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連載
えったんと女子会
「もーえったんってば本当になぁあ~んにもッ!!分かってないんだからさぁ!」
「ご、ごめんなさい」
「男でできた穴は男で埋めたいのってゆうか男じゃなきゃ埋まんない訳」
ぷぅっと口を膨らませためぐちゃんは超絶ご機嫌ななめで、お通しの鳥レバーと野菜のテリーヌをフォークで突ついていた。
「てっきり、えったん厳選の超イケてる会社の人でも誘ってくれてるのかと思ったのにぃ!」
「いるわけないじゃん、私ただのしがない事務だよ知ってるでしょ」
「知ってるけどーえったんモテるじゃん!」
「は?」
「こないだ、私が来客にお茶出したら、尾台さんはお休みなんですかって言われましたよ!」
「うん? それは私に用があったからなのでは」
「そうだよ! えっちゃんに! 用が! あったんだよ! 帰りわざわざこっち来たじゃん菓子折り渡しにさ!」
「だから菓子折り渡す用があっただけでしょ。ああ、あの人ね……あれはちょっとトラブルがあって私が対応したからそのお礼だよ」
「で? 菓子折りでお礼は済んでるのに、何で食事誘われてんの?」
「それは次の仕事の話だよ。接待的なもの、だって直ぐ有沢さんが間に入って話してたでしょ。結局私は行かなかったし」
「府に落ちん!!」
「何でも直ぐに恋愛や好意に繋げないでよ。仕事って信頼関係と上辺の交友関係で成り立ってるんです。って営業さんが言ってたよ? 興味もないのにフェイスブック見んの面倒臭いって、でも目通しておくと会話のキャッチボールが生まれて契約に繋がるって」
「でも事務員のとこわざわざ来る?」
「営業のね? 電話対応してるのなんて大体私達営業事務でしょ。声聞けば誰だか位わかるよ、その位には近い関係、でもそれだけ」
に
めぐちゃんはムスッと私睨んでたけど、カラフルな可愛いサラダが来たらスマホのカメラを起動させた。
画面を操作しながら、
「でもこないだ花貰ってたぁ!」
「それは、たまたま商談に同席した時に花の話になったのを覚えてくれてて、会社の近くのお花屋さんにその花があったからって」
「あったからって買うかな? 花を、わざわざ!」
「買うよ、桐生さんも大口にはご機嫌取りにお土産片手に行くって」
「だから、えったん事務!」
「営業のね。厚意だからね? 好意じゃないよ」
「あのたっかそーな万年筆は?!」
「いつも世話になってるんでって……え? 高いのあれ、でも他の人も貰ってたよ?」
「本も貰ってたぁ!」
「あれはあの人の会社の出版物だよ、読んだ事ありますって話したら関連本くれただけ」
「そこら辺のプレゼント攻撃してくる男ちょっと呼んでよ~」
「残念ながら、私の携帯に男の番号は片手程しか入ってないんだ。すまんな」
「一番イケてるのは?」
「父、文敏(52) 放射線技師」
「もぉぉおおお!!!」
「知らないの? 私こないだまで処女だったんだよ」
「もぉぉおおお!!!」
私からめぐちゃんをニッコリさせられるような男なんか出て来る訳なくて、そのまま好きなタイプの男の話したり……苦手な社員の話したり上手だったネイリストの話したり、近況はちょっと擦れられなくて、でもTHE 女の子、な話していたら時間はもう二時間と過ぎていた。
私はあんまりお酒飲んでなくて、うーん……こういう飲み方もできるのに、何で飲み会になるとはめはずしちゃうんだろうか。
ちびちび飲みながら話聞いて、めぐちゃんは普段よりペースが早かったと思う。
「水飲む?」
「そんなもん飲んでアルコール薄めるくらいな初めからお酒なんて飲まんちゅーの!」
「あ、うん。わかりますわかります」
痛い程わかりますその気持ち、後で気持ち悪くなるけどね。
一応頼んであったお冷やのグラスをずいっと私の方に押し返すと、めぐちゃんは細い指でワイングラスを持って真っ赤な液体を眺めていた、そんで小さくため息を漏らした。
何だか胸がきゅんと痛んだ。
