119 / 178
119.ミッちゃんのレトケレス探し15
しおりを挟む
「メリウス卿には、私がこれから行う事に目を瞑っていただく」
ウルジェドはクリサリス飾りを収納に仕舞いながら、この領地の為政者に向かって、そう言った。
メリウスは不満の光を目に宿してウルジェドを見た。
ここの所の激務で隈が出来た顔が、ますます壮絶な陰りを帯びた。
確かに、今回の件ではハイエルフ族に迷惑をかけ、それ以上に治安の維持やドワーフ達への治療などに尽力をして貰っている。
だが、今の言葉は嘆願ではなく、為政者への要請、いや命令に近い。
「いくら世話になったハイエルフ族だとしても、そのような……」
でしょうねぇ……と思いながら、出したくなかった物を収納から取り出すと、メリウス卿の前に置いた。
精霊銀が放つ光に、ウルジェドの膝の上で寛いでいた黒猫がピクリと反応をする。
色々な所で、辞めたとか言っておいて、自分も大概、中途半端だと思いつつも、これが一番に早い。
精霊銀の儀礼短剣。
鞘の象嵌は獅子と鷲の帝国紋。
柄頭には多層球細工を施した翡翠色の魔石が飾られている。
「……これは…」
メリウス卿は息を吞んだ。
帝国紋の儀礼短剣、しかも精霊銀製を持てるのは直系、もしくは…
皇帝陛下から拝領された、賢者の証である。
精霊猫がポンとウルジェドの膝を蹴って、机に飛び乗ると短剣をフンフンしだす。
そしてゴロンと寝そべって腹を見せながらクネクネと背中を摺りつけ始めた。
「あ、こら。あぁ、いや」
精霊猫を払いのける事など、恐ろしくて出来ない。
かといって、儀礼短剣に触れることも出来ずに、メリウス卿はオロオロするばかりだ。
「精霊銀なので、仕方がない」
マタタビを貰った猫状態になった精霊猫を挟んで、話を続けることとなった。
お陰で緊迫感の欠片も無い絵面になっている。
「……何をされるつもりか、伺っても?」
「リヨスアルヴァの後ろ暗い稼業を潰す」
事も無げに、とんでもないことをサラッと言ったウルジェドを、メリウス卿は目を開いて見た。
「……申し訳ない」
「何がだ?私は庇護対象の友人を守りたいだけだ。卿に関係はないぞ」
「先の件、かしこまりました」
メリウスは会えぬ我が子を守ろうとしてくれるハイエルフに頭を下げた。
精霊猫の御機嫌な喉声だけがあった部屋に、しばらくして
「待たせたの、この者じゃ」
そう言って転移で戻って来たグーリシェダは、軍人を伴っていた。
ウルジェドが黒猫を抱き上げて短剣を収納に放り込むと、「に゛ゃぁん」と不服そうな声で鳴かれた。
「ツァフォン駐留軍、第五治安維持部隊、隊長補佐サピヤー=スパサカであります」
ウルジェドは立ち上がって、サピヤーを迎えた。
サピヤーは、まさか新領主が同席しているとは思わなかったらしいが、サッと胸に拳を置く敬礼をする。
亜麻色の髪の一見すると優し気なヒト族だ。
だが、スパサカを名乗っているということは、と、ウルジェドが見つめると、サピヤーは人懐っこい顔で口角を上げた。
(帝国の王の目の一族か……)
どうにも一癖も二癖もありそうな人物だ。
ターヴ・ミンに伝えるべきではないだろうとウルジェドは
「忙しいところ、すまない。私はウルジェドという。早速だが相談に乗って欲しい」と、椅子を勧めて話を始める。
別国の子供が毎年この時期、リヨスアルヴァの者から狙われる事、今までは誘拐未遂であったが、今年は殺害を目的としていると判明したことを説明した。
「それは、賊を捕らえ、尋問の上での情報ですか?」
「そうだ。依頼の受託時期によっては既に貴族では無い可能性もある。何にせよ、未だに賊が動いているならば止めたい」
「止めるといいますと」
「治安維持部隊が持っている、裏ギルド的なリヨスアルヴァの後ろ暗い組織を、教えてもらいたい」
マールジェドに頼んで特定する事も考えたが、今はパティオル親子に力を注いでほしい。
それでなくても、叔父は蜂と蜘蛛を稼動させているのだ。
我が叔父ながら、化け物じみている。
「それは、……我が部隊の行動方針に介入。つまり手柄を横取りするという事でしょうか」
サピヤーが物騒に目を光らせて、静かに問うた。
オルドー部隊長の不利になる事は許せないと、思っているのだ。
見た目よりも随分と沸点が低いのか、少し怒りを孕んだ口調だ。
