メイドは眠りから目が覚めた公爵様を、誤って魅了する

MOMO-tank

文字の大きさ
13 / 21

第13話

しおりを挟む
長い黒髪を緩く結び、正装でビシッときめて登場したアンドリュー様はアンジー様の時とはまた違った色気がすごかった。

「似合ってるよ」

「ありがとうございます」  

この姿で褒め上手。
しかも、エスコートもスマートときている。
アンドリュー様としての夜会は久しぶりと言っていたので、夜会の会場で名前を呼ばれて入場すれば、皆がこちらを見て驚いていた。
みんなこの色気たっぷりの姿に釘付けなんだろう。

その隣に居るのがよくわからない男爵令嬢なんて、恨まれそうなものだけど、今夜限りだから乗り切ろう。

そして、もしアンドリュー様が席を外したらお料理を頂くんだ。
デビュダントの時も料理が気になって仕方がなかったけど、なぜかダンスの列ができてそれどころじゃなかった。
会場に入った時に、すでに料理の場所はチェック済みだった。

王族のファーストダンスが終わると、アンドリュー様に手を引かれた。

「じゃあ、レッスンの成果を見せてもらおうかな」

アンドリュー様がダンスフロアに足を踏み入れると、女性達の騒めきがより一層耳に響いた。
後で間違ってもアンドリュー様のファンから、ドレスにワインだけはかけられないように気をつけよう。
シミなんか付けたら、高値で売れなくなってしまう。

「うん、上手だね」

アンドリュー様とのダンスはとても踊りやすかった。
ダンスを踊ったのはレッスン以外ではデビュダントしかないけれど、明らかにリードが上手い。

「今日はね、スティーブンも夜会に来てるんだ」

「・・・そうですか」

公爵様だ、そりゃそうだろう。

そういえば、退職後に公爵家当主への接触禁止って契約にあったような・・・。

「もし、スティーブンに話しかけられたら知らないフリするといいよ」

「知らないフリ?」

まぁ、仮に見かけたとしても向こうから話しかけてこないだろう。
『君は?』って言われたくらいだから。

「あれだけしつこくしておいて、忘れるなんて勝手過ぎるでしょ」

この人、何でも知ってるのか。

「すごい情報力ですね」

「まぁね」

話してるうちに、あっという間にダンスは終わった。

「私は少しこの場を離れるけど、なるべく早く戻るよ。
心配ないとは思うけど、知らない人について行っては駄目だよ」

そう言うと、人混みの中へ消えて行った。


私はというと、目的地へ向けて歩き出した。
そこには、どうしてみんな手をつけないのか、不思議なくらい素晴らしい料理が並んでいた。
料理をじっと見ていると給仕係と目が合った。
どうやら、係の人が料理を盛り付けてくれるシステムらしい。

全種類食べたいけれど、ここはドレスを汚さないように濃いソースがついた類の料理は諦めることにして、チキン、魚、サラダに目をつけた。

「・・・あのですね」

皿を持ち、準備している給仕係に選んだ料理を伝えようとした時だった。

「俺がやろう」

聞いたことのある低音の美声だった。
その人は、あろうことか給仕係の皿をもらうと、私に向き合った。

「ジョイ・・・」

スティーブン様・・・。
ブラウンの髪は後ろに流して、濃いブルーの瞳は私を真っ直ぐ見ていた。
黒を基調とした正装姿は直視できないほどに素敵だった。

私は一度深呼吸して、声を絞り出した。

「どちら様でしょう?」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

彼女の離縁とその波紋

豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました

四折 柊
恋愛
 子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました

降魔 鬼灯
恋愛
 コミカライズ化決定しました。 ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。  幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。  月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。    お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。    しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。 よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう! 誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は? 全十話。一日2回更新 完結済  コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。

処理中です...