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18.パウパウのキラキラとお友達 4
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ようやっと我が家に転移で戻ってきて、叔父を客間に突っ込むまで、ウルジェドは延々とガルデンの素晴らしさを聞かされ続けた。
誰か助けて、洗脳される!
精神汚染のデバフを掛けられた気分だ。
どれほど精緻な術式の設計をするか。
どれほどに精密な魔導具を作るか。
静謐にして優美なフォルム。合理的にして斬新。
誰にも真似できない技術。
誰よりも素晴らしき大匠。
夢見る眼差しで作品の数々を、歌うように滔々と語り続けるマールジェド叔父にウルジェドは辟易した。
「……叔父上」
止まらない賛美にウンザリしたウルジェドの声は冷たい。
「いい加減、寝ないで戯言を垂れ流しているなら、グーリシェダばぁちゃん呼びます」
「ピッ」叔父が固まった。
ようやく、囀るのを止めたので追加で
「あと次からは、もう少し大人しめの服装にしてください」
「えっ!あ、でも、ほら…私」碧玉の瞳がうろたえたように揺れる。
「…どんな格好でも、ガルデンもドワーフ達も気にしませんよ」
逆に着飾られたら仕事が手に着かない奴が増える気がする。
俯いて、黙り込んだ叔父を見てウルジェドは
「寝て、起きたら、また工房に行ってガルデンに会えますよ」すまん。ガルデン、あとは任せた。と、遠い目をした。
「わかった!寝る!寝ます!」マール叔父は飛び込むように客間に入った。
ウルジェドは未来の自分にではなく、近い未来のガルデンに丸投げをすることにする。
そして、あっさりと失敗した。
「ねぇ、ウルジェド起きて。起きてってば」
朝陽も登らぬ時刻から、叔父上が起こしにきている。
「……叔父上、まだ日が昇っていません、二度寝してください」
「でも。もうすぐ朝になるから。そしたら工房へ行けるんでしょ」
「この時間から活動しているのは、漁師さんだけです。ガルデンだって寝ています」
とりあえず重い。私の上から、どいてくれ。
「あと、その可愛い声。心底、気持ち悪いので変声魔導具を外せ」
言い捨てながら、無理やりマール叔父を払い落とし、速攻で防音と防御結界を展開。
なにか言いながら、結界をバンバン叩いている叔父を無視してウルジェドは二度寝した。
さて、よく寝て、すっきりと目覚めたウルジェドは、仕込んでおいたタネで平パンを焼き、
生ハムと甘めのチーズにルッコラを挟み、オリーブオイルと黒コショウをかけたサンドイッチと、
オーロラソースベースの、ゆで卵とボイルエビ、アイスプラントのサンドイッチを作る。
スープは後で出そうと、客間の叔父を呼びに行き
「あっはっはっは」
……居やしねぇ
ウルジェドの乾いた笑い声が客間に響く。
もしかしたら、とは思ってはいたが自由奔放すぎるだろうがっ
「絶対、あそこに行ったんだろ」
眉間に皺を寄せてウルジェドは朝食を収納空間に入れ、イ・カルサ領都のガルデンの工房へと転移した。
ガルデンの工房は職人街としてドワーフが主に住んでいる区画にある。
大通りから外れた場所に建つ、黄色味がかった蜂蜜石で作られた古い建物だ。
元は商家の倉庫か何かだったのか、間口の広い2階建てで、なかなか大きな造りだが、職人の在所だけあってか飾り気一つない。
そんな武骨な工房の無垢材の玄関扉の横に、今朝は花が咲いていた。
朝の光の中で、煌めく銀髪をゆるく三つ編みにして青いリボンで纏め、左肩から前に垂らしている。
身に着けているのは、エクリュベージュ色のオーバーチェニックの上に膝下までの青灰色のロングベスト。
鉛色の細身のパンツに、青灰色のハーフブーツ。
