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〃
榛名はビクッとほんの少しだけ身体を揺らしたが、霧咲の方は見なかった。
触れた足はなかなか離れていかなかったので、どうやらわざと当てているようだ。
(え、どうして……?)
「美味しいですね、この刺身。新鮮で」
「え、ええ」
二宮は榛名の変化には気付かず、にこやかに話しかけてくる。
すると今度は膝の上に置いていた左手が、霧咲の右手でギュッと強く握られた。
「!?」
かと思えば、ゆっくりと離される。
霧咲の指は榛名の手の甲から指先を通り、最後は名残惜しそうにキュッと指先を握って離れていった。
榛名は背中がゾクゾクっとして、思わずぶわりと全身に鳥肌が立った。
「――榛名主任? 大丈夫ですか?」
「え!? いやそのっ、なんでもないです!」
ぼうっとしていたのを二宮に突っ込まれて返す言葉もなく、榛名は誤魔化すようジョッキを掴むと、半分以上入っていたそれを一気に飲み干した。
そんな榛名を見て、奥本や富永が驚きの声を上げた。
「うおっ、榛名君いい飲みっぷりだねぇ!?」
「わあ、珍しく主任がイッキ飲みしてるー!!」
「ぷっはぁ!」
霧咲が触れた部分が熱い。
ほんの少し触れただけなのに、霧咲の妙に性的な触り方のせいで思わず情事の時のことを思い出してしまいそうだった。
そして榛名をそんな目に遭わせた帳本人は、隣でクスクスと楽しそうに笑っている。
「榛名さん、すごい飲み方ですね?」
「早く焼酎が呑みたくて……」
睨むわけにもいかないので、榛名は少し不自然な笑いを霧咲に向けた。
一時間後、皆最初の席とは違う席に座ってバラけて呑んでいた。
霧咲は女性陣達に囲まれて酒をガンガン注がれており、榛名は相変わらず二宮と、そして奥本も加えた三人で仲良く焼酎を呑んでいた。
芋焼酎はお湯割りにすれば香りがたつので、『あの辺くさーい!』と女性陣に笑われていた。
「東京の人はあんまり焼酎呑まないですよね。俺も久しぶりに呑みますけど」
榛名が奥本に聞いた。
二宮も榛名の言葉にうんうん、と頷いている。
「こっちはどっちかっていうと日本酒だね~、ていうか榛名君と二宮君、よく焼酎ロックで呑めるね!? さすが九州男児」
「主任はロックどころかストレートですよ。俺には真似できません」
「いや、氷を入れるのが面倒だっただけですよ」
「そんな面倒ってあります!? ……にしても主任、ザルすぎでしょう」
「顔に出ないだけで普通に酔ってますよ? 昔からこうなんです」
榛名の呑むペースはかなり早かった。
二宮は結構イケる口のようだがさすがに目がとろんとしているし、奥本は既に耳まで真っ赤になっている。
そろそろ水を飲まさないとな、と榛名は冷静に思った。
勿論、自分も酔っぱらっているが。
むしろ早く酔いたかったのだ。
……色々と、落ち着かないから。
霧咲は榛名と離れた席で呑んでいた。
目の前の三人、左右もその隣も女性が座っている。
そもそも透析室の男女比は女性の方が圧倒的に多いので、そうなるのも当然といえば当然なのだが。
「霧咲先生、次も日本酒のみますかぁ?」
「それとも榛名主任を呼びますか? やっぱり私たちのお酌より榛名主任の方がよさそうですもんねぇ~」
「そうだね、また同じのを呑もうかな……榛名さんも呼びたいけど、今楽しそうに呑んでるからね、後にするよ。それに君たちが嫌なわけじゃないよ? お酌してくれてありがとう」
そんな霧咲のフォローを無視して、酔っ払った有坂が大声で榛名を呼んだ。
「はるなしゅにぃ~ん! 霧咲先生がお呼びですよぉ~!」
「えっ!?」
これにはさすがの霧咲も驚いた。
続いて若葉も。
「主任ってばぁ、何で霧咲先生から離れて呑んでるんですかぁ!? 二人はいつもくっついててくださいよ、もぉ~!」
「二人ともいい感じに酔ってるね……」
霧咲は笑って突っ込んだ。
しかし榛名はいつもなら『何言ってるの!?』と激しく否定するのだが、やはり酔っていたので『そっちが勝手に霧咲先生を連行したんでしょうが~』とブツブツ言いながらも立ち上がった。
触れた足はなかなか離れていかなかったので、どうやらわざと当てているようだ。
(え、どうして……?)
