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75.パウパウの夏とタガメ探し 13
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いきなり広場に転移して来た、酷い有様のドワーフ達を見てリヨスアルヴァの兵士や様子を見に集まった民たちは眉を顰めた。
エルフ族と違い、彼らにはドワーフへの歪んだ気持ちなど無い。
ただ何事かと戸惑う目。
過去の歴史を聞きかじっている者は、まさか、またか?という疑いの目。
兵士の中にも知らない者が多いようで、戸惑う騒めきが大きくなる。
壇上のエルフ達はといえば、グゥっと息を吞む者や、逃げ場を求めてか目を彷徨わせる者と様々だが、一様に顔色が益々、悪くなっていく。
花畑の際に現れた彼らは、魔道人形さんが敷物を用意するよりも早く、崩れ落ちて地べたに座り込んだ。
グーリシェダが足早に近づいて、ドワーフ達のそばに膝を付く。
「エルフが
「生憎と、我らはハイエルフでの。あれらとは別の種族じゃ」
吐き捨てるように言ったグーリシェダがパチリと指を鳴らして、もう1機の魔道人形を呼んだため、ドワーフ達は文句を止めてマジマジと魔道具を観察してしまう。
「とりあえずは水分と食事じゃな。ウルシェド」
「用意は出来てるよ、ばぁちゃん」
ミッちゃんは収納から大鍋を取り出して、作業用のテーブルの上に置く。
野営用のテーブルだ。
大中小とサイズがあって、以前の試作品は日の目を見ていた。
現在は帝国軍でも使用されている。
冒険者ギルドでも絶賛、販売中であることは余談だ。
消化のいい野菜と肉がトロトロになるまで煮込まれたスープ。
足りなければ野営用の道具を使って、ここで作ってもいい。
「ぼく、手伝う!」
「ありがとうパウパウ」
魔道人形さんと一緒に、パウパウは配膳を手伝った。
といっても、地べたに座ったドワーフ達にカトラリーと木のコップを渡す程度しか出来ることはなかったが。
「おぉ、黒妖精か?偉いなぁ」ドワーフの一人が驚いたように言う。
また、妖精呼ばわりされた。
そうしている間にも、新たな魔道人形が回復薬を薄めた水瓶を持ってドワーフに配って回り、グーリシェダがドワーフの一人一人を見て、断りを入れて足首を触り診断を下していく。
「おめぇ…いや、御婦人はエルフではないのか」
エルフ族がドワーフに膝を付いたり、体に触れることなど絶対にないだろうと、ドワーフの男はグーリシェダに声を掛けた。
「残念なことに似た見てくれであるが、我らはハイエルフじゃ。ワシはグーリシェダ、薬師での。信用してくれとは言わぬが、エルダードワーフのガルデン殿と孫が知古の仲でな。ガルデン殿に免じて治療をさせて欲しい」
そこに薬師ギルド長のサマシャム師が男を連れてやって来た。
「グーリシェダ様、皆さま、本当に有難うございます」
何故か潤んだ目で男も一緒に頭を下げた。身なりからして下級貴族だろう。
「いや、サマシャム師こそ、水をご苦労であったな。で、もしや、そちらがサマシャム殿の…」
「はい、御挨拶を」
「これなるサマシャムの甥、ファールマ=コポリム元子爵にございます。あのキノコについては、何としてでもお支払いを致しますので、ドワーフの皆を助けて頂けませんか」
「案ずるな、よくぞ動いてくれた」
国に偽りながらもドワーフの助けを求めるのは辛かっただろうとグーリシェダは労りの声を掛ける。
「いえ、いいえ…」
見せぬように顔を伏せたコポリム元子爵の目からポトリと涙が落ちるのを、グーリシェダは微笑んで見つめた。
だが、そんな柔らかな空間をぶった切って響く声。
「おぃ、肉はねぇのか、肉、よこせ長耳」
「トロトロに煮込んだ、ホロホロ崩れる角煮をくださいハイエルフ様と言えたら食わせてやる」
グーリシェダがドワーフ達の健康状態を確認して頷いたので、そんな軽口を叩ける。このドワーフ達、内臓が恐ろしく丈夫だと出た。ちまちま重湯から始めたら金槌振り回して暴れそうだ。
「うるせぇわ、食ってやるから寄こせと言うてるじゃろうが」
「そんな口しか利けん奴には、この蜜酒を見せてやろう」
「うおぉ、酒か!寄こせ」「よこせ!」「寄こせハイエルフ様!」早くも 一名、酒の前に堕ちたようだ。
