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〃
「寒! 寒! さむい~っ!」
脱衣所は部屋の中だが、当然露天風呂は外だ。
榛名は掛湯もそこそこに、湯気がもわもわと立っている石でできた露天風呂に飛び込んだ。
「うは……極楽ぅ……」
一瞬で酔いが醒めるほど外は寒く、冷えた体に熱めのお湯はあまりにも気持ちよくて、首まで浸かった状態で榛名はひとりごとを呟いた。
これで本日3度目の入浴なのだが、何回入っても温泉は気持ちがいい。
ゆったりと足が伸ばせるのもいい。
腹も膨れているし、酒も入ってるし、このまま目を閉じれば自然と眠ってしまいそうだった。
「おーい暁哉、風呂で寝るんじゃないよ、死んじゃうだろ」
「はっ」
霧咲の咎めるような声にハッと目を開けた。
数秒間の記憶が無くて、どうやら本当に少し眠っていたらしい。霧咲が露天風呂に入って来たのも気付かなかった。
「す、すいません! いつ来ました!?」
「今だよ。ってほんとに寝てたの? 危ないなぁ……」
「温泉のあまりの気持ちよさについ」
「気持ち良すぎて失神するのは、俺とセックスした後だけにしてくれよ」
「………」
冗談なのか本気なのか、多分どちらもだろう。
けれど本当に寝ていた手前、榛名に文句が言えるはずも無く。
「今日は楽しかったですけど、やっぱり精神的に疲れちゃって……」
「そりゃあ、人助けしたあとに職質されたんじゃ、さすがの君も疲れるよね」
「あと、亜衣乃ちゃんへのお説教が地味に……甘やかすのは楽しいですけど、やっぱり怒るのって大変ですね。理不尽になってもいけないからそれなりの理由を付けないとだし」
「そこまで難しく考えなくてもいいんじゃないかなぁ? 亜衣乃は頭のいい子だから、たとえ君が理不尽に怒ってもきっとあとから理由を考えて理解するさ。子どもってそんなもんだろ?」
「俺はそんなに利口な子じゃなかったですよ……」
怒られるのは幾つになっても嫌だと思う。
その理由が分からないことには怒る行為は無駄だと思うし、改めるのも難しいと思う。
しかし、世の中は理不尽に怒られることの方が多い上に、理由まで説明して貰えることなどあまり無い。
ならば、今から慣らしていた方がいいのだろうか。
榛名は暫し考え込んでしまった。
「君は本当に真面目だなぁ」
そんな榛名を見て、クスクスと霧咲が笑う。
それももう聞き慣れたセリフだ。
「俺怒るのとか、相手が患者さん以外は慣れてないんです。はぁ、今度からは全部誠人さんにお説教して貰おうかなぁ」
「そんなの俺が嫌われるばっかりじゃないか。それに、亜衣乃は君から言った方が納得するよ」
「そうですか?」
「そうだよ。俺なんてよく『まこおじさんが言っても説得力ない』なーんて生意気なことを言われるからな」
「朝からお酒飲んだりしてるからですよ」
たしかに霧咲はあまり『大人』らしくない。自由だし、ストイックそうな見かけに反して態度や言動もたまに子どもじみている。
けれど、幼い時からこんな大人が傍にいたらきっと自分も懐くだろうな、と榛名は思った。
もっとも霧咲のそういう部分を感じ取れるのは、心を許している一部の人間だけだろうけど。
「温まったし、そろそろ上がろうか。飲み直そう」
「そうですね」
「あ、キスだけはさせてくれないか?」
「はいはい」
少し呆れながら返事しつつも、榛名は自分から霧咲の首に手を回し、唇にチュッと軽く口付けた。
そんな榛名に、霧咲は満足そうに微笑んだ。
そして、また寒さに耐えながら――最初程ではないが――二人で脱衣所に戻ったのだった。
脱衣所は部屋の中だが、当然露天風呂は外だ。
榛名は掛湯もそこそこに、湯気がもわもわと立っている石でできた露天風呂に飛び込んだ。
「うは……極楽ぅ……」
一瞬で酔いが醒めるほど外は寒く、冷えた体に熱めのお湯はあまりにも気持ちよくて、首まで浸かった状態で榛名はひとりごとを呟いた。
これで本日3度目の入浴なのだが、何回入っても温泉は気持ちがいい。
ゆったりと足が伸ばせるのもいい。
腹も膨れているし、酒も入ってるし、このまま目を閉じれば自然と眠ってしまいそうだった。
「おーい暁哉、風呂で寝るんじゃないよ、死んじゃうだろ」
「はっ」
霧咲の咎めるような声にハッと目を開けた。
数秒間の記憶が無くて、どうやら本当に少し眠っていたらしい。霧咲が露天風呂に入って来たのも気付かなかった。
「す、すいません! いつ来ました!?」
「今だよ。ってほんとに寝てたの? 危ないなぁ……」
「温泉のあまりの気持ちよさについ」
「気持ち良すぎて失神するのは、俺とセックスした後だけにしてくれよ」
「………」
冗談なのか本気なのか、多分どちらもだろう。
けれど本当に寝ていた手前、榛名に文句が言えるはずも無く。
「今日は楽しかったですけど、やっぱり精神的に疲れちゃって……」
「そりゃあ、人助けしたあとに職質されたんじゃ、さすがの君も疲れるよね」
「あと、亜衣乃ちゃんへのお説教が地味に……甘やかすのは楽しいですけど、やっぱり怒るのって大変ですね。理不尽になってもいけないからそれなりの理由を付けないとだし」
「そこまで難しく考えなくてもいいんじゃないかなぁ? 亜衣乃は頭のいい子だから、たとえ君が理不尽に怒ってもきっとあとから理由を考えて理解するさ。子どもってそんなもんだろ?」
「俺はそんなに利口な子じゃなかったですよ……」
怒られるのは幾つになっても嫌だと思う。
その理由が分からないことには怒る行為は無駄だと思うし、改めるのも難しいと思う。
しかし、世の中は理不尽に怒られることの方が多い上に、理由まで説明して貰えることなどあまり無い。
ならば、今から慣らしていた方がいいのだろうか。
榛名は暫し考え込んでしまった。
「君は本当に真面目だなぁ」
そんな榛名を見て、クスクスと霧咲が笑う。
それももう聞き慣れたセリフだ。
「俺怒るのとか、相手が患者さん以外は慣れてないんです。はぁ、今度からは全部誠人さんにお説教して貰おうかなぁ」
「そんなの俺が嫌われるばっかりじゃないか。それに、亜衣乃は君から言った方が納得するよ」
「そうですか?」
「そうだよ。俺なんてよく『まこおじさんが言っても説得力ない』なーんて生意気なことを言われるからな」
「朝からお酒飲んだりしてるからですよ」
たしかに霧咲はあまり『大人』らしくない。自由だし、ストイックそうな見かけに反して態度や言動もたまに子どもじみている。
けれど、幼い時からこんな大人が傍にいたらきっと自分も懐くだろうな、と榛名は思った。
もっとも霧咲のそういう部分を感じ取れるのは、心を許している一部の人間だけだろうけど。
「温まったし、そろそろ上がろうか。飲み直そう」
「そうですね」
「あ、キスだけはさせてくれないか?」
「はいはい」
少し呆れながら返事しつつも、榛名は自分から霧咲の首に手を回し、唇にチュッと軽く口付けた。
そんな榛名に、霧咲は満足そうに微笑んだ。
そして、また寒さに耐えながら――最初程ではないが――二人で脱衣所に戻ったのだった。
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