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90.パウパウの夏とタガメ探し 25
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屋敷のお風呂に入った後、気落ちしているパウパウのためにミッちゃんは、雑貨屋の二階からグーリシェダの砂漠のゲルに連れてきてくれた。
このゲルはグーリシェダの拡張空間なので、転移を直接することは出来ないのだという。
「人の魔力に干渉するのは難しいんだ。そんな事できるのは、ばぁちゃん位だね」
そう説明をされたが、よく分からないパウパウだ。
「ハヤツ!マアガ!」
「ニ゛ィィ~」
白い砂漠オオネコの子猫は、元気に走り寄って来た。
足腰が随分しっかりしてきたようで、火のように赤い目にも力がある。
「ハヤツ、大きくなったね!」
他の子猫と体の大きさも負けていないくらい大きくなっている。
しゃがみ込んだパウパウの膝に前足を置く、その重さが以前とは違っていた。
マアガの育て方が上手なのだろう。
「マアガ、いつも有難う」
パウパウに顔を寄せてきたマアガの頭を抱きかかえて撫ぜると、ゴゥゴゥゴロゴロと喉を鳴らして答えてくれた。
「ハヤツたちも、今の赤いお家で遊べたらいいのになぁ」
四匹の仔猫に囲まれて、寝そべるマアガに背を預けているうちにパウパウの気持ちも少し浮上してきたらしい。
「ハヤツ達は、まだ小さいからねぇ、砂漠を出るには体力が足りないんだよ」
「もっと大きくなったら、あそこのお庭で遊べる?」
「そうだね、ハヤツが行きたいってなったらね」
「そっかぁ」
「ナ゛ァ~ン」
膝の上に乗ったハヤツがパウパウを見上げて鳴く。
しっかり鳴けるようになっていて嬉しい。
「そっかぁ…早くおっきくなってねぇ」
家猫よりも硬い毛をムニムニしながら言うと、ハヤツもゴルゴルと余り上手ではない喉声を上げた。
夜の狩りに出かける砂漠オオネコ親子を見送って、赤いレンガの屋敷に戻ってきた二人は翌朝、厨房のテーブルで軽く食事をした後で、魔蜂の巣を探しがてら山道を下って町へ行くことにした。
「ミッちゃん、ゴマのパン、あれ美味しかった!」
「焼く前にね、糖蜜水に潜らせるんだよ」
それで、甘味を感じたのか。
香ばしくてパリっとして、中はもっちりと食べ応えのあるパンで、柔らかいスクランブルエッグと相性が良かった。
「いっぱい焼いてサンドイッチも作ったから、お昼のお店が見つからなかったら、お弁当にしようか」
「うん!」
「舟も見たいでしょ?」
「うん、見たこと無いから!」
知識としても、記憶としても舟が有る事は知っているが、パウパウは実物の舟を見たことはない。
お祭りでは、沖に一斉に走るとフッバーが説明していたが、どれ位の大きさで、どうやって進むのだろう。
そして、もう一つパウパウが気になっていたのは……
「ねぇ、ミッちゃん。あのね、オバケってこの世界には居るの?」
パウパウが知っているのは前世の記憶のオバケだ。
脳の錯覚による、いわゆる幽霊の正体見たり枯れ尾花と言われる物から、”恨めしい”と怨念を込めて出てくるという創作物。
本当か嘘か分からない心霊動画や心霊写真。
成仏できない霊が、幽霊となって出てくるという話から、外国ホラーのような宗教的な色の濃い、悪魔が災いをもたらす話や映画。
なんだか前世には沢山の、そういった話があった気がする。
そう考えると、今、パウパウの住んでいる世界で教会や寺のような祈りの場所や、お墓を見たことが無い。
まだ小さいから、行ったことが無いだけかもしれないけれど……
「ん?オバケ?いるよ」
あっさりとミッちゃんは認めた。
「ゴーストとか、レムレスとか、ダエーワとか……まぁ、色々な呼び名を持っているけれどね」
「居るの⁉どんな姿?どこに出るの?」
「ん~、姿はいろいろだね。何処にというと墓とか古い建物とか、古戦場だねぇ、あとダンジョンには出るね」
