【R18】黒猫彼女を溺愛中【著 CHIYONE】

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異世界の……

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 聞いたことのないタツミの低い声、尻尾が不機嫌に揺れてる。
 男達は嬉しそうに、下品な笑い方をしながら挑発で返事をした。

「さあな? あんまりにも美味そうだったから舐めちまったかもしれねえな?」

 タツミの綺麗な口元から舌打ちが漏れる、また数歩前に出て、眼鏡を直すと薄暗い路地裏に雷鳴が轟いた。
「安心しろ、魔法で一発で楽になんてさせない」
 タツミが腰から引き抜いた剣は長くて大きくて重そうで、でもそれを構える訳でもないじっと前を見て立っている。

「生意気なクソガキがッ!!」

 大男の横から、背の高い細身の男が剣を構えて飛び出してきた、一度瞬きしただけで距離がぐっと縮まって、振り上げた剣がタツミの目の前に迫る。
「タツミ!!」
 って思わず声を上げたら閃光が横に走った、タツミが少し後ろ傾いて男がすり抜けるようにこっちに来る。
 攻撃を避けたのかと思った、だって男の顔は怒ったままで剣もそのままだったから、でも私に触れそうになる手前で不自然に顔が傾いた、そのままずるっと顔だけが下に移動して、剣が虚ろな音を立てて落下する。
「!?」
 がくんと膝をついて体が倒れ込んで、直には理解できなかった、コロンと首が転がってきて、私は顔面蒼白だ、だってこんな……何、これ……え?!

「コイツ! やりやがったな!!!」

 驚く間もなくタツミは片手でマントを広げて私の前方を隠すと、剣をまた一閃する、飛んできたいくつもの炎の渦を簡単に薙ぎ払って掻き消した。

 その煙の中から男が一斉に飛びかかってきて、素早く切り出される攻撃をタツミはゆっくりとした動きでかわしていた。
 かわす合間に剣を横に振って銀光の衝撃波を刻めば、そのまま何人かを巻き込んで建物まで吹っ飛んでいく、斬って突いて振り下ろして絶命に追い込む攻撃を繰り出す度、呻き声が上がった。タツミは不意に私を抱き上げると崩れ落ちる男の体を踏み台にして、上へと飛んだ。

 私達を狙っていた刃が黒服の残像を切り裂いて、タツミは剣を咥えると、太腿に差し込まれていた細身のナイフを数本指の間に挟んで地上に向かって投げつける、後頭部や首、眉間にナイフが突き刺さった男達はそのまま倒れて動かなくなった。

 タツミは攻撃を止めない、綺麗な緑の瞳が濁っていく。
 バチバチと青白く光っていたタツミの体が燐光して右手に輝きが集束する、少し高い瓦礫の上に着地すると、大きな火花が弾けて輝きが増した。男達の方に手の平を向ければ、腕に絡みつきていた大蛇のような雷が路地裏の暗闇を眩く照らしながら暴れ狂った。
 雷蛇が何人もの男達のお腹を貫いて、次々と叫び声が木霊する、体に空洞ができて倒れ込めば痙攣して動かなくなって体から煙が上がっていた。
 タツミは私を抱いたまま剣を手に戻すと、今度は男達の間を走り抜けてその体に斬撃を叩き込んでいく。
 全く息の切れた様子もないし、私がぎゅうと服を掴めば額にキスをしてくる余裕っぷりだ。

 気が付けば、立っているのは大男だけになっていた、あの大人数をタツミはものの数分で制圧したのだ。

 私を安全な場所に置いて、汚れた剣を二、三度振る。

「思ったよりやるじゃねえか、団長殿」
「こいよ」

 タツミでも見上げる大男に全く怯む様子もなく表情を殺したまま剣を構える、ふわっと帽子の下の前髪が揺れれば、大きな体がすっと姿を消して、ガツンっと刃がぶつかる音がした。
 いつの間にか二人の剣が激突してて、男が振り下ろした交差した刃をタツミは白銀で受け止める、拮抗した力が大剣を震わせていた。
 大男がにやりと笑って後ろに飛び退けばタツミは剣を構え直して、懐に飛び込んでいく、早すぎてその動きを正確に追うことが出来なかったけど、長い間激しい剣戟の音が響き渡っていた、また三本の刃が力比べを始めて両者が接近する。
 タツミが力任せに剣を弾くと振りかぶった体に隙ができた、大男は尽かさず二本の剣で攻撃を繰り出す。
 一本目の攻撃は剣で受け流した、けれどもう一本の刃はタツミの顔に命中した、男がにたっとギザギザの歯を見せる。