「見せるだけ~辛口のミードでございますが、長耳の出す酒なぞドワーフの皆さんは、御嫌でしょう?」
そんな事を言いながら、収納空間から出した素焼きのツボを両手で掲げるハイエルフは、叔父のマールジェドによく似た笑顔だ。
「ミッちゃん、なんだか楽しそう」
「あ~、ありゃ冒険者のウルシェドだな。冒険者やってたときは、あんな感じだったぞ」
「冒険者…いいかも」
いつも優しい羽毛が撫ぜるような声で話をしてくれるミッちゃんが、あんな雑駁に、弾けた声で話しているのを見て、冒険者になったら自分ともあんな風になるのかとパウパウは想像する。
一緒に野外で御飯を食べたり、焚火を囲んだり、天幕で眠ったりするのだ。
もしかしたら、マシュマロを炙ってクッキーと挟んで食べたりするかもしれない。
それ、キャンプだよ、と訂正をしてくれる友達がいないので、パウパウの冒険者生活は間違いだらけだ。
「そろそろ、よい頃合いじゃな」
グーリシェダは立ち上がると人差し指を立てて息を吹きかけてから「マールを呼び戻せ」と呟いた。
すると、んべっんべっと背中の毛づくろいをしていた空の黒猫が、
「にゃぁっん──マールジェド、マールジェド、ハイエルフのマールジェド。ただちに戻れ、族長グーリシェダの元へ帰還せよ──」
仕舞い忘れて、ちょびっと出たピンクの舌が可愛いなとパウパウは思った。
「間もなく、帝国より使者が来る。ドワーフの皆の治療は、その後になるが赦して頂きたい」
そう言ってグーリシェダが軽く会釈程度に頭を下げると悲鳴が上がった。
ドワーフ達からではない、
中央の舞台上に事実上拘束されたエルフ達、リヨスアルヴァの元王侯貴族達からだ。
「ハイエルフがドワーフなぞに頭を下げた……」
「嘘だ!うそだぁっ‼」「そんなバカな…」
成程の……グーリシェダが内心で頷く。
幻想のハイエルフ……
彼らリヨスアルヴァのエルフが思う、ハイエルフはドワーフに頭を下げないのだろう。
道理でドワーフとポンポンとウルシェドが話をするたびに、奇声が上がるはずだ。
(はっ、くだらんのう)
「あ……あれは、あれはきっとハイエルフでは在りません!高貴なハイエルフならドワーフなどと話したり、触れたり、あ、頭を下げるなど致しませんわっ!」
静々姫が、金切り声を上げた。
いや、悪いと思えば謝るし、なんなら孫は四才児に土下座するぞとグーリシェダは思う。
「おぉ、そうだ。そうだな。高貴なハイエルフなら、我が国の姫との婚礼を断る事など有るまい」
なんで、そう思っちゃうのかなぁ……
私にも好みがあると広場の中心で叫んでいいだろうか……とミッちゃんは遠い目をする。
そんな騒ぎの最中、
「ただいま~」
魔道騎士3機を引き連れてマールジェドが帰還する。
スリクタ元宰相は魔道騎士の小脇に抱えられて、顔色が悪い。
「あら?なにか五月蠅いのだけど、どうしたの?」
キョトンとした顔で首を傾げたマールジェドは、こんな時でも、とてつもなく美しかった。
「エルフとの婚姻を望まず、ドワーフに頭を下げる我らはハイエルフではないそうじゃ」
「はぁ?」
バッと振り返り、騒いでいたエルフ達を見据える。
「おぉ、その見事な美貌の、その方なら、たとえ偽りのハイエルフでも良い。やはり、我の妾妃としてやろう」
こんな状況なのに色に狂わせるマールジェドの美貌が凄いのか、エルフ元王の頭の中身がスゴイのか。
「はぁ~?」
ファトゥス元王の言葉に、眉を吊り上げて、ずんずんと足を進めたマールジェドは、ガッとガルデンの腕に自分の腕を巻き付けた。
「亡国のクソ王が、ふざけるな!こっちにだって好みってモンがあるんだよ!」
「お、おぃ、マール?」
「おぃガルデン!」
エルダードワーフに向き直ったマールジェドは、ガルデンの髭をガシリと掴み、引っ張った。
「った、なに……を」
そして、そのまま近づいたガルデンに口付ける。
髭ぜったい離さない!と両手で握りしめたマールジェドは、少し顔を離してガルデンに囁く。
奇麗な顔が真っ赤だ。
「前からずっと好き。今も好き。だから、これからも好き」
「いや、だが、俺は……マールと違って」
「この先も、その先も、来世があるなら来世も、ガルデンが好き」
「マール……」
「ガルデンが貰ってくれないなら……」
マールジェドは片手だけ髭から手を離して、広場の開いた空間に向けて、その手を振った。
巨大なグソクムシが現れた!
