉ねぎを持っていた。

「助かるよ」

「しかも、俺がカッコイイからってお店のお姉さんが沢山オマケしてくれたんだ」

ジョンが得意気にしている。

「あんたじゃなく、ジョンが可愛いからじゃないの?」

「いや、違うね。な?ジャック?」

「うん。確かに。兄さんは最近、年上の女性からすごく声がかかるんだ」
 
ジャックが言うなら間違いないだろう。
まぁ、確かに元々顔立ちは整っている。
12歳になり、一段と母に似てきたジョンは年の割に大人びて見えるのかもしれない。
身長も、すでに私と変わらないし。

「ふーん。
でも、まだ12歳なんだからね」

「ねー」

「わかってるよ」

ジョンにしてもジャックにしても、色っぽかった母似だから、これから大変かもしれない。

「よし、じゃあ今日はカボチャのシチューにしよっか」

テーブル見ると、ジャンが託児施設でもらったチューリップが飾ってある。
スティーブン様にもらった3本の薔薇はこの家へ来て花瓶に挿すも、すぐに枯れてしまった。

あれは、夢だったんだ。
最近、やっと、確信した。



翌朝、朝食を食べて伯爵邸へ向かうと、ダニエルさんとグレースさんが忙しそうにしていた。

「昨夜遅くに、坊ちゃんが戻ったの。
今日から通いの料理人にも来てもらったわ」

どうやら、朝食の準備中らしかった。
出来上がった朝食をワゴンに乗せて食堂へ運んだ。

「やあ、久しぶりだね」

この、ハスキーボイスはーー

顔を上げると、目にはいったのは艶やかな黒髪に赤い瞳の妖艶美女ではなく、妖艶な男性だった。

え?
アンドリュー様はアンジー様と双子・・・なの?
でも、今、久しぶりって・・・。

クスクスと笑いながらこっちを見る目は、アンジー様にしか見えなかった。

「魔術師団長は男性って、割と有名なんだけどな」

え?

「魔術師団長でクリケット伯爵家次男のアンドリュー・クリケットだよ」


赤い瞳は、面白そうに細められた。






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