113 / 322
〃
「あの……大丈夫ですか? その方、気分でも悪いんですか?」
空港職員が何事かと近づいてきて霧咲に話しかけた。
もちろん気分が悪い方というのは座り込んでいる榛名のことだ。
「あ、いいえ大丈夫です、ご心配ありがとう」
霧咲は空港職員の女性にニッコリと微笑んだ。
女性は顔を真っ赤にして、「な、何かございましたら何でもお申し付けください!」 と言って、立ち去った。
「暁哉、ここじゃ目立つからとりあえずトイレに行こう」
「……」
榛名は、下を向いたまま返事をしない。
「暁哉、」
「どうしても、話を聞かないといけませんか……?」
ぽたり、と榛名の顔から滴が床に落ちる。
一つ、また一つと。
「聞いてほしい。それにその顔のまま、飛行機に乗りたくはないだろう?」
「……」
霧咲に抱き起こされ、今度は逃げられないように手をぎゅっと握られた。
榛名は観念したのか、俯いたまま大人しく霧咲について歩き出した。
何故か連行されている犯罪者のような気分だった。
榛名は霧咲に連れられて、トイレの一番奥の個室へと連れ立って入った。
霧咲が中から鍵をかけ、そのすぐあと。
「ンッ……!」
壁にドンッと背中を押し付けられ顎を片手で掴まれて、強引で濃厚なキスをされた。
「ンッ、ンぅっ、ふっ、んぁ……っ!」
唇を舐められ甘噛みされ、無理矢理割り入ってくる舌に追いかけられる。
そのぬるりとした感触に心臓を鷲掴みにされて、飲み込めない唾液が榛名の顎を伝って落ちていく。
榛名は声を漏らしながらも、霧咲の胸をドンドンと叩いて抵抗した。
しかし、霧咲の身体はビクともしない。
地方の空港で、朝とはいえ、人の出入りは普通にあるのにこんなに声を出したら怪しまれてしまう。
(だめ、だめ……これじゃまた流される……)
「ンッ……ンぅッ……!」
けれど本当は嫌じゃないから、つい流されてもいいか、と思ってしまう。
(本当にだめ、なのに……)
だんだんと全身の力が抜けてきて、ついに榛名は陥落した。
必死で握りしめて霧咲に抵抗していた拳をゆっくりとほどいて、そのまま霧咲の胸にぎゅっとしがみつく。
自分からも舌を伸ばして霧咲の舌に絡め始めた。
「ンッ……チュッ、チュク……ふぅ、ンッ……」
「チュ……ン、はあ、暁哉……っ」
お互いの唾液が二人の口内で舌と共に淫らに交じりあう。
霧咲も榛名の顎から手を離し、華奢な背中に手を回してきつく抱きしめた。
もう二度と離さない、とでも言うように。
どれくらいキスを交わしていただろうか。
いつの間にか榛名の両手は霧咲の首に回り、二人の身体は離れがたく密着していた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「暁哉、」
唇を離したあとに、何かを言おうとした霧咲の態度を感じとった榛名は、また唇を押し付けた。
まるで何も言わせない、とでも言うように。
霧咲は榛名の健気なキスに答えながらも、止まった拍子に真実を伝えようとするが。
「あのね、暁」
「も、黙って……言わなくていいです、分かってるから」
その度に黙らされ、キスをねだられた。
そんな榛名が可愛くてキスを返すのだが、早く伝えたいという気持ちもある。
「暁哉、俺は」
「ね……霧咲さん、俺のこと好き……?」
霧咲の目を真っ直ぐに見つめている榛名の両目から、涙がこぼれ落ちた。
「好きだよ、君だけだ。君しか愛してない」
霧咲もまっすぐに榛名を見つめて、本心からそう言う。
それが真実だからだ。
「俺、もうその言葉だけでいいです……」
けれど、この恋人はその言葉を信じていない。
真実はどうであれ、その言葉だけで十分だなどと言う。
「暁、」
「言わないで!」
榛名はまた霧咲の口を唇で防ごうとした。
しかし、今度は霧咲はそれを許さなかった。
「君は少しは人の話を聞きなさい!」
「ふがっ!?」
今度はキスを受け止める代わりに、その小さな鼻をムギュッと軽く摘まんだ。
「いいかい、落ち着いてよく聞くんだ。俺は結婚なんかしていない」
榛名の目が大きく見開かれる。
涙に濡れた可哀想なその瞳は、霧咲を凝視していた。
「うそ……」
「嘘じゃない、君は朝井君に騙されていたんだ。まあその朝井君を騙してたのはうちの学生だけどね。でもそれを知っていて放置していた俺が悪いのも事実だ。おかげで君に大変な誤解をさせてしまったことは本当に悪いと思ってる。暁哉、すまなかった」
「……」
霧咲が結婚していない?
自分があの朝井という看護師に騙されていた?
けど朝井という看護師も学生に騙されていた?
霧咲はそれを黙って容認して、既婚者のフリをしていた?