巨大な蜘蛛が現れた!
巨大なムカデがウゾウゾ走り回る!それ、いつの間に作った!
そして、隊列を組んで見事なマスゲームのように行進を始めるカニ、カニ、カニカニカニカニカニカニカニカニ……
もう広場は一杯だ!悲鳴を上げた民が自分の家に逃げる。狭い道で将棋倒しになる人達がいる。兵士は成すすべもない。元王侯貴族は泡を吹いている!ドワーフ達は大喜びだ‼
「ガルデン!なんとかしろ!このままでは人死にが出る!」
いつの間にかパウパウを抱き上げているミッちゃんが叫ぶ。
(ヤンデレだったぁ!)パウパウが心の中で叫ぶ。
「マールジェド、この阿呆め!ガルデン殿、すまぬ、止めてくれ」
魔道騎士に守られたグーリシェダが声を上げる。
空の黒猫が、らんらんと目を輝かせて、カニのマスゲームを狙っているのだ。早くしないと巨大な黒猫が広場に降りてくる気満々だ。
お尻を上げて二本の尻尾をフリフリしている!
「俺かぁっ⁉」
髪の毛をバリバリしてガルデンは叫んだ。
チュンスケは逃げ飛び、ウルシェドの頭に着地した。
「マール、マールジェド。返事をするから、魔道具を仕舞ってくれ」
「ちゃんと返事をしてくれないなら、彼らを全力で動かすわよ」
それは、すでに脅迫では?とガルデンは思う。
「あ~、おぅ、大丈夫だ」
エルフ族と違い、彼らにはドワーフへの歪んだ気持ちなど無い。
ただ何事かと戸惑う目。
過去の歴史を聞きかじっている者は、まさか、またか?という疑いの目。
兵士の中にも知らない者が多いようで、戸惑う騒めきが大きくなる。
壇上のエルフ達はといえば、グゥっと息を吞む者や、逃げ場を求めてか目を彷徨わせる者と様々だが、一様に顔色が益々、悪くなっていく。
花畑の際に現れた彼らは、魔道人形さんが敷物を用意するよりも早く、崩れ落ちて地べたに座り込んだ。
グーリシェダが足早に近づいて、ドワーフ達のそばに膝を付く。
「エルフが
「生憎と、我らはハイエルフでの。あれらとは別の種族じゃ」
吐き捨てるように言ったグーリシェダがパチリと指を鳴らして、もう1機の魔道人形を呼んだため、ドワーフ達は文句を止めてマジマジと魔道具を観察してしまう。
「とりあえずは水分と食事じゃな。ウルシェド」
「用意は出来てるよ、ばぁちゃん」
ミッちゃんは収納から大鍋を取り出して、作業用のテーブルの上に置く。
野営用のテーブルだ。
大中小とサイズがあって、以前の試作品は日の目を見ていた。
現在は帝国軍でも使用されている。
冒険者ギルドでも絶賛、販売中であることは余談だ。
消化のいい野菜と肉がトロトロになるまで煮込まれたスープ。
足りなければ野営用の道具を使って、ここで作ってもいい。
「ぼく、手伝う!」
「ありがとうパウパウ」
魔道人形さんと一緒に、パウパウは配膳を手伝った。
といっても、地べたに座ったドワーフ達にカトラリーと木のコップを渡す程度しか出来ることはなかったが。
「おぉ、黒妖精か?偉いなぁ」ドワーフの一人が驚いたように言う。
また、妖精呼ばわりされた。
そうしている間にも、新たな魔道人形が回復薬を薄めた水瓶を持ってドワーフに配って回り、グーリシェダがドワーフの一人一人を見て、断りを入れて足首を触り診断を下していく。
「おめぇ…いや、御婦人はエルフではないのか」
エルフ族がドワーフに膝を付いたり、体に触れることなど絶対にないだろうと、ドワーフの男はグーリシェダに声を掛けた。
「残念なことに似た見てくれであるが、我らはハイエルフじゃ。ワシはグーリシェダ、薬師での。信用してくれとは言わぬが、エルダードワーフのガルデン殿と孫が知古の仲でな。ガルデン殿に免じて治療をさせて欲しい」
