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73.パウパウの夏とタガメ探し 11
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「……その妄想的同一視というのか、想いを寄せすぎてをその者を望むように支配しようとする……そのような事が、パウ坊の知識の中には在るのか……」
パウパウは頷いた。
「んっと、自分の思っているのと違うってギャクジョー?したりするの」
(ギジタイジンカンケー?でも、疑似じゃあないなぁ……ん~、ハイエルフという種族にだから、箱推しってのかな?)
「会いに行けるアイドル的な…地下アイドル……?」
それともセレブリティ崇拝症候群だろうか。
自分でも何を言っているのか、よく分からずパウパウは首を傾げた。
ん?とグーリシェダに聞き返されて、パウパウは、なんでもないと首を振る。
「ふむ、その者達の中では、その幻影が本物なのか……」
強い思い込みが、やがては、その人の中で本当の事として心に焼き付いてしまう。
長い年月のうちに、それがリヨスアルヴァ国のエルフ族に浸透していったなら?
好きで好きで、どうしようもなく憧れているうちに、出来上がった幻想のハイエルフ。
きっと、それはエルフ族にとって都合のいい存在だろう。
「もし、エルフ族が思い込んだうえで選民意識を持ったのだとしたら、それは納得させられなんだ、我らが悪いのかのう」
見た目が近かったのも悪かったのかもしれない。
余計に彼らは勘違いを増長させただろう。
「もしかしたらね、エルフ達は神話の中の人みたいにハイエルフを思ってて、で、ハイエルフ族はエルフを面倒くさく思ってるでしょ?だから、邪険?んっと、あ、歯牙にもかけない?態度をした。でね、それで、エルフ族はハイエルフを高貴で傲慢な一族だって余計に勘違いしたのかも……」
パウパウの想像にグーリシェダは頭を抱えた。
あの、幾ら言っても考えを変えないエルフ達の性格ならば、あり得ると納得できてしまったからだ。
(そんな虚像の真似をして、傲慢にならんでもよかろうに)と、グーリシェダは思った。
「確かに、例えエルフに会う事があっても、出来るだけ話さないよう誰もが距離を置いていたからのぅ。あやつら、ハイエルフはハーブ水と木の芽と花の蜜しか食さないとか、訳の分からないことを言い出すし、ワシらと同じように暮らせば自分らもハイエルフに進化できるなどと、ほんに気味が悪いことを言っておったわ……」
グーリシェダは溜息を深く吐いた。
(どれだけ、ハイエルフに憧れていたんだろうエルフ族……その思い込みが気持ち悪い)と、パウパウは広場のエルフ達を見ないように目をそらし、咲いている花だけを見るようにした。
「今日だって、薬師ギルドに行って、さっさとパウ坊と虫を探す予定だったのにのう……」
「うん」
「挨拶程度ならしてもいいが、なんで我らを脅しての婚姻話になるのか」
「ん~、お嫁さんになったら、名前だけはハイエルフになれるから?」
「そう簡単に、お嫁には成れんのだがの」
グーリシェダはパウパウの頭を撫ぜる。
「ふぅん、そうなんだぁ……」
(ぼくも、平気で人を傷つける魔法を打つ人が、ミッちゃんのお嫁に成るのはイヤだなぁ……)
しかも、その静々姫の自爆でドワーフの奴隷が露見だ。
(そんなに奇麗でもないし、賢くもないし、魔法も残念だったし。ミッちゃんの髪の毛一本だって、あの人には勿体ないよなぁ)
パウパウは空の黒猫を見上げる。
眠っているのか、黒くて丸いのが空に浮かんでいる。
「グー姉様。ネコ、オハギみたいだねぇ」
「ホホ…そうじゃのぅ、ピカピカの粒あんじゃ」
国がどうなるかと、周りがバタバタしているのに、ここだけ別の空間となっていた。
まぁ、所詮は他人事なのだから仕方ない。たとえ、きっかけがハイエルフたちの来訪だったとしても。