腰には二重巻きにした飾りベルトを締めている。
服装は昨日の礼装よりは、当然だが大人しい。刺繍も銀糸だけと控えめだ。
どこかの貴族の子息か、金持ちの縁者かといった出で立ちだ。
が、どう見ても長耳のエルフ。それも男装の麗人だ。
そんな華やかな美貌のエルフが、武骨なガルデンの工房の玄関横に寄りかかっている。
それほど多くはないが、通りかかるドワーフやヒト族が、二度見する。
下手をしたら三度見する。
立ち止まって見ている強者も居る。
ウルジェドは工房の陰に転移して、そんな様子の叔父を見る。
周りを全く気にもせず、壁に背中を預けて、楽し気にうっすらと微笑んでいるマールジェド叔父を見て、朝から既に疲れてきた。
「……パウパウより遥かに子供じゃないか、あの人」
とりあえず、連れ帰るなり説教する也しないと、と思い近づくと
「あ。遅いよウルジェド!」
花が咲くように笑ってマール叔父が言った。
「いつ待ち合わせをしたのか、まったく記憶にないのだが」
「だって、早くガルデンさ…ガ、ガルデンに会いたかったし」
ウルジェドは叔父に近づき、
「マール叔父上……」そっと、三つ編みにした叔父の髪を掬い取った。
「ウルジェド?」
「叔父上……」ウルジェドは微笑みながら、マール叔父の髪に唇を寄せて、
「今度やったら、この髪の毛。全部、枝毛になる呪いを掛けます」
「ピっ」マール叔父は固まった。
帰る、帰らない、呪う、呪わないの下らない押し問答は、工房の扉が開いたことで一時休戦となった。
「で、朝から、んな所で何やってんだ」
ガルデンは大きな眼を見開いて言った。
「脱走者を捕まえていた所だ。ガルデンは?」
「俺は朝飯の調達。これからマルシェ通りの屋台だな」
「ふむ、簡単な飯なら有るぞ、どうだ」
「おぉ、お前の飯を朝から食えるのは有難いな」
屈託なくガルデンは笑ってウルジェド達を2階へ案内する。
なお、マールジェドが静かなのは、ガルデンが出てきた瞬間、ウルジェドが”沈黙の縛り”を掛けたからだ。速攻で。
誰か助けて、洗脳される!
精神汚染のデバフを掛けられた気分だ。
どれほど精緻な術式の設計をするか。
どれほどに精密な魔導具を作るか。
静謐にして優美なフォルム。合理的にして斬新。
誰にも真似できない技術。
誰よりも素晴らしき大匠。
夢見る眼差しで作品の数々を、歌うように滔々と語り続けるマールジェド叔父にウルジェドは辟易した。
「……叔父上」
止まらない賛美にウンザリしたウルジェドの声は冷たい。
「いい加減、寝ないで戯言を垂れ流しているなら、グーリシェダばぁちゃん呼びます」
「ピッ」叔父が固まった。
ようやく、囀るのを止めたので追加で
「あと次からは、もう少し大人しめの服装にしてください」
「えっ!あ、でも、ほら…私」碧玉の瞳がうろたえたように揺れる。
「…どんな格好でも、ガルデンもドワーフ達も気にしませんよ」
逆に着飾られたら仕事が手に着かない奴が増える気がする。
俯いて、黙り込んだ叔父を見てウルジェドは
「寝て、起きたら、また工房に行ってガルデンに会えますよ」すまん。ガルデン、あとは任せた。と、遠い目をした。
「わかった!寝る!寝ます!」マール叔父は飛び込むように客間に入った。
ウルジェドは未来の自分にではなく、近い未来のガルデンに丸投げをすることにする。
そして、あっさりと失敗した。
「ねぇ、ウルジェド起きて。起きてってば」
朝陽も登らぬ時刻から、叔父上が起こしにきている。
「……叔父上、まだ日が昇っていません、二度寝してください」
「でも。もうすぐ朝になるから。そしたら工房へ行けるんでしょ」
「この時間から活動しているのは、漁師さんだけです。ガルデンだって寝ています」
とりあえず重い。私の上から、どいてくれ。
