お隣の小向さんがエロ漫画家だった話をする。

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6 帰しません!!2

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ん? どうして? 首傾げてたら。



「あの…………」

「え」



 いつの間にか小向さんが部屋の前に立っててひざ掛けと俺の靴抱き締めてる。

「何してるんですか」

「ひ、人質です!」

「ん?」

 意味わかんないけど、とりあえず人質を取っている方が顔赤くして恐怖に震えているのはなぜなんだ。

 状況を理解できないまま、さっきよりちょっと強気な声で小向さんは続ける。



「返して欲しかったらこっちに来なさい!」



「いや、脅迫してこなくても行きますけど、靴汚いからそうやって持つの止めた方が」



 近付いて手を伸ばせば、小向さん更に抱え込んで。



「帰っちゃだめえ」

「え」

 靴掴んだらヤダヤダってもっと胸に靴埋める。



「ちょっと小向さん、え? 待って、帰っちゃダメって何ですか、俺ここにいていいんですか」

「はい、あの……もし良かったら温かいお茶でも」

「それはトイレ行きたくなるんで無理」

「いやあ!」



 断ろうと靴引っ張ったら靴抱いたまま背を向けられてしまった。



「あの、ごめんなさい小向さん、君が何をしたいのかわからないんだけど」

「…………」



 小向さんチラッとこっち見てきて眼鏡の奥が涙目だ。



「だって俺といるの気まずいでしょう?」 

「それは……」



 唇噛んじゃって、うんそりゃそうだろう、俺だっマイテンガ見られた人と一緒にいたくないよ。



「ね? 靴返してもらっていいですか」

「これは人質だと言ったでしょ!」



 あん? なぜか小向さんは聞く耳持たず、肩に手が降れた瞬間、脱兎が如く部屋に駆け込んでしまって、これはあの……不可抗力だな?



 が、しかしもし警察を呼ばれた場合、女性に靴を隠されたから仕方なく部屋に入ったって証言して信用してもらえるのか、なんて考えながら部屋を開けたら。



「え、凄い」



 さっきの可愛い空間とは打って変わって、異世界。



 一言で言うとそこは作業場だった。

 テレビの特集なんかで見る漫画家の家って感じ。

 壁には色紙やポスターが貼られてて背の高い本棚に、トーンの入ったクリアケース、大きなデスクにはトレス台と液タブ、PCの周りに積まれた漫画本、小さな机もニつあった、フィギュアが並べられたアクリルケースに、人体模型、寝袋。



 口開けたまま仁王立ちの折れの背後で気配がしたから、聞いてみる。



「小向さんの職業って……」

「ま、漫画家です、そんな売れてないですが……」

「へえ」



 俺と同じ間取りかと思っていたら(俺はワンルーム)違って、小向さんの家は入った部屋自体が俺の家なんかより全然広いし、まだ他にも部屋があるみたいだった。

 まあそうだよな、ここじゃ眠れないし。



 でも……あの、あれ何かその、言いにくいんだけど、部屋に貼られたポスター皆エロイな?

 置かれてるフィギュアも露出度が高いし、あのタペストリーも謎の汁まみれ少女だし、どうなんだこれは。

 で、俺はある事に気付いてしまう! 大きな机のペン立ての横にあのバイブが置かれてる、しかも他のも!! いや机の上に置かれ積み重なった漫画の上にどっかり乗った段ボール、その上に大人のおもちゃが隠す素振りもなく置いてある。



 うん、なんともピンクな空間で、もしここで警察呼ばれても、俺の方が信用される気がしてきた!

 直立不動を崩さぬまま入口にいたら、小さな咳払いが聞こえて小向さんが申し訳なさそうに言った。



「あの、ここにどうぞ……」

「あ、はい」



 物は多いいが散らかっている訳ではない。可愛い動物達が昼寝をしているラグに、小向さんは両手に収まる小さなローテーブルを持って来た。



 ペコリと頭を下げられたので、俺も仕返して何となくその前に正座をすれば、ドンって間髪入れずに目の前にお椀噌置かれて、中は味噌汁か?



「え」



 見上げれば、小向さん眼鏡の縁を抑えながら、

「おしっこの心配なくて、日本人ほっとするもの」

「いや、雑すぎるでしょ。お茶でいいです。もし行きたくなったらまたトイレ貸して下さい。味噌汁好きだけど今はちょっと」

「…………はい」



 小向さんは恥かしそうに味噌下げてお茶を置いてくれた。

 あっつい日本茶を二人でずずずって飲んで、一息つく。

 湯呑を擦る小向さんの眼鏡はお茶の湯気で少し曇ってて、俺の湯呑を見てお茶を足してくれた。



 無言の一時。



 コーヒーより紅茶より、なんと落ち着く日本茶だろうか。

 会社ではコーヒー飲むけどこれからは緑茶もいいかもしれないなって、実家以来のお茶に気が緩んで、足を崩した。



 そしたら小向さんが、深く吐いて飲んだ湯呑の縁を擦りながら俺を見ずに静かな声で言う。













「それでバイブなんですけど」

「自分から切り込んでいくスタイルイイネ!」

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