総務の袴田君が実は肉食だった話聞く!?

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おしまいの後

桐生君と尾台ちゃんとその後 ◎

 その日の朝、尾台ちゃんは頬を染めながら両手で口元を隠して、大きな瞳を潤ませて言った。






「私、結婚するの」




 って、それは記憶に新しい。




 飲み会の欠席……というかそもそも、あの日は無断欠勤もしたけど、それと袴田君の早退がイコールで繋がらない皆はてっきり桐生君と結婚するんだと思って、皆桐生君に拍手をするところだった。

 でも続いて尾台ちゃんが





「袴田君と」





 と添えた瞬間、空気が固まって、ざわついた。


 それで一番に最初におめでとうって笑って拍手をしたのは他でもない、




 桐生君だった。





 すげークソバカお子様な俺は拍手しなくて、その後桐生君に祝福してやんなきゃダメだろって怒られたっけ。

「大人になれ大和」
「感情を強制すんじゃねえよ」
「僕達が見たかったのは彼女の笑顔だろ」
「キザかよ、バーカ」
「知ってる」














 それでも、尾台ちゃんは可愛い、可愛いと思う位いいだろ?

 まず声のトーンが耳に心地いい(喘ぎ声はヤバかったけど)。
 髪の毛も艶々で、身綺麗で四肢のバランスも良くて、もちろん顔も可愛い、いつも笑顔で優しくて、でも弱くて、守ってやりたい! って本能が思っちゃうんだよな。
 気が利いて仕事もできて、性格も良くてさ……そんなんだから、苗字が袴田になるまではちょっかいださせていただきますよ。

 書類をクルクル巻いて尾台ちゃんの背後に立つ、キーボードを叩きながら、膝に置かれた資料を見る度うなじに刻まれた歯型とキスマークが見えて、総務の眼鏡がちらついた。

 でもまあ気にしない、書類で頭をポンポンしたら声を掛けなくても、
「何ですか、有沢さん」
「けーやくしょチェックしてー」
 俺だってわかってくれるのが嬉しい。
 でも振り返った顔は怒り気味だけどね。
「もう!! 契約書丸めないでくださいって何度言ったら分かるんですか!? 大 事 な も の!!!」
「だーってこの方が持ちやすいんだもん」
 尾台ちゃんはむってしながら契約書を逆に丸めて歪みを直して目を通してくれた。

「今度丸めたら部長に言いつけますからね!? 辰巳さんこういうところを疎かにするの嫌いですよ!」
「はいはーい、いいからほらー早くチャックしてよー」

 にやにやしながら顔を寄せたら、ちーかーいーでーす!! って押し返してきて楽しい。

 そんで、書類を持って帰ってきたら、桐生君怒ってた。

「お前本当にどうしたいの、飛ばされるよ?」
「へいへい、もーなんっつーか飛ばしてほしーくらいだよ。自分じゃ辞めらんねぇしさ」

 答えながら座ったら桐生君は数秒沈黙して、そうだなって小さく返事した。

 そんで、契約書渡したら桐生君はサンキュって受け取って机にあった青いファイルを叩いた。

「おい、コラ有沢、僕のファイルも一緒に渡してくれって言ってただろ」
「あ、ごめーん忘れてた自分で持ってってー?」

 まったく、ってため息混じりに席を立とうとした桐生君は、動きを止めてまた着席して……。

「どったの?」
「いや、袴田君が来てるから今は止めとこうかなって」
「袴田君?」

 見たら、総務の眼鏡が来てて……ああ、天井指差しながら久瀬さん達と何か話してる。
「何してんだあれ」
「確かあそこがフロアの中で一番寒かったんだっけ? 空調じゃどうにもできないからサーキュレーター設置したって言ってたな」
「へえ」

 桐生君は書類に視線を戻して仕事始めて…………っで少しして袴田君も居なくなったから、ボールペンでファイルを指した。

「そろそろ行けば?」
「いや、まだいいや」
「何で」
「だってせっかく好きな人が来て気分よく仕事してんのに僕が水差しちゃ悪いだろ」
「はあ?」
「僕だって尾台に話し掛けられた後に葛西さんに呼ばれてた日はテンション下がりまくりだったし」
「葛西さんと桐生君同等に置くなよ」
「まあ……袴田君にとっては彼女に匹敵する厄介者だろ僕は」

 気使いすぎだろ!
 ってやってたら結局昼のチャイム鳴ってんじゃねえかよ、ヘタレ!
 そしたら……

「僕が渡しておきましょうか」


「え」
 後ろからスッとファイルを消えて見上げたら辰巳部長がいた。

「ありがとうございます」
「いえいえ、僕も彼女に用があるので、それと有沢君は契約書丸めるのいい加減に止めないと次から丸める毎に頭も丸めてもらいますから」
「ひぃえ!」
「それじゃあ、ご飯でも食べに行きましょうか、僕今とても鰻が食べたい気分なので早く立ってください。あそこ注文してから焼くスタイルなので時間がかかります」
「え、あの……」
 辰巳さんは桐生君の強引に腕を引っ張って、俺には行きますよって、洋画顔負けのウィンクだ。
 金髪をかきあげて眼鏡を直して言う、

「僕君の上司なので圧倒的圧力を行使して君に食事を強要するので宜しくお願いします。胸が苦しくてご飯が入らないとか許しませんから」
「はい、何か……すみますん」



「大丈夫、努力は無駄にはなりませんよ。少なくとも僕と君の後輩は君の誠実で直向きな姿をちゃんと見てましたからね」


 手の掛かる先輩の背中を、そうだぞって殴っておいた。
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