「それでフッバーさん、見に来たんだ」
「うちがダンジョンになったと思ったのかもね」
そんな話をしながら下って行くと、ミッちゃんが飛んでいるの魔蜂に気づいた。
「あぁ、居た居た」
「魔蜂だ!おはよ~」
どうやら草わらの先の木立の奥に巣があるようだが、そこまで踏み込むつもりはない。
とりあえず、パウパウは蜂を見かけるごとに”人が手を出さない限りは、襲わないで”とお願いをした。
「これで、大丈夫だといいね」
「うん、だいじょぶだと思うよ」
二人でニコニコ笑いながら、なだらかになって来た山道の途中でミッちゃんが眷属の白いカラスを呼び出した。
「サブロ!おはよう」
「カアっ!」
「サブロ、飛んで行って港と舟がある場所を探してくれ」
ミッちゃんの腕に止まったサブロに言うと、嘴をアーンと開けた。
「本当に、お前は……」
収納から出した真ん丸のクッキーを渡すと、器用に咥えてカシュカシュと味わったあと、空に羽ばたいて行った。
「まったく、持って帰ればいいのに」と、ミッちゃんはブツブツ文句を言いながら菓子クズを払う。
「サブロの食べてたの、鳥用なの?」
「いや、パウパウのオヤツの残りだよ。味見するかい?」
パウパウがサブロを真似て、アーンと口を開けると、ミッちゃんが舌の上に真ん丸のクッキーを乗せてくれた。
カシュっと歯ごたえの後、すぐに崩れて無くなってしまう、不思議な食感のお菓子だった。
「どう?」
「美味しいけど、すぐ無くなっちゃうよ」
「あはは、そうかぁ、ならばイッパイ食べればいいよ」
そう言って、また一つ、舌の上に乗せてくれた。
随分と下まで降りて、町の街道らしき道との交差場所が見えるようになった頃、こちらに登って来る男が居た。
「お~い、おはようウルジェド、パウパウ」
手を振ったのはフッバーだった。
「フッバーさん、おはようございます!」
「おはよう、フッバー」
「ったく、酷いな二人とも、昨日は置いて行きやがって」
そう言いながらもフッバーは笑顔だ。
「なんだ?わざわざ様子見に来たのか?」
「いやぁ……まぁ、一応、魔蜂の事もあったからなぁ」
本当に面倒見のいい男だとミッちゃんは思った。
「で、今日の予定は何かあるのか?ウルジェド」
「あぁ、パウパウが舟も海も近くで見たことないんでな、今から港の見物に行こうと思っていたんだ」
「そうか、じゃあ案内してやるよ、そろそろ舟が帰ってきて水揚げする時間だからな、見たことないなら面白いと思うぞ」
そう言いながらギルドの手前の道を曲がり、石積の防潮堤を右に進んだ。
昨日のウェス老人の家とは逆の方向だ。
「昨日ね、あっちのウェスお爺さんのお家で、御飯を御馳走になったんだよ」
パウパウがフッバーに伝える。
「あぁ、ペルナさんの手料理を御馳走になったが、とても美味かった」
それを聞いて驚いたのはフッバーだ。
「え?何がどうなって、ウェス爺さんとこで飯食ってんだよ。すげぇな、あんたら」
「防潮堤の錬金符を見ていたら、怒鳴られてな、それで、分からんうちに食事を馳走になってた」
「うん。まったく分かんねぇな」
「私らにも、分からん」
道の左側は石積みの壁、右側には住宅が建っている。
住宅が切れた辺りで石壁も無くなり、海が見えた。
そして、港も見えてきた。
小さな舟が、海に白い帯を引いて帰って来ていた。
それを追いかけるように海鳥が群がって飛んでいる。
ニャアニャアと鳴く声は、猫そっくりだ。
沖に向かって伸びる一本堤、その対面には海に向かって右手を直角に曲げたような堤が、長く沖に伸びていた。
丁度、ロの形の向かって左角が欠けているように見える
右側の堤には大きな船が4隻、停泊していた。
どうやら、今、働いているのは小さめの舟ばかりで、それが続々と港に戻ってきている時間のようだ。
岸の部分に舟が横づけされては、採った魚を入れた箱をドンドン降ろしている。
