総務の袴田君が実は肉食だった話聞く!?

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おしまいの後

らいおん君とありあ君

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 あー……折角の青春だと言うのにあー……。
 あー……何もやる気が起きない、あー……。
 あー……絵夢ちゃんに会いたいああああああー……。

「ぁぁあああ…………!」
「うるさいよ」

 授業が始まるまで机に突っ伏して失ってしまった恋の行方について考えてみる。
 いや、考えたってもう意味なさそうなんだよなぁぁああ!!

 ちくしょーあんのクソメガネ暗い時はよくわかんなかったけど、明るいとこでみたら前髪上げてたし意外とイケメンだったんだよな。
 何かすげー金持ちっぽいし、さっきりじちょーに会ったから名前出してみたら、あの温厚なりじちょーせんせーが一瞬眉間を寄せたぞ。





「せんせーせんせー」
「はい、何ですか尾台君」
「袴田 雄太って知ってます」
「あ? 袴田 雄太?」

 理事長先生は寄った眉を隠すように眼鏡ぐって押し込む。

「そーそー凄いヤツでした?」
「全然凄くないですよ、非常に不快な方でした」
「え」
「あ、いえいえ知人を悪罵するのは紳士の行いではありませんね。どうでしたか…………彼は私の同級生でしてね、成績だけは優秀でしたが、常に突っ掛かってくるし口も汚いし素行も悪いしあまり良い印象は残っていませんよ。なぜか私と寮の部屋まで一緒で良く髪の脱色を手伝わされましたね」
「え? 脱色? ブリーチ?」
「はい、俺は何にも染まらないとか中学生みたいな事言ってマスクもしてたし、体格もいいして不良みたくなっていました」
「ヤ、ヤンキー」
「まさにそうですよ、ほら彼目付きがあまり良くないでしょう校内暴力こそ起こしませんけど、他校の生徒から絡まれるんですね。で、売られたケンカは基本買う姿勢を貫いてたので生傷絶えませんでしたよ。ただ帰り道が一緒なだけなのに何度も巻き込まれてとてもいい迷惑でした。私全然関係ないのに彼のせいで命を狙われるはめになって仕方なくボクシング部にも入部しましたからね。ケンカで体力取られると後で勉強する体力なくなるので、面倒事は一瞬で終わらせたいじゃないですか。で、彼にも入部を促したのに当の本人は写真部に入ってて「時間ないから無理、お前が習った事を効率的に俺に教えればいいだろ、ウダウダ言ってねぇで早く部活行けよ」なんて言うもんだから…………ほらちょっと話しただけでも凄く自分勝手で不愉快な人でしょ。ボクシング自体はストレス発散になって良かったですけどね」
「やなヤツですね」
「ああー……それで彼は確か京大に行ったかな」
「京だっ…………!」
「ええ、ちなみに先生は東大ですよ、ふふふ尾台君もお勉強頑張りましょうね。それでその後は知りません。まあでもとてもじゃないけど、まともに社会で働けるような性格ではないから学歴だけもて余してその日暮らしでもしてんじゃないですか」
「はあ」
「ああ、でも敢えて良い点を述べるとするなら、どんなにケンカで強くなっても自ら暴力を振るうような真似はしなかったですし。逆に些細な冷やかし程度でも虐めに繋がりそうな現場を見た日には救済とか訳わからない事言って加害生徒に蹴り入れてましたね相手が何人いても。そんなとこです」

 との事だったよ、良かったケンカしなくて。
 そして何か色々色々情報が絡がってないか、絵夢ちゃんにはすげー優しい笑顔向けてたぞ。
 しかも会社建て直すくらいの頼れる人なんだって言ってた気がするけど。

 あの大量のエロ本所持してた絵夢ちゃん手懐けるんだから、エッチも上手いんだろうし…………。
 え? 絵夢ちゃんとエッチしてんの? 何か絵夢ちゃん縛ったり罵られたりちょっと無理矢理なのが好きだったけど、あ? マジで? そんな事してんの?

