アンダーグラウンド

おもち

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楽しかった時間はあっという間に過ぎ、二人は駅前の広場を通り過ぎて、改札口まで来た。
しかし蓮はそこから立ち止まって動こうとしない。黒瀬は不思議に思いながら蓮を眺めていると、ふいに蓮が振り返り、そのまま黒瀬の胸にぎゅっと抱きついた。

「帰りたくない。…………黒瀬さんちに帰る」

蓮は黒瀬の胸に顔を埋めて、か細い声で呟く。その言葉に黒瀬は思わず苦笑いを浮かべて蓮の背中を優しく撫でた。

「あんまり可愛いこと言って困らせんとって?」

黒瀬の言葉に蓮は首を振る。

「蓮の気持ちは嬉しいけどな」

そう言って蓮をなだめるように頭を優しく撫でる黒瀬の心臓の音が、ドクドクと大きく響いているのは蓮の耳に届いていた。蓮は離れがたい気持ちで黒瀬の服をぎゅっと掴む。

「まだ一緒にいたい」
「ちょっとドライブして帰ろか」

黒瀬はそう言うと蓮の背中をポンポンと叩き、優しく引き離した。そしてスマホを取り出し、耳に当てて話し始めた。

「もしもし。俺や。今日ちょっと仕事遅れるわ。……うっさいな。用事終わったらすぐ行くから。……おう、任せたで」

手短に電話を終えた黒瀬は、蓮の手をぎゅっと握り、人混みを避けるように歩き出した。

「…送ってくれるの?」
「当然やろ。こんなに可愛い子、一人で帰らせられへんわ」

黒瀬は照れくさそうに笑い、蓮の頭をもう一度くしゃっと撫でた。

二人はそのまま黒瀬の車が停めてある駐車場へと向かう。車の助手席に蓮を乗せると、黒瀬はシートベルトを締めてエンジンをかけた。
蓮は窓の外を流れる街の景色を眺めながら、黒瀬が選んでくれた新しいスニーカーと服、そしてお揃いのキーケースが入った紙袋をぎゅっと抱きしめた。

「今日は一日、ありがとうございました。すごく楽しかったです」
「俺も楽しかったで。また、いっぱいデートしような」
「チャーシューパーティーの約束したもんね」
「米いっぱい炊いて集まろな」

蓮は嬉しそうに頷き、黒瀬の横顔を見つめた。
夜のドライブは二人にとってまるで夢のような時間だった。
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