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〃
堂島がシャワーを浴びて戻ると、二宮は一人で何かをモグモグと食べていた。
「あれ、二宮先輩何食ってるんですか? 冷蔵庫に飲み物以外入ってました? ……って! ちょっと待って、それ!!」
「ん?」
振り返った二宮の唇に少しだけ、茶色いものが付いていた。
それと、そこはかとなく漂う甘ったるい匂い。
「今日山本主任から貰ってたチョコレートじゃないっすかぁぁ! なーに他の女から貰ったもん恋人の前で堂々とムシャムシャ食ってるんスかァァ!? しかもセックスした後に! 信っじらんねぇぇー!! ノンデリカシー男!!」
二宮は、今日のカラオケで山本に押し付けられたチョコレートを食べていたのだった。
いくら腹が減ったとはいえ、今の状況でそれを平気で口にする行動が堂島には信じられず――無人島に漂着した状況ならいざ知らず――つい子供のように喚いてしまった。
(こういうとこ!! 二宮先輩、フラれるのはこういうとこだよ!!)
「? けっこうイケるぞ、高級チョコレートだって。だってお前は何もくれてねぇだろ」
「当たり前でしょ!! なんで男の俺がバレンタインなんかしないといけねーんですか!!」
「別にハナから期待はしてねえよ。……まあ、山本主任と付き合う気はねえんだし、チョコレートはチョコレートだろーが。食い物に罪はねぇ」
(分かってる!! 分かってるけど!! くそー!!)
ヒステリーを起こしたい気持ちをグッと抑え込む。
食べ物は食べ物でしかない……二宮は本当にそう思っているのだから、怒るのはエネルギーの無駄遣いなのだ。
「そうですけどぉ……あーもう、ほんっと二宮先輩ってデリカシーがねぇな!俺が女だったら今即振られてますからね!?」
「え、そうなのか?」
「だからそういうとこ!!」
こういう所が、二宮が今まで恋人に振られ続けてきた所以なのだろう。
しかし堂島は男なので、こんなことで簡単に別れようとは全然思わないが。
「まあそうカリカリすんなよ。お前も食う? マジでけっこう美味いぞ」
二宮はそう言って、チョコレートの入った箱を差し出してきた。
堂島はぷいっと顔を背けてそれを見もしない。
「いらねーっす! 何が悲しくてライバルの女のチョコレートなんか食わなきゃなんないんですか。先輩も先輩ですよ、ほんっとデリカシーの欠片もねぇ」
「ライバルって、誰が?」
「山本主任ですよ、決まってるでしょ!?」
「お前ら、ライバルだったのか?」
「な、なんとなく、気持ち的に……」
向こうは全く認識していないと思われるが。
「ふーん……戦うまでもない感じするけどな」
「………」
(そういうこと言うから……ちくしょう)
そんなどうでもいいような態度を取られると、こんなことで怒っている自分がだんだん馬鹿らしく思えてきた。
……それでいいのかもしれない。
とりあえず、付き合ってから堂島の抱えていた不安やもやもやは、今夜二宮がくれた言葉の数々で一応解決されたのだから。
「それはそうと、」
「はい?」
「早くこっち来いよ」
二宮が、堂島をベッドの上から手招きする。
「何で……つーか先輩もシャワー浴びて来たらどっすか? 身体中ベタベタじゃないですか」
「最後にな」
「最後?」
自分を見つめる二宮の目が、なんとなく据わっているような気がする。
「なに、お前もう寝る気なのかよ? 俺、今夜は朝まで寝かさねぇつもりだったんだけど」
「へ?」
(なんか……先輩、目つきが変? それに、この匂いは……)
甘ったるいチョコレートの匂いの中にほんの少しだけ、堂島が苦手なあのアルコールの匂いがする。
「さっきまでのセックスは前座だから。本番はこれからな……嬉しいだろ? 朝までた~~~っぷり可愛がってやるから、またいい声で鳴けよ……?」
二宮が自分に寄越した、チョコレートの箱を見た。
チョコレートが入っていたと思われる白い容器の型は、ウイスキーボトルの形をしていた。
※次回からまた霧咲×榛名編に戻ります!
