【R18】黒猫彼女を溺愛中【著 CHIYONE】

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私のおうち

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 独り立ちさせられたのだから、私はもう大人なのだろうと思っていたけど、この人が大きすぎるの? なんだか私がとっても小さい気がする。
 それにしても疲れて、正直怖いのに抵抗する程も体力が残っていないのだ。
 抱っこされて体がゆらゆら揺れて、歩く振動が気持ち良く感じてきてしまってヤバイ……すっごい眠気誘われてる。
「小さくなっていいよ」
「?」
「だって疲れてる」
 瞬きして、うつろな視界で彼を見る。うん、正直この体になれるようになったの昨日からだから維持するの疲れるんだ、でも猫になったらもっと小さくなってしまうし、もう一度大きくなれる自信がない……綺麗なラインの顎がこっちを向いて、目が合えば喉のところこちょこちょされて、はうう……ってなってしまった。胸の所から温かいの湧いてきて、口から出そうになる声を必死に押し込むけど震えちゃう。
「可愛い」
「!!」
「聞きたい声、どんな声?」
「……」
 そんな事言われたら話にくいし……どんどん体縮こまっちゃって、口摘むんだら「可愛い」ってまた言った。
 ちょっと、え? 何この人、可愛いって何? 誰の事?
 聞きたいけど、喉こちょこちょ止めてくれなくて、止めてくれないし嫌がらなきゃなのに、指一本で耳の付け根とか触れられた事ない場所撫でられて、ちょっとやだ、怖いよお蕩けてしまいそうな位気持ちいいの。

 そういう場所なの? この人が上手いの? よくわからないけど、たまに逸らされる視線が気になって目で追っちゃうし、瞼撫でられて、ダメってした手がいつの間にか毛皮だった、いつの間に私は猫に戻っていたみたいだ。知らない人の前で不覚なんだけど、頭まで優しく撫でてくるものだから、勝手に目が閉じて、そのまま顎撫でられれば、もう目を開けられるタイミングを逃してしまって、呆気なく記憶を手放してしまった。







 自分じゃ知らない場所を撫でられてゾクゾクってしながらも気持ちよくて夢心地だった、そっかこれは夢だからこんな幸せなのか、そうだよねこんな温かくて体が痛くない場所で寝た事なかったし……ん? これは夢? 夢の夢?? ここはどこ? 私は……誰だろう…………。

 ふわっと現実に引き戻されて、瞼を開けたら、夢じゃなかった。大きな手が私の頭を撫でていたのだ丸まった体はふわふわの毛布の上。
 誰かの膝の上に置かれた毛布……きっとあの人なんだろうけど、本を読んでて顔が見えない。

 止めろってパンチするべきなのに手の平の匂い気になるし逆立ってる毛の向きも舐めて戻したい。
 とりあえず、気付いてよって少しだけ鳴いてみた。
 にゃあって言いたかったのに口からはミィって情けない声が出てしまった。
 そしたら、ビクッて体が揺れて本がパタンと閉じた、やっぱりあのエメラルドの瞳とあってまた喉をかかれてしまった。
「おはよう声まで可愛い」
 ぎゅうって胸に閉じ込めるみたいに抱き締められて、苦しい、苦しい死んじゃう! なのに少し近付いた顔に頬を摺り寄せてしまった、こ、これは! おはようみたいなそんな感じだから!

 本を置いた手がテーブルに置かれていた哺乳瓶を取って少し振って口元に近づけてきて。
「お腹空いてる?」
「……」
「生後2か月? 3か月? こっちの方が栄養の吸収良いから」

 手の平のカーブが丸い背中にフィットして私の体は片手で収まるサイズみたいだ。
 鼻の先をツンツンされて、ペロってすればジワって甘いミルクが染み渡ってくる少しだけ喉に落ちて、いい匂いして少し口開いたら、グイッて奥まで先端を突っ込まれてしまった。
「飲んで」
 口から出そうと思って噛んだらぎゅって先端が潰れて勢いよくミルクが溢れ出して口中を満たす、喉が鳴れば空っぽだったお腹に温い液体が落ちていった。
 初めての快感……おいしくって頭の中幸せになっちゃって勝手にちゅうちゅうしてしまった。
「いっぱい飲んで」
 でもしたことないから吸うタイミング下手くそで抱っこしてくれてる腕をフミフミしながら一生懸命飲んで、その度体に力漲ってくる。

