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第13話
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長い黒髪を緩く結び、正装でビシッときめて登場したアンドリュー様はアンジー様の時とはまた違った色気がすごかった。
「似合ってるよ」
「ありがとうございます」
この姿で褒め上手。
しかも、エスコートもスマートときている。
アンドリュー様としての夜会は久しぶりと言っていたので、夜会の会場で名前を呼ばれて入場すれば、皆がこちらを見て驚いていた。
みんなこの色気たっぷりの姿に釘付けなんだろう。
その隣に居るのがよくわからない男爵令嬢なんて、恨まれそうなものだけど、今夜限りだから乗り切ろう。
そして、もしアンドリュー様が席を外したらお料理を頂くんだ。
デビュダントの時も料理が気になって仕方がなかったけど、なぜかダンスの列ができてそれどころじゃなかった。
会場に入った時に、すでに料理の場所はチェック済みだった。
王族のファーストダンスが終わると、アンドリュー様に手を引かれた。
「じゃあ、レッスンの成果を見せてもらおうかな」
アンドリュー様がダンスフロアに足を踏み入れると、女性達の騒めきがより一層耳に響いた。
後で間違ってもアンドリュー様のファンから、ドレスにワインだけはかけられないように気をつけよう。
シミなんか付けたら、高値で売れなくなってしまう。
「うん、上手だね」
アンドリュー様とのダンスはとても踊りやすかった。
ダンスを踊ったのはレッスン以外ではデビュダントしかないけれど、明らかにリードが上手い。
「今日はね、スティーブンも夜会に来てるんだ」
「・・・そうですか」
公爵様だ、そりゃそうだろう。
そういえば、退職後に公爵家当主への接触禁止って契約にあったような・・・。
「もし、スティーブンに話しかけられたら知らないフリするといいよ」
「知らないフリ?」
まぁ、仮に見かけたとしても向こうから話しかけてこないだろう。
『君は?』って言われたくらいだから。
「あれだけしつこくしておいて、忘れるなんて勝手過ぎるでしょ」
この人、何でも知ってるのか。
「すごい情報力ですね」
「まぁね」
話してるうちに、あっという間にダンスは終わった。
「私は少しこの場を離れるけど、なるべく早く戻るよ。
心配ないとは思うけど、知らない人について行っては駄目だよ」
そう言うと、人混みの中へ消えて行った。
私はというと、目的地へ向けて歩き出した。
そこには、どうしてみんな手をつけないのか、不思議なくらい素晴らしい料理が並んでいた。
料理をじっと見ていると給仕係と目が合った。
どうやら、係の人が料理を盛り付けてくれるシステムらしい。
全種類食べたいけれど、ここはドレスを汚さないように濃いソースがついた類の料理は諦めることにして、チキン、魚、サラダに目をつけた。
「・・・あのですね」
皿を持ち、準備している給仕係に選んだ料理を伝えようとした時だった。
「俺がやろう」
聞いたことのある低音の美声だった。
その人は、あろうことか給仕係の皿をもらうと、私に向き合った。
「ジョイ・・・」
スティーブン様・・・。
ブラウンの髪は後ろに流して、濃いブルーの瞳は私を真っ直ぐ見ていた。
黒を基調とした正装姿は直視できないほどに素敵だった。
私は一度深呼吸して、声を絞り出した。
「どちら様でしょう?」
「似合ってるよ」
「ありがとうございます」
この姿で褒め上手。
しかも、エスコートもスマートときている。
アンドリュー様としての夜会は久しぶりと言っていたので、夜会の会場で名前を呼ばれて入場すれば、皆がこちらを見て驚いていた。
みんなこの色気たっぷりの姿に釘付けなんだろう。
その隣に居るのがよくわからない男爵令嬢なんて、恨まれそうなものだけど、今夜限りだから乗り切ろう。
そして、もしアンドリュー様が席を外したらお料理を頂くんだ。
デビュダントの時も料理が気になって仕方がなかったけど、なぜかダンスの列ができてそれどころじゃなかった。
会場に入った時に、すでに料理の場所はチェック済みだった。
王族のファーストダンスが終わると、アンドリュー様に手を引かれた。
「じゃあ、レッスンの成果を見せてもらおうかな」
アンドリュー様がダンスフロアに足を踏み入れると、女性達の騒めきがより一層耳に響いた。
後で間違ってもアンドリュー様のファンから、ドレスにワインだけはかけられないように気をつけよう。
シミなんか付けたら、高値で売れなくなってしまう。
「うん、上手だね」
アンドリュー様とのダンスはとても踊りやすかった。
ダンスを踊ったのはレッスン以外ではデビュダントしかないけれど、明らかにリードが上手い。
「今日はね、スティーブンも夜会に来てるんだ」
「・・・そうですか」
公爵様だ、そりゃそうだろう。
そういえば、退職後に公爵家当主への接触禁止って契約にあったような・・・。
「もし、スティーブンに話しかけられたら知らないフリするといいよ」
「知らないフリ?」
まぁ、仮に見かけたとしても向こうから話しかけてこないだろう。
『君は?』って言われたくらいだから。
「あれだけしつこくしておいて、忘れるなんて勝手過ぎるでしょ」
この人、何でも知ってるのか。
「すごい情報力ですね」
「まぁね」
話してるうちに、あっという間にダンスは終わった。
「私は少しこの場を離れるけど、なるべく早く戻るよ。
心配ないとは思うけど、知らない人について行っては駄目だよ」
そう言うと、人混みの中へ消えて行った。
私はというと、目的地へ向けて歩き出した。
そこには、どうしてみんな手をつけないのか、不思議なくらい素晴らしい料理が並んでいた。
料理をじっと見ていると給仕係と目が合った。
どうやら、係の人が料理を盛り付けてくれるシステムらしい。
全種類食べたいけれど、ここはドレスを汚さないように濃いソースがついた類の料理は諦めることにして、チキン、魚、サラダに目をつけた。
「・・・あのですね」
皿を持ち、準備している給仕係に選んだ料理を伝えようとした時だった。
「俺がやろう」
聞いたことのある低音の美声だった。
その人は、あろうことか給仕係の皿をもらうと、私に向き合った。
「ジョイ・・・」
スティーブン様・・・。
ブラウンの髪は後ろに流して、濃いブルーの瞳は私を真っ直ぐ見ていた。
黒を基調とした正装姿は直視できないほどに素敵だった。
私は一度深呼吸して、声を絞り出した。
「どちら様でしょう?」
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