そこに薬師ギルド長のサマシャム師が男を連れてやって来た。
「グーリシェダ様、皆さま、本当に有難うございます」
何故か潤んだ目で男も一緒に頭を下げた。身なりからして下級貴族だろう。
「いや、サマシャム師こそ、水をご苦労であったな。で、もしや、そちらがサマシャム殿の…」
「はい、御挨拶を」
「これなるサマシャムの甥、ファールマ=コポリム元子爵にございます。あのキノコについては、何としてでもお支払いを致しますので、ドワーフの皆を助けて頂けませんか」
「案ずるな、よくぞ動いてくれた」
国に偽りながらもドワーフの助けを求めるのは辛かっただろうとグーリシェダは労りの声を掛ける。
「いえ、いいえ…」
見せぬように顔を伏せたコポリム元子爵の目からポトリと涙が落ちるのを、グーリシェダは微笑んで見つめた。
だが、そんな柔らかな空間をぶった切って響く声。
「おぃ、肉はねぇのか、肉、よこせ長耳」
「トロトロに煮込んだ、ホロホロ崩れる角煮をくださいハイエルフ様と言えたら食わせてやる」
グーリシェダがドワーフ達の健康状態を確認して頷いたので、そんな軽口を叩ける。このドワーフ達、内臓が恐ろしく丈夫だと出た。ちまちま重湯から始めたら金槌振り回して暴れそうだ。
「うるせぇわ、食ってやるから寄こせと言うてるじゃろうが」
「そんな口しか利けん奴には、この蜜酒を見せてやろう」
「うおぉ、酒か!寄こせ」「よこせ!」「寄こせハイエルフ様!」早くも 一名、酒の前に堕ちたようだ。
「見せるだけ~辛口のミードでございますが、長耳の出す酒なぞドワーフの皆さんは、御嫌でしょう?」
そんな事を言いながら、収納空間から出した素焼きのツボを両手で掲げるハイエルフは、叔父のマールジェドによく似た笑顔だ。
「ミッちゃん、なんだか楽しそう」
「あ~、ありゃ冒険者のウルシェドだな。冒険者やってたときは、あんな感じだったぞ」
「冒険者…いいかも」
いつも優しい羽毛が撫ぜるような声で話をしてくれるミッちゃんが、あんな雑駁に、弾けた声で話しているのを見て、冒険者になったら自分ともあんな風になるのかとパウパウは想像する。
一緒に野外で御飯を食べたり、焚火を囲んだり、天幕で眠ったりするのだ。
もしかしたら、マシュマロを炙ってクッキーと挟んで食べたりするかもしれない。
それ、キャンプだよ、と訂正をしてくれる友達がいないので、パウパウの冒険者生活は間違いだらけだ。
「そろそろ、よい頃合いじゃな」
グーリシェダは立ち上がると人差し指を立てて息を吹きかけてから「マールを呼び戻せ」と呟いた。
すると、んべっんべっと背中の毛づくろいをしていた空の黒猫が、
「にゃぁっん──マールジェド、マールジェド、ハイエルフのマールジェド。ただちに戻れ、族長グーリシェダの元へ帰還せよ──」
仕舞い忘れて、ちょびっと出たピンクの舌が可愛いなとパウパウは思った。
「間もなく、帝国より使者が来る。ドワーフの皆の治療は、その後になるが赦して頂きたい」
そう言ってグーリシェダが軽く会釈程度に頭を下げると悲鳴が上がった。
ドワーフ達からではない、
中央の舞台上に事実上拘束されたエルフ達、リヨスアルヴァの元王侯貴族達からだ。
「ハイエルフがドワーフなぞに頭を下げた……」
「嘘だ!うそだぁっ‼」「そんなバカな…」
成程の……グーリシェダが内心で頷く。
幻想のハイエルフ……
彼らリヨスアルヴァのエルフが思う、ハイエルフはドワーフに頭を下げないのだろう。
道理でドワーフとポンポンとウルシェドが話をするたびに、奇声が上がるはずだ。
(はっ、くだらんのう)