「あれ、二宮先輩何食ってるんですか? 冷蔵庫に飲み物以外入ってました? ……って! ちょっと待って、それ!!」
「ん?」
振り返った二宮の唇に少しだけ、茶色いものが付いていた。
それと、そこはかとなく漂う甘ったるい匂い。
「今日山本主任から貰ってたチョコレートじゃないっすかぁぁ! なーに他の女から貰ったもん恋人の前で堂々とムシャムシャ食ってるんスかァァ!? しかもセックスした後に! 信っじらんねぇぇー!! ノンデリカシー男!!」
二宮は、今日のカラオケで山本に押し付けられたチョコレートを食べていたのだった。
いくら腹が減ったとはいえ、今の状況でそれを平気で口にする行動が堂島には信じられず――無人島に漂着した状況ならいざ知らず――つい子供のように喚いてしまった。
(こういうとこ!! 二宮先輩、フラれるのはこういうとこだよ!!)
「? けっこうイケるぞ、高級チョコレートだって。だってお前は何もくれてねぇだろ」
「当たり前でしょ!! なんで男の俺がバレンタインなんかしないといけねーんですか!!」
「別にハナから期待はしてねえよ。……まあ、山本主任と付き合う気はねえんだし、チョコレートはチョコレートだろーが。食い物に罪はねぇ」
(分かってる!! 分かってるけど!! くそー!!)
ヒステリーを起こしたい気持ちをグッと抑え込む。
食べ物は食べ物でしかない……二宮は本当にそう思っているのだから、怒るのはエネルギーの無駄遣いなのだ。
「そうですけどぉ……あーもう、ほんっと二宮先輩ってデリカシーがねぇな!俺が女だったら今即振られてますからね!?」
「え、そうなのか?」
「だからそういうとこ!!」
こういう所が、二宮が今まで恋人に振られ続けてきた所以なのだろう。
しかし堂島は男なので、こんなことで簡単に別れようとは全然思わないが。
「まあそうカリカリすんなよ。お前も食う? マジでけっこう美味いぞ」
二宮はそう言って、チョコレートの入った箱を差し出してきた。
堂島はぷいっと顔を背けてそれを見もしない。
「いらねーっす! 何が悲しくてライバルの女のチョコレートなんか食わなきゃなんないんですか。先輩も先輩ですよ、ほんっとデリカシーの欠片もねぇ」
「ライバルって、誰が?」
「山本主任ですよ、決まってるでしょ!?」
「お前ら、ライバルだったのか?」
「な、なんとなく、気持ち的に……」
向こうは全く認識していないと思われるが。
「ふーん……戦うまでもない感じするけどな」
「………」
(そういうこと言うから……ちくしょう)
そんなどうでもいいような態度を取られると、こんなことで怒っている自分がだんだん馬鹿らしく思えてきた。
……それでいいのかもしれない。
とりあえず、付き合ってから堂島の抱えていた不安やもやもやは、今夜二宮がくれた言葉の数々で一応解決されたのだから。
「それはそうと、」
「はい?」
「早くこっち来いよ」
二宮が、堂島をベッドの上から手招きする。
「何で……つーか先輩もシャワー浴びて来たらどっすか? 身体中ベタベタじゃないですか」
「最後にな」
「最後?」
自分を見つめる二宮の目が、なんとなく据わっているような気がする。
「なに、お前もう寝る気なのかよ? 俺、今夜は朝まで寝かさねぇつもりだったんだけど」
「へ?」
(なんか……先輩、目つきが変? それに、この匂いは……)
甘ったるいチョコレートの匂いの中にほんの少しだけ、堂島が苦手なあのアルコールの匂いがする。
「さっきまでのセックスは前座だから。本番はこれからな……嬉しいだろ? 朝までた~~~っぷり可愛がってやるから、またいい声で鳴けよ……?」
二宮が自分に寄越した、チョコレートの箱を見た。
チョコレートが入っていたと思われる白い容器の型は、ウイスキーボトルの形をしていた。
※次回からまた霧咲×榛名編に戻ります!
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