好きです、朝比奈先パイ。~元引きこもりの美少年、陽キャヤンキー先輩に溺愛される~

すずなりたま

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 街に着いて、少し早目の昼食を食べた。
 女性同士かカップルしか入れないようなカフェにすずは堂々と入って行き、「こういう所のスイーツってやたらと可愛くて美味しいんだよねー」と御機嫌だ。
 俺のランチセットに付いていたケーキもあげたら大喜びされた。ケーキの一つや二つでこんなに喜ぶなんてどれだけ可愛いんだか。

「ちーちゃん、ちょっと見過ぎ……。恥ずかしいよ」
「す、すまない! ものすごく美味しそうに食べるものだから、つい……」
「だって美味しいだもん。あ、ひとくちいる?  元々ちーちゃんのだし」
「え」
「はい、どうぞ!」

 どうぞって……すずが今まで使っていたフォークで、ひとくち分のケーキを向かいからそのまま……。
 え、これはもしや間接キスになるんじゃないのか? い、いいのか?

「早く食べてよちーちゃん、一応恥ずかしいんだよ! ぼくだって」
「ハッ!! ……んむ……甘っ」

 俺たちのやりとりは周りの客からこっそり観察されていたようで、最初はノリノリだったすずもだんだん恥ずかしくなったらしい。
 俺は甘いものは苦手なのだけど、断るわけはなかった。

「へへっ、美味しいでしょ?」
「甘い……」
「そりゃ、ケーキだからねぇ」

 違うんだ。甘いのはケーキじゃなくて……

「ちょっと……お手洗いに行ってきてもいいか?」
「はーい」

 赤面するのを押さえられなくて、でもずっとうつむいていたら不自然だし、顔が赤いのがばれるのも気まずいから俺はトイレで熱を冷ますことにした。

 ドキン ドキン ドキン ドキン ……

 身体が熱い。身体全てが心臓になったみたいにドキドキいってる。
 自分が自分じゃないみたいだ。
 間接キスをしてしまったし……俺の態度はおかしくなかっただろうか。
 焦ったのがすずにバレてはいないだろうか。
 それともすずは、――わざと俺をからかっている?

「ありえる……」

 ようやく赤面が収まったので、席に戻った。

「おかえりちーちゃん!」
「ただいま」

 すずは満面の笑みで俺を出迎えた。やはり俺の予想は当たったらしい。
 そして、その思惑に俺が気付いたことも気付いたらしい。
 あ、あざとすぎる……。

「さっきぼくたち可愛いカップルって言われてたよね、電車で」
「え?」
「こんな格好してるからかなぁ? 周りにそう思われるのがちょっと楽しくって。リア充ってこんな感じなのかなーってつい調子に乗っちゃった。ごめんね、ちーちゃん」

 謝られてしまった。別に俺としては嬉しい行動なんだが……。
 でも、すずが無意識だったらもっと嬉しかった。贅沢は言わないが。

「でも、もうちょっと付き合ってくれる?」
「な、何にだ?」
「カレカノごっこ! いや、デートごっこかな」

 心臓に悪いからやめてくれ、と言うべきなんだろうけど……。
 好きな相手から、こんな……ある意味残酷な提案だ。
 だけど、こんな機会はもう二度と訪れないかもしれなくて。
 結局俺は、頷いていた。

「え、いいのちーちゃん? ぼくが勝手に楽しいだけなのに。もしやちーちゃんも可愛い彼女連れてる優越感を感じちゃった~?」
「そ、それは……まあ、ある」

 まったく否定できない。その通りだった。

「正直でいいね! 自画自賛するぼくもどーかと思うけどさ。ま、ちーちゃんには近々本物のカノジョができるかもしれないんだし、ぼくのことは予行演習とでも思ってよ」
「!」

 ……よこう、えんしゅう?
 もしかして、白百合女子の人のことを言っている?
 つまりすずは俺があの人と付き合うと……付き合うかもしれない、と思っているのか?

「ちーちゃん、そろそろここ出よっか」
「あ、ああ」

 友達が異性から告白されたら、付き合うかもしれないと思うなんて当たり前じゃないか。
 まさか同性の自分のことが好きだから、異性と付き合うことなんかまったく考えていないなんて、普通思うわけがない。
 純粋に、友達だと思ってくれているのなら。

「でもちーちゃんに彼女ができたらもう休日とか遊べなくなるのかなー。それはちょっと悲しいかも~」
「まだ付き合うとは……」
「え、何?」
「いや……」

 俺がこんなことを思っているなんて、絶対にばれたらいけない。
 すずだけじゃなくて、のんさんや他の友達や生徒会の先輩達にもだ。
 あの人たちは変人だけど、何かと聡い人ばかりだから、一人にバレたらきっと全員に伝わってしまうだろう。
 そうなったとき、どうなるかは目に見えている。
 俺は橘先輩や藤堂先輩のように、相手に冷たくあしらわれても絶え間なく愛を伝え続けることなんかできない。
 そんなに強くないんだ。
 祖父に言われた、感情があまり表情に出ないことを長所だと思ったのは、生まれて初めてだった。
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