スロープになっている所に入った舟は、網ごと降ろして、その場で魚を外しては箱に入れていた。
大きな木箱に氷を出して回る魔術師たち。
魚が溢れそうな箱を、漁師たちが軽々と滑らせて運んでいるのは、何かの術だろうか。
「ダァメダスッタラコトシタラチャントナワハレヤッ」
「アミサナオサネバアシタッカラヤッテケネェベ」
「ナツガレダァデッケェノハオキサイカネバナ」
怒鳴るような声が響く。
笑い声も響く。
邪魔にならない離れた場所で見ていた三人にも聞こえてくる活気。
「カァ!」
「お帰り、私のほうが先に見つけて……臭っ!」
一声、鳴いた白いカラスがミッちゃんの肩に戻って来た。
「サブロ、お前、生魚の匂いがするぞ!」
サブロが目をそらした。
漁師が運ぶ箱から漏れた小魚が、辺りには散らばっている。
大した値が付かないのか、漁師も雑魚をいちいち拾ったりはしないのを、海鳥が警戒した目でそっと近づいてはカッと掠め取って行く。
どうやらサブロも、海鳥に混じって盗み食いしたらしい。
全身、真っ白だから気づかれなかったのだろうか。
「おまえ、しばらくオヤツ無し!」
もう、いいとミッちゃんは召喚を解除した。
「フッバーさん、あの舟は、どうやって動いてるの?」
何の動力源も積んでいなそうな舟を見て、不思議に思ったパウパウが尋ねた。
「あぁ、小さいのは錬金符で動かしているな。大きい船は魔道船だ」
舟には3、4人が乗るらしい。
風と水の錬金符を操作して、漁場まで行き網を掛けてくるのだそうだ。
「それは、随分と器用なもんだな」
錬金符は誰でも魔力を通せば、書かれた術を使える便利な物だ。
だが、単純に飲水を出すとか、ただ風を出すなら未だしも、舟の操作に使用するとなると、符に込める魔力量などの微細な操作が必要になる。
「みんな、子供の頃から遊びながら覚えて行くんだそうだ」
なるほど、とミッちゃんは頷いた。
「ねぇ、あっちの大きいのは、何を獲る船なの?」
「ありゃあ、もっと沖で大きい魚や大きい群れを狙う用だ、あとは討伐だな」
「討伐?」
「あぁ、時期になると結構、厄介な魔物…魔魚が、来るんでな」
フッバーが険しい表情で船を見ながら言った。
このゲルはグーリシェダの拡張空間なので、転移を直接することは出来ないのだという。
「人の魔力に干渉するのは難しいんだ。そんな事できるのは、ばぁちゃん位だね」
そう説明をされたが、よく分からないパウパウだ。
「ハヤツ!マアガ!」
「ニ゛ィィ~」
白い砂漠オオネコの子猫は、元気に走り寄って来た。
足腰が随分しっかりしてきたようで、火のように赤い目にも力がある。
「ハヤツ、大きくなったね!」
他の子猫と体の大きさも負けていないくらい大きくなっている。
しゃがみ込んだパウパウの膝に前足を置く、その重さが以前とは違っていた。
マアガの育て方が上手なのだろう。
「マアガ、いつも有難う」
パウパウに顔を寄せてきたマアガの頭を抱きかかえて撫ぜると、ゴゥゴゥゴロゴロと喉を鳴らして答えてくれた。
「ハヤツたちも、今の赤いお家で遊べたらいいのになぁ」
四匹の仔猫に囲まれて、寝そべるマアガに背を預けているうちにパウパウの気持ちも少し浮上してきたらしい。
「ハヤツ達は、まだ小さいからねぇ、砂漠を出るには体力が足りないんだよ」
「もっと大きくなったら、あそこのお庭で遊べる?」
「そうだね、ハヤツが行きたいってなったらね」
「そっかぁ」
「ナ゛ァ~ン」
膝の上に乗ったハヤツがパウパウを見上げて鳴く。
しっかり鳴けるようになっていて嬉しい。
「そっかぁ…早くおっきくなってねぇ」
家猫よりも硬い毛をムニムニしながら言うと、ハヤツもゴルゴルと余り上手ではない喉声を上げた。
夜の狩りに出かける砂漠オオネコ親子を見送って、赤いレンガの屋敷に戻ってきた二人は翌朝、厨房のテーブルで軽く食事をした後で、魔蜂の巣を探しがてら山道を下って町へ行くことにした。
「ミッちゃん、ゴマのパン、あれ美味しかった!」
「焼く前にね、糖蜜水に潜らせるんだよ」