「私はわかんないんだけどさ、失恋? って辛いよね? 穴が開くって胸に? よくわかんないけど大丈夫?」
「まあ…………そーだね、今までは一緒にいた時間とか思い出したり? 色んな感情に悩まされるよ寂しかったり悲しかったり悔しかったり……でもそんなの全部全部ぜーんぶ」
「うん」
めぐちゃんはワインを全部飲み干して言った。
「無意味!」
「え」
「無意味だよ、意味ない。人を恨んだりさ、その時間ってもったいないよ、だから私はあんまり考えないかな。ムカついたって何も変わらないじゃん、言えもしない文句なんて考えるだけ時間の無駄だよ、私一人がイライラしたってさ時間は進んでいくんだよ、その分私だけ取り残されちゃうじゃん」
「ふーん、そっか…………」
まあ、私もしょうがないやとかシャットアウトしちゃうタイプだから切り捨てる考えは分かんなくもないかな。
「えっちゃんさ…………居たんでしょ?」
「ん?」
「日曜日、袴田君と佐々木さんが話してる所に」
「…………」
ドキッ! って心臓鳴って何も答えられないんだけど、それは肯定を意味してて、めぐちゃんは視線を合わせないまま自分と私のグラスにワインを足した。
「佐々木さんが言ってたから、日曜日に袴田君に釘を刺されたって……日曜日ってえっちゃん袴田君とデートしてた日だよね。いいよ隠さなくて、えっちゃんが私の不利になるよな事言う訳ないし」
「うん、居た黙っててごめんね」
「どうだった?」
「どうだった……かは分からないんだよね、私は隠れてたから」
「そっか、佐々木さん一人?」
「んっと、子供と一緒だった」
「へぇ、可愛いかった?」
「うん、良い子だったよ」
「仲良かった?」
「えっと、良かったと思うよ手繋いでたし。本当に仲が良いのかはわからいけど……」
そしたら、めぐちゃんはそっか……って笑ってワインを一口飲んだ。
うわわわわ! 胸、死ぬ! 失恋ヤバイ、私まで苦しい。
何か若干お酒頭にきて、言いたい事ぐるぐるして。
「あの待って待って! ごめん、本当よくわかんないから聞くんだけど、そのそっかで笑うのはなんなの?」
「お?」
「正直にね? 正直に言いますとね。私はちょっとイラッときたんだよね、その人様の彼氏を悪く言いたくないんだけどさ」
「もう彼氏じゃないよ」
「うん、じゃあハッキリ言うけどさ。ムカつかないの? 嫁も子供もいる癖に若い子に手出してさ、ステータスだなんだって言ってたから、きっとめぐちゃんとの付き合いもその一部なんだよね? それで自分の立場が悪くなったらさよならって、それでめぐちゃんが悲しい顔してて、正直イライラしてますよ! えっちゃんは!!」
「まあ私も妻子ありなの分かって付き合ってたし」
「お前もお前だな! 何? これ、どうなったら正解なのか良くわかんなくて終着点がなくてもやもやする!」
何か急に頭に血が回ってきて、私もワイン煽ったら、めぐちゃんはケラケラ笑った。
「本当えっちゃんって優しーよね。不倫なんてしてる時点で普通は関わりたくないのに、私が失恋しようが訴えられようが自業自得なのにさ? こんなに親身になってくれちゃって。ああ……えっと着地点……うん、私の着地点は赤ちゃんが欲しかったかな」
「は?」
「ベビーですよベビー☆」
「不倫相手の?」
「そ」
「結婚……しないで?」
「うむ!」
いや、ちょっと意味わかなくて、ワイン足して飲んで頭シャキッ……! ってなんなくてやっぱ分かんなくて。
めぐちゃんはワインを飲んで、にこって超可愛い笑顔のまま続けた。
「相手の家庭を壊すとか、不倫で出来た子供幸せになれないとか? まあ頭に浮かんでるのは一般的なそうゆう事でしょ」
「うーん……多分そんな感じ」
「えっちゃん本当正直好きだよそーゆーとこ」
すすすっとワインが綺麗な唇に吸い込まれて、喉を鳴らすとめぐちゃんは一息ついた。
「私さ、その…………ああ、これから話す事は出来たら内緒にしてほしいんだけど宜しくね☆」
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