 飲み終わって、口拭かれてもっともっと鳴きながら手を引っ掻いてしまった。
「吐いちゃうと困るから今はこれだけ、少しづつ量増やしていこうね」
「……」
「可愛いお腹」
 言われてお腹見れば丸く膨らんでて、こんなタプタプする感覚生まれて初めて。
 吐くって叩かれる以外でもなるんだ。
 せっかく飲んだの吐いちゃうのは嫌だから、分かったよって鳴いたら、額を指でトントンされて私より満足そうな顔でお腹撫でてきた。
「可愛いしいい子」

 そこでようやくあくびして辺りを見渡した。
 木目の壁に大きな本棚に、座っている場所は暖炉の前だった、床は繊細な模様の赤い絨毯が敷かれてて前の家にはなかったものがいっぱいだ。
 ランプも……向こうに見える台所も……気になって体捩って見てたら、
「哺乳瓶洗ってくるから好きな所に行っていいよ」
 頭から尻尾まで優しく一撫すると床に降ろしてくれた、まずは床でもクンクンしとくかってスンスン鼻鳴らしながら部屋中探索してたら、嗅ぎ慣れた匂いを感じてそっちに急ぐ、匂いの元は私が入れられていた段ボールで、中には穴の開いた服が入っていた。
 せっかくだから色々触りたいと人になって、ボロの服を着て家の中を見ていたら。
「その姿でいいの?」
 何かが出てきそうな家の形をした時計を眺めていたら、後ろから声がして、頷く。
「鳩時計、決まった時間に鳩が出てくる」
「……」
「俺はタツミ」
「…………タツ……ミ?」
「うん」
 口に馴染みのない名前って呼んでみたら、タツミは何度も瞬きした後私を抱き締めてきた。
「ぅ、あ?」
「第一声が俺の名前……」
「ああ……」
 そっか恥ずかし……って服ぎゅって掴んでクンクンもしとくの。
「君は名前何て言うの」
「名前……」
 顔を上げたら、頬に手を添えられてスリスリされて、う……やっぱこの人撫でるの上手で、直ぐ気持ちよくなっちゃってだめだ。
「ないの?」
「知らない、誰からも呼ばれた事ない」
「そっか」
 タツミは私を抱き上げて、自然と首に手を回してしまった。
「家の中、案内する」
「何で?」
「これから一緒に暮らすから」
「そうなの?」
「俺がそう決めたから」
 よくわかんないけど、ここ屋根あるし、でも私を置くのには何か理由がある訳だよな?
「真ん丸になったら私を食べるのね?」
「ん?」
「だってあなた豹でしょ? 豹なんて見た事ないよ」
「そうだね、もう少し丸い方が美味しいかも」
 それって言うのはやっぱり……?!
 ニヤッて細めた瞳の瞳孔が光って、むむむ!!
 ならば太らなければ、美味しくないからずっとここにいられるな、私天才!
「家は広くない、キッチンと今いるリビングとお風呂とトイレ、トイレはしたくなったら言うんだよ」
「うん」
「後、寝室と書斎」
「シンシツトショサイ」
「寝る所と仕事をするところだけど、書斎は入っちゃダメ」
「だめ?」
「ダメ」
 人差し指で唇をピッって押されて、ビックリして噛んじゃったからペロペロしとく。
「基本は自由にしていていい。だいたい俺は家にいる。こっちは外」
「お外出ていいの?」
「庭までなら。それ以上は一緒じゃないと危ない、うちは森の中にあるから」
「うん」
 お庭には畑と果物のなる木と、飼育小屋があって、おお良かった! 結構立派にできてる。
「降りる!」
「うん」
 裸足のまま飼育小屋に近寄って柵を掴みながら中を確認。
 ほうほう、同居人は鶏さんと兎さんかお布団は藁ね? 私はこれからこの中で寝るんだから仲良くしないと!
「エサあげてみる?」
「エサ?」
「待ってて」
 頭ポンポンされてタツミはどこかに行ってしまった。
 今のうちに挨拶しとこ、
「今日からお世話になります!」
 大きい声で言ってみたけど、ひぃえ鶏さん睨んでない? 兎さんは寝てるし。
「あの!私は」
 と言いかけて、名前がないなって困った。そしたら、
「はい、持ってきた」
「う?」
 葉っぱ渡されて、食べろって意味かな、かじってみたけど、ぅあ……苦い青臭い、。
「あ、ダメ、まだ生物食べられないでしょ」
「苦ぃよぉ」
「ぺってして」
 隅っこに吐き出して、口の中確認された。タツミが柵から葉っぱヒラヒラしたら、鶏さん寄ってきて啄んでる。
「わあ食べてる」
「これから餌当番して」
「私が? 葉っぱを貰うんじゃなくてするの?」
「ん?」
「だって私ここで寝るんでしょ」
「君は俺のベッドで寝るよ」
「え」
「俺がそう決めた」
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