災難続きのその後で

MOMO-tank

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第14話

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ガタンッ!

「ダリアさん!」

飛び移った荷台には、口に布、体にローブを巻かれたダリアさんがいた。

「!ンーンッンンー!」

素早く口に巻かれている布を外し、腰の短剣でロープを四ヶ所切る。
荷台には帆が張られているから姿は確認出来ないにせよ、飛び移った時に大きな音が鳴ったから気づかれた可能性もある。 
ゆっくりしてはいられない。
人差し指を立て、「静かに」とダリアさんに伝える。

「騎士様!こいつら、あの連れ去り事件の・・・
って、・・・あ、あんた、・・・もしかしてアッシュかい?」

ダリアさんは小声ながらも勢いよく話し出した。

「ダリアさん、無事で良かった。
さぁ、見つかる前にダリアさんは・・・ダリアさん、それ・・・」

よく見ると、ダリアさんの頬は赤く腫れていた。
血の滲んだ口元が目に入ると、男達に対して怒りが湧いてくる。

「ああ!大騒ぎしてやったのさ。
そうしたら、女に手上げて!
とんでもない奴等だよ!」

「おい?今声がしなかったか?」
「そうか?」

ダリアさんが話し終えると、前方から男達の声が聞こえてきた。
人差し指を立てたまま、辺りを見回す。
すると、少し先に羊毛の積んだ荷台が並んでいる。
運が良い。この辺りは織物工場だ。

「ダリアさん、あの羊毛の荷台に飛び移って!
そして、助けを求めてください!
さぁ、早く!」

「アッシュ・・・あんたは?
あんた、女なんだろ?」

「私は大丈夫。 
さぁ、早く!デイジーちゃんも待ってるから!」

「わかったよ、ありがとう。アッシュ」

私は、じっと顔を見つめてくるダリアさんの背中に手を置いて、荷台に飛び移るタイミングを見計らう。

「・・・三、二、一、さぁ!」

少しバランスは崩れたけど、ダリアさんは羊毛の荷台に上手く飛び移った。

「おい?やっぱり変だぞ?」
「騒がしい女だったから、暴れてるだけだろ」
「いや、違うぞ!女が逃げたぞ!
・・・くそっ!」
「何だって!」

マズイ!気づかれた!
振り返ると、ダリアさんは荷台の上の羊毛に足を取られているようで、もぞもぞしている。

「ダリアさん!急いで!
早く逃げて!」

大声で叫んだと同時に、荷台の帆をナイフで切り裂いて男が姿を見せた。
こいつがダリアさんを・・・。
腰の剣を抜いて構える。と見せかけて、

「おっと、いつの間に忍び込んだんだ、女騎士さんよう。
こりゃ、別嬪・・・」

得意の回し蹴りを食らわす。

ゴッ!

が、馬車が動いているせいか手応えは思わしくない。
続け様に剣で攻撃を仕掛け、更にもう一発回し蹴り。
今度は効いたのか、男はよろめくと体制を立て直した。

「ヒッ、威勢がいい女は嫌いじゃないぜ。
聞いてるか?
逃げた女の代わりに、この女騎士を連れて行こうぜ!」

「そりゃいいが・・・このままじゃ目立つぞ!
早く女をどうにかしろ!」

「ヒッヒッ、そんなの承知よ」

仲間に声を上げた気色悪い笑顔の口元からは、真っ黒な歯が見える。
男はもう片方の手にもナイフを持ち、クルクル回しながら近づいてくる。
何が、代わりに連れて行くだ。
お前達がここで捕まるんだよ。
男から目を離さずに腰の短剣を抜き、男同様に両手に構えた。

「マズイ!騎士が来たぞ!
早くしろ!」

騎士・・・?
と聞いて、本来なら一緒に行動しなきゃいけないペア、ホーキンス先輩が頭に浮かんだ。
そういえば、私を呼び止めてたっけ。

「何だ、女騎士さん?
考え事なんて余裕だ!」

男は隙をついて、こっちに向かってくる。
出遅れた!

そう思った時、どこからともなく、
【シュガー、屈め!】
アントニオの声が聞こえたような気がして、私は短剣を男の膝に向かって投げ、屈んだ。

シュッ!シュッ!
シュッ!

「ぐわぁぁ~」
 
叫び声とドサッと倒れる音が耳に響く。
倒れた男の膝には私の短剣、両手には騎士団の支給品でもない、見たことがない白い短剣が刺さってた。
これは・・・

「おい?お前?もしかして、やられたのか!」

御者台の男の声にハッとして顔を上げると、馬に乗る師匠の姿が目に入った。

「ジュリアナ!こっちは任せろ!」

馬から飛び降りた師匠は、御者台の男に蹴りを入れ、剣を一振り。
無駄のない動きで、簡単に男の動きを封じた。

 「ジュリアナ!無事か!」

師匠は剣の血を払うと、荷台に向かって声を上げた。

「はい、大丈夫です」

「・・・ジュリアナ、大丈夫って・・・
ナイフが刺さっている」

「へ?」

ゆっくり視線を下げていくと、私の左脇腹にはナイフが刺さっていた。
いつ刺されたんだろう。
恐る恐る手を脇腹に持っていく。
やはり、全く痛みを感じなかった。
刺された辺りを触ってみても痛みはないし、手に血もついていなかった。

そうだった。
考えられることが一つあった。

「ジュリアナ、手を貸そう。
ナイフは下手に触らない方がいい」

いつの間にか、荷台に上がってきた師匠が心配そうに私の体を支えようとする。

「大丈夫ですよ」

私は騎士服のボタンを下から外していく。

「ジュリアナ、何してる?
止めるんだ」

「ほら、やっぱり」

ズッシリと重い、逞しい胸板を作る特殊なシャツーーこれだ。
以前背中を強打した時、何一つ痛みを感じなかった。
このシャツが原因かは分からかったけれど、何かに活用出来るんじゃないかと、肩から下を切って上から騎士服を着たら、体型に然程変化は感じなかったので、街の見回りがある日は着るようにしていた。

ナイフを抜くと、血は一滴もついていない。
それを見た師匠は、目を丸くしていた。




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