二人仲良く、行儀悪く頬杖をついている所に、魔道人形さんが声を掛ける。
「グーリシェダ様。薬師ギルドのサマシャム殿がお見えです」
見やった先にはナーターラァに足止めされている、ギルド長が何度もお辞儀しながら立っていた。
「こちらに、お通しせよ」
「ドワーフの事が心配で、ついつい顔を出してしまいました」
パウパウにも丁寧に一礼をして席に着いた薬師ギルドの長は、魔道人形が出した冷茶を、大切そうにチビチビと飲んで言った。
ハイエルフ達が思ったとおり、周辺の住人は家屋内に入って、外を見ないようにという、お達しが王宮から出ていたそうだ。
初めから捕縛とかでもするつもりだったのだろう。
「これだけ兵士も浮足立っておりますし、年寄がフラフラしていても気にしておりませんな」
殆どの人々は空の黒猫と、今後のことで頭がいっぱいなようだ。
遠巻きに、こちらを伺っている兵士や民もいるが、ナーターラァが立っているお陰で近寄ることもない。
「あの…こんにちは。ぼくパウパウです。お薬屋さんに教えて欲しいの…ことがあります」
パウパウはギルド長の話の合間に、ご挨拶をする。
「おぉ、ご丁寧に。私はサマシャム=マルペと申す、薬師でございますよ。どのような、お話ですかな?」
「あのね、あそこのエルフさん達、お水を飲まなくても平気?魔法のお水を出して飲むのかなって思って」
パウパウ達の場所は遮光が施されており、日差しが和らいでいる上に気温も心地よく保たれている。
だが、広場の中央は炎天下、先ほどの結界内よりはマシかもしれないが、かなりの暑さだろう。
「坊ちゃまはお優しいですな。はい、エルフ族も人族ですから、水分は必要です。魔法で飲料水を出せるのにも限りがございますからね。んむ、グーリシェダ様、よろしいでしょうかな?」
「サマシャム殿、よろしく頼む。我らが手を貸すと、また勘違いをされそうゆえ、そちらで飲水の手配をしてくれるか」
サマシャム師は、一礼をすると
「あれでもリヨスアルヴァの法衣貴族であった者達ですから、水くらい差し上げても帝国のお咎めはありますまい」そういって、薬師ギルドに一度、戻って行った。
─────────────────────────────────────
一方、ドワーフを救助に向かった一行は城の新築工事を行っている場所に転移をした。
外壁の一部を広げて、場所を確保するらしく、大がかりな工事が行われているようだ。
何処かから切り出された灰色の石材が山のように積まれて、辺りでは多くのヒトの人足や石工が作業をしていて、土埃が舞っている。
石を叩いて形成する音が響き渡る。
指示をする者の大声、石を引き綱で引っ張る掛け声。
どこかで、魔法使うぞぉ、そっち注意しろー!と叫ぶ声。
これでは、精霊猫の通達も聞こえなかったかもしれない。
上空を見れば、黒猫コロンコロンが見えるはずなのだが、それだけ夢中で作業をしているのだろうか?
「目印役をありがとうアオメ。サブロも、お疲れ。あとでお礼するからね」
偵察のアオメとサブロは、いい仕事をしてくれた。
報酬に好物のチーズを入れた卵を焼いてあげよう。
カラス系魔物のアオメとサブロは、卵焼きが大好きだ。深く考えてはいけない。
ウルジェドは2羽の眷属を帰そうとした。
「ガァっ!」「カッカッア~」
アオメとサブロは、翼を半分だけ広げて首を下げて激しく鳴いた。
断固拒否の構えである。
……報酬の支払いを要求されたウルジェドは「こんなことしてる場合じゃないんだよ」と呟きながら2羽に小ぶりの焼き菓子を差し出した。
「やめろ!なんで私の頭の上で食べるんだ。持って帰ればいいだろう⁈」
奇麗な銀髪の上に菓子クズを散らかし、肩口で嘴を擦りつける2羽に怒るが、気にしない眷属は食べ終えて、ようやく帰った。
「お前の眷属、相変わらずねぇ」ケラケラ笑うマールジェドに、何も言えずに菓子クズを払うウルジェドだ。