「あ……あれは、あれはきっとハイエルフでは在りません!高貴なハイエルフならドワーフなどと話したり、触れたり、あ、頭を下げるなど致しませんわっ!」
静々姫が、金切り声を上げた。
いや、悪いと思えば謝るし、なんなら孫は四才児に土下座するぞとグーリシェダは思う。
「おぉ、そうだ。そうだな。高貴なハイエルフなら、我が国の姫との婚礼を断る事など有るまい」
なんで、そう思っちゃうのかなぁ……
私にも好みがあると広場の中心で叫んでいいだろうか……とミッちゃんは遠い目をする。
そんな騒ぎの最中、
「ただいま~」
魔道騎士3機を引き連れてマールジェドが帰還する。
スリクタ元宰相は魔道騎士の小脇に抱えられて、顔色が悪い。
「あら?なにか五月蠅いのだけど、どうしたの?」
キョトンとした顔で首を傾げたマールジェドは、こんな時でも、とてつもなく美しかった。
「エルフとの婚姻を望まず、ドワーフに頭を下げる我らはハイエルフではないそうじゃ」
「はぁ?」
バッと振り返り、騒いでいたエルフ達を見据える。
「おぉ、その見事な美貌の、その方なら、たとえ偽りのハイエルフでも良い。やはり、我の妾妃としてやろう」
こんな状況なのに色に狂わせるマールジェドの美貌が凄いのか、エルフ元王の頭の中身がスゴイのか。
「はぁ~?」
ファトゥス元王の言葉に、眉を吊り上げて、ずんずんと足を進めたマールジェドは、ガッとガルデンの腕に自分の腕を巻き付けた。
「亡国のクソ王が、ふざけるな!こっちにだって好みってモンがあるんだよ!」
「お、おぃ、マール?」
「おぃガルデン!」
エルダードワーフに向き直ったマールジェドは、ガルデンの髭をガシリと掴み、引っ張った。
「った、なに……を」
そして、そのまま近づいたガルデンに口付ける。
髭ぜったい離さない!と両手で握りしめたマールジェドは、少し顔を離してガルデンに囁く。
奇麗な顔が真っ赤だ。
「前からずっと好き。今も好き。だから、これからも好き」
「いや、だが、俺は……マールと違って」
「この先も、その先も、来世があるなら来世も、ガルデンが好き」
「マール……」
「ガルデンが貰ってくれないなら……」
マールジェドは片手だけ髭から手を離して、広場の開いた空間に向けて、その手を振った。
巨大なグソクムシが現れた!
巨大な蜘蛛が現れた!
巨大なムカデがウゾウゾ走り回る!それ、いつの間に作った!
そして、隊列を組んで見事なマスゲームのように行進を始めるカニ、カニ、カニカニカニカニカニカニカニカニ……
もう広場は一杯だ!悲鳴を上げた民が自分の家に逃げる。狭い道で将棋倒しになる人達がいる。兵士は成すすべもない。元王侯貴族は泡を吹いている!ドワーフ達は大喜びだ‼
「ガルデン!なんとかしろ!このままでは人死にが出る!」
いつの間にかパウパウを抱き上げているミッちゃんが叫ぶ。
(ヤンデレだったぁ!)パウパウが心の中で叫ぶ。
「マールジェド、この阿呆め!ガルデン殿、すまぬ、止めてくれ」
魔道騎士に守られたグーリシェダが声を上げる。
空の黒猫が、らんらんと目を輝かせて、カニのマスゲームを狙っているのだ。早くしないと巨大な黒猫が広場に降りてくる気満々だ。
お尻を上げて二本の尻尾をフリフリしている!
「俺かぁっ⁉」
髪の毛をバリバリしてガルデンは叫んだ。
チュンスケは逃げ飛び、ウルシェドの頭に着地した。
「マール、マールジェド。返事をするから、魔道具を仕舞ってくれ」
「ちゃんと返事をしてくれないなら、彼らを全力で動かすわよ」
それは、すでに脅迫では?とガルデンは思う。
「あ~、おぅ、大丈夫だ」
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