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お見舞い
しおりを挟む「ほら、僕からいっぱい養分吸っちゃっていいんだよ」
「ダメダメ……ここお家」
「うん、早く寧々ちゃんがおかえりって言ってくれる家に帰りたいなぁ」
「ちゅう風邪うつりますからぁ」
「ほら、【辰巳さん寧々を娶って下さい】って言っていいんだよ?」
「んんっ……あっ」
ふわふわな唇に優しく食まれてキスを拒めなかった。
辰巳さんの匂いにとろけるキスの合間の男の人の低い声に脳が痺れてくる。
香水? 営業の人は何か分からないけど皆良い香りするんだ、尾台さんももれなくいい匂いして、辰巳さんも首とか色んな所からいい匂いする。
私はそういう匂いがする様なものってつけないんだけど、イケてる人は何もしなくても香ってしまうものなんだろうか。
こないだ尾台さんが使っていたペンからもいい匂いしてビビった、貸した本ももれなくいい匂いになって返ってくる。
「このまま起き上がらせていいですか」
「んっ……」
「まだ体熱いね」
「怠いです」
起こされながらふわってする辰巳さんの匂いをくんくんしてたらバレてクスって笑われて恥ずかしい、眼鏡渡されて時計を見たら、うわ……夜の八時これ家族家にいる時間じゃないですか。
いや、勝手に入れる訳ないし、もうお母さんと顔合わせたのかなってゆうか何でうちの場所……。
「たちゅ」
「余計な事考えなくていいですよ、水飲めますか」
「ん、はい」
キスされてコップ渡されて水を注いでもらってコクッと飲んだら朝よりは喉痛くない。
「夜の薬飲ませたいので、少し食べられる? プリン買ってきたんですけど」
「プリン!」
しゅき! って反応してたら出てきたのコンビニとかで売ってるやつじゃないよ……。
「え、何それ高いプリンですか」
「ん? 高い……かな? まあ三つで百円ではないけど」
「そうだ! もしかして高価な手土産とか持ってきたりしてないですよね? 」
「価値観が違うので、高価とは言い切れないですが、ブリガリのチョコを持参しました。手土産は信頼構築のカギですからね、友好関係を築く手土産選びは役職柄得意です真心込めて選びましたよ」
ブリガリって何、ヨーグルト? 指輪? のとこ?
わからないけど、聞くのは止めておいた。
辰巳さんは陶器に入ったプリンを掬って口の所まで持ってきてくれて。
「口開けて?」
「い、いや!」
「嫌い?」
「だって恥ずかしいです、急に辰巳さん……近いし」
「ああそっか、ごめんねこんな顔で」
「そういうんじゃなくて」
食べたいんだけど、だって私は寝起きだし、辰巳さんは仕事終わりでスーツで格好いいし綺麗だしで落差半端ないよ!
ってゆうかいつの間にかパジャマだし、うわ、部屋……汚いじゃん!!!
辰巳さんはジャケットを脱いでベッドに上がってきて、やだやだ怖いおっきい外人怖い!
「はい、抱っこ」
「恥ずかしいって言いましたよね」
「でもこれなら正面からは見えないでしょ僕が見てるのが恥ずかしいんだよね?」
と後ろから抱いてプリンの続きを口の持ってきてくれた。
下唇をスプーンでトントンされて少し口開ければ冷たいプリンが入ってきて、とろとろで甘くってバニラの香りが広がって染み渡って。
「美味しい」
「良かった」
「もっとほしいです」
「はい」
三口位食べて、次を持ってきた手を掴んで辰巳さんを見上げて食べてってすれば辰巳さんはありがとうと笑ってプリンを食べた。
「こんなの初めてです」
「そっかまた寧々ちゃんの初めて貰えて嬉しいな」
「でも……部屋……汚いのに……来ちゃダメって言ったのに……」
「でも来てくれて嬉しいの?」
「プリン!」
「はい」
プリン食べながら部屋見渡して本当に汚さがヤバイな! いかがわしい本だって床に置いてあるし服だって脱ぎっぱなし飲みかけのペットボトルもある、何かよくわかないガチャガチャのカプセルも散乱してるしで……綺麗なのPCの前くらいだ。
辰巳さんはカラメルの所と混ぜて少し苦いかもって口に入れてくれた。
「今日はたまたま部屋が汚い日ですからね! いつもはもう少し……ほんの少し綺麗です! 別に片付けが苦手なわけではないですよ!」
