パウパウは今日も元気

松川 鷹羽

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21.パウパウのキラキラとお友達 7

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「はい到着、いらっしゃいパウパウ」
明るい声でミっちゃんは言いながら、そっとパウパウを不安げに見る。

 早くグーリシェダを呼ぼうと思いながら、幼子をソファーに座らせた。

「ミっちゃん、ミっちゃん。さっきパウ、音なくなったの!」
「え、今は、どう?」
「いま、だいじょぶ!」
「そっかぁ。じゃあ、それも診てもらおうね」

 コクリと頷いたパウパウが、興味深げに室内をキョロキョロ見回している合間に、グーリシェダにお遣い鳥アマツバメを飛ばし、パウパウ用の薄い緑色のガラスコップにライリの果汁水を入れ、焼き菓子フィナンシェを添えて出したところで、の壁の扉が開きグーリシェダが入ってきた。

「パウパウ~、グー姉さまが来たぞ」
言いながらパウパウの隣にボスンッと音をたてて勢いよく座った。

「……お早いお着きで、って、手!手!ばぁちゃん、アマツ離して!」
お遣いの鳥アマツバメが握りしめられて、グッタリしてる!

やめて~、うちの可愛いチャンだから!転移できる仔だからっ!
まるで何処ぞのエセ美人マール叔父のように、心の中で悲鳴を上げた。

「お、おぅ。忘れてた。すまなんだな」
くったりした鳥をグーリシェダが手渡す。

白目をむいてる、ひどい。
首、カックンしてる。あんまりだ。
「わぁぁぁ、アマツぅ」回復、回復、霊薬、霊薬あわわアワワあわわわわと、バタついている孫に構わず、グーリシェダはパウパウを膝の上に抱き上げた。
 
 初めて慌てふためくミっちゃんを見たパウパウは目を丸くしていたが、グーリシェダが
「元気にしてたかの」と、声をかけると
「グーねぇたま、こんにちは」
くったりしていた鳥が首をプルプル振ったのを見て、ホッとしたパウパウが挨拶をかえす。

「うむ、挨拶が出来てパウ坊は偉いの。久しぶりじゃ、大きゅうなったわ」
グーリシェダは話しながら、幼子の状態を確認している。

「前に会ったのは、いつだったかパウ坊は覚えておるかい?」
「……んと、赤いリンゴ取ったとき?」
 半年ほど前の秋に、三人でウネビ家で庭のリンゴを取ったことを、パウパウは覚えていた。
ミっちゃんが、そのリンゴでケーキを作ってくれたことも。

「おぉ、そうじゃ、よぅ覚えておったの」

 パウパウは顔を上げて、グーリシェダを見る。

「グーねぇたま、ここ、ミっちゃんのお家?」
「そう、雑貨屋の2階じゃな」
「パウ初めて来た!じゃ、あっち、グーねぇたまのお部屋?」
先ほどグーリシェダが出てきた扉を指差す。
「うむ、からな。おぉ、そうだ。パウパウに良いものを見せてやろう」

 パウパウを抱き上げ、何やら鳥にゲシゲシと羽根で頭を叩かれている孫に
「ほれ、遊んでないで、お主も付いてこい。その魔法袋も忘れるでないぞ」
「誰のせいだと……ところで、ばぁちゃん。ひとの拡張空間に、自分の空間を繋ぐって非常識だと思うんだが」
パウパウがソファーに置いたナイナイ袋を手に、ボヤキながら付いていく。
「ホホ…色々と便利だぞ、色々と。お主もやればよかろうよ」
「普通のハイエルフには無理な芸当です」
頭の上にお遣い鳥アマツバメを鎮座させたまま、ウンザリした顔で言った。

「まだまだじゃの」と言いながら、グーリシェダは自分が入ってきた扉を開く。

「わぁっ」

 パウパウの目に飛び込んできたのは、斜め格子の白い枠に囲まれた、円い空間だった。
枠の菱形の隙間から見えるのは、ひたすらに白い地と、真っ青な空。
まるで、白と青のタイル張りのように見えてくる。

壁際には、いくつか白い衣装箱が置かれている。
上に華やかな刺繍のクッションや毛皮が敷いてあるので、ベンチにも使うのだろう。

床には細かい模様のツヤツヤした円い絨毯。

上を見れば、円い天窓と、キノコのヒダのように中心へ向かって垂木が渡された天井。
天井部分には深い青色の屋根替わりの布が、被せられている。

「ゲル?」パウパウは湧いた言葉を小さく呟く。

「ん?どうしたパウ坊。驚いたかの」
「グーねぇたま。ここ、ど…こ……」
 尋ねつつも幼子の目は壁の際に置かれた、一つの大きな衣装箱に釘付けとなった。
寝台に使えそうに大きな箱の上。

そこだけ、クッションではない事に気づいたのだ。
毛皮が敷いてあるのではない。

なにか居る。

白茶色の毛、それに金茶の縞がところどころに見えている。

 グーリシェダはパウパウの目が一点から動かないのを見て、微笑みながら抱き下ろすと、手を繋ぐ。
「寝てるからな、そっと静かに近寄るんじゃぞ」
「うん」
パウパウはグーリシェダの手を、ぎゅっと握りしめて、そうっと近づいていく。

 近づくうちに、白い衣装箱は恐ろしく細かい模様が彫られていることが見て取れた。
そして、その上の白茶色の毛皮が上下に動いていることも。

 じっと見ていると気配に気づいたのか、それが身じろいだ。
「う…」声を上げそうになり、パウパウは慌てて口をふさぐ。
グーリシェダと手を繋いでいたので、その手も一緒に口元に持って行った。
「んふ」
「ふふふ」
二人のエルフが声を潜めて笑っているが、パウパウはそれどころではない。

 白茶色の獣だ。
三角の大きな耳の見たこともない大きい獣、いや。
パウパウは、ハッとしてミっちゃんを見た。
「これ、ネコ?」前に借りた図鑑に載っていたのを思い出した。
二人が頷く。

「これ、赤ちゃん?」
ネコの腹には、パウパウの頭ほどの大きさの毛玉が3つ、顔を埋めるようにして眠っていた。
「可愛かろ?この前、生まれての」
砂漠オオネコホ・シャルバフェレと言うんだよ」
「名前を呼んでみよ、パウ坊になら返事をするやもしれんぞ」
「名前、なぁに?」
「マアガじゃ」

 パウパウは前に一歩だけ近づいて
「マアガ」と小さく呼んでみた。
母ネコは、ピクリと耳を立てて、薄っすらと目を開ける。
「パウパウだよ。こんにちは」
「ナ゛」
返事した!パウパウは嬉しくてヘラリと笑う。
「マアガも赤ちゃんも、可愛いねぇ」
すると、まるで理解したかのように、三匹の仔らがふにゃふにゃと動いて頭を上げて、
「ニ゛ィ」「ミィ」と鳴き、あと一匹は大きく口を開けてアクビをした。

 フワフワと可愛らしい姿に、パウパウはフニャリと顔を緩めていたが、どのオオネコの前足にも2本の縞があるのを見て
「シマナガシ?」湧いた言葉がこぼれた。
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