「タツミッ!!」

 そんな、って時計を抱き締めて、助けようと一歩踏み出せば男の手はタツミの顔で止まっていた。

 銀色に光った刃に、真っ白い犬歯が噛み付いている、男は目を見開いて、咥え込まれた剣を睨みつけた。引く事も押す事もできない剣を両手で握り直して、その手はギリギリと震えてる。
 すると、タツミの目が光って口端が笑った、瞬間犬歯が刃噛み砕いた。タツミは顔を振って鋼の粉を振り払うと、男の太い両手足を軽々と斬り飛ばして、グラつく肩を掴んで地面に押し倒した。

「この化け物がッ!!」

 吐かれた唾を避けて、タツミ何も答えなかった。そして大きく口を開けると輝く犬歯を抵抗できないその首元めがけ食い込ませた、一度噛んで二度、三度ともっと強く深く重く、男が断末魔を吐いて息の根が止まるまで……。


 巨体が動かなくなると顔を上げて眼鏡を直す、タツミは口を拭い赤い血をペッと死体の横に吐いた。


 私はいつの間にかぺたんと尻餅をついていた。
 わかってる、タツミは責められるような事はしてない。
 だってやらなきゃ私がやられてたし、私の他の人が狙われてたかもしれない。
 もちろん、私達猫はハンター気質って言うか、どうしても仕留めるまで止まらない! みたいな本能あるけど…………でも、やっぱり、ちょっと……。
「怖かった?」
「う?」
「耳ペッタンコだから」
「いや、あの……私を助けてくれたんだって分かってる……よ?」
 タツミは服の埃を払って、座り込んだ私を抱き上げてくれた。
「大丈夫」
「え……何が?」

 すると、立ち去ろうと思った背後から。

「イッテーイッテー!! 何だよ兄貴ぃ!! 全然オレ等強くなってねえじゃんか!」
「おっかしーなーそこそこ経験値積んだと思ってたんだけどなあ。だって昨日、小隊襲撃した時は上手くいったしよ? まあ黒服は無理かーこないだあっちの島も黒服に潰されたって言ってたからどんなもんかと思ったけど、こりゃ勝てねえわ」
「俺達元々死んでるから潰されなくてラッキーですね! 死体のフリすりゃ見逃してもらえるし」

 なんてガヤガヤ話してる、肩から顔を覗かせれば、あ、嘘、あの首コロリした人、胴体さんが首探してて手繰り寄せてくっつけてるし、大男の人も、あったあったって手首つけて、ヤッベ! これ足だし! とかやってる。

 穴の開いたお腹見て、向こうが見える~! って顔出しててどんな陽気??

「アンデッド」
「へ?」
「ドクロの入れ墨」
「う、うんあったあった」
「彼等はそもそも死体だから死なない」
「死体?!!」
「活動時間は夜、首切っても血が出てなかった」
「ああ……」
 急に生首が飛んで来たから、気が動転してそんな典型的な事に気が付かなかった。
「俺が血を吐いたのは、口の中を怪我してたから」
「そうだったんだ」
「といっても、死体として生きてはいるから、致命傷を与えないと、ずっとついてくる。一度倒せば除霊されるのを恐れて危害は加えてこない」

 頷いて、タツミ越しに向こうを見れば、すっげー強かったなー生きてる時に戦ったあのモンスターより強かった話してるし、何人かは呑気に私達に手を振ってる。


 タツミは彼等に何も言わずに、歩き出して深いため息をついた。

「本当に良かった、ネネもっと良く顔を見せて」
「ん? うん」
 後ろを見るのを止めて、首に回している手に力を込める。
「心配かけてごめんなさい」
「怒ってない、でも府に落ちない。俺はこの世の全てに干渉できるはずなのに、なぜネネの居場所が分からなくなったんだろう」
「そんな力があるの」
「ありえない、異世界のものでも混入しない限り………………そうか、ネネその上着は何?」
「上着?」
 ああ、そっかこの時計屋さんでもらった服、タツミはクンクンしながら言う。
「知らない匂い。嗅いだ事のない匂い、ネネの気配が帝都に移ったのは分かったいた。時計屋の辺り……そしてそこで姿が消えて、この世界からいなくなったように感じた」
「そうなんだ……そういえば時計屋さんはプライバシーの為に結界張ってあるって言ってたし」
「その結界だってこの世のものなら俺には透視できるはずなんだ、なのに見えなかった」
「その後はこの時計屋さんで貰った服を着てたよ」
「何か異界の繊維でできたりするのか」

 と二人で服を調べていたら、背中についていたタグに【ユニクロ、フルジップパーカ、M】と書かれていた。

「ユニクロって何かな」
「さあ、聞いた事ない」
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