「はい、荷造りしたい時は呼んで下さいね。朝、急に会話が途絶えたので心配になって昼に電話したらお兄さんが出たんです」
「ええ!!」
「突然男性が出て僕も、ええ!! ってなりましたよ。そして兄だと言われて…………それで僕らしくハッキリと寧々さんが好きで心配なので家に伺っても宜しいですかって言ったんです」
「?!!!」
「お兄さんは、どうぞ寧々も喜ぶと思います、との事だったので詳しい住所を聞いて来た次第です」
「そ……そうですか」
まあお兄ちゃんは反対する感じじゃないしな。
「色々考えたんですけど、そこで上司だなんだ、渡したい書類があるだ、なんて言っても意味ないよなと思ったんです。だって考えてみたら体調不良で出勤できない部下の家まで行って書類押し付けるってブラック甚だしいでしょ? だから偽りなく、寧々ちゃんが好きだから会いたいですって伝えました」
「…………」
「これが神のシナリオです、と」
「え、それ言っちゃったんですか!」
「いえ、心の中で」
「良かった! 隠しといて下さいね辰巳さんのそーゆーとこ」
「イエス」
グリグリ頭胸に押し付けて寄りかかって口開ければプリンを運んでくれて、何だこの時間! 家でこんなドキドキして心が満たされてく時間初めてじゃなかろうか!
「何か変な気持ち!」
「可愛いな、本当に」
「プリンが美味しいから許してるだけですよ」
「気に入ってもらえて良かったキスしてい?」
「まだダメです」
「わかりました」
自分で言っておいて、後ならいいのかよ、って突っ込み入れたくなるけど、お礼という免罪符でキスしたらいいか。
抱っこでご飯なんていつぶりだろうって目が合う度笑ってくれる緑色の瞳にきゅんきゅんしてる。
「寧々ちゃんのさ名前」
「はい?」
「安寧、康寧、寧静って安らかとか静めるとか……そういう時に使われる漢字だよね、寧って」
「んっと……そんな難しい単語で考えた事なかったかも、安らぎの意味なのは知ってますけど、同じ音で簡単だから覚えてもらいやすいなって位で」
「そしてもちろん僕は君からその安らぎを得てるけど君はどうなの?」
「どうなのって?」
「生きているだけで苦しいなんて、寧々ちゃんこないだ言ってなかった?」
最後のプリンを集めて辰巳さんは口に運んでくれて、ああ……そんな構ってちゃんな言葉言ってしまったかな。
「優しくしてあげるばかりじゃ疲れない?」
「意識してないのでよくわからないです」
「そっかじゃあ今日は寧々ちゃんが癒される番」
「?」
辰巳さんは食べ終わったプリンの容器を置くと、病院で貰った薬をプチプチ手際よく出して水と一緒に差し出してくる。
「夜のお薬」
「はい」
素直に飲んだら。
「横になって」
「ん? はい」
体を支えて寝かされて、過保護すぎて正直引いてるぞ! でもこんなのをメンズ同士がやってたら萌えるなって直ぐそっちを考えちゃう腐った頭。
実はこないだの部会で辰巳さんが桐生さんの頭を撫でた時デュフって思ってしまったのは内緒だ。
で、布団を掛けられて、ポンポンでもしてくれるのかなと思っていたら。
「足ちょっと貸してね」
「足?」
辰巳さんは足元に移動して、布団から私の足を出した。
「え? 何?!!」
「足ツボだよ、足裏って第二の心臓って言うでしょ」
「知らないですよ、やだ! ちょっと無理無理」
「元々マッサージしてあげようと思ってたんです。急に姿勢正すと背中辛いだろうなと、でも寧々ちゃん恥ずかしがってさせてくれないだろうから、ここなら一番僕との距離が遠いでしょ?」
「遠い、ですけど……」
そんなのさっきまで抱っこされて今更距離とか逆に足のが恥ずかしいよ。
辰巳さんは鞄から瓶を出して、
「ローションは止めてオイルにしました」
「え、本当にやるんですか、もういいですよ! 私足綺麗じゃないし怖い」
「色々調べたらお腹いっぱいの時はやらない方がいいけど、プリンくらいなら平気でしょ? 解毒効果もあるんですよ」
「解毒……」
「そう、老廃物を排出させて、毒を追い出して綺麗な体になれるんです」
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