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おしまいの後
尾台さんとお仕置き ◎
それは残業中、時刻は午後十時だ。
今日も僕に死ね死ね言ってきた袴田さんは結局悪態つきながらも一緒に残業してくれる。
そんで、隣で首がいてーって袴田さんが伸びをした時に気がついた。
「あれ? そんなとこに大きなばんそーこー貼ってたんッスね。剥がれそうですけど」
「ん? ああ……襟で擦れて痛かったから貼ったんだけど、もうあった方が煩わしいな」
袴田さんは大きめなばんそーこーをびりっと剥ぎ取って足元にあるゴミ箱に捨てた。
で、そに現れたのは……
「うわ! どうしたんッスかそれ!!」
首筋には赤黒い……紫色の鬱血痕と歯形にかさぶたに…………部分的にだけど軽くグロイぞ。
袴田さんは傷が痛むのか指先でそこを確認しながら言う。
「飼ってた猫に噛み付かれただけですよ」
「いや、アンタ動物とか飼えない人間でしょう。人や物に興味を示さず感情に自制も利かないし、暴力的だしこの世で一番動物飼っちゃいけない人! ご飯だって尾台さんと暮らすまで僕達が誘わなきゃ食うの面倒って食わなかった男だよ」
「随分わかった風に言うね。まあちょっと強めに躾をしたら、噛み付かれちゃったってだけですよ」
袴田さんは、かさぶたいじって血が出てないか指先を見てて。
ああ……えぇ? 飼ってるって尾台さんのことか?
言われて見れば、尾台さんが飲み会で少しでも男に詰め寄られると、遠目にいるのに目光らせて、
「殺す……」
って呟いて、その後にはしっかり躾けてやらないとな、なんて言ってるけど! これは黙ってられないぞ!
「袴田さん! 躾けとかお仕置きとか、それ何してるんスか?!!」
「あ? お前に関係ある?」
「ありますよ! その傷! 袴田さんがひどいことしたから反撃されたってことですか?! ボクそういうの上司がどうとかって関係ないんで!! 女の子にそういうの見過ごせないんで!!」
「……ああ……わかったよ、何興奮してるのハイジ、まず座りましょうか。君が思っているような展開にはなっていないです」
「でも……!」
思わず立ち上がったら座れと腰を叩かれて、残っている数人の目も気になるから席に着く。
袴田さんは傷を触りながら続けた。
「反撃……反撃じゃないな、どちらかと言うと、これはおねだりですね」
「お、おねだり……?」
嘘でもない真顔で言うからボクも突っ込めなくて、袴田さんは首をコキっと鳴らす。
「例えばだけど、新井君にとって…………というか一般的なお仕置きってなんですか。対象は誰でもいいですけど、なるべく彼女と仮定して」
袴田さんはPCをから完全に手を離して今度は指をパキパキ鳴らしてる。
「ん? お仕置き……なんだから、怒るとか、ああ……それしか思いつかないな、えっちなことで言うと、手錠とか? 拘束して謝らせるみたいな……もうしません! って感じで?」
すると袴田さんは眼鏡を押し込んで見下し気味に言ってきた。
「それ、ご褒美だから」
「は?」
「それは、俺の彼女、尾台さんにとってただのご褒美です。口悪く責めるのも怒るのも、拘束するのも、少し痛いのも、ただただ彼女を喜ばせるだけです。見てるだけだって悦を感じますからあの子は」
「ああ、そッスか」
うん、あの、なんか内臓引きずり出すって笑顔で書いてた尾台さん思い出して、急にボクは正気を取り戻してPCに向かった。
「気になります? 尾台さんへのお仕置き」
「ああ……うんっとなんッスか」
袴田さんは眼鏡に手を添えたまま言う。
「俺のワイシャツとパンツはかせてベッドに放置」
「?!!!」
サラッと言って袴田さんもキーボード叩き出して。
「以上です」
「え? あの……」
「ベッドの上で尾台さんに服を着せます。脱いでも嗅いでも触ってもいけない、何もするな黙って座ってろと彼女に命令して俺は背を向け仕事してました。見てると快感になりますから」
「……ほう」
「一歩でもそこから出たら二度と口利かないし。どこか体を弄ったら、もう死ぬまであなたには触れてあげないと言ったら尾台さん大号泣」
脳裏に必死になってる尾台さんが浮かんで……
「可哀想ですよ!!! 少しくらい罵ってあげてもいいじゃないですか!」
「は? お前自分で何言ってるか分かってる? 俺危害は加えてないですよ、黙ってそこにいろと言っただけです」
何とも言えないこの感じ、されてることは何でもないのに、どうしてボクは心はむずむずするの!
「一時間で根を上げて泣きついてきたので、「そこにいなさい」と叱ったら、三十分後に噛み付かれました」
「おう……」
「おねだりでしょう? これは」
袴田さんは傷を指差して頷いてしまった。
「そッスね」
「可愛いもんですよ」
くすっと笑って営業の方を見た袴田さんは何かを見付けて手を止めた。
「あっ……尾台さんも残業でコピー焼いてる会いに行こう」
「うッス」
「残りは全部やっといたから、それ終わったらお前も上がりな」
「えぁ!? わあ、ありがとう袴田さん愛してる」
「触るんじゃねぇよゴミが、さっさと消えろ」
僕の手を振り払って袴田さんは立ち上がって、なんて大きな背中……!
