運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

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146 霧咲と亜衣乃、宮崎へ行く

 3月下旬某日、榛名と霧咲と亜衣乃は羽田空港にて荷物を預けたあと、榛名の両親と姉夫婦への土産物を物色していた。

「ねえねえアキちゃん、アキちゃんのお母さんとお父さんとお姉さんってどんな食べ物が好きなの!?」
「ええと……甘いものなら何でもいいんじゃないかな。適当に東京ばな奈とか……」
「そんなのありきたりすぎるじゃない!」
「いやいや、地方の人間にとっては結構珍しいからね? ていうか東京って書いてあればなんでも有難がると思うよ」
「ほんとぉ~?」

 亜衣乃は怪訝な目で榛名をじろりと睨んだ。

「暁哉、こっちのスカイツリーの形をしたチョコレートはどうだ?」
「ああ、洒落てていいんじゃないですかね。そっちは姉夫婦にでも……」
「じゃあ二種類買っていこう、榛名家と武本家の分」
「一つでいいです一つで!」
「まこおじさ~ん、東京ばな奈全種類買っていい~?」
「いいぞ、全部12個入りのヤツな」
「はーい」
「いやいやちょっと待って、そんなにいりませんってぇ!!」

 小学校が春休みに入ったため、榛名と霧咲は有休を合わせて三日間の休みを取った。
 前に榛名は自分で霧咲と亜衣乃を両親と姉に紹介したいと言ったのだけど、ここに来てやっぱりやめておけば良かったかも……などと往生際の悪いことを思っていた。

「でも暁哉、お父さんはまだ仕事をしているだろう? 職場へのお土産とか」
「いいですそんなのは、あくまで両親と姉夫婦が食べれる分だけにしてくださいっ! ……あ、でも向こうに行ったら俺たちも一緒に食べるのかな……じゃあ亜衣乃ちゃん、自分の食べたいやつ選んでいいよ」
「もぉー、アキちゃんてばけっこう適当なんだから!」

 驚くことに、霧咲と亜衣乃はあまり緊張していないらしい。
 霧咲は『認められなくてもしょうがない』スタンスで、亜衣乃に至っては単なる小旅行だと思っているようである。
 まあ、確かに亜衣乃にとっては単なる小旅行なのだけど。

(俺がこんなだから、緊張してない風に見せているだけかな……)

 榛名はそう思って二人の顔をそっと盗み見たが、2人ともお土産選びに夢中になっていて隠されているであろう本心――隠しているのかすら謎だが――は全く読み取れなかった。
 アナウンスが鳴り、3人は急いで搭乗口に移動した。
 亜衣乃は空港自体は以前にも来ていたが、飛行機に乗るのは初めてらしく、ワクワクしている。
 生憎地方行きなので大きなジャンボジェットではなく小さめ飛行機なのだが、それでも嬉しそうだ。

「これ結構揺れるからな、覚悟しといたほうがいいぞ」

 以前乗ったことのある霧咲が、ニヤニヤしながら脅すように亜衣乃に言った。

「ええ、脅かさないでよ! まこおじさん」
「いや、これがホントに結構揺れるんだよね……着陸前とか」
「じゃあ亜衣乃、アキちゃんの隣に座るー」
「じゃあってなんだ、じゃあって」

 亜衣乃を窓際にして、通路側に榛名、そして通路を挟んだ向こうに霧咲が座った。
 霧咲の隣は空席らしく、誰も乗らないまま飛行機は離陸した。
 時刻はまだ午前中で、着いたら榛名の両親と姉夫婦――武本家のふたりと一緒に食事をする予定だ。
 店の予約は姉の桜に頼んでおいた。
 だんだんと飛行機の高度が上がっていき、『なんだか街全体がジオラマみたい!』とはしゃぐ亜衣乃の姿を微笑ましく見守りながら、榛名はそのとき姉と電話越しに交わした約一ヶ月前の会話を思い出していた。



「あのさ、お姉ちゃん……実は俺、みんなに紹介したい人がいるんだけど」
『えェ!? あー君、ついに結婚すると!?』
「う、うん……まあ、したいなって思ってる……んだけど」
『……どうしたと?』

 桜は何かを感じ取ったのか、すぐにテンションを落としてくれた。
 三つ年上の姉は、母と違って電話越しでも空気を読んでくれるので有難い。

「相手、男の人……だから」
『……』

 榛名の告白に、桜は黙りこくった。
 桜がマイノリティに対して偏見を持っているかどうか榛名は分からないが、仮に持っていないとしてもそれが自分の弟だとしたらどうだろう。
 榛名は姉に告白した時点で、『両親がショックを受けるだろうから紹介なんてしなくていい』と言われることを覚悟していた。
 けれど――

『なんでそんな申し訳なさそうに言うと?』
「え?」
『あー君が結婚したいくらい大事な人やっちゃろ? それなら堂々としとけばいいやん!』
「姉ちゃん、俺のこと気持ち悪くないと?」
『今どき別に珍しくないやろ! あたしの友達にもゲイの子おるし。でもそっかー、だからあー君今まで家に彼女連れてきたことなかったっちゃねえ! カオルちゃんだっけ? あの子くらいやない?   うちに呼んだことあるの』
かおるは彼女じゃなくて、ただの友達やし……」
『うんうん、今まで信じてなかったけどようやく腑に落ちたわあ』

 桜はずっと郁のことを彼女だと思っていたらしい。
 榛名と同じ東京に住んでいることもあり、てっきり長く付き合っていると思っていたようだ。
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