それで、甘味を感じたのか。
香ばしくてパリっとして、中はもっちりと食べ応えのあるパンで、柔らかいスクランブルエッグと相性が良かった。
「いっぱい焼いてサンドイッチも作ったから、お昼のお店が見つからなかったら、お弁当にしようか」
「うん!」
「舟も見たいでしょ?」
「うん、見たこと無いから!」
知識としても、記憶としても舟が有る事は知っているが、パウパウは実物の舟を見たことはない。
お祭りでは、沖に一斉に走るとフッバーが説明していたが、どれ位の大きさで、どうやって進むのだろう。
そして、もう一つパウパウが気になっていたのは……
「ねぇ、ミッちゃん。あのね、オバケってこの世界には居るの?」
パウパウが知っているのは前世の記憶のオバケだ。
脳の錯覚による、いわゆる幽霊の正体見たり枯れ尾花と言われる物から、”恨めしい”と怨念を込めて出てくるという創作物。
本当か嘘か分からない心霊動画や心霊写真。
成仏できない霊が、幽霊となって出てくるという話から、外国ホラーのような宗教的な色の濃い、悪魔が災いをもたらす話や映画。
なんだか前世には沢山の、そういった話があった気がする。
そう考えると、今、パウパウの住んでいる世界で教会や寺のような祈りの場所や、お墓を見たことが無い。
まだ小さいから、行ったことが無いだけかもしれないけれど……
「ん?オバケ?いるよ」
あっさりとミッちゃんは認めた。
「ゴーストとか、レムレスとか、ダエーワとか……まぁ、色々な呼び名を持っているけれどね」
「居るの⁉どんな姿?どこに出るの?」
「ん~、姿はいろいろだね。何処にというと墓とか古い建物とか、古戦場だねぇ、あとダンジョンには出るね」
「それでフッバーさん、見に来たんだ」
「うちがダンジョンになったと思ったのかもね」
そんな話をしながら下って行くと、ミッちゃんが飛んでいるの魔蜂に気づいた。
「あぁ、居た居た」
「魔蜂だ!おはよ~」
どうやら草わらの先の木立の奥に巣があるようだが、そこまで踏み込むつもりはない。
とりあえず、パウパウは蜂を見かけるごとに”人が手を出さない限りは、襲わないで”とお願いをした。
「これで、大丈夫だといいね」
「うん、だいじょぶだと思うよ」
二人でニコニコ笑いながら、なだらかになって来た山道の途中でミッちゃんが眷属の白いカラスを呼び出した。
「サブロ!おはよう」
「カアっ!」
「サブロ、飛んで行って港と舟がある場所を探してくれ」
ミッちゃんの腕に止まったサブロに言うと、嘴をアーンと開けた。
「本当に、お前は……」
収納から出した真ん丸のクッキーを渡すと、器用に咥えてカシュカシュと味わったあと、空に羽ばたいて行った。
「まったく、持って帰ればいいのに」と、ミッちゃんはブツブツ文句を言いながら菓子クズを払う。
「サブロの食べてたの、鳥用なの?」
「いや、パウパウのオヤツの残りだよ。味見するかい?」
パウパウがサブロを真似て、アーンと口を開けると、ミッちゃんが舌の上に真ん丸のクッキーを乗せてくれた。
カシュっと歯ごたえの後、すぐに崩れて無くなってしまう、不思議な食感のお菓子だった。
「どう?」
「美味しいけど、すぐ無くなっちゃうよ」
「あはは、そうかぁ、ならばイッパイ食べればいいよ」
そう言って、また一つ、舌の上に乗せてくれた。
随分と下まで降りて、町の街道らしき道との交差場所が見えるようになった頃、こちらに登って来る男が居た。
「お~い、おはようウルジェド、パウパウ」
手を振ったのはフッバーだった。
「フッバーさん、おはようございます!」
「おはよう、フッバー」
「ったく、酷いな二人とも、昨日は置いて行きやがって」
そう言いながらもフッバーは笑顔だ。
「なんだ?わざわざ様子見に来たのか?」
「いやぁ……まぁ、一応、魔蜂の事もあったからなぁ」
本当に面倒見のいい男だとミッちゃんは思った。
「で、今日の予定は何かあるのか?ウルジェド」
