【R18】モブキャラ喪女を寵愛中

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だーりん

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「診察してくれた医師がイケメンだったんですか」
「なっ」
「知り合いでしたか?」
「え」
「昔好きだったとか?」
「違います!」

 胸元と首にいっぱい辰巳さんの痕が着いて、こんなの体見る度恥ずかしいよ。
 大きな体が私に覆い被さってて掴んだ手首にまた赤い印を残してる。

「君の事だから一目惚れで心を開く事はないでしょう、彼とどんな思い出が?」
「?」

 辰巳さんは手首を舐めて太い血管を甘く噛み噛みしながら言ってくる。
 八重歯がたまに青い血管を掠めて、食い破られそうな恐怖すら覚える光景なのに辰巳さんの顔の造形が綺麗過ぎてアニメか何かのワンシーンみたいなんだ。

 シミ一つない真っ白い陶器のような肌に、眉間から筋の通った高い鼻、絵で描いたような綺麗な赤い唇、べっ甲のフレーム眼鏡の奥にある目は下睫毛がまず私の上睫毛より長い、切れ長で平行に二重が刻まれてて、瞼を上げれば深いグリーンアイの虹彩は複雑で吸い込まれそう、まるで宇宙だ。


「あの……」
「そうだな、まずは医療事務講座の資料請求ハガキ破り捨ててもいいですか、後溝田橋診療所の事務員募集の紙も」
「何でそれ」
「ん? 散乱してた紙類の中にピンときたものがあって導かれるように手に取りました。そうそう内科の午前診療は五味 洋平医師と三小田 蛍医師て記載されていましたね。略歴、認定資格年から逆算して五味医師は50代だろうから寧々ちゃんを惑わしたのは三小田先生の方かな。検索したら地元の中学校で表彰された記録がありましたよ、君と……同じ中学だね。そこにある卒業アルバムの背表紙と同じ学校名でした」
「ちょっとやだ、怖い辰巳さん!」
「恐怖まで感じるレベルではないでしょう。簡単な事ですよ、宇宙の包囲網を狭めてみただけです」
「う」

 何その包囲網、別に何にもない、のに……いや、あったの? か?!

「煮え切らない反応をするね、不快だな」
「あっと……久々に会ったからビックリして……」
「して?」
「診療……してもらって……」
「もらって?」
「昔ちょっと色々あって、謝ってくれて」
「謝るって? 寧々ちゃんが傷つけられるようなトラブルがあったの?」

 また唇が胸に戻ってきてキスして、今度はお腹の方にも印つけてきて。

「あ、あの……でもそのきっかけは私が悪いからなので、後若さと言うか……多感な時期じゃないですか中学生って」
「その態度が釈然としないと言ってるんだよ、僕には彼を庇ってるように聞こえるんだけど。庇うような間柄なの?」
「庇ってると言うか……辰巳さんさっきから……怖いです」

 家に人もいてお腹たまに噛まれてダメな事ばっかりされてるのに初めて見る冷めたような緑の瞳にちょっと泣きそうになってる。

「そうだね、今は少し怖がらせてるかも。だって寧々ちゃん勝手に僕の前から消えようとして男を庇ってるんだよ。そんな何年も前の話題を持ち出して謝罪するなんて確実に君に気があるよね? それが分かっていて、事務員募集の紙を持ち帰るってどんな心境なのかなと疑問なんだけど。僕には家に来るなと言ったしね」
「あ、あ、あ……あの、色々重なってます。紙は捨てるのが面倒臭かっただけだし、講座は…………んっと今は受ける気はないです。三小田君に関しては何とも思っていないですから」
何とも思っていないって事? 気があるけど?」
「そんなの知らない」
「ハッキリないと言い切れないのか」
「辰巳さ……」

 お腹の所から急に緑が近付いて柔らかい金髪が私の頬を掠める、辰巳さんはそれを耳に駆けて眼鏡を直すとまだ怒ってる目で私を見てきて。






「手前の嘘もつけない子供が成熟した体で無闇に男に近寄ってはいけませんよ」




 視界滲んできて、理由はわからないけどどうにもこうにも、今この人に嫌われるのが一番怖い。

「辰巳しゃ」
「ああごめん、泣かないで。分かっていたんだけどさ……病院だったから仕方なかったよね。医療事務講座も僕のせいで進められたんだろうし、急に僕が行くなんて言ったら断って当然。そう、だから器が小さいなって思ったの。全て不可抗力の偶然の産物なんだけどその彼の方に風向きが変わってる気がして不愉快だっただけ。そして僕にもこういう感情があるんだよって知ってもらいたかったの。まあ僕は立ち塞がる試練には立ち向かうだけだけれど」
「試練なんてないですよ。薬貰ったし、三小田君がいるならもうあの病院には行きません」

 キッパリこれならどうだと言ってみたら、辰巳さんは少し黙って笑った。
 優しいキスをしてくれて唇を擦り合わせた後に頬を撫でてくる指輪が冷たい。

「そっか、ありがとう僕の事考えてくれて。でも行きません、はただ逃げてるだけだから、町で偶然会った時や密室や逃げられない状況で会ったら困るよねえ、バスの中とかさ。だから、行きませんじゃなくて、キッパリお付き合いしてる人がいますって断って立ち向かってくれていいんだよ?」
「あ……」
「なあに? 僕達まだ付き合ってないでしょって?」

 頬にいっぱいキスされて、こ、こんなの逆に付き合ってなきゃしちゃいけない事だった!