 うわぁ凹む。
 あああああ……あの時無理矢理縛ってヤッときゃ良かったかなぁ。




 まあ要するに勝機0。



「死にたーい、苦じぃー会ってくんない寂しいよぉお!! 辛い辛い辛い辛い辛ぁあい!! またいっじょに暮らじだいよぉお!!  はぁぁああああ!!」
「ちょっとらい君!! ボクの机で不幸な溜め息を吐くの止めてくれないか。さっきからうるさいし凄く迷惑」
「うっせーな、後ろの席がお前なんだからしょうがないだろ」

 と俺の後ろに席を置く、おののえ ありあは茶色い長髪を後ろに結わいて問題集にペンを走らせながらオレに冷たい視線を送ってきた。

「だから、自分の席でしてよ。一秒でも早く前を向いて」
「ああああ! うるさい、今のオレに前を向けとか言うんじゃねぇよ! 現実なんて見てたまるか!」
「もう! 大きい声出さないで。ボクだって今傷心中なんだって言ったでしょう」
「傷心? ああ、だから最近女装してないの」
「まあね、趣味やる気にもなんなくてさ」
「良かったよ、今のオレならあのありあに優しくされた日にゃ、ああ別にこいつでもいいかもとか思っちゃってたかもしんねー」
「ボクがやだし!! 何気持ち悪い事言ってんの」
 って机に伏せたままの紫の頭を殴られた。

 で、その日の昼休み、「おいDQNコンビー委員長様がお呼びだぞ」と委員会から呼び出しをくらった。

 そうオレとありあはDQNコンビなんて呼ばれてる、まああれだよ、DQNネームコンビの略だよ。
 ありあはいいよ、親オペラ歌手だからそっから来てるし。
 問題はオレだな、なんだよ「マジ強そう」ってふざけやがってクソババー、こっちは名前のせいで人生弱者からスタートしてんだぞ自己紹介で胸張れたのなんて幼稚園までだったからな!

 名前で舐められるから気までは弱くならねえようにと口調は荒く態度は常に威圧的にしとかないといけない僕の可哀想な気張った人生、それを優しく包んでくれたのが絵夢ちゃんだったのにぃいい!
 らーいちゃんがおーっとか言って抱っこしてくれて頭パクッとかやってくれたんだぞ、ちゅっちゅしてくれたんだぞ、結婚してくれるって約束してくれたのにぃ!
「わぁああああ!」
「だからうるさいったら、次叫んだら殴るからね」
「おう、殴ってくれよやるなら意識がなくなる位な! そん位してくんないと、もうオレはどうにかなってしまいそうだよ」
「キモッ…………でもまあボクも人生で一番落ち込んでるよ今回は……はあエッチしたかったぁあ!」
「本当だよな……」

 で、風紀委員の会室をノックして中に入ればうちの学校で一番格好良くて有名な金髪碧眼フランス人ハーフの委員長が待っていた。
 ああ、あの実姉との交際を公言している先輩だ。

「悪いな来てもらって、これ新しい腕章、明日お前ら校門当番だろしっかりやれよ」
「はい」
「はい」
「っつかあれ? らい、あのバカみてーな白い頭止めたんだ」
「バカみてーじゃないけど、まあ……色々と反抗期もそろそろあれかなって」
「ありあのセーラー服は」
「ボクは反抗してた訳じゃないけど……その……色々あって」
「ふぅん? まあお前らが変な見た目してっから風紀委員ブチ込まれたんだし並みに戻れば教師共も万々歳だろうよ。で、何? 失恋でもした?」
「「ヒィッ!」」

 長机の前で腕章を付けて調整してたら二人で固まってしまった。

「単純だな、で失恋って何? まさか一回振られた位で失恋とか言ってる? クソだな死んでいいぞ」
「振られたっつーか結婚する事になって」
「ああ、ボクもやっと再会できたと思ったのに結婚するって……」
「……結婚かぁ……あ? 結婚? 何でそんな隙与えてんだよ。らいの叔母って一緒に暮らしてたんじゃないのかよ」
「ああ……うんっと二年前まで一緒だったんですけど色々あって出てって……」
 答えたら先輩は青い目をぐるってやって呆れように言った。