「おいササ耳、んで、さっきは、どうやってドワーフ達に回復薬を渡したんだ?」
「認識阻害で、忍んでコッソリだな」
ウルジェドは、ドワーフが監禁されていた小屋に忍び込んで、後で助けに来るので、とりあえず回復薬を飲んでおけと置いてきたのだと言う。
そして、今、ウルジェド達は認識阻害などをせず、堂々と作業現場を歩いているのだ。
美貌のハイエルフ二人と、立派な体格のエルダードワーフ、見たこともない魔道騎士、エルフの宰相の一行だ。
当然、注目の的である。
「おい!貴様ら、誰の許可を得てここへ入った!」と、当然、このように監視の兵士に呼び止められるのだ。
「この場所は、例えエルフであっても許可のない者は立ち入りを赦されていない。早々に立ち去るように」
バラバラと兵士が集まって来る。
あんな王の下なのに、兵隊は真面目だなぁとウルジェドは思う。
「えっとぉ、ここで働いているドワーフさんの面会に来ましたぁ!」
ニッコニコでマールジェドが言い放った。
「わ、訳の分からん事を言ってないで、早く帰れ!」
「そんな物騒な魔道具を連れた面会が居るか!」
ちなみに宰相は、その魔道騎士4機の陰になってしまい、兵士達から見えていない。
明るい時間にドワーフを表立っては使えないらしく、彼らが作業するのは暗くなってからだという。
なぜ、知ったかといえば、集まって来た監視の兵士が親切に教えてくれたので。
こうやって↓
「うぅ、貴様ら何者だ、リヨスアルヴァ国の兵士に対して……」
ナーターラァの尻尾に締めあげられた兵士が苦しみながらも言う。
礼儀を尽くして聞いたら、教えてくれたのだ。
「はいはい、通りすがりの面会人のハイエルフです」
「猫の声、聞こえなかったの?リヨスアルヴァは非国になったのよ~」
「いや、お前ら。宰相殿がおられるんだから、話を通してもらえばいいだろう。なんのために同伴を頂いたんだ」ガルデンだけが真面なことを言う。
【それでは、面白くないので!】無言でガルデンを睨んだ二人に
「……だからって兵士にヤツ当たりをするなよ。文句なら、あの姫さんに言えや」
「あのエルフ女には言葉をかけたくない……」
呟くウルジェドに、コクコクと頷くマールジェドだ。
宰相はというと、あわあわしていた。
(ハイエルフ様が、伝説のハイエルフ様が、神話のハイエルフ様が……なんか、全然、違うぅ!)
そう、ハイエルフ”思ってたんと違う”である。
リヨスアルヴァ国のエルフ族に伝わるハイエルフは、何処までも優美で、どの種族より魔法に秀で、理性と秩序を重んじる、静かなる賢者。光の衣を纏い、朝露と花の蜜を食し、楽を愛するという、物語の大精霊に近い存在だった。
その伝説のハイエルフが、鳥に馬鹿にされて、頭に焼き菓子の屑を散らかされている。
確かに恐ろしいほどに美しいし、縦横無尽に転移魔法を使える。
だが、この方たち絶対に理性と秩序を重んじない気がする。
現に今、リヨスアルヴァの兵士を絞めているし、もう一人は手を叩いてケラケラ笑っている。
確かに、姫の雷魔法の介抱はして頂いたが…
このエルダードワーフの男が一番、真面なのではないか……宰相は内心で思った。
パウパウは頷いた。
「んっと、自分の思っているのと違うってギャクジョー?したりするの」
(ギジタイジンカンケー?でも、疑似じゃあないなぁ……ん~、ハイエルフという種族にだから、箱推しってのかな?)
「会いに行けるアイドル的な…地下アイドル……?」
それともセレブリティ崇拝症候群だろうか。
自分でも何を言っているのか、よく分からずパウパウは首を傾げた。
ん?とグーリシェダに聞き返されて、パウパウは、なんでもないと首を振る。
「ふむ、その者達の中では、その幻影が本物なのか……」
強い思い込みが、やがては、その人の中で本当の事として心に焼き付いてしまう。
長い年月のうちに、それがリヨスアルヴァ国のエルフ族に浸透していったなら?