スパサカの一門としては”王の目”の役目も担うが、サピヤー自身は己を軍人だと思っている。
直の上司である─皇帝陛下─の命でなければ、王の目として掴んだ情報は話さないし、軍務で得た機密は、部隊長のオルドーが許可しなければを漏らすわけにはいかないと思っている。
ウルジェドは雑貨屋仕込みの営業用の微笑みを貼り付けたままで答える。
「我々ハイエルフは、随分とそちらの仕事に手を貸したと思うけれどねぇ、しかも無償だ」
「それは、貴方たちは……
何かを言おうとするサピヤーを遮るように、ウルジェドは黒猫の両手を持って、フリフリした。
ハヤツは嫌そうだったが、精霊猫は嬉しそうに尻尾をゆら~んとさせている。
「まさか、リヨスアルヴァの前貴族達が言ったように、ハイエルフは精霊のように高邁であれと?帝国の仕事を手伝って当然だとでも?」
「ッ、そのような事を申してはおりません」
「私もね、別に手柄を横取りなんて思ってはいない。だが」
ヒヤリと室内の温度が下がった。
ハイエルフが営業用に貼り付けていた微笑みを収めて、静かに軍人を見つめただけだ。
「だがな……」
じわじわと悪寒がしてくる。
周りの空気が、チリチリと肌を刺す。
殺意……紛れもない殺気を部屋の者達は感じる。
平気な顔をしているのは黙って成り行きを見守るグーリシェダとウルジェドの腕の中の黒猫だけだ。
ターヴ・ミン=メリウスも小さく震えている。
止めたくても、体の震えが止まらないのだ。
(やっぱり、この方、アレじゃないかぁ!)内心でサピヤーは軍規に死ぬことになるのかと、涙目になる。
「子供の命とお前らの手柄、どちらを選ぶかというだけの話だ」
(いや、俺らの手柄ってか、俺の命の間違いじゃないかなぁ……)
サピヤー、──部隊長オルドー=シャティ・ガィルィと馬で飛んだ男は、遠い目をする。
「その…サピヤー殿、私からもお願いする。ウルジェド様に協力をして頂きたい」
メリウス卿も白い顔で口を聞いてくれた。
だが、
「メリウス閣下、これは帝国軍の問題です。治安維持部隊内部の事ですので、ご了承いただきたい」
(うわぁ~ん!死にたくねぇけど、隊長のこと裏切れないぃ)
内心の動揺を隠して、血の気の引いた顔でサピヤーは答えた。
「うん、そうか。分かった。君は優秀な軍人だね。私が誰であっても、隊長命令を遵守するという事か」
ハイエルフの威圧が緩む。
「はっ、ご理解いただけて幸いです」
(い・き・の・び・た)
サピヤーは、ハァっと息を吐く。
背中が汗で気持ち悪い。
「では、私は概ねで掴んでいるリストの、上から順番に今夜、強襲することにしよう」
「は?」
「うん、実はね、組織の拠点か、絞り切れていない怪しい場所が8か所あるんだ。君が教えてくれないから、間違った場所でも更地になるかもねぇ」
──それ、同時多発テロぉ!──
もし、この場にパウパウが居たら、そう叫んでいただろう。
「いや、流石にそれは無理でしょう」
引きつった笑い顔でサピヤーが縋るような目をウルジェドに向けた。
「そうか?私と人型魔道具で十分に可能だ。あ、ばぁちゃん、ダィーナァを返してくれるかい?」
ウルジェドは黙って見守っているグーリシェダに声を掛けた。
「おぉ、そうじゃの。そろそろ、リヨスアルヴァの件も終わるからの」
グーリシェダは立ち上がり、収納から銀色に黒と金の模様が入った突剣を取り出すと、腕を前に出して手首を回して円を描いた。
白い光の円が出来上がったところで
『指揮・命令者変更グーリシェダ=ミ・チコ・オーズからウルジェド=ミ・チコ・カーンへ全権移譲』と、サピヤーには分からない言葉を呟いた後で、その光の円環を斜めに切るように突剣を走らせた。
「これで良いな」そう言うと、突剣の柄頭を向けてウルジェドに差し出す。
「ありがとう、これで、ダィーナァを使える。やはり蛇には影だからね」
「あ~!もぅ‼ウルジェド様がお持ちの8か所のリストを見せて下さいっ」
サピヤーは椅子から立ち上がると、叫ぶように言った。
「私は情報を話すことはしません!がっ!見せて下さい」
風向きがどうやら変わったらしいと、ウルジェドはマールジェドから渡されていた、暫定版の裏組織リストを取り出してサピヤーの前に置いた。
「誘拐、暗殺、人身売買について、うちが掴んでいるのは3か所です。どことは言えません」
