運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

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「ちょ、ちょっと二宮先輩!?   俺はもう話なんか……」
「お前が一方的に喋っただけだろ。俺はまだ何も話してないからな」
「っ、でもどこに行く気ですか!?   そっちは……!」

   二宮の足が向かっている先は、ラブホ街だ。
   騒がしい飲み屋街の近くにあるが、そちらは妙に閑静で下品なネオンだけが煌々と騒々しい。

「今すぐ誰にも邪魔されずに話せる場所なんて、他にあるか?」
「……!」

(怒ってる……?)

   二宮の口調はいつもぶっきらぼうで素っ気ないのだが、今はその中に僅かに棘があった。

(なんでわざわざこっちから別れを切り出してあげてんのに怒るんだよ。それに、これ以上話すことなんて他にあるか?)

   もしかして、自分の一方的な態度を説教した上で、改めて振られるのだろうか。

(それってどんな苦行だよ……)

   堂島はおとなしく付いていく必要なんかない、と思い二宮の手を振り切ろうとしたが、力では完璧に負けてるのでそれは無理だった。

「二宮先輩、手ぇ離っ……」
「もう着くまでお前は黙ってろ、一言も喋んな」
「……っ!」

   ああ、嫌だ。
   二宮の方から別れを告げられたら、絶対に泣く自信がある。
   だから自分から別れを切り出したのに。
   今ですらもう泣きそうなのに。

(ってか、俺、泣いてる……?   うわ、超絶カッコ悪ぃ……!)

   堂島の両目からは、ボロボロと涙が零れていた。
   慌てて手の甲で拭うが、それは次から次に勝手に溢れてくる。
   何か言葉を発すれば、自分が泣いているのが少し前を歩いている二宮にバレてしまうので、黙ってろと言われて助かった……のかもしれない。
   つい一度鼻を啜ってしまった音が、聞こえてなければいいのだけど。
   しかし、目的地に着くまでには涙を止めなければいけない。
 何としてでも。

(涙ってどうしたら止まるんだっけ……?)

   堂島は、自分がかなりの意地っ張りだと自覚している。
   前回──あの無茶苦茶なセックスの時は仕方なかったとしても、泣いてるところなんか本当は絶対に誰にも見られたくないのだ。
   親にも、友達にも、恋人にも。
   人前で泣くなんて恥ずかしいし、弱い奴だと思われたくない。
   普段は他人に甘えたり軽薄な態度を全面に出してはいるが、本当の自分はかなりプライドが高くて厄介であると自覚している。

    幼い頃は親姉弟にだけ、でも成長するにつれて他人に心を許すことなんて無くなっていた。
   だから今まで恋人でも友人でも薄っぺらい上っ面の付き合いしかしてこなかったし、それでいいと思っていた。
   本当の自分を知られるなんて、おそろしいことだ。
   今自分がこんな想いをしているのは、そんな生き方をしてきたツケでも回ってきたのだろうか。
   今回も同じように、軽い付き合いをしているつもりだったのに。

(早く涙止まれ……クソッ)

   同じ職場の、しかも同性の先輩をこんなにも好きになってしまっていたなんて。
   始まりはあんな、言葉にできないくらい最低だったのに。
   自分で自分が信じられなかった。
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