パウパウは今日も元気

松川 鷹羽

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25.パウパウのキラキラとお友達 11

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 グーリシェダのゲルに転移で戻ると、ガルデンが衣装箱の前で、うつ伏せに倒れていた。

画帳に向かって一心不乱に何かを描いては「ここの細工が、この白蝶螺鈿の裏の陣に…」とか、「この透かし彫りが多層構造の魔方陣って、一体どうなってんだよ、ハイエルフ…」とブツブツ言っている。

 戻ってきた三人にガルデンが気づいたのは「うがぁ!これ作った奴、頭おかしいだろぉ!」と奇声を上げて、モジャモジャ頭をガリガリしながら、絨毯の上をゴロンゴロンと転がり、グーリシェダの足先に当たったからだ。

 なお、お供のチュンスケはガルデンの奇行と砂漠オオネコ親子が怖くて、天井の垂木に必死に掴まっていたが、ミっちゃんが戻ってきたのを見て、「ヂィィィィィ」と涙目で避難をしてきた。

「待たせたようじゃの。ガルデン大匠たいしょう
「ガルデンおじちゃん、こんばんは」
「遅くなって、すまなかったな、ガルデン。まぁ、退屈はしてないようで、良かったよ」

「お、おぅ」さすがのガルデンも、気まずげに立ち上がり、グーリシェダに「変な真似をして申し訳ない」と頭を下げる。
グーリシェダは笑って「案ずるな、から、好きにせよ」と答えた。

「ところで、そのマール叔父上は」
「おう、なんか俺に見せる物があるって、取りに行ったっきりだな、そういえば」
そう言いながら、ガルデンはまた衣装箱などの模様を書き写しに戻る。
グーリシェダの言う通り、好きにするのだろう。

 パウパウは床に降ろしてもらい、マアガの所へハヤツを抱いて近寄る。
「ただいまマアガ、この仔ハヤツ。ぼく、トモラチになったの」と紹介する。

 自分の場所でガルデンの奇行を、若干冷たい目で詰まらなそうに見降していたマアガが、チラリと白い仔ネコを見て、口をカッと開けて威嚇しようとしたとき
「あのね……」
そう言って、パウパウはハヤツを足元に置き、自分も隣に座り込んでナイナイ袋を開く。
 尻尾をしているマアガの不機嫌に、全く気が付いていない。

 ミっちゃんから貰ったものは、あげられないから、自分で拾った宝物の円い奇麗な石と、ニワトィさんの抜けた羽根、あとはヴィンテのブラシに付いてた尻尾の毛を取り出して、
「これ!マアガにあげるから、仲良くしてくれる?」と、マアガの前足のところに置いた。
全部、パウパウの宝物だ。
 きっとマアガも気に入ってくれるだろうと自信満々だ。

 吠えようと口を半開きにしたマアガが、妙な貢物みつぎものに戸惑っているうちに、仔ネコたちがパっと羽根に喰い付いて、じゃれ始めた。取り合いの取っ組み合いで床を転げ回る。

 一匹は輪にしたヴィンテの抜け毛を咥えて、ハヤツのところにやって来る。
 ハヤツはプルプルとしながらも、四肢に力を入れて立ち「ミ」と小さく鳴いた。
「ナ゛」仔ネコはフンフンとハヤツをあちこち嗅ぎ回る。

「ミっちゃん、ハヤツ立てた!」
「よかったねぇパウパウ」
「ほぅ、きっとパウ坊とじゃの」

 ハヤツと仔ネコを撫ぜながら「トモラチになると、元気になるの?」
「そうじゃ、友達が出来ると嬉しゅうてな、元気になるものよ」

 ハッとしてパウパウは隣の白い仔ネコを見る。マアガの仔供とヴィンテの尻尾毛を咥えて遊んでいるようだ。
「じゃ、もっと元気になる?」
期待に輝く新緑色の瞳が、ハイエルフを見る。
「そうだね。元気になるよ、パウパウと一緒に」
「うむ、パウ坊が”ハヤツ”と名付けたからにはな」

 嬉しくてフニャリと笑って、仔ネコを見ていたパウパウだったが何かに気づき
「あ!たいへん!パ、ぼく、帰らなきゃ」
楽しくて、すっかり忘れていたが、もう暗くなっている。
お家に帰らないと怒られる時間だった。

「あれ、言わなかったかな?パウパウは今日、私の所でお泊りだよ」

お泊り⁈
明日のお出かけだけでなく、今日はミっちゃんのトコでお泊り!
「グーねぇ様のとこに泊まっても良いぞ」

 パウパウは楽しいと嬉しいが重なって、胸がキューっとした。
「ハヤツ、ハヤツ、お泊り!お泊りだって!」
「ミ」
 ヴィンテの尻尾毛を取られたハヤツが、追いかけようとして、ヘタリと腰を落とした。
流石に体力が持たなかったらしい。

「あぁ!ごめん。遅くなったけど、ご飯にしようね」と、ミっちゃんが言って
椅子とテーブルを出した時

バーンと勢いよくゲルの扉を開けて
「ガルデン!これです。見てください」と巨大なを連れたマールがやって来た。

 パウパウは、驚いてハヤツを抱きかかえて、うずくまった。
ミっちゃんはパウパウを庇うように前に立ちふさがる。
マアガはシャーと威嚇し、仔ネコ達はマアガの後ろに隠れた。
呼ばれたガルデンは、ポカンとした顔で扉を開けたマールを見、グーリシェダは酷い頭痛がするかのように、顔をしかめている。

 だが、見てください!という割に、いつまでも入ってこない。
いや、入って来られない。
 ゲルの扉は大きく、馬車が通れるほどなのに、そこを入って来られない程に、そのが大きいのだ。
 開いたドアから見えるのは、ヘルメットのような平たい頭と、その下の切れ長の真っ黒な目、その下に長い触角が水平に伸びて、揺れている。

「これが、私の新作で、起動の魔素注入に時間が掛かりま…あれ、あら。入らない、じゃ直接、中に転…」

「……マールジェドよ。その妙なを片付けよ。それをここに入れることは許さぬ」
「叔父上、ガルデンを待たせて何をやってるんですか、はしゃぎすぎです」

「で、でも母上、ガルデンに私の新作……
「あ~マールよ、後で見させてもらうから、飯にしねぇか。パウも腹が減ってるだろうし、な?」

 ミっちゃんが、抱き上げてくれたのでマールという人が連れてきた物をパウパウも見ることができた。
入口から見えたそれは、変な形の虫みたいだ。

「…?」パウパウが頭に湧いた言葉を呟くと、ミっちゃんがマールと呼ばれた人に
「マール叔父上、それはグソクムシと言うのですか」と尋ねた。

「これは”深き者バティノム”という生き物をモデルにしたのよ…」と答えつつ、肩を落として転移で消えた。
多分、工房か倉庫にでも置きに行ったのだろう。

「おっきかったね…」
「おい、ウルシェド。あれ、何に使うつもりで作ったんだろうなぁ」
「多分、作りたかったから、作ったんだろうな」ミッちゃんは溜息をついた。

「マールは放っておいて、夕餉とするぞ、ウルシェド」
グーリシェダは振り切るように椅子に座り、
「あれには、堅パンでも出しておけ」と吐き捨てた。
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