総務の袴田君が実は肉食だった話聞く!?

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連載

セオリー

「あのさぁ、尾台ちゃんと袴田君ってそんな仲良かったっけ?」
「う!!」

 出されたほうじ茶で手を温めていたら、営業部のジャニーズ系と謳われる有沢さんがいつもの営業スマイルと明るい口調で聞いてきた。










 四人で行こうと誘われて正直嫌ですけど、でもこの後の仕事もあるし断る理由が見当たらなくて(だってここで私非処女ですけど!! は意味不明だよね)そうですねって笑ってみた所、袴田君は私の笑顔を見て、では四人でと合わせてくれた。

 会社よりももっと奥まった場所にある天ぷら屋さんはその名の通りの喧騒から離れた静かな住宅街にあった。
 それなのに有名みたい、行列ができてる。

「お昼中に間に合いますか?」
「心配しなくても大丈夫ですよ、ここはランチのメニューが天丼の並、上とかき揚げ丼しかないので回転率は速いんです」
「そーそー注文したら直ぐ出てくるから、ぱぱっと食って出て行く店って感じ、ああもちろん尾台ちゃんゆっくり食べて大丈夫だからね」
「尾台天ぷら好きなの? 僕達外出多いし昼って毎日外食だから色んな店知ってるよ」
「そ…………そうですかセレブですね、あの……私にあんまり話し掛けなくていいです。三人でしゃべって」

 何その反応ーって有沢さん笑ってるけど、嫌だって君達なんか目立ってる感じがしてあまり話したくないのですが。
 一緒のグループだと思われたくない、その店の前にある傘立ての壺と一緒に立っていたい。
 影みたいに気配消しつつ、ちょこちょこ話して待ち時間はさほど苦ではなかった。
 急な腹痛で会社戻るって選択肢もあったんたけど、天ぷら屋さんに行きたい気持ちの方が勝っていた。

 袴田君が言っていた通り、列はどんどん詰められていって十分もかからないで店に入れた。

 四人席で、私は袴田君の隣で(良かった)目の前は桐生さん(どうしよう)。
 席に着いて直ぐおばちゃんがお茶と注文聞きに来て、私は天丼一択!
 桐生さんは天丼のセットでかけうどんがつくんだって有沢さんはかき揚げ丼だった。

「俺は天丼の大盛りと……尾台さんも天丼でいいんですか」
「はい。ああでもご飯少な目ってできますか? 私皆と同じペースで食べきる自信ないです」
「ああ……ならすみません、今の大盛りキャンセルで天丼二つでいいです」
「はいじゃあ、かき揚げ丼、天丼二つに天丼セットね」
「お願いします」

 おばちゃんメモ取りながら厨房へ戻って行った。

「尾台さんのご飯半分俺に下さい、食べられそうならそのまま食べていいし」
「わかりました」

 普通に頷いてるのには訳があって、こないだ牛丼屋さんに行った時、途中でお腹いっぱいになっちゃって食べて貰ったのだ。
 そっか袴田君がいるから食べて貰えばいいんだ安心。

 店内は昼休み中のサラリーマンで賑わっていて女のお客さんは一人だけだった。
 嫌いなお店ではないけど、正直おしゃれな感じではないし、私も昼から天ぷら平気かなってお腹ドキドキしてる。

 夜の部は居酒屋になるって専門のそば職人が来て、残業帰りに食べる天ぷら蕎麦がすげーおいしーんだよ!
 って有沢さんが教えてくれた。

「尾台、いつも二次会参加しないけど、ここの上広めの宴会席あるからそこでやる日もあるんだよ」
「小エビの素揚げがちょー旨いの! もれなく一品目しか記憶ないけど出し巻き卵も餃子もいけるって」
「へえそうなんですね」

 あの飲み会の話はあまり聞きたくないのですが。
 そしたら袴田君が箸出しながら、

「そうだ俺ししとう苦手なんで尾台さん食べて下さい」
「ん? はい、それはいいですけど今までどうしてたの」
「丸飲み」
「逆に辛くない?」
「味覚を封じる最終手段ですよ、食べ物粗末にしてないからいいでしょう」
「良いとか悪いとか言ってるんじゃなくてさ、喉痛くないのかなって思ったから聞いただけよ」
「精神統一してから飲み込んでるんで分かりませんね」
「そんな嫌いなの」
「だって苦みしかないじゃないですか、甘味もあるって言いますけど、苦味の中にでしょ、それ結局苦いですから好んで食べません。でも普段は他人の不快にならによう口には出してませんよ」

 眼鏡キラっじゃないよ。
 って湯呑両手で擦りながら袴田君見てたら、



「あのさ、尾台ちゃんと袴田君ってそんな仲良かったっけ?」
「う!!」


 と前に座っていた人に少年のような笑顔で聞かれてしまったのである。


 有沢 大和、二十八歳 童顔でありながらもアダルト動画売り上げトップの敏腕営業。
 そもそも私を尾台ちゃんって呼ぶの有沢さんが発端だったりする。

「えっと……」
「尾台さんとは忘れ物を届けたのをきっかけにお話する仲になりました」

 尽かさず袴田君が答えてくれて、うん! その答えに偽りはないと思う!!

