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4、ルームメイト、山田清白
教室に残っていたクラスメイト達にさよならと挨拶をして、寮へ帰った。
そういえば、ルームメイトとも初めて会う。いったいどんな人だろう。
これから三年間生活を共にするのだから、できれば優しくて穏やかで話しやすい人がいいけど……それはちょっと高望みしすぎかな……。
昨日はオレの名前のプレートしか入っていなかったドアの表札に、ルームメイトの名前が書かれた新しいプレートが入っていた。
『山田清白』。
やまだ……下の名前はなんて読むんだろう。
せいはく……? だとしたらけっこう変わった名前だ。
「あ」
「ん?」
そうっとドアを開けたら、ちょうど目の前にルームメイトの山田君と思しき人物が立っていた。
彼は、160センチというまあまあ低身長なオレよりも更に、目線が低かった。
眉がぎりぎり見える位置で見事ぱっつんに切り揃えられた黒髪に、肌は驚くほど白い。
しょっちゅう何かの小動物にたとえられていそうな、素朴な可愛さのある少年だった。
そして黒目がちの大きな目には、なぜだか一切の光がない。
「あ……えと、初めまして。ルームメイトの……」
「斉賀君だよね。同じクラスの山田です、よろしくね!」
同じクラス? あ、オレ自分の自己紹介が終わったあとはろくに聞いていなかったから……!
『やまだ』ならきっと出席番号は後ろの方だろう。
「ご、ごめん!! オレ途中からあんまり紹介聞いてなくて……」
「あーそんなのいいよ、ぼくって目立たないし。自己紹介も面倒くさいから印象に残らないくらいサクッと終わらせたしね。逆に斉賀君はすごぉく目立ってたね」
「あ、うん……この頭、派手だから目立つよね……」
とりあえず、山田君は良い人のようで安心した。
自己紹介を聞いていなかったオレをちっとも怒らないなんて、優しいにもほどがある。
「髪もだけど、どっちかというと顔の方で騒がれてたけどね」
「え、何? ……そうだ山田君、下の名前はなんて読むの? ごめんオレ、ちょっとわからなくて……」
「すずしろ、だよー」
山田君は訊かれ慣れているのか、嫌な顔もせずサラリと教えてくれた。
「すずしろ……綺麗な名前だね。オレも男にしては珍しがられる名前だけど」
「ありがとう! 斉賀君の名前はすっごくカワイイよね! うらやましいよー」
「へっ?」
う、うらやましい……!?
冗談半分で名前を可愛いと言われたことは何度もあるけれど、こんなに心の底からそう思っているように言われたのは生まれて初めてだ。
「か、かっこ悪いよ、女の子みたいでさ! この名前のせいで今までどんだけ……」
イジメられて不登校の原因にまでなったのだから、オレはあまり自分の名前が好きじゃないし、極力名乗りたくもない。
「どうして? まあ男にしては珍しいかもしれないけど、カッコイイと思うなぁ。希望の希に、漢字一文字でさ。名字もかっこよくてうらやましいよー、ぼくなんて山田だよ」
そ、それは全国の山田さんに失礼ではないでしょうか……。
「山田はともかく、スズシロって綺麗だしかっこいいと思うけど、何で嫌なの?」
「んーとりあえず立ち話もなんだし、座って話さない?」
そういえば、オレは帰ってきたばかりで通学リュックすら下ろしていなかった。
コクンと山田君の言葉に黙って同意して、オレ達は丁度いい広さのダイニングに移動した。
「ぼく実家からお茶っ葉持ってきたんだ。斉賀くん、緑茶好き?」
「あ、ありがとう! オレ、湯沸かし器持ってきたからお湯沸かすね!」
この部屋は2DK仕様で、学生寮というよりマンションのような印象だ。
さすがは名門校というか、なんというか。
なので、二人部屋といえど個室が存在する。やや手狭だけど、文句があろうはずもない。
「この際だし先に部屋着に着替えてくる?」
「うん!」
なんだか山田君と話してると気持ちがほのぼのする……黒い瞳に癒されるというか。
彼とだったら、こんなオレでも3年間うまくやれそうな気がする。
オレ達はそれぞれの部屋で部屋着に着替えてくると、お茶を用意してダイニングテーブルに腰掛けた。
ちなみに照明やテレビ、エアコンなどの家具も一通り最初から完備してある。
「ぼくの実家ってさ、大根農家なんだ」
「へえ?」
熱いお茶を飲みながら、唐突に山田君が語りだした。
農家の子なのに色が白いんだな……って、ダメだ、これは偏見だ。
「農家の子にしちゃ色白だなって思ったでしょ?」
「いやそんな、」
「その通りなんだよ。どれだけ外で遊んでも、農作業の手伝いをしても、まったく日焼けしないんだよね、ぼく。生まれたときから真っ白だったらしくてさ、それで付いた名前がスズシロ。笑えるでしょー?」
「え、な、なんで……?」
今の話のどこに、笑える要素があったのだろうか。
「スズシロって大根のことだから」
「!?」
思わず吹き出しそうになるのをグッとこらえた。
わ、笑ったらいけない……!
人の名前を笑うなんて、オレだけはしちゃいけない!
名前のせいで不登校にまでなった、オレだけは……!