「あと、その可愛い声。心底、気持ち悪いので変声魔導具を外せ」
言い捨てながら、無理やりマール叔父を払い落とし、速攻で防音と防御結界を展開。
なにか言いながら、結界をバンバン叩いている叔父を無視してウルジェドは二度寝した。
さて、よく寝て、すっきりと目覚めたウルジェドは、仕込んでおいたタネで平パンを焼き、
生ハムと甘めのチーズにルッコラを挟み、オリーブオイルと黒コショウをかけたサンドイッチと、
オーロラソースベースの、ゆで卵とボイルエビ、アイスプラントのサンドイッチを作る。
スープは後で出そうと、客間の叔父を呼びに行き
「あっはっはっは」
……居やしねぇ
ウルジェドの乾いた笑い声が客間に響く。
もしかしたら、とは思ってはいたが自由奔放すぎるだろうがっ
「絶対、あそこに行ったんだろ」
眉間に皺を寄せてウルジェドは朝食を収納空間に入れ、イ・カルサ領都のガルデンの工房へと転移した。
ガルデンの工房は職人街としてドワーフが主に住んでいる区画にある。
大通りから外れた場所に建つ、黄色味がかった蜂蜜石で作られた古い建物だ。
元は商家の倉庫か何かだったのか、間口の広い2階建てで、なかなか大きな造りだが、職人の在所だけあってか飾り気一つない。
そんな武骨な工房の無垢材の玄関扉の横に、今朝は花が咲いていた。
朝の光の中で、煌めく銀髪をゆるく三つ編みにして青いリボンで纏め、左肩から前に垂らしている。
身に着けているのは、エクリュベージュ色のオーバーチェニックの上に膝下までの青灰色のロングベスト。
鉛色の細身のパンツに、青灰色のハーフブーツ。
腰には二重巻きにした飾りベルトを締めている。
服装は昨日の礼装よりは、当然だが大人しい。刺繍も銀糸だけと控えめだ。
どこかの貴族の子息か、金持ちの縁者かといった出で立ちだ。
が、どう見ても長耳のエルフ。それも男装の麗人だ。
そんな華やかな美貌のエルフが、武骨なガルデンの工房の玄関横に寄りかかっている。
それほど多くはないが、通りかかるドワーフやヒト族が、二度見する。
下手をしたら三度見する。
立ち止まって見ている強者も居る。
ウルジェドは工房の陰に転移して、そんな様子の叔父を見る。
周りを全く気にもせず、壁に背中を預けて、楽し気にうっすらと微笑んでいるマールジェド叔父を見て、朝から既に疲れてきた。
「……パウパウより遥かに子供じゃないか、あの人」
とりあえず、連れ帰るなり説教する也しないと、と思い近づくと
「あ。遅いよウルジェド!」
花が咲くように笑ってマール叔父が言った。
「いつ待ち合わせをしたのか、まったく記憶にないのだが」
「だって、早くガルデンさ…ガ、ガルデンに会いたかったし」
ウルジェドは叔父に近づき、
「マール叔父上……」そっと、三つ編みにした叔父の髪を掬い取った。
「ウルジェド?」
「叔父上……」ウルジェドは微笑みながら、マール叔父の髪に唇を寄せて、
「今度やったら、この髪の毛。全部、枝毛になる呪いを掛けます」
「ピっ」マール叔父は固まった。
帰る、帰らない、呪う、呪わないの下らない押し問答は、工房の扉が開いたことで一時休戦となった。
「で、朝から、んな所で何やってんだ」
ガルデンは大きな眼を見開いて言った。
「脱走者を捕まえていた所だ。ガルデンは?」
「俺は朝飯の調達。これからマルシェ通りの屋台だな」
「ふむ、簡単な飯なら有るぞ、どうだ」
「おぉ、お前の飯を朝から食えるのは有難いな」
屈託なくガルデンは笑ってウルジェド達を2階へ案内する。
なお、マールジェドが静かなのは、ガルデンが出てきた瞬間、ウルジェドが”沈黙の縛り”を掛けたからだ。速攻で。
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