そう言いながら、リストのうちの2つをトン、トンと指で叩いた。
「2か所じゃの?」
グーリシェダの声にサピヤーは溜息を吐いた。
「あと一か所は、顧客ですよ…だから極秘だったんです。内偵中でしたんで…」
恨めしそうな顔でウルジェドを見る。
「私が部隊長に嫌われたら、どうしてくれるんですかぁ……」
「そしたら、ほら、本業に戻ればいいのさ」
「私はっ、こっちが本業で、あれは副業のつもりですぅ」
そう涙目で愚痴りながらサピヤーは、ターヴ・ミン=メリウスを指差した。
メリウスは、驚きの余り椅子から腰を浮かせて「はっ?」と声に出した。
何のことだか、心当たりが全くないからだ。
「まったく…都を人質に取るって、貴方、悪者ですか……賢者のくせに」
そう言ってウルジェドを睨んだ後、がっくりと肩を落としてサピヤーは、
「奥方の御実家です」と、呟いた。
ウルジェドはクリサリス飾りを収納に仕舞いながら、この領地の為政者に向かって、そう言った。
メリウスは不満の光を目に宿してウルジェドを見た。
ここの所の激務で隈が出来た顔が、ますます壮絶な陰りを帯びた。
確かに、今回の件ではハイエルフ族に迷惑をかけ、それ以上に治安の維持やドワーフ達への治療などに尽力をして貰っている。
だが、今の言葉は嘆願ではなく、為政者への要請、いや命令に近い。
「いくら世話になったハイエルフ族だとしても、そのような……」
でしょうねぇ……と思いながら、出したくなかった物を収納から取り出すと、メリウス卿の前に置いた。
精霊銀が放つ光に、ウルジェドの膝の上で寛いでいた黒猫がピクリと反応をする。
色々な所で、辞めたとか言っておいて、自分も大概、中途半端だと思いつつも、これが一番に早い。
精霊銀の儀礼短剣。
鞘の象嵌は獅子と鷲の帝国紋。
柄頭には多層球細工を施した翡翠色の魔石が飾られている。
「……これは…」
メリウス卿は息を吞んだ。
帝国紋の儀礼短剣、しかも精霊銀製を持てるのは直系、もしくは…
皇帝陛下から拝領された、賢者の証である。
精霊猫がポンとウルジェドの膝を蹴って、机に飛び乗ると短剣をフンフンしだす。
そしてゴロンと寝そべって腹を見せながらクネクネと背中を摺りつけ始めた。
「あ、こら。あぁ、いや」
精霊猫を払いのける事など、恐ろしくて出来ない。
かといって、儀礼短剣に触れることも出来ずに、メリウス卿はオロオロするばかりだ。
「精霊銀なので、仕方がない」
マタタビを貰った猫状態になった精霊猫を挟んで、話を続けることとなった。
お陰で緊迫感の欠片も無い絵面になっている。
「……何をされるつもりか、伺っても?」
「リヨスアルヴァの後ろ暗い稼業を潰す」
事も無げに、とんでもないことをサラッと言ったウルジェドを、メリウス卿は目を開いて見た。
「……申し訳ない」
「何がだ?私は庇護対象の友人を守りたいだけだ。卿に関係はないぞ」
「先の件、かしこまりました」
メリウスは会えぬ我が子を守ろうとしてくれるハイエルフに頭を下げた。
精霊猫の御機嫌な喉声だけがあった部屋に、しばらくして
「待たせたの、この者じゃ」
そう言って転移で戻って来たグーリシェダは、軍人を伴っていた。
ウルジェドが黒猫を抱き上げて短剣を収納に放り込むと、「に゛ゃぁん」と不服そうな声で鳴かれた。
「ツァフォン駐留軍、第五治安維持部隊、隊長補佐サピヤー=スパサカであります」
ウルジェドは立ち上がって、サピヤーを迎えた。
サピヤーは、まさか新領主が同席しているとは思わなかったらしいが、サッと胸に拳を置く敬礼をする。
亜麻色の髪の一見すると優し気なヒト族だ。
だが、スパサカを名乗っているということは、と、ウルジェドが見つめると、サピヤーは人懐っこい顔で口角を上げた。
(帝国の王の目の一族か……)
どうにも一癖も二癖もありそうな人物だ。
ターヴ・ミンに伝えるべきではないだろうとウルジェドは
「忙しいところ、すまない。私はウルジェドという。早速だが相談に乗って欲しい」と、椅子を勧めて話を始める。
別国の子供が毎年この時期、リヨスアルヴァの者から狙われる事、今までは誘拐未遂であったが、今年は殺害を目的としていると判明したことを説明した。
「それは、賊を捕らえ、尋問の上での情報ですか?」