「あぁ、パウパウが舟も海も近くで見たことないんでな、今から港の見物に行こうと思っていたんだ」
「そうか、じゃあ案内してやるよ、そろそろ舟が帰ってきて水揚げする時間だからな、見たことないなら面白いと思うぞ」
そう言いながらギルドの手前の道を曲がり、石積の防潮堤を右に進んだ。
昨日のウェス老人の家とは逆の方向だ。
「昨日ね、あっちのウェスお爺さんのお家で、御飯を御馳走になったんだよ」
パウパウがフッバーに伝える。
「あぁ、ペルナさんの手料理を御馳走になったが、とても美味かった」
それを聞いて驚いたのはフッバーだ。
「え?何がどうなって、ウェス爺さんとこで飯食ってんだよ。すげぇな、あんたら」
「防潮堤の錬金符を見ていたら、怒鳴られてな、それで、分からんうちに食事を馳走になってた」
「うん。まったく分かんねぇな」
「私らにも、分からん」
道の左側は石積みの壁、右側には住宅が建っている。
住宅が切れた辺りで石壁も無くなり、海が見えた。
そして、港も見えてきた。
小さな舟が、海に白い帯を引いて帰って来ていた。
それを追いかけるように海鳥が群がって飛んでいる。
ニャアニャアと鳴く声は、猫そっくりだ。
沖に向かって伸びる一本堤、その対面には海に向かって右手を直角に曲げたような堤が、長く沖に伸びていた。
丁度、ロの形の向かって左角が欠けているように見える
右側の堤には大きな船が4隻、停泊していた。
どうやら、今、働いているのは小さめの舟ばかりで、それが続々と港に戻ってきている時間のようだ。
岸の部分に舟が横づけされては、採った魚を入れた箱をドンドン降ろしている。
スロープになっている所に入った舟は、網ごと降ろして、その場で魚を外しては箱に入れていた。
大きな木箱に氷を出して回る魔術師たち。
魚が溢れそうな箱を、漁師たちが軽々と滑らせて運んでいるのは、何かの術だろうか。
「ダァメダスッタラコトシタラチャントナワハレヤッ」
「アミサナオサネバアシタッカラヤッテケネェベ」
「ナツガレダァデッケェノハオキサイカネバナ」
怒鳴るような声が響く。
笑い声も響く。
邪魔にならない離れた場所で見ていた三人にも聞こえてくる活気。
「カァ!」
「お帰り、私のほうが先に見つけて……臭っ!」
一声、鳴いた白いカラスがミッちゃんの肩に戻って来た。
「サブロ、お前、生魚の匂いがするぞ!」
サブロが目をそらした。
漁師が運ぶ箱から漏れた小魚が、辺りには散らばっている。
大した値が付かないのか、漁師も雑魚をいちいち拾ったりはしないのを、海鳥が警戒した目でそっと近づいてはカッと掠め取って行く。
どうやらサブロも、海鳥に混じって盗み食いしたらしい。
全身、真っ白だから気づかれなかったのだろうか。
「おまえ、しばらくオヤツ無し!」
もう、いいとミッちゃんは召喚を解除した。
「フッバーさん、あの舟は、どうやって動いてるの?」
何の動力源も積んでいなそうな舟を見て、不思議に思ったパウパウが尋ねた。
「あぁ、小さいのは錬金符で動かしているな。大きい船は魔道船だ」
舟には3、4人が乗るらしい。
風と水の錬金符を操作して、漁場まで行き網を掛けてくるのだそうだ。
「それは、随分と器用なもんだな」
錬金符は誰でも魔力を通せば、書かれた術を使える便利な物だ。
だが、単純に飲水を出すとか、ただ風を出すなら未だしも、舟の操作に使用するとなると、符に込める魔力量などの微細な操作が必要になる。
「みんな、子供の頃から遊びながら覚えて行くんだそうだ」
なるほど、とミッちゃんは頷いた。
「ねぇ、あっちの大きいのは、何を獲る船なの?」
「ありゃあ、もっと沖で大きい魚や大きい群れを狙う用だ、あとは討伐だな」
「討伐?」
「あぁ、時期になると結構、厄介な魔物…魔魚が、来るんでな」
フッバーが険しい表情で船を見ながら言った。
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