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昨日レジで並びながら、『冷蔵庫が壊れて困っている』事を打ち明けたら、
「常温保存出来る、ジャムとかシーチキンあるよ! あとパック入りのご飯とか、便利かも!」
わざわざ売り場に戻って、色々と教えてくれた。
ついでにお互い自己紹介をして。
「じゃあ立花くんも、今5年生?」
「うん、高木さんも?」
「そう。先週、お母さんと妹さんと一緒に、うちの学校来てたでしょ? 転校して来るの?」
と聞かれて、
「うん、2学期から。夏休み中なのに、学校にいたんだ?」
ちょっと首を傾げたら。
「手芸部の活動日だったから。
あのね、百均ショップで買った物を工夫して、ドールハウスみたいな部屋とか小物、作るのが好きなんだ」
少し恥ずかしそうに教えてくれた後に、
「2学期になったらきっと、大人気だよ立花くん! 6年の先輩たちも、『かっこいい』『アイドルみたい』って騒いでたし!」
にっかり笑顔を返された。
「いや別に、そんないいモンじゃないし……」
口の中でもごもご言い訳しながら、キャップのつばをぐいっと下げる。
ハーフの父親譲りの、茶色い髪とダークブルーの瞳。
この見た目のせいで、どこに行っても必用以上に人目を惹く。
髪と目の色が少し明るいだけの杏には、『お兄ちゃんだけずるい!』って、良く言われるけど。
変われるもんなら、変わりたかった。
いつの間にか俯いていた顔を、頭半分小さい黒髪の女の子に、ひょいっと覗き込まれた。
「どうして? そんなにキレイな目なのにっ!」
裏の無い、まっさらな笑顔に細められた、黒い大きな瞳。
肩先でぱつんと切られた毛先が揺れて、こちらの頬に触れそうになる。
『近い! 近いって!』
ぼわっと顔に血液が集まるのが、自分で分かった。
「ねぇ、それって伊達メガネ?」
「ひゃいっ……」
緊張して噛んで、ますます頬が熱くなる。
「もったいない! 立花くんがそれかけるの、人類にとって大きな損失だから!」
「人、類……?」
「そうっ!」
真面目な顔で、きっぱりと言い切る高木さん。
意味も分からず、こくこく頷いていた。
あれこれ考えるのが面倒になって来たので、夕飯はカップ焼きそばで手抜きすることに。
エコバッグを下げてスーパーを出ると、ぶわっとまた熱気が押し寄せる。
「暑っつ......」
買ったばかりのスポーツドリンクを取り出し、1本を杏に手渡しながら、大雅はふと思い出す。
『わたしの家、こっちなんだ。じゃあまたね!』
昨日手を振りながら、右側の道に走っていった、小鹿みたいな後ろ姿。
「お兄ちゃん? 早く帰ろーよ!」
スポドリを飲みながら、妹に促されて、
「えーと――今日はこっちの道、通ってみないか?
裏道見つければ、近道になるし」
「いいよー、行こ行こ!」
『この辺歩いてたら、ばったり会えるかも!』
商店街のある賑やかな通りの、1本裏の道に、兄妹は足を踏み入れた。
ラーメン屋や居酒屋の前を通り過ぎて奥に進むと、いきなりギラギラと、ネオンが輝く店が現れた。
よく分からない横文字の店名と、何だかキラキラしたお姉さん達がにっこり笑う看板。
やばい。
ここは、小学生が近づいちゃいけない通りだ!
「杏! 戻るぞ!」
ほぇ~っと目を丸くして、看板を見上げている妹の手を引っ張り、元の大通りに戻ろうとした大雅の前に、
「あれあれーっ? 随分と可愛いお客さんじゃーん!」
店の影からぬっと現れた、スーツ姿のゴツイ男。
ピアスまみれの耳をいじりながら、にやりと笑いかけて来た。
「常温保存出来る、ジャムとかシーチキンあるよ! あとパック入りのご飯とか、便利かも!」
わざわざ売り場に戻って、色々と教えてくれた。
ついでにお互い自己紹介をして。
「じゃあ立花くんも、今5年生?」
「うん、高木さんも?」
「そう。先週、お母さんと妹さんと一緒に、うちの学校来てたでしょ? 転校して来るの?」
と聞かれて、
「うん、2学期から。夏休み中なのに、学校にいたんだ?」
ちょっと首を傾げたら。
「手芸部の活動日だったから。
あのね、百均ショップで買った物を工夫して、ドールハウスみたいな部屋とか小物、作るのが好きなんだ」
少し恥ずかしそうに教えてくれた後に、
「2学期になったらきっと、大人気だよ立花くん! 6年の先輩たちも、『かっこいい』『アイドルみたい』って騒いでたし!」
にっかり笑顔を返された。
「いや別に、そんないいモンじゃないし……」
口の中でもごもご言い訳しながら、キャップのつばをぐいっと下げる。
ハーフの父親譲りの、茶色い髪とダークブルーの瞳。
この見た目のせいで、どこに行っても必用以上に人目を惹く。
髪と目の色が少し明るいだけの杏には、『お兄ちゃんだけずるい!』って、良く言われるけど。
変われるもんなら、変わりたかった。
いつの間にか俯いていた顔を、頭半分小さい黒髪の女の子に、ひょいっと覗き込まれた。
「どうして? そんなにキレイな目なのにっ!」
裏の無い、まっさらな笑顔に細められた、黒い大きな瞳。
肩先でぱつんと切られた毛先が揺れて、こちらの頬に触れそうになる。
『近い! 近いって!』
ぼわっと顔に血液が集まるのが、自分で分かった。
「ねぇ、それって伊達メガネ?」
「ひゃいっ……」
緊張して噛んで、ますます頬が熱くなる。
「もったいない! 立花くんがそれかけるの、人類にとって大きな損失だから!」
「人、類……?」
「そうっ!」
真面目な顔で、きっぱりと言い切る高木さん。
意味も分からず、こくこく頷いていた。
あれこれ考えるのが面倒になって来たので、夕飯はカップ焼きそばで手抜きすることに。
エコバッグを下げてスーパーを出ると、ぶわっとまた熱気が押し寄せる。
「暑っつ......」
買ったばかりのスポーツドリンクを取り出し、1本を杏に手渡しながら、大雅はふと思い出す。
『わたしの家、こっちなんだ。じゃあまたね!』
昨日手を振りながら、右側の道に走っていった、小鹿みたいな後ろ姿。
「お兄ちゃん? 早く帰ろーよ!」
スポドリを飲みながら、妹に促されて、
「えーと――今日はこっちの道、通ってみないか?
裏道見つければ、近道になるし」
「いいよー、行こ行こ!」
『この辺歩いてたら、ばったり会えるかも!』
商店街のある賑やかな通りの、1本裏の道に、兄妹は足を踏み入れた。
ラーメン屋や居酒屋の前を通り過ぎて奥に進むと、いきなりギラギラと、ネオンが輝く店が現れた。
よく分からない横文字の店名と、何だかキラキラしたお姉さん達がにっこり笑う看板。
やばい。
ここは、小学生が近づいちゃいけない通りだ!
「杏! 戻るぞ!」
ほぇ~っと目を丸くして、看板を見上げている妹の手を引っ張り、元の大通りに戻ろうとした大雅の前に、
「あれあれーっ? 随分と可愛いお客さんじゃーん!」
店の影からぬっと現れた、スーツ姿のゴツイ男。
ピアスまみれの耳をいじりながら、にやりと笑いかけて来た。
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