「でも、私……」
「覚えてる? こないだ君が本当に望んでるモノを僕は知ってるって言いましたよね。人として当たり前の権利なのに君はそれから逃げてるって」
「ん? ああ、はい朝ですよね?  ……何ですか私が求めてるモノって」

 手の甲で頬を撫でられて気持ちよくて綺麗な唇を見つめた。





「幸せだよ。寧々ちゃんはさ、自分が幸せになっちゃいけないって心のどこかで思ってない?」




「…………」
「あ、目逸らした」

 無意識に追求から逃れたくて顔を横に倒した、そっかまた逃げてしまった、当然逃げる事なんて出来ないけど。

「究極の放棄は自分を殺める事だからね。絶望の中をさ迷って、息吸うのも苦しいのに生きる事を放棄しないのは何かを償ってるから? だから幸せになっちゃいけないの? 話聞いてないからよくわからないけれど」
「償い……」


「贖罪? 罪滅ぼし? 誰が君を断罪し放赦するの、君はいつ罪から解放されるの? もしその枷を自分で課したのなら誰からも赦して貰えない無限地獄に陥るよ。だって寧々ちゃんは優しいから罪を犯した自分を一生赦さないでしょう?」


 耳に直接低い声で言われて、そんな難しい言葉直ぐに意味を理解できなんだけど。
 黙っていたら辰巳さんは顔を離した。


「まあ、何にせよネガティブはいけませんよ。後ろ向きに考えても時間は前にしか進みません。同じ物事を明るく捉えるか暗く捉えるか、ならどう考えたって明るい方が歩きやすいでしょ」

「でも私超根暗なんですが」
「大丈夫、前に言いましたが心も体も鍛えられます。日々鍛練、小さな壁も大きな壁も乗り越えてこそ人生です。心身ともに大きくなる事が成長ですよ、頑張りましょう僕が側にいます」
「部、部長……っぽい」
「ええ、僕こう見えて管理職です。その寧々ちゃんの、私は根暗だからと諦めるのも、決して悪くないですよ引く場面は引くって精神ね。諦めるって公私共に重要です、明らかに結果が出ない事をダラダラ続けるのは時間の無駄ですからね。だから諦めるとこは諦める、それで何で諦めなければいけなかったのか考えて対策を練って次に備えて行動を起こす。仕事でミスした時と同じですよ、挽回すれば諦めだって無駄じゃないでしょう。自分の根が暗いせいで不利益を生じたなら、明日は今日より笑顔を増やしましょうね。はいもう暗い話は終わりにしましょう体に障ります」
「はい」

 辰巳さんがいつもの笑顔に戻ったので安心して、ふと自分の体見てみたら前は全開だしパンツとブラだしイケメン被さってるし。

「あの辰巳さん降りて下さい! 人が来たら……」

「なぜ、ここからが癒されタイムの本番ですよ。今までのは寧々ちゃんの内にある毒を少し吐き出してもらったのです」

 眼鏡を外して金髪をかきあげて耳にかけて、辰巳さんは私を見下ろす、ぐっと顔を額が着くくらい近付けてきて。

「出した分は補給しないとね?」
「ほ、補給って何を体に入れるんですか」
「愛」

 即答されて、両手で顔を持たれて私も咄嗟に辰巳さんの顔を両手で挟んだ。
 あ、ちょっと待って何か掴まえちゃったけどこんな綺麗な顔触って良かったのかな。
 目が合って笑ってくれたけど、まだまだ上手に笑い返せない。

 から、だから、仕方ないから自分から辰巳さんの顔を引っ張った。
 目瞑ってキスして離したら翡翠が驚いたように瞬きして目を細める。

  


「最高に可愛いよSweetie」

「すうぃ?!!  あの……辰巳さんって自分の事日本人だって言ってませんでしたっけ?」
「はい、日本人ですよ」
「何でそんな、ルー語みたいな……」
「藪からstickに何を言うんだい寧々ちゃん」
「いやだから恥ずかしいんですよ! 私に全然合ってないでしょ! HoneyとかSweetieとか!」
「ふふふ寧々ちゃんも僕をDarlingって呼んでいいんだよ?」
「だ、だーりん?」
「なんだいJuliet」 
「?!!」


 Never possible!!!
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