「ふぅん、忘れ物って? 何?」

 ってそこまで突っ込んで聞いてくるんだ恐ろしい!

「ポーチです、中身はお答えできませんがとても貴重な」
「ちょっと袴田君化粧ポーチでしょ! そこ変に濁すと気持ち悪い感じになるから止めて下さい!」
「あはははは」
「何が面白いんですか有沢さん、袴田君も眼鏡直してなくていいから」
「へえ、じゃあ忘れもの云々で尾台と袴田君って昼飯まで食う仲になったんだ? 僕ら誘っても一度も来てくれなかったのに」
「え? だってそれはお昼持参していたので」
「翌日の誘いだってNGだったけど?」
「えっと……」
「今日はたまたま、お弁当を持参していなくて昼食を一緒にする事になったんです、桐生さん達は外出していたでしょう?」
 袴田君言い返してくれたけど。
 こ、この雰囲気ってなんなの? 怖い事になってないよね?
 有沢さんはふんふんって頷いた後へラッと気の抜けた笑顔で言った。









「てゆうかさ、尾台ちゃんってプライベートな話全くしてくんないし、俺も気使ってあんま突っ込まなかったんだけど彼氏いないんでしょ? だったら俺と付き合うのどう?!」












「は?」

 俺俺~って有沢さん自分の事親指で差して、皆で天丼待ってる午後十二時十七分。

「だって俺ずっと尾台ちゃん可愛いって思ってたし、でもなんか周りが手出しちゃいけないみたいな空気作ってたじゃん? 実際色々あったしさ、でももうそれも時効なら俺尾台ちゃんけっこ―好きなんだけど、どう? 来週から桐生君かっちょさんになるし俺営業トップになっちゃうよ! 彼氏が営業トップのイケメンなんて最高ダネ☆ よし付き合っちゃお!」
「いやいや、無理です無理です無理です!! 急に何言ってんですか」
「即答とかマッジ凹みーっでも急じゃないならいいんだ! 俺達営業の必殺技ポジティブシンキング発動!! んじゃ今度改めてじっくり言いに行くねー」
「いや来ないで下さい」

 一見屈託ないように見えて実は二十八才だし、無邪気じゃない笑顔が怖すぎて袴田君見たら、ああ、爪噛んじゃうんだ! 前髪の下の眉間寄ってる死ねばいいのにって言うの我慢してる!

 ほんの一秒袴田君と目が合って灰色が細くなった瞬間机の下で手が伸びて来た。
 おっきい温かい手が膝小僧撫で回してきてもじつく。

 袴田君! って言いたくても言えないからとりあえずお茶でも一口飲もうと思ったら湯呑に添えた手に桐生さんの手が重なった。

「尾台、営業てさ? 難色示されたくらいじゃ引き下がらないんだよ」

 挑発的な茶色い目が真っすぐ見てきて、袴田君の長い指が内腿を引っかいてストッキングを滑る。
 ぞぞぞって袴田君の方側の腕鳥肌立って、スカート少し上がってる人差し指でこちょこちょされて変な息漏れそう。

「な、何ですか? 仕事の話?」

 話していた方が気が紛れるって答えたら。

「そう、むしろ反応があったって好天的に捉えて次の攻撃の準備すんの、反応するって事はこっち気にしてる証拠だから」
「俺達はそっからが勝負だよ」
「あの、ッ」
 ギリっと爪を立てられて、言葉が止まって。






「でも彼女が嫌がっているのには変わりはないですよね。仕事と女性の気持ちを同等に扱うなんて、尾台さんを商品かなんかとでも思ってるんですか? ……不快な営業のセオリー押し付けてくんじゃねぇよ」







 それは低い声だった。

「何何~? 目付き悪いよ袴田君! でも尾台ちゃん今誰のモノでもないんでしょ?」
「袴田君っていつも冷静で自若としてるけど、感情があるんだね」
「息してますし好き嫌いもありますし、人間ですからね」
「ちょっともう!」

 空気! 怖いよ! って机ポンポン叩いたら、ドンッってお盆が置かれて、

「はい、こちらまず天丼三つにかき揚げ丼ね、直ぐセットのうどん持ってくるから」


 私じゃ収拾つかない雰囲気を払拭してくれたのはまさかの天ドンだった。
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