アンダーグラウンド

おもち

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ある日の放課後、蓮は教室の窓からぼんやりと空を眺めていた。夕暮れのオレンジ色が、どこか憂鬱な気持ちを映し出しているようだった。スマホを取り出し、黒瀬にメッセージを送る。


『話聞いてほしいです』

それだけを打ち、送信ボタンを押した。

『今から迎えに行く』

すぐに返ってきたその文字を見ただけで、蓮の心は少しだけ軽くなった。
学校の門を出ると見慣れた黒い車が停まっていた。助手席に乗り込むと黒瀬は蓮の顔を見て優しく微笑んだ。

「どしたん、そんな顔して。なんかあったんか?」

蓮は何も言えずただ黒瀬の大きな手に自分の手を重ねた。黒瀬もそれ以上は何も聞かず蓮の小さな手を握り返した。

「カラオケでも行こか。周りに話聞かれへんから」

カラオケに到着した二人は受付を済ませて薄暗い個室に入る。蓮は黒瀬がソファーに座るなり、彼にしがみつくように抱きついた。

「ん~~……黒瀬さん……」
「なんや?」
「…………修学旅行なんて行きたくない。なんとかして」

蓮の言葉に、黒瀬は少し目を見開いた。

「修学旅行? え、修学旅行が嫌って言うた!?」

蓮は静かに頷く。その真剣な表情に黒瀬はいつものおどけた様子を引っ込めて蓮をそっと抱きしめ返した。蓮は黒瀬の胸に顔を埋めながら本音をこぼした。

「……みんなにも、先生にも、気遣われる旅行なんて楽しくない…」

その声はほんの僅かに上擦っていた。黒瀬は蓮の背中を優しくさすって、落ち着かせるように声をかける。

「優しさも鬱陶しい時あるよな」
「…一人のほうがマシ」
「なら無視したらええねん。優しさの押しつけは優しさちゃうで。堂々と一人で散歩しいや。それでグチグチ言うてきたやつは俺が片したる。……俺へのお土産いっぱい探してきて」

蓮は少しだけ顔を上げて、黒瀬の顔を見つめた。

「…電話しても良い?」
「ええよ。好きなだけ電話して。その日は頑張って仕事入れんようにするから」

その言葉に、蓮は少しひきつった笑みを浮かべた。それでもさっきよりはずっと明るい表情だった。

「修学旅行のしおり見たいわ。一緒に計画立てようや」

黒瀬がそう言って蓮の額にキスを落とした。そして二人は身を寄せ合いながら、修学旅行のしおりを広げ、二人だけの旅行プランを練り始めた。

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