「いいよぉ笑っても。もう半分持ちネタみたいなもんだからさぁ、鉄板の」
「も、持ちネタって……ブッフ」
山田君は、将来芸人さんでも目指しているんだろうか……。
そういえば、ルームメイトとも初めて会う。いったいどんな人だろう。
これから三年間生活を共にするのだから、できれば優しくて穏やかで話しやすい人がいいけど……それはちょっと高望みしすぎかな……。
昨日はオレの名前のプレートしか入っていなかったドアの表札に、ルームメイトの名前が書かれた新しいプレートが入っていた。
『山田清白』。
やまだ……下の名前はなんて読むんだろう。
せいはく……? だとしたらけっこう変わった名前だ。
「あ」
「ん?」
そうっとドアを開けたら、ちょうど目の前にルームメイトの山田君と思しき人物が立っていた。
彼は、160センチというまあまあ低身長なオレよりも更に、目線が低かった。
眉がぎりぎり見える位置で見事ぱっつんに切り揃えられた黒髪に、肌は驚くほど白い。
しょっちゅう何かの小動物にたとえられていそうな、素朴な可愛さのある少年だった。
そして黒目がちの大きな目には、なぜだか一切の光がない。
「あ……えと、初めまして。ルームメイトの……」
「斉賀君だよね。同じクラスの山田です、よろしくね!」
同じクラス? あ、オレ自分の自己紹介が終わったあとはろくに聞いていなかったから……!
『やまだ』ならきっと出席番号は後ろの方だろう。
「ご、ごめん!! オレ途中からあんまり紹介聞いてなくて……」
「あーそんなのいいよ、ぼくって目立たないし。自己紹介も面倒くさいから印象に残らないくらいサクッと終わらせたしね。逆に斉賀君はすごぉく目立ってたね」
「あ、うん……この頭、派手だから目立つよね……」
とりあえず、山田君は良い人のようで安心した。
自己紹介を聞いていなかったオレをちっとも怒らないなんて、優しいにもほどがある。
「髪もだけど、どっちかというと顔の方で騒がれてたけどね」
「え、何? ……そうだ山田君、下の名前はなんて読むの? ごめんオレ、ちょっとわからなくて……」
「すずしろ、だよー」
山田君は訊かれ慣れているのか、嫌な顔もせずサラリと教えてくれた。
「すずしろ……綺麗な名前だね。オレも男にしては珍しがられる名前だけど」
「ありがとう! 斉賀君の名前はすっごくカワイイよね! うらやましいよー」
「へっ?」
う、うらやましい……!?
冗談半分で名前を可愛いと言われたことは何度もあるけれど、こんなに心の底からそう思っているように言われたのは生まれて初めてだ。
「か、かっこ悪いよ、女の子みたいでさ! この名前のせいで今までどんだけ……」
イジメられて不登校の原因にまでなったのだから、オレはあまり自分の名前が好きじゃないし、極力名乗りたくもない。
「どうして? まあ男にしては珍しいかもしれないけど、カッコイイと思うなぁ。希望の希に、漢字一文字でさ。名字もかっこよくてうらやましいよー、ぼくなんて山田だよ」
そ、それは全国の山田さんに失礼ではないでしょうか……。
「山田はともかく、スズシロって綺麗だしかっこいいと思うけど、何で嫌なの?」
「んーとりあえず立ち話もなんだし、座って話さない?」
そういえば、オレは帰ってきたばかりで通学リュックすら下ろしていなかった。
コクンと山田君の言葉に黙って同意して、オレ達は丁度いい広さのダイニングに移動した。
「ぼく実家からお茶っ葉持ってきたんだ。斉賀くん、緑茶好き?」
「あ、ありがとう! オレ、湯沸かし器持ってきたからお湯沸かすね!」
この部屋は2DK仕様で、学生寮というよりマンションのような印象だ。
さすがは名門校というか、なんというか。
なので、二人部屋といえど個室が存在する。やや手狭だけど、文句があろうはずもない。
「この際だし先に部屋着に着替えてくる?」
「うん!」
なんだか山田君と話してると気持ちがほのぼのする……黒い瞳に癒されるというか。
彼とだったら、こんなオレでも3年間うまくやれそうな気がする。
オレ達はそれぞれの部屋で部屋着に着替えてくると、お茶を用意してダイニングテーブルに腰掛けた。
ちなみに照明やテレビ、エアコンなどの家具も一通り最初から完備してある。
「ぼくの実家ってさ、大根農家なんだ」
「へえ?」
熱いお茶を飲みながら、唐突に山田君が語りだした。
農家の子なのに色が白いんだな……って、ダメだ、これは偏見だ。
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「いやそんな、」
「その通りなんだよ。どれだけ外で遊んでも、農作業の手伝いをしても、まったく日焼けしないんだよね、ぼく。生まれたときから真っ白だったらしくてさ、それで付いた名前がスズシロ。笑えるでしょー?」
「え、な、なんで……?」
今の話のどこに、笑える要素があったのだろうか。
「スズシロって大根のことだから」
「!?」
思わず吹き出しそうになるのをグッとこらえた。
わ、笑ったらいけない……!
人の名前を笑うなんて、オレだけはしちゃいけない!
名前のせいで不登校にまでなった、オレだけは……!
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