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私のほんの日常

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「ピピピピピッッピィ!!」
「ヨヨッヨヨヨ!!」
「本当飽きないよねえ……」
 お天気のいい昼下がり、お庭からの小上がりで洗濯物を畳んでいた。

 タツミ曰くせっかく洗った洗濯物に薄汚い黄色い羽根がついていると不快なので、ひよこは洗濯物に触れるなと言われている。
 なんでかというと、前に、フカフカの取り込んだばかりの洗濯物と布団の上に私が乗っかって気持ちーってのびのびしてたんだ。
 ピヨも来て三人でいやーん天国~……ってふわふわにゃあにゃあピヨピヨしていたら、豹さんも来たんだけど体おっきすぎて乗ったら一瞬でペッタンコになってしまって、それで拗ねちゃったんだよね。
 ので、八つ当たりにピヨは洗濯物フカフカ禁止! になってしまい、洗濯物に匂いがついてると瞳孔開いちゃうから畳むのはネネ担当! なのだ。

 で、お洗濯物畳んでいたら、ピヨは庭の丸石の上でつまようじ使ってエイエイエイエイ決闘してるんですよ。
 こないだ、帝都に行って道中、魔物に襲われたり帰りは騎士が戦ってる所を見たでしょ? 何に触発されたんだか、僕達も強くなりたい!! って……。
 でもつまようじなんだよなあ……。


 フェンシングみたいに突き刺したり、斬りあったり二人は剣(?)の練習してて、でもちょっとすると休憩って木の実食べにいくんだよね、後私に喉乾いたからお茶持ってこいとか言う。

 その直ぐ息切れしてハアハアしてんのは、君達のお腹がお邪魔だからでは? って思いつつ、一通り訓練が終わった後は魔法の練習だ。
 私はタツミに魔法の勉強はダメってされてて、まあ私には魔法の感覚も分からないし、後あの難しい古代文字みたいのを勉強する前に他に読みたい本もあるしするつもりもないけど。
 才能があると、勉強しなくたって魔術書が読めたり感覚で何か出せたりするみたい、ちなみに私はサッパリだ。

 で、ピヨはタツミの読んでる高度な魔術書読んでは眼鏡フムフムして(全然わかってない)羽震わせて何か出そうと奮闘してる。
 30分位だったかな、私が今夜一緒に食べるさくらんぼの収穫して帰って来たら、二人で羽を合わせて力んでて、ピヨ!! って叫んだら、ぽわってちっさい火が出た。
 おおおお! 頑張ったね!! って一緒に喜んであげたけど、おばかだから羽に火が移って大騒ぎしてた。
 それで近くに水もなかったから、咄嗟に私が手で挟んで消してあげて、それを見ていたママパパ鶏から頭突かれてめっちゃ怒られたけど、それ以上に怒ったのは帰ってきた豹さんだった。

 兎、鶏さん総出て、私が家事しないように、手伝ってくれて必死に手の平の火傷隠してたんだけど、逆に怪しまれて見つかった時は、ゆらーって瞳孔真っ黒になっちゃって慌てておっぱいの谷間にピヨしまい込んだよ。
 が、それがさらに気に入らなかったらしくて、以後入っちゃダメって言われている書斎で毎晩一時間はピヨの悲鳴が聞こえるようになった。
 ごめんなさいーって鶏さんに謝ったら、いいのよ! あの子達はいつもふざけてばっかなんだから! むしろ火傷させてごめんなさいって逆に謝られてしまった。



 そんなドタバタした変わらない日常、変わったのは私の視力が眼鏡のお陰でよくなった所だ。


 タツミの小さな表情もよくわかる。さくらんぼは食べても呪われてないって分かってるけど、私は今でもタツミの口から果実を貰う。
 どうしてそんな事するかと言うと、タツミがお出掛け中に収穫したさくらんぼを一人で食べた事があったのね、でも全然美味しくなかったんだ。
 真っ赤なはずなのに、渋くて味がしなかった。
 たまたまかな、と思ってもう一つ食べてみたけど同じ、だから美味しくないさくらんぼを半分かじって、残りをタツミの口に入れてみた。
 タツミに口で揉まれたさくらんぼを貰ったら熟して甘く蕩けるようだった。
 どういう事なのよ。