「ああ、そりゃお前が悪いよ。俺てっきり一緒に暮らしてんのかと思ってた。俺が18になる年まで姉に告るの我慢できたのは姉を家に監禁して他人との接触を遮断してたからだからな?」
「監禁!?」
「ああ、軟禁? たまにゲーセンとか行ってたみたいだし、ただ他人との交遊を一切持たせなかったし飯も三食俺が作って小遣いも俺が渡して携帯ももちろん俺が管理してたからだぞ。そんなんお前27才の彼氏いない歴年齢のOLなんてこの世で一番チョロい存在だろ、新生児なみの危うさだぞ。引っ越すっつったその日にとりあえずハメ倒しとけば後はどうにでもなったのにお前バカだな」
「もーいーですよ!! 傷だらけのオレに岩塩装備して殴りかかってくるの止めてくれませんか」
「ありあは?」
「ボクには触れないで下さい!  はぁ…………にゃんにゃんさん……」
「あ? にゃんにゃんさん?」
「何よ」

 なんかアレ? あんまありあの好きな人の話聞いた事なかったけどコイツもコスプレするんだよな……。

 ん? あれ?

 絵夢ちゃんしか頭にないから考えもしなかった、携帯だして写真開いてありあに見せる。

「おい、まさかこの人がにゃんにゃんさんなんて言わないよな?!!」
「ん? あ、にゃんにゃんさ…………と何でらい君が一緒に写ってるのさ! あれ? でもこれ家?」

 そう、今見せたのはまだ絵夢ちゃんと一緒に暮らしてた時の写真で、母さんが新作完成する度にオレがカメコ役になって色んな角度から試し撮りしてたんだよ、もちろん一緒にも撮る。

「いやいやいや、待ってくれよこれ絵夢ちゃんだから! これオレの叔母だから! 嘘だって言ってくれよ」
「信じらんない、でもこの際叔母なのはいいよ別に。そんな事よりあんな綺麗な人野に放ったら持ってかれるに決まってんじゃねーかよ、にゃんにゃんさん無意識にエロいんだぞ。何で縛って監禁しとかねーんだよ使えねぇ甥だな土に還って二度と陽の目を見るんじゃねぇよ」
「お前こそ親衛隊だなんだって言ってたじゃねーかよ。守るどころかアッサリ挿入まで許すって生まれてきた価値がまるでねーなクソオカマ野郎が、存在する意味もないし首吊って来いよ」
 睨み合ってたら先輩が机を叩いた。

「ケンカは止めないし殺しあってくれて構わないから、教室帰ってやって、そろそろここにおねーちゃん来るんだわ。はい解散」




 次の授業はバックレてありあと屋上で空と太陽を眺めていた。



「お前絵夢ちゃんの連絡先知ってる?」
「うん」
「俺も知って…………んのに連絡できないんだよなぁ」
「わかる、絶対出てくれるけど確実にあの眼鏡が邪魔してくるし、にゃんにゃんさんの幸せな声を聞いて、良かったなんて思えるほどボクまだ大人じゃない」
「だよな、だってオレ達まだ17才だしな」
「うん、これって青春なのかな、全然面白くないね」
「そうだな……苦しいな」
「うん」
「時間…………巻き戻したいな」
「うん」
「あの日に帰りたい」
「うん」
「側に行きたい」
「うん」
「触れたい」
「うん」
「楽しかった大好きだったんだ本当に世界で一番好きなんだ、今でも」
「うん」



  
「会いたいよ」


「うん………………うん」


「絵夢ちゃん……」





 二人同時に溜め息を吐いた。
 空に消えた。
 空が滲んだ。






 会いたい。



 会いたい。




 寂しい。
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