好きで好きで、どうしようもなく憧れているうちに、出来上がった幻想のハイエルフ。
きっと、それはエルフ族にとって都合のいい存在だろう。
「もし、エルフ族が思い込んだうえで選民意識を持ったのだとしたら、それは納得させられなんだ、我らが悪いのかのう」
見た目が近かったのも悪かったのかもしれない。
余計に彼らは勘違いを増長させただろう。
「もしかしたらね、エルフ達は神話の中の人みたいにハイエルフを思ってて、で、ハイエルフ族はエルフを面倒くさく思ってるでしょ?だから、邪険?んっと、あ、歯牙にもかけない?態度をした。でね、それで、エルフ族はハイエルフを高貴で傲慢な一族だって余計に勘違いしたのかも……」
パウパウの想像にグーリシェダは頭を抱えた。
あの、幾ら言っても考えを変えないエルフ達の性格ならば、あり得ると納得できてしまったからだ。
(そんな虚像の真似をして、傲慢にならんでもよかろうに)と、グーリシェダは思った。
「確かに、例えエルフに会う事があっても、出来るだけ話さないよう誰もが距離を置いていたからのぅ。あやつら、ハイエルフはハーブ水と木の芽と花の蜜しか食さないとか、訳の分からないことを言い出すし、ワシらと同じように暮らせば自分らもハイエルフに進化できるなどと、ほんに気味が悪いことを言っておったわ……」
グーリシェダは溜息を深く吐いた。
(どれだけ、ハイエルフに憧れていたんだろうエルフ族……その思い込みが気持ち悪い)と、パウパウは広場のエルフ達を見ないように目をそらし、咲いている花だけを見るようにした。
「今日だって、薬師ギルドに行って、さっさとパウ坊と虫を探す予定だったのにのう……」
「うん」
「挨拶程度ならしてもいいが、なんで我らを脅しての婚姻話になるのか」
「ん~、お嫁さんになったら、名前だけはハイエルフになれるから?」
「そう簡単に、お嫁には成れんのだがの」
グーリシェダはパウパウの頭を撫ぜる。
「ふぅん、そうなんだぁ……」
(ぼくも、平気で人を傷つける魔法を打つ人が、ミッちゃんのお嫁に成るのはイヤだなぁ……)
しかも、その静々姫の自爆でドワーフの奴隷が露見だ。
(そんなに奇麗でもないし、賢くもないし、魔法も残念だったし。ミッちゃんの髪の毛一本だって、あの人には勿体ないよなぁ)
パウパウは空の黒猫を見上げる。
眠っているのか、黒くて丸いのが空に浮かんでいる。
「グー姉様。ネコ、オハギみたいだねぇ」
「ホホ…そうじゃのぅ、ピカピカの粒あんじゃ」
国がどうなるかと、周りがバタバタしているのに、ここだけ別の空間となっていた。
まぁ、所詮は他人事なのだから仕方ない。たとえ、きっかけがハイエルフたちの来訪だったとしても。
二人仲良く、行儀悪く頬杖をついている所に、魔道人形さんが声を掛ける。
「グーリシェダ様。薬師ギルドのサマシャム殿がお見えです」
見やった先にはナーターラァに足止めされている、ギルド長が何度もお辞儀しながら立っていた。
「こちらに、お通しせよ」
「ドワーフの事が心配で、ついつい顔を出してしまいました」
パウパウにも丁寧に一礼をして席に着いた薬師ギルドの長は、魔道人形が出した冷茶を、大切そうにチビチビと飲んで言った。
ハイエルフ達が思ったとおり、周辺の住人は家屋内に入って、外を見ないようにという、お達しが王宮から出ていたそうだ。
初めから捕縛とかでもするつもりだったのだろう。
「これだけ兵士も浮足立っておりますし、年寄がフラフラしていても気にしておりませんな」
殆どの人々は空の黒猫と、今後のことで頭がいっぱいなようだ。
遠巻きに、こちらを伺っている兵士や民もいるが、ナーターラァが立っているお陰で近寄ることもない。
「あの…こんにちは。ぼくパウパウです。お薬屋さんに教えて欲しいの…ことがあります」
パウパウはギルド長の話の合間に、ご挨拶をする。
「おぉ、ご丁寧に。私はサマシャム=マルペと申す、薬師でございますよ。どのような、お話ですかな?」
「あのね、あそこのエルフさん達、お水を飲まなくても平気?魔法のお水を出して飲むのかなって思って」
パウパウ達の場所は遮光が施されており、日差しが和らいでいる上に気温も心地よく保たれている。
だが、広場の中央は炎天下、先ほどの結界内よりはマシかもしれないが、かなりの暑さだろう。
「坊ちゃまはお優しいですな。はい、エルフ族も人族ですから、水分は必要です。魔法で飲料水を出せるのにも限りがございますからね。んむ、グーリシェダ様、よろしいでしょうかな?」
「サマシャム殿、よろしく頼む。我らが手を貸すと、また勘違いをされそうゆえ、そちらで飲水の手配をしてくれるか」
サマシャム師は、一礼をすると
「あれでもリヨスアルヴァの法衣貴族であった者達ですから、水くらい差し上げても帝国のお咎めはありますまい」そういって、薬師ギルドに一度、戻って行った。
─────────────────────────────────────
一方、ドワーフを救助に向かった一行は城の新築工事を行っている場所に転移をした。
外壁の一部を広げて、場所を確保するらしく、大がかりな工事が行われているようだ。
何処かから切り出された灰色の石材が山のように積まれて、辺りでは多くのヒトの人足や石工が作業をしていて、土埃が舞っている。
石を叩いて形成する音が響き渡る。
指示をする者の大声、石を引き綱で引っ張る掛け声。
どこかで、魔法使うぞぉ、そっち注意しろー!と叫ぶ声。
これでは、精霊猫の通達も聞こえなかったかもしれない。
上空を見れば、黒猫コロンコロンが見えるはずなのだが、それだけ夢中で作業をしているのだろうか?