 夕飯が終わって、ソファーに座るタツミに跨る、艶々のさくらんぼにキスしてタツミの口に近付けた。
「タツミのお口はどんな魔法がかかってるの?」
「ネネが大好きって魔法」
 試しに一噛みしてみたらすっごいすっぱい、唇舐めて、タツミの口にさくらんぼを入れれば、ぷちゅって実が割れる。タツミは果汁を飲み込まないで口に貯めたままで、口の中をじっと見つめる私の後頭部を引き寄せてキスしてきた。
 じゅわって甘いさくらんぼの蜜が香るキスだった、ごくって汁を飲み込んで噛み砕いた実だけを貰う、タツミは危ないからっていつも種を飲み込んでる。
 実だけをモグモグして、たまにタツミを食べたいっていうから噛んでるのあげたら、豹柄のお尻尾ビリビリさせてるから、すっごく甘いんだと思う、私もタツミからもらうとそんな感じだし。
 そのままエッチな雰囲気になれば、カーテンや電気をピヨが暗くしてくれる、さくらんぼがなくなるまで唇が擦れ合う音が響けば、もう私の目とタツミの目は互いの発情した匂いでとろんってしてしまうんだ。
 好き過ぎて、一緒にいる時間は常に繋がってたい、会えない時間は会いたくて会いたくて仕方ない。
 猫ってもっと自由気ままな生き物だって聞いたんだけど、意外と好きな人には忠実なんだよ、言わないし、必死にそんな事ない素振りするけど、まあずっとゴロゴロ鳴っててバレバレだけどさ!

 淡いランプが灯る部屋でいっぱいキスしてイカされて、もうちょっとだけっておねだりするんだけど、最近タツミがレモングラスの精油とマタタビの果実エキスが入ったボディクリームをつけてて、興奮した脳にそれされちゃうと、一発でノックアウトしちゃって気付いたら朝なんだなあ。
 お口の中にいっぱい精子はくれるけど、お腹の中はまだ貰えてない、人型で今妊娠するのはまだ体が小さいって考えてるのかな、私の浅い所を擦っては出てってしまう。
 もう私は大分大きくなったと思うけど……? でも体の事はよくわからないし、あまり聞いてない。
 うん、実は何も聞いてないの、町や身分や、シャム猫のおじいさんや、タツミの事も。
 きっと聞けばタツミはなんだって答えてくれるんだと思うんだけど、自分じゃ対処できなかった時にどうしていいのかわからないから、まだ聞いてない、別に考えを放棄している訳じゃないよ。
 もっと色々わかるようになってから、聞こうかなって。

 だから、今日も難しい話はナシで、お昼を詰めてタツミとお散歩に出かけた。
 お花を摘んで、薬草を探して、木の実や果物を収穫して、遊んで。
 のどかで、平和でとっても楽しい。お腹が空いたらシートを敷いて、スライスしたパンに好きな具材を挟んで食べる。
 水筒にはミルクと紅茶、ピヨはだいたいチキンサンド食べてる。
 私はタツミのお膝に座ってタツミが作ったのを貰う、お腹がいっぱいになれば遊んで、直に時間が過ぎていった。

 休憩してたら、タツミはお花で作った指輪を指に通してくれて。
「あげる」
「わあ、可愛い! やっぱりタツミは器用だね」
「…………」
「枯れないならずっとつけていたいよ」
「あげる」
「え? ネックレス?! 凄い! こんな長く結わけるんだ?! 綺麗綺麗似合う?」
「似合う」
「お花の良い香りがする幸せ~」
「あげる」
「わあ! お花の冠だあ! 絵本では見た事あったけど本当に作れるんだ! 嬉しいありがとう」
「うん」
「タツミって本当凄いね! 大好き」
「あげる」
「ん? 何を?」
「式」
「しき?」
「なんでもない」
「え? 何タツミ?? しきってなに? うえ? ちょっとなんでそっち向いちゃうの? いいよ、ちょうだい? しきちょうだい? 欲しい! しき持って来て!」

 タツミ向こう向いちゃって何よ!!


 で、そんな毎日が続いたある日のことだ、私のお手伝いお駄賃も貯まってきて(働いてみたい! って言ったら、じゃあうちでしてって、お家の事すると少しお小遣いくれる、でも使い道なし!)私もここにきて、大分経つしタツミに何かプレゼントしたいなって思ったんだ。


 それでそれで、プレゼントって言っても……って三人で腕組んで悩んでいたら、ピンときたのはやっぱりアレだ!





「時計! 欲しいな」




 そう、壊れた鳩時計がやっぱり引っ掛かっていたのだ。

 確か帝都に時計屋さんはあったんだけど……。
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