「美味しいですね、この刺身。新鮮で」
「え、ええ」
二宮は榛名の変化には気付かず、にこやかに話しかけてくる。
すると今度は膝の上に置いていた左手が、霧咲の右手でギュッと強く握られた。
「!?」
かと思えば、ゆっくりと離される。
霧咲の指は榛名の手の甲から指先を通り、最後は名残惜しそうにキュッと指先を握って離れていった。
榛名は背中がゾクゾクっとして、思わずぶわりと全身に鳥肌が立った。
「――榛名主任? 大丈夫ですか?」
「え!? いやそのっ、なんでもないです!」
ぼうっとしていたのを二宮に突っ込まれて返す言葉もなく、榛名は誤魔化すようジョッキを掴むと、半分以上入っていたそれを一気に飲み干した。
そんな榛名を見て、奥本や富永が驚きの声を上げた。
「うおっ、榛名君いい飲みっぷりだねぇ!?」
「わあ、珍しく主任がイッキ飲みしてるー!!」
「ぷっはぁ!」
霧咲が触れた部分が熱い。
ほんの少し触れただけなのに、霧咲の妙に性的な触り方のせいで思わず情事の時のことを思い出してしまいそうだった。
そして榛名をそんな目に遭わせた帳本人は、隣でクスクスと楽しそうに笑っている。
「榛名さん、すごい飲み方ですね?」
「早く焼酎が呑みたくて……」
睨むわけにもいかないので、榛名は少し不自然な笑いを霧咲に向けた。
一時間後、皆最初の席とは違う席に座ってバラけて呑んでいた。
霧咲は女性陣達に囲まれて酒をガンガン注がれており、榛名は相変わらず二宮と、そして奥本も加えた三人で仲良く焼酎を呑んでいた。
芋焼酎はお湯割りにすれば香りがたつので、『あの辺くさーい!』と女性陣に笑われていた。
「東京の人はあんまり焼酎呑まないですよね。俺も久しぶりに呑みますけど」
榛名が奥本に聞いた。
二宮も榛名の言葉にうんうん、と頷いている。
「こっちはどっちかっていうと日本酒だね~、ていうか榛名君と二宮君、よく焼酎ロックで呑めるね!? さすが九州男児」
「主任はロックどころかストレートですよ。俺には真似できません」
「いや、氷を入れるのが面倒だっただけですよ」
「そんな面倒ってあります!? ……にしても主任、ザルすぎでしょう」
「顔に出ないだけで普通に酔ってますよ? 昔からこうなんです」
榛名の呑むペースはかなり早かった。
二宮は結構イケる口のようだがさすがに目がとろんとしているし、奥本は既に耳まで真っ赤になっている。
そろそろ水を飲まさないとな、と榛名は冷静に思った。
勿論、自分も酔っぱらっているが。
むしろ早く酔いたかったのだ。
……色々と、落ち着かないから。
霧咲は榛名と離れた席で呑んでいた。
目の前の三人、左右もその隣も女性が座っている。
そもそも透析室の男女比は女性の方が圧倒的に多いので、そうなるのも当然といえば当然なのだが。
「霧咲先生、次も日本酒のみますかぁ?」
「それとも榛名主任を呼びますか? やっぱり私たちのお酌より榛名主任の方がよさそうですもんねぇ~」
「そうだね、また同じのを呑もうかな……榛名さんも呼びたいけど、今楽しそうに呑んでるからね、後にするよ。それに君たちが嫌なわけじゃないよ? お酌してくれてありがとう」
そんな霧咲のフォローを無視して、酔っ払った有坂が大声で榛名を呼んだ。
「はるなしゅにぃ~ん! 霧咲先生がお呼びですよぉ~!」
「えっ!?」
これにはさすがの霧咲も驚いた。
続いて若葉も。
「主任ってばぁ、何で霧咲先生から離れて呑んでるんですかぁ!? 二人はいつもくっついててくださいよ、もぉ~!」
「二人ともいい感じに酔ってるね……」
霧咲は笑って突っ込んだ。
しかし榛名はいつもなら『何言ってるの!?』と激しく否定するのだが、やはり酔っていたので『そっちが勝手に霧咲先生を連行したんでしょうが~』とブツブツ言いながらも立ち上がった。
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