「目印役をありがとうアオメ。サブロも、お疲れ。あとでお礼するからね」
偵察のアオメとサブロは、いい仕事をしてくれた。
報酬に好物のチーズを入れた卵を焼いてあげよう。
カラス系魔物のアオメとサブロは、卵焼きが大好きだ。深く考えてはいけない。
ウルジェドは2羽の眷属を帰そうとした。
「ガァっ!」「カッカッア~」
アオメとサブロは、翼を半分だけ広げて首を下げて激しく鳴いた。
断固拒否の構えである。
……報酬の支払いを要求されたウルジェドは「こんなことしてる場合じゃないんだよ」と呟きながら2羽に小ぶりの焼き菓子を差し出した。
「やめろ!なんで私の頭の上で食べるんだ。持って帰ればいいだろう⁈」
奇麗な銀髪の上に菓子クズを散らかし、肩口で嘴を擦りつける2羽に怒るが、気にしない眷属は食べ終えて、ようやく帰った。
「お前の眷属、相変わらずねぇ」ケラケラ笑うマールジェドに、何も言えずに菓子クズを払うウルジェドだ。
「おいササ耳、んで、さっきは、どうやってドワーフ達に回復薬を渡したんだ?」
「認識阻害で、忍んでコッソリだな」
ウルジェドは、ドワーフが監禁されていた小屋に忍び込んで、後で助けに来るので、とりあえず回復薬を飲んでおけと置いてきたのだと言う。
そして、今、ウルジェド達は認識阻害などをせず、堂々と作業現場を歩いているのだ。
美貌のハイエルフ二人と、立派な体格のエルダードワーフ、見たこともない魔道騎士、エルフの宰相の一行だ。
当然、注目の的である。
「おい!貴様ら、誰の許可を得てここへ入った!」と、当然、このように監視の兵士に呼び止められるのだ。
「この場所は、例えエルフであっても許可のない者は立ち入りを赦されていない。早々に立ち去るように」
バラバラと兵士が集まって来る。
あんな王の下なのに、兵隊は真面目だなぁとウルジェドは思う。
「えっとぉ、ここで働いているドワーフさんの面会に来ましたぁ!」
ニッコニコでマールジェドが言い放った。
「わ、訳の分からん事を言ってないで、早く帰れ!」
「そんな物騒な魔道具を連れた面会が居るか!」
ちなみに宰相は、その魔道騎士4機の陰になってしまい、兵士達から見えていない。
明るい時間にドワーフを表立っては使えないらしく、彼らが作業するのは暗くなってからだという。
なぜ、知ったかといえば、集まって来た監視の兵士が親切に教えてくれたので。
こうやって↓
「うぅ、貴様ら何者だ、リヨスアルヴァ国の兵士に対して……」
ナーターラァの尻尾に締めあげられた兵士が苦しみながらも言う。
礼儀を尽くして聞いたら、教えてくれたのだ。
「はいはい、通りすがりの面会人のハイエルフです」
「猫の声、聞こえなかったの?リヨスアルヴァは非国になったのよ~」
「いや、お前ら。宰相殿がおられるんだから、話を通してもらえばいいだろう。なんのために同伴を頂いたんだ」ガルデンだけが真面なことを言う。
【それでは、面白くないので!】無言でガルデンを睨んだ二人に
「……だからって兵士にヤツ当たりをするなよ。文句なら、あの姫さんに言えや」
「あのエルフ女には言葉をかけたくない……」
呟くウルジェドに、コクコクと頷くマールジェドだ。
宰相はというと、あわあわしていた。
(ハイエルフ様が、伝説のハイエルフ様が、神話のハイエルフ様が……なんか、全然、違うぅ!)
そう、ハイエルフ”思ってたんと違う”である。
リヨスアルヴァ国のエルフ族に伝わるハイエルフは、何処までも優美で、どの種族より魔法に秀で、理性と秩序を重んじる、静かなる賢者。光の衣を纏い、朝露と花の蜜を食し、楽を愛するという、物語の大精霊に近い存在だった。
その伝説のハイエルフが、鳥に馬鹿にされて、頭に焼き菓子の屑を散らかされている。
確かに恐ろしいほどに美しいし、縦横無尽に転移魔法を使える。
だが、この方たち絶対に理性と秩序を重んじない気がする。
現に今、リヨスアルヴァの兵士を絞めているし、もう一人は手を叩いてケラケラ笑っている。
確かに、姫の雷魔法の介抱はして頂いたが…
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