ごめんなさい尾台さん、短気でドエスで無慈悲な上司だけど、あなたには袴田さんしかいないと思います。
今日も僕に死ね死ね言ってきた袴田さんは結局悪態つきながらも一緒に残業してくれる。
そんで、隣で首がいてーって袴田さんが伸びをした時に気がついた。
「あれ? そんなとこに大きなばんそーこー貼ってたんッスね。剥がれそうですけど」
「ん? ああ……襟で擦れて痛かったから貼ったんだけど、もうあった方が煩わしいな」
袴田さんは大きめなばんそーこーをびりっと剥ぎ取って足元にあるゴミ箱に捨てた。
で、そに現れたのは……
「うわ! どうしたんッスかそれ!!」
首筋には赤黒い……紫色の鬱血痕と歯形にかさぶたに…………部分的にだけど軽くグロイぞ。
袴田さんは傷が痛むのか指先でそこを確認しながら言う。
「飼ってた猫に噛み付かれただけですよ」
「いや、アンタ動物とか飼えない人間でしょう。人や物に興味を示さず感情に自制も利かないし、暴力的だしこの世で一番動物飼っちゃいけない人! ご飯だって尾台さんと暮らすまで僕達が誘わなきゃ食うの面倒って食わなかった男だよ」
「随分わかった風に言うね。まあちょっと強めに躾をしたら、噛み付かれちゃったってだけですよ」
袴田さんは、かさぶたいじって血が出てないか指先を見てて。
ああ……えぇ? 飼ってるって尾台さんのことか?
言われて見れば、尾台さんが飲み会で少しでも男に詰め寄られると、遠目にいるのに目光らせて、
「殺す……」
って呟いて、その後にはしっかり躾けてやらないとな、なんて言ってるけど! これは黙ってられないぞ!
「袴田さん! 躾けとかお仕置きとか、それ何してるんスか?!!」
「あ? お前に関係ある?」
「ありますよ! その傷! 袴田さんがひどいことしたから反撃されたってことですか?! ボクそういうの上司がどうとかって関係ないんで!! 女の子にそういうの見過ごせないんで!!」
「……ああ……わかったよ、何興奮してるのハイジ、まず座りましょうか。君が思っているような展開にはなっていないです」
「でも……!」
思わず立ち上がったら座れと腰を叩かれて、残っている数人の目も気になるから席に着く。
袴田さんは傷を触りながら続けた。
「反撃……反撃じゃないな、どちらかと言うと、これはおねだりですね」
「お、おねだり……?」
嘘でもない真顔で言うからボクも突っ込めなくて、袴田さんは首をコキっと鳴らす。
「例えばだけど、新井君にとって…………というか一般的なお仕置きってなんですか。対象は誰でもいいですけど、なるべく彼女と仮定して」
袴田さんはPCをから完全に手を離して今度は指をパキパキ鳴らしてる。
「ん? お仕置き……なんだから、怒るとか、ああ……それしか思いつかないな、えっちなことで言うと、手錠とか? 拘束して謝らせるみたいな……もうしません! って感じで?」
すると袴田さんは眼鏡を押し込んで見下し気味に言ってきた。
「それ、ご褒美だから」
「は?」
「それは、俺の彼女、尾台さんにとってただのご褒美です。口悪く責めるのも怒るのも、拘束するのも、少し痛いのも、ただただ彼女を喜ばせるだけです。見てるだけだって悦を感じますからあの子は」
「ああ、そッスか」
うん、あの、なんか内臓引きずり出すって笑顔で書いてた尾台さん思い出して、急にボクは正気を取り戻してPCに向かった。
「気になります? 尾台さんへのお仕置き」
「ああ……うんっとなんッスか」
袴田さんは眼鏡に手を添えたまま言う。
「俺のワイシャツとパンツはかせてベッドに放置」
「?!!!」
サラッと言って袴田さんもキーボード叩き出して。
「以上です」
「え? あの……」
「ベッドの上で尾台さんに服を着せます。脱いでも嗅いでも触ってもいけない、何もするな黙って座ってろと彼女に命令して俺は背を向け仕事してました。見てると快感になりますから」
「……ほう」
「一歩でもそこから出たら二度と口利かないし。どこか体を弄ったら、もう死ぬまであなたには触れてあげないと言ったら尾台さん大号泣」
脳裏に必死になってる尾台さんが浮かんで……
「可哀想ですよ!!! 少しくらい罵ってあげてもいいじゃないですか!」
「は? お前自分で何言ってるか分かってる? 俺危害は加えてないですよ、黙ってそこにいろと言っただけです」
何とも言えないこの感じ、されてることは何でもないのに、どうしてボクは心はむずむずするの!
「一時間で根を上げて泣きついてきたので、「そこにいなさい」と叱ったら、三十分後に噛み付かれました」
「おう……」
「おねだりでしょう? これは」
袴田さんは傷を指差して頷いてしまった。
「そッスね」
「可愛いもんですよ」
くすっと笑って営業の方を見た袴田さんは何かを見付けて手を止めた。
「あっ……尾台さんも残業でコピー焼いてる会いに行こう」
「うッス」
「残りは全部やっといたから、それ終わったらお前も上がりな」
「えぁ!? わあ、ありがとう袴田さん愛してる」
「触るんじゃねぇよゴミが、さっさと消えろ」
僕の手を振り払って袴田さんは立ち上がって、なんて大きな背中……!
ごめんなさい尾台さん、短気でドエスで無慈悲な上司だけど、あなたには袴田さんしかいないと思います。
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