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第3章 王子は狙われる
贅沢ですね
しおりを挟むひらりひらり。
ドレスの裾が広がり、殿下の外套も僅かに舞っています。
今はこのダンスフロアには私と殿下、2人だけ。
………そう、2人だけ。
しょうがありません。
夜会のファーストダンス、しかも踊るのは立太子が近い第1王子ですから、皆様壁に寄ってこちらをガン見。様々な方向からご令嬢の怨みの矢が飛んできます。
しかもなんなんだ!かなりこれ難しい曲なんですよ!最初にぶっこみますかね?!
殿下の巧みなリードに必死について行きます。
そして踊っていて考えるのは―――クリス様の事。
ターンをする度に視界に映る、紺色のコートジャケットを羽織った夜会仕様のクリス様は、いつもと変わらない柔和な笑みを浮かべてこっちを見ていて。
それに少しだけむくれてしまう我儘な自分に凹んで。
それだけでは無くて、デビュー初のダンスのパートナーはクリス様が良かっただなんて、更に贅沢な事を考えてしまう私は―――。
ぐいっ
いきなり身体を引き寄せられて一気に現実に戻ります。腰に腕を回され、殿下と私の鼻と鼻がくっつきそうな距離に、ギャラリーから悲鳴のようなものが聞こえました。
私も内心叫び荒れていました。
(殿下の馬鹿!!!!!!んな事したら駄目でしょう?!?!)
最近殿下に容赦なくなってきて、段々と父様や母様、兄様に近づいている事は、私自身気がついていませんでしたが……。
欲情を瞳に浮かべ、すっと目を細めた殿下は、声変わりをして低くなった声を更に低くして、私の耳に口元をピタリと寄せて、囁くように、息を入れながら言いました。
「ねぇリズ。私が目の前にいるのに、別の男の事を考えるなんて……随分余裕なんだね」
いえいえいえいえいえ。全く余裕ではないので勘弁して下さい。思わず口元が引き攣った私を見て、殿下はクスクスと笑いを零します。
「他の男に目をくれてやるなんて、許さない」
不敵で綺麗な笑みを浮かべた王子様は、何故だか分かりませんが、心底嬉しそうでした。ぐぐぐっと顔を寄せられる私は必死に抗います。
そろそろ危ない!と、そう思った時、丁度音楽が止みました。
た、助かった………。
「……残念」
「え?」
「ん?いいや?……さぁ、戻ろうか」
殿下が本当に小さな声で呟いた言葉は、私には聞き取れませんでした。私に言ったのか、独り言だったのか……。
「ねぇ、リズ。もう一曲如何かな?」
「いえ、大変光栄な事で御座いますが、辞退させて頂きますわ」
「ふふふっ、そんな事を言わずに、ね?」
………手を離して頂けませんか?殿下。
壁際に着いたので、そんなにきつく握り締めなくても良いんですよ。と言いますか、私は一刻も早くここから逃げたい。
と思っていたその時、フリーになっていた右手を誰かに取られました。ぱっと後ろを向けば―――――クリストファー様でした。いつもは緩い三つ編みですが、今は横に流して一つに結んでおり、礼服も相俟っているのか、いつもより大人っぽいです。
クリス様は流れるような動作で、その形の良い薄い唇に私の手を持っていきました。そして甲に口付けを落としたまま、私を見上げ、そして目元をゆるりと和らげました。その色気に当てられて真っ赤になってしまいます。
「ジゼル嬢、一曲御相手願えますか」
「はい、喜んで……!」
人の目が集まっているからなのか、殿下はぱっと私の手を離しました。「いってらっしゃい」と言ったその笑顔が酷く怖く感じたのは私だけでしょうか。
殿下を一瞥した後、柔らかく優しく引き寄せたクリス様。
手袋越しに伝わる熱と、大きな手、見上げれば鼻筋の通った綺麗な横顔。歩く度に香る彼の甘やかな香り。
その全てが、愛おしくて、素敵で、大好きです。
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(21件)
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うう…。
色々クリス様にも危うそうなところはあるけど私はリズの恋を応援したい!
殿下は殿下で、芯がある感じがかっこいいのだけれど。
クリス様が食えない人でも、彼のかっこよさはきっと全くの偽物じゃないと信じて。色んなことを乗り越えてほしい(T-T)
私は(殿下より)クリス様を応援しているのだと思います。
リズもクリス様もこのあとの急展開でどうなるのか、不安ですが、楽しみです。
久しぶりの更新、とっても嬉しいです\(//∇//)\
殿下、頑張って٩( 'ω' )و
大変遅くなってしまい申し訳ありません
亀更新ですが、これからもよろしくお願いします!
ジルフォードの応援有難いです……!
ありがとうございます(*ˊᵕˋ* )
柊月
複雑な関係性がとても面白く楽しく読ませて頂いています☺️
何気に私は殿下が好きなので幸せになって欲しいです…🤔
今後の更新も楽しみにしております🤗
感想ありがとうございます。
読んで頂けて大変嬉しいです。
ありがとうございます!
ジルフォードは幸せになれるのでしょうか……?
これから急展開(?)が待っていますので、是非これからもよろしくお願いします(*ˊᵕˋ* )
柊月