……何のために?
空港職員が何事かと近づいてきて霧咲に話しかけた。
もちろん気分が悪い方というのは座り込んでいる榛名のことだ。
「あ、いいえ大丈夫です、ご心配ありがとう」
霧咲は空港職員の女性にニッコリと微笑んだ。
女性は顔を真っ赤にして、「な、何かございましたら何でもお申し付けください!」 と言って、立ち去った。
「暁哉、ここじゃ目立つからとりあえずトイレに行こう」
「……」
榛名は、下を向いたまま返事をしない。
「暁哉、」
「どうしても、話を聞かないといけませんか……?」
ぽたり、と榛名の顔から滴が床に落ちる。
一つ、また一つと。
「聞いてほしい。それにその顔のまま、飛行機に乗りたくはないだろう?」
「……」
霧咲に抱き起こされ、今度は逃げられないように手をぎゅっと握られた。
榛名は観念したのか、俯いたまま大人しく霧咲について歩き出した。
何故か連行されている犯罪者のような気分だった。
榛名は霧咲に連れられて、トイレの一番奥の個室へと連れ立って入った。
霧咲が中から鍵をかけ、そのすぐあと。
「ンッ……!」
壁にドンッと背中を押し付けられ顎を片手で掴まれて、強引で濃厚なキスをされた。
「ンッ、ンぅっ、ふっ、んぁ……っ!」
唇を舐められ甘噛みされ、無理矢理割り入ってくる舌に追いかけられる。
そのぬるりとした感触に心臓を鷲掴みにされて、飲み込めない唾液が榛名の顎を伝って落ちていく。
榛名は声を漏らしながらも、霧咲の胸をドンドンと叩いて抵抗した。
しかし、霧咲の身体はビクともしない。
地方の空港で、朝とはいえ、人の出入りは普通にあるのにこんなに声を出したら怪しまれてしまう。
(だめ、だめ……これじゃまた流される……)
「ンッ……ンぅッ……!」
けれど本当は嫌じゃないから、つい流されてもいいか、と思ってしまう。
(本当にだめ、なのに……)
だんだんと全身の力が抜けてきて、ついに榛名は陥落した。
必死で握りしめて霧咲に抵抗していた拳をゆっくりとほどいて、そのまま霧咲の胸にぎゅっとしがみつく。
自分からも舌を伸ばして霧咲の舌に絡め始めた。
「ンッ……チュッ、チュク……ふぅ、ンッ……」
「チュ……ン、はあ、暁哉……っ」
お互いの唾液が二人の口内で舌と共に淫らに交じりあう。
霧咲も榛名の顎から手を離し、華奢な背中に手を回してきつく抱きしめた。
もう二度と離さない、とでも言うように。
どれくらいキスを交わしていただろうか。
いつの間にか榛名の両手は霧咲の首に回り、二人の身体は離れがたく密着していた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「暁哉、」
唇を離したあとに、何かを言おうとした霧咲の態度を感じとった榛名は、また唇を押し付けた。
まるで何も言わせない、とでも言うように。
霧咲は榛名の健気なキスに答えながらも、止まった拍子に真実を伝えようとするが。
「あのね、暁」
「も、黙って……言わなくていいです、分かってるから」
その度に黙らされ、キスをねだられた。
そんな榛名が可愛くてキスを返すのだが、早く伝えたいという気持ちもある。
「暁哉、俺は」
「ね……霧咲さん、俺のこと好き……?」
霧咲の目を真っ直ぐに見つめている榛名の両目から、涙がこぼれ落ちた。
「好きだよ、君だけだ。君しか愛してない」
霧咲もまっすぐに榛名を見つめて、本心からそう言う。
それが真実だからだ。
「俺、もうその言葉だけでいいです……」
けれど、この恋人はその言葉を信じていない。
真実はどうであれ、その言葉だけで十分だなどと言う。
「暁、」
「言わないで!」
榛名はまた霧咲の口を唇で防ごうとした。
しかし、今度は霧咲はそれを許さなかった。
「君は少しは人の話を聞きなさい!」
「ふがっ!?」
今度はキスを受け止める代わりに、その小さな鼻をムギュッと軽く摘まんだ。
「いいかい、落ち着いてよく聞くんだ。俺は結婚なんかしていない」
榛名の目が大きく見開かれる。
涙に濡れた可哀想なその瞳は、霧咲を凝視していた。
「うそ……」
「嘘じゃない、君は朝井君に騙されていたんだ。まあその朝井君を騙してたのはうちの学生だけどね。でもそれを知っていて放置していた俺が悪いのも事実だ。おかげで君に大変な誤解をさせてしまったことは本当に悪いと思ってる。暁哉、すまなかった」
「……」
霧咲が結婚していない?
自分があの朝井という看護師に騙されていた?
けど朝井という看護師も学生に騙されていた?
霧咲はそれを黙って容認して、既婚者のフリをしていた?
……何のために?
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
魔性の男
久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。
最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。
そう、思っていた。