「そうだ。依頼の受託時期によっては既に貴族では無い可能性もある。何にせよ、未だに賊が動いているならば止めたい」
「止めるといいますと」
「治安維持部隊が持っている、裏ギルド的なリヨスアルヴァの後ろ暗い組織を、教えてもらいたい」
マールジェドに頼んで特定する事も考えたが、今はパティオル親子に力を注いでほしい。
それでなくても、叔父は蜂と蜘蛛を稼動させているのだ。
我が叔父ながら、化け物じみている。
「それは、……我が部隊の行動方針に介入。つまり手柄を横取りするという事でしょうか」
サピヤーが物騒に目を光らせて、静かに問うた。
オルドー部隊長の不利になる事は許せないと、思っているのだ。
見た目よりも随分と沸点が低いのか、少し怒りを孕んだ口調だ。
スパサカの一門としては”王の目”の役目も担うが、サピヤー自身は己を軍人だと思っている。
直の上司である─皇帝陛下─の命でなければ、王の目として掴んだ情報は話さないし、軍務で得た機密は、部隊長のオルドーが許可しなければを漏らすわけにはいかないと思っている。
ウルジェドは雑貨屋仕込みの営業用の微笑みを貼り付けたままで答える。
「我々ハイエルフは、随分とそちらの仕事に手を貸したと思うけれどねぇ、しかも無償だ」
「それは、貴方たちは……
何かを言おうとするサピヤーを遮るように、ウルジェドは黒猫の両手を持って、フリフリした。
ハヤツは嫌そうだったが、精霊猫は嬉しそうに尻尾をゆら~んとさせている。
「まさか、リヨスアルヴァの前貴族達が言ったように、ハイエルフは精霊のように高邁であれと?帝国の仕事を手伝って当然だとでも?」
「ッ、そのような事を申してはおりません」
「私もね、別に手柄を横取りなんて思ってはいない。だが」
ヒヤリと室内の温度が下がった。
ハイエルフが営業用に貼り付けていた微笑みを収めて、静かに軍人を見つめただけだ。
「だがな……」
じわじわと悪寒がしてくる。
周りの空気が、チリチリと肌を刺す。
殺意……紛れもない殺気を部屋の者達は感じる。
平気な顔をしているのは黙って成り行きを見守るグーリシェダとウルジェドの腕の中の黒猫だけだ。
ターヴ・ミン=メリウスも小さく震えている。
止めたくても、体の震えが止まらないのだ。
(やっぱり、この方、アレじゃないかぁ!)内心でサピヤーは軍規に死ぬことになるのかと、涙目になる。
「子供の命とお前らの手柄、どちらを選ぶかというだけの話だ」
(いや、俺らの手柄ってか、俺の命の間違いじゃないかなぁ……)
サピヤー、──部隊長オルドー=シャティ・ガィルィと馬で飛んだ男は、遠い目をする。
「その…サピヤー殿、私からもお願いする。ウルジェド様に協力をして頂きたい」
メリウス卿も白い顔で口を聞いてくれた。
だが、
「メリウス閣下、これは帝国軍の問題です。治安維持部隊内部の事ですので、ご了承いただきたい」
(うわぁ~ん!死にたくねぇけど、隊長のこと裏切れないぃ)
内心の動揺を隠して、血の気の引いた顔でサピヤーは答えた。
「うん、そうか。分かった。君は優秀な軍人だね。私が誰であっても、隊長命令を遵守するという事か」
ハイエルフの威圧が緩む。
「はっ、ご理解いただけて幸いです」
(い・き・の・び・た)
サピヤーは、ハァっと息を吐く。
背中が汗で気持ち悪い。
「では、私は概ねで掴んでいるリストの、上から順番に今夜、強襲することにしよう」
「は?」
「うん、実はね、組織の拠点か、絞り切れていない怪しい場所が8か所あるんだ。君が教えてくれないから、間違った場所でも更地になるかもねぇ」
──それ、同時多発テロぉ!──
もし、この場にパウパウが居たら、そう叫んでいただろう。
「いや、流石にそれは無理でしょう」
引きつった笑い顔でサピヤーが縋るような目をウルジェドに向けた。
「そうか?私と人型魔道具で十分に可能だ。あ、ばぁちゃん、ダィーナァを返してくれるかい?」
ウルジェドは黙って見守っているグーリシェダに声を掛けた。
「おぉ、そうじゃの。そろそろ、リヨスアルヴァの件も終わるからの」
グーリシェダは立ち上がり、収納から銀色に黒と金の模様が入った突剣を取り出すと、腕を前に出して手首を回して円を描いた。
白い光の円が出来上がったところで
『指揮・命令者変更グーリシェダ=ミ・チコ・オーズからウルジェド=ミ・チコ・カーンへ全権移譲』と、サピヤーには分からない言葉を呟いた後で、その光の円環を斜めに切るように突剣を走らせた。
「これで良いな」そう言うと、突剣の柄頭を向けてウルジェドに差し出す。
「ありがとう、これで、ダィーナァを使える。やはり蛇には影だからね」
「あ~!もぅ‼ウルジェド様がお持ちの8か所のリストを見せて下さいっ」
サピヤーは椅子から立ち上がると、叫ぶように言った。
「私は情報を話すことはしません!がっ!見せて下さい」
風向きがどうやら変わったらしいと、ウルジェドはマールジェドから渡されていた、暫定版の裏組織リストを取り出してサピヤーの前に置いた。
「誘拐、暗殺、人身売買について、うちが掴んでいるのは3か所です。どことは言えません」
そう言いながら、リストのうちの2つをトン、トンと指で叩いた。
「2か所じゃの?」
グーリシェダの声にサピヤーは溜息を吐いた。
「あと一か所は、顧客ですよ…だから極秘だったんです。内偵中でしたんで…」
恨めしそうな顔でウルジェドを見る。
「私が部隊長に嫌われたら、どうしてくれるんですかぁ……」
「そしたら、ほら、本業に戻ればいいのさ」
「私はっ、こっちが本業で、あれは副業のつもりですぅ」
そう涙目で愚痴りながらサピヤーは、ターヴ・ミン=メリウスを指差した。
メリウスは、驚きの余り椅子から腰を浮かせて「はっ?」と声に出した。
何のことだか、心当たりが全くないからだ。
「まったく…都を人質に取るって、貴方、悪者ですか……賢者のくせに」
そう言ってウルジェドを睨んだ後、がっくりと肩を落としてサピヤーは、
「奥方の御実家です」と、呟いた。
35
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。
勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。
王子様から逃げられない!
一寸光陰
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
クズ王子から婚約を盾に迫られ全力で逃げたら、その先には別な婚約の罠が待っていました?
gacchi(がっち)
恋愛
隣国からの留学生のリアージュは、お婆様から婚約者を探すように言われていた。リアージュとしては義妹のいない平和な学園で静かに勉強したかっただけ。それなのに、「おとなしく可愛がられるなら婚約してやろう」って…そんな王子はお断り!なんとか逃げた先で出会ったのは、ものすごい美形の公爵令息で。「俺が守ってやろうか?」1年間の婚約期間で結婚するかどうか決めることになっちゃった?恋愛初心者な令嬢と愛に飢えた令息のあまり隠しもしない攻防。
お姉様優先な我が家は、このままでは破産です
編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。
だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!
愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理!
姉の結婚までにこの家から逃げたい!
相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。
うちの魔王様が過保護すぎる
秋山龍央
BL
主人公・折本修司(オリモトシュウジ)は転生恩恵女神様ガチャにはずれて異世界に転生して早々、つんでいた。
「異世界で言葉が分かるようにしてくれ」と頼んだところ、相手の言葉は分かるが自分は異世界の言葉は喋れない状態となり、
「平和な国に転生したい」と頼んだところ、平和で治安のいい国に転生をすることはできたものの、そこは人間のいない魔族だけの国だったのである。
困っていた主人公の元に、異世界の"魔王"である紅の髪と角を持つ男があらわれて――
「まさか――そっくりだとは思ってたけれど、お前、本当にシュウなのか?」
異世界転生魔王様×異世界転生主人公
幼馴